内閣府の試算が発表された。マスコミは、隠された真実を語らない。(No.189)
2016年1月21日、内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。同様な試算は2002年から毎年発表されており、これで15年目だ。内閣府が主張したいことは毎回同じで、今年の経済状態は悪いが、間もなく経済は絶好調になり、実質2%,名目3%成長が実現するだろうという。しかし実際はそのような成長率が実現したことは一度もなく、まさにオオカミ少年が嘘を繰り返しているのだが、政府もマスコミもすっかりこの試算に騙されている。狂った羅針盤として知られているこの試算の真の意味を正しく報道しない。
この結果をグラフにすると嘘が一目瞭然になる。黒い実線が名目GDPの推移でこの20年間増えていない。こんな国、世界中で日本だけであり、世界の中で日本がどんどん貧乏になっていくことを意味している。しかし、毎年発表される「予測」は、図のようにすべて右肩上がりであり、大本営発表と言うべき予測だ。
どうしてこのように、政府・国民を騙し続けるのかと内閣府に電話して聞くと、国に雇われているから、政府目標である実質GDP成長率2%、名目成長率3%という数字を前提に試算を出さざるを得ないと言う。しかし、滑稽なのは、この試算レポートの最初のページに「成長率、物価及び金利などはモデルから試算されるものであり、あらかじめ設定したものではない」とわざわざ書いてあることだ。いくらそのような断り書きがあっても、政府の目標通りの試算結果しか出せないと担当者が言っているのだから、嘘を隠すのは無理だ。
年中行事になってしまったが、試算結果は「現在の経済状態は以前に予測したよりはるかに悪かったので今回は大幅下方修正する。だけどは今後急成長する。」という毎度の言い訳。例えば2014年度の実質GDP成長率の予測は
2014年1月発表 1.4%
2015年2月発表 -0.5%
2016年1月発表 -1.0%
と、ガタガタと落ちていく。この試算が全くデタラメだからこうなるし、毎回バカバカしいほど間違えていることに対し反省の言葉は聞かれない。政府がそう発表せよと強制しているのだから仕方ないだろうと居直る。
無知なマスコミは基礎的財政収支にしか報道しない。経済を理解できないからだ。ギリシャは基礎的財政収支を黒字かしたら破綻したことを知らないのだろうか。内閣府試算では基礎的財政収支も財政収支も今後赤字が続くと試算は予測する。しかし、誰も気付かないが、下図のように、大赤字でも国の借金のGDP比は減り続けると予測している。
2024年度には国の債務は1212兆円になるという。これが多すぎるというなら、100分の1のデノミをやれば一瞬にして債務は12.12兆円にまでに縮小する。しかしGDPも減るではないかと反論されるだろう。つまり債務の数字そのものには意味がなく、GDP比のみ意味がある。だから、債務はいくら増えても良い。GDP比を減らせばよい。グラフでわかるように、現状でもGDP比は着実に減っていくので国の借金の問題はこのままでいつの間にか改善していく。ならば心配はいらない。景気をよくすることだけを考えればよいだけだ。
国債を増発して思い切った景気対策をすればどうなるかは、内閣府が2010年に行った乗数を見れば良い。国債増発は債務残高を増やすが、GDPも増える。債務残高の増加率よりGDPの増加率のほうが大きいから結果として債務のGDP比は減って財政は健全化する。そうすれば、日本経済は再び急成長を始め、財政も健全化するのだ。日本をかつてのように豊かな国にするには、財政拡大しかない。
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コメント
久方ぶりの更新です。higashiyamato1979です。三橋氏が日本を滅ぼす「嘘」の一つに「クニノシャッキンガー」を挙げています。この「嘘」は30年以上にわたり財務省がマスゴミとグルになって流布され既成事実化されてしまっています。覆すのは慰安婦のそれより困難でしょうが辛抱強く声を大にして叫び続けなくてはいけません。諦めたら試合終了です。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2016年1月24日 (日) 14時42分
財政を拡大させることに抵抗しているのは、官僚、アメリカ、IMFなどが足かせとなっているようですが、
具体的にどのように抵抗しているのでしょうか?特にアメリカやIMFなどはどのようになっているかを教えて
いただければありがたいです。
投稿: | 2016年1月25日 (月) 20時30分
アメリカやIMFなどが財政を拡大させることに抵抗しているとは思いません。むしろ、財務省がアメリカやIMFなどに、「日本は緊縮財政をすべし」と言ってくれと圧力を掛けているのだと思います。アメリカは日本が積極財政をしてくれれば、アメリカからの輸入が増えますから大歓迎でしょうが、しかし、日本の財務省は、今までの緊縮財政路線を正当化するために、アメリカに政策の支持を求めてますね。IMFだって財務省から人を送って、カネも払って、今までの緊縮財政路線を支持しろと圧力を掛けていますね。見かけは、政府の緊縮路線は国際的に支持されているように見えますが、財務省の一人芝居でしょう。
私もアメリカの財務省に行って、積極財政で日本経済が復活するし、財政も健全化するという話をしてきました。大変好評でした。
投稿: 小野盛司 | 2016年1月27日 (水) 22時01分
緊縮財政の元凶であるのは財務省ですが、なぜ、これほどまで緊縮財政に固執するのでしょうか?敵を知るという意味で、財務省の腹の中は何でしょうか?
例えば、国民を貧しくさせれば、自分たちの権限が強くなるといったあさましい発想でしょうか?教えてください。
投稿: | 2016年1月28日 (木) 21時45分
「緊縮財政の必要がない→積極財政(歳出増大)していい→積極財政のための財源は 単なる国債増発でいい→財源は”増税”でなくていい」となると、あらゆる増税策(具体的には”新税創設”や”既存税の税率up”)を極めて取り難くなります。増税する大義名分をなかなか見いだせないからです。
それどころか、
上述の通り「財源は単なる国債増発でいい」となれば、『減税策(具体的には”既存税廃止”や”既存税の税率down”を行い、その代わりに国債増発』して良いことになります。減税、減税、と進めていくと、究極的には無税ですね。それでも問題ないとなると、税を集める必要がありません。すると税を集める仕事が要らなくなります。国税局・税務署が要らなくなります。税理士も要らなくなります。そうなって自らが失業する・存在意義がなくなることを、国税局・税務署所管の財務省は極めて恐れているのでしょう。
「国民をぜひ貧しくしたい」とまでは思っていないのでしょうが、「自らが貧しくならないためには国民が貧しくなっても仕方ない。だって、自分にも生活があるから。」ということでしょう。この気持ちはよく理解してあげなければならないのだと思います。財務省系の人たちも私たちと同じ日本国民ですからね。貧しい生活へ追い込むのは可哀想です。
財務省系の人たちの新しい働き場所・働き甲斐がある仕事を用意することを、積極財政派の私たちは真剣に考える必要がある。さもないと、財務省系の人たちは必ず猛烈に抵抗し続ける。私はそう考えています。
投稿: hugoniot | 2016年7月 2日 (土) 09時54分