内閣府計量分析室がオオカミ少年であることが一目で分かるグラフ(No.207)
7月26日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。同様な試算は毎年発表されており、その一覧は以下のサイトで見ることが出来る。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
これは日本経済の中長期展望を示すために内閣府計量分析室が行った試算だが、国が様々な分野で将来展望を示すための試算を行う際にはこの試算がベースになっているから非常に大切な試算だ。マスコミもこの試算が絶対的に正しいものと信じており(騙されているのだが)それ以外は一切引用しない。しかし、次のグラフを見れば、この試算は全くデタラメであり内閣府計量分析室はオオカミ少年であるということがすぐ分かる。
これは長期金利の予測で、この図で黒い右下がりの線が実際の長期金利の推移である。それに対して右上がりの15本の線は内閣府の予測であり、そこに書いてある数字が予測した年である。例えば今年2016年の予測は一番右にあり、今後長期金利は急上昇して数年もすれば4%を超える金利上昇となると予測する。もちろんこんな金利の急上昇(国債価格の急落)を予想する人などどこにもいないし、もし予想していたら国債を保有している人達が一斉に国債の投げ売りを始めるし、10年物国債がマイナス金利になるわけがない。実際は国債保有者は国債を売りたがらないので、現在国債市場では国債が品薄状態になっている。
1回だけの予想なら間違えるのも仕方がないかもしれない。しかし15回連続で急激な金利上昇を予想しており、それが全部はずれ、実際はむしろ金利はジリジリ下がり続けているのである。まともな感覚の持ち主であれば、金利は当分下がり続けるか、少なくとも低いままであり続けると予想するだろうし、その予想は内閣府の予想よりはるかに現実に近いに違いない。
内閣府計量分析室にどうしてこんな馬鹿な予測しかできないのかと電話で聞いてみると、「政府は実質2%、名目3%の成長と目標としている。このような高成長なら金利は高くならざるを得ない。だから内閣府としては立場上このような予測しかできない」という回答だった。要するに「お前達、首になりたくなかったら高成長の試算結果をだせ」と脅されているのであり、彼らは自分たちの意に反して間違いと知りながら試算を発表せざるを得ないのだ。一方政府・日銀はこのグラフを見て、「今の政策を続ければ、こんなに成長するのだ」と安心し、小出しの景気対策の逐次投入しかしない。そしてしばらくすると騙されたと気付く。2014年度の消費増税の際も「増税の影響は軽微」と予測した内閣府の試算にすっかり騙されて好調になりかけた経済を急激に悪化させてしまった。いつまでその繰り返しをやるのだろうか。
参考のために名目GDPの内閣府の予想と実際の名目GDPの推移を比較したグラフを次に示す。ここでも低迷するGDPに対して、いつも高成長を予想する内閣府のデータのコントラストが鮮明である。
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コメント
今晩は。higashiyamato1979です。霞ヶ関でまともなのは水産庁くらいですね。(決まり文句は省略します。失礼)
投稿: | 2016年8月 9日 (火) 19時34分