質問に対する安倍総理の答弁書(No. 191)
先日提出した質問主意書に対する答弁書が返ってきました。まず私のコメントから書きます。その次が質問主意書、最後が答弁書の順に以下に載せます。厳しい質問でだんだん答弁も苦しくなってきた感があります。予算委員会などで話されている質問より遥かに厳しい質問で苦し紛れの答弁が続きます。
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以下、私のコメントです。
一及び二について
政府は、消費増税で実質成長率は落ちたが、名目成長率は落ちてないと言いたいようです。しかし、名目が上がったのは消費税率が上がり、物価がかさ上げされただけであり、これは経済成長とは無縁であることを隠しているわけです。次回ではこれを追求します。
三について
国際会議でのコミュニケは法定拘束力が無い。しかし、「消費税率の引き上げ」は国際公約だと主張する。こちらは法的拘束力があるのか次回質問します。
七及び九について
我が国の財政は極めて厳しいとあるが、それならどうして円が安全な資産をして買われるのか聞きたいですね。財務省も日本ではデフォルトはあり得ないと言いながらなぜ財政が厳しいのか。政府が国債を発行しても買い手がいなくなると言うのか。政府から国債を買っても、すぐにそれ以上の値段で日銀が買ってくれるのを知っているのに金融機関は買わなくなるとでも言うのか。
八について
石破大臣の発言は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」であった。これと答弁書の内容はまるで違う。これは事実上の撤回でしょう。石破大臣に答えてもらいましょう。
十について
カネに色はついておらず、消費税を社会保障の財源にすること自体意味が無い。消費増税により経済が停滞し、税収が落ち込んだら社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を放棄することになる。
日本経済と世界経済は悪い状況にあり、もし更に消費税増税があればリーマンショック並の重大な事態に陥りかねない。
政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急激に上昇(国債価格が下落)するのだそうだが、国債価格は需要と供給のバランスにより決まる。日銀がどんなに買っても国債は下落するというのか。つまり誰が日銀の買いを大幅に上回るほどの売りを出せるというのか。
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【質問】
平成28年2月10日提出
質問第123号
マイナス金利政策が成功する条件に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
アベノミクスが目標としている2年で2%のインフレ目標、デフレ脱却、実質2%、名目3%の成長目標のいずれも達成に失敗している。金融緩和の限界が見えてきた結果苦し紛れにマイナス金利が導入されたが、その効果も限定的だと言われている。デフレ脱却の失敗のお陰で、かつて世界トップレベルにあった一人当たりの名目GDPも今や20位にまで落ちてしまったことは答弁書「内閣衆質190第39号」で政府も認めるところである。
これに関連して質問する。
1.アベノミクスの3本の矢は①金融政策②財政政策③成長戦略である。実質成長率は2013年度が2.0%、2014年度がマイナス1.0%であった。この2年間で①金融政策も③成長戦略もほとんど変化ないのに、②財政政策だけは2014年度には大きく後退している。このことを見れば、実質成長率はほとんど財政政策で決まっていると考えられるが同意するか。
2.平成22年8月に内閣府計量分析室が発表した乗数からも明らかなように、財政支出を拡大すれば、実質GDP成長率が上昇し、インフレ率も高まると考えるが同意するか。
3.内閣衆質190第39号において「平成29年4月の消費税率の10%への引き上げは国際社会における我が国の信認を確保」するためだと述べている。一方で内閣衆質第420号において日本も参加したG20で発表されたコミュニケは法的拘束力はなく、国際公約ではないので無視してよいと述べており、国際社会における我が国の信認を確保する努力を全く行っていない。この2つの発言は矛盾するのではないか。
4.1月29日に日銀はマイナス金利を導入した。これは銀行の収益を悪化させ、貸出を停滞させる可能性がある。現在の日本は鉱工業生産指数も低下、実質消費支出も4か月連続のマイナスであり、2015年10~12月期はマイナス成長になるという見方が強まっている。このように国内の景気が悪化していて、しかも来年は消費増税で更に景気が悪化しそうな状況では、銀行による貸し出しの増加は期待できず、資金は海外に流出してしまう可能性が高い。そうであれば、まず財政支出を拡大し、景気を回復することにより、国内の資金需要拡大をすることにより日銀の政策を助けるべきではないか。
5.マイナス金利により、日銀による国債購入が困難になるのではないか。マイナス金利で日銀当座預金に資金を預けるより国債を手放さないほうが有利だからである。市場における国債の品不足を解消するには政府が国債を増発すべきであり、それが日銀の金融政策を助けるのではないか。
6.国債の発行残高が増えると金利負担が増えると錯覚するかもしれないが、今後は国債の金利もマイナスになり、国債の発行残高が増えれば金利負担が減るということも考えられるのではないか。
7.国債の増発で財政赤字が増えれば国の債務のGDP比が増えると錯覚している人がいる。しかし、そうではないということは、今年1月21日に内閣府で発表された「中長期の経済財政に関する試算」により明確に示された。それによると今後巨額の財政赤字が続くのにも拘わらず、債務のGDP比は減っていく。具体的には2015年度には197.5%であったものが、毎年減り続け2024年度には176.7%にまでに減少するということである。このことを踏まえると、政府は財政赤字を気にする事でなく、むしろ経済の再生のためにどれだけ財政を拡大すべきかを考えるべきではないか。
8.1月3日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言された。しかし内閣衆質190第39号ではハイパーインフレは現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていないと述べている。このことは石破大臣がTBSの発言を撤回したと考えてよいか。
9.国債増発による財政拡大でハイパーインフレは発生しないのであれば、2~3%のインフレ率の達成は可能なのではないか。適切な規模の財政拡大によりインフレ目標達成、デフレ脱却、3%の名目成長率の達成のすべてが可能になると考えるか同意するか。
10.ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンが2014年11月16日付けのNYタイムズのコラムで次のように書いている。
「増税を遅らせた場合、投資家が心配するのは何か?デフォルトではない。日本は自国通貨建てで借金しているのでデフォルトする必要がない。投資家が心配するのはマネタイゼーションだ。これは日本をインフレに導く。安倍総理は、人々にデフレよりもインフレへの期待を与えようと努力しているが、政府財政に対する信頼の喪失は将来のインフレに対する期待をもたらす。日本に必要なのは、無責任になることを約束することだ。流動性の罠は、あなたを鏡の反対側に据える。鏡の反対側においては、美徳は悪徳であり、慎重さは愚かさであり、中央銀行の独立性は悪いことであり、財政赤字の中央銀行直接引き受けの脅威は歓迎されるべきものであって恐れるべきものではない。」
このようにクルーグマンは来年の消費増税はすべきでない、政府財政に対する信頼の喪失がむしろデフレ脱却を可能にするとしているが、これをどのように考えるか。
11.現在求められているのは内需拡大であり、政府が財政政策による内需拡大の努力をせずに企業の投資拡大を強要すれば、企業は過剰設備を抱えることとなり、将来に禍根を残すことになるのではないか。
12 政府は自らの借金をできるだけ増やしたくないと言い、一方では企業に借金を増やして投資をせよと言う。リスクは自分でなく企業に押しつけようというもので、あまりに身勝手過ぎないか。
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【答弁】
平成28年2月19日受領
答弁第123号
内閣衆質190号第123号
平成28年2月19日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出マイナス金利政策が成功する条件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出マイナス金利政策が成功する条件に関する質問に対する答弁書
一及び二について
安倍内閣の経済政策の効果が発現し、我が国経済はデフレ脱却・経済再生に向けて着実に前進してきているところであるが、各年度の実質GDP成長率については、平成26年4月の消費税引き上げに伴う影響を含め、様々な要因が反映されたものと考えられる。
財政支出が実質GDP成長率やインフレ率に与える影響については、内外経済状況など様々な要因に左右されるため、一概にお答えすることは困難である。
三について
ご指摘の答弁書(平成二十七年九月十八日内閣衆質189第420号)五についてでは、「一般論としては、国際会議におけるコミュニケは、法的拘束力がなく、記載された事項は、国際公約ではない。政府としては、ご指摘のコミュニケを踏まえつつ、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に沿って、引き続き、経済と財政双方の一体的な再生をめざしてまいりたい」とお答えしているところであり、「国際公約でないので無視してよいとのべており、国際社会における我が国の信認を確保する努力を全く行っていない。この二つの発言は矛盾するのではないか」とのご指摘は当たらないものと考えている。
四 について
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いているものと認識している。
また、平成二十八年一月二十九日の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合において、日本銀行が決定したマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入や、それを受けた金利の動向等が金融機関に与える影響は様々であり、一概にお答えすることは困難であるが、政府としては、平成二十五年一月二十日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現の為の政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。
五について
日本銀行による国債購入等の金融政策の具体的な手法については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたいが、お尋ねの「マイナス金利により、日銀による国債購入が困難になるのではないか」については、平成二十八年二月四日の衆議院予算委員会において、黒田東彦日本銀行総裁が「0.1%の限定的なマイナス金利のもとで、国債の買い入れがスムーズに進まなくなるというリスクは非常に小さいのではないかというふうに現在考えております」と答弁しているものと承知している。
また、国債の新規発行額は、政府の財政需要や税収を考慮され決定されるものであり、同行の金融政策によって決定されるものではない。
政府としては、国債に対する信認を確保し、国債の安定的な消化を図るため、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一五」(平成二七年六月三十日閣議決定)第三章に定めた[経済・財政再生計画」(以下[経済・財政再生計画」という。)に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進めてまいりたい。
六について
国債金利は、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、ご指摘の金利水準の動向を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
七及び九について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、経済・財政再生計画に基づき、平成三十二年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むこととしている。
八について
ご指摘の石破地方創生担当大臣の発言は、財政規律が緩み財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況かにおいて、ハイパーインフレーションが起こることに言及したものである。
十について
平成二十九年四月の消費税率十パーセントへの引上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともの、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大災害のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
なお、万が一、ご指摘の「政府財政に対する信認の喪失」が生じた場合には、金利が急激に上昇することなどにより、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。政府としては、引き続き、財政に対する市場の信認を確保できるよう、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいりたい。
十一及び十二について
政府としては、「未来投資に向けた官民対話」において政府として取り組むべき環境整備の在り方と民間投資の目指すべき方向性を共有する中で、生産性向上に向けた設備、人材、技術開発等への企業の投資拡大を産業界に養成しているところであり、[企業の投資拡大を強要」しているものではなく、「リスクを自分でなく企業に押し付けつけようとしているもの」とのご指摘も当たらないと考えている。
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