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2016年7月27日 (水)

内閣府=オオカミ少年のウソにまた騙されるのですか(No.206)

7月26日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/0726/shiryo_01-1.pdf
新聞各紙は2020年度の基礎的財政収支(PB)の赤字が5.5兆円だから財政健全化が厳しいと報じた。すでに何回も述べたように、内閣府の試算は全く信頼に値しない。過去の発表を見れば、発表がウソであったのは明かだ。もともとは2011年度には基礎的財政収支が黒字化するという予測であった。それが間違いだったという発表を行い、発表内容を次々変えていく。
第1回目のウソ 2006年7月 小泉政権末期に2011年度PBの黒字化を宣言
第2回目のウソ 2007年1月 第1回の宣言はウソでした。 14.3兆円削減なら0.2%黒字 になります。
第3回目のウソ 2008年1月 第2回も宣言もウソでした。 14.3兆円の削減を行っても0.1%赤字になります。
第4回目のウソ 2008年7月 第3回の宣言もウソでした。  14.3兆円の削減を行っても0.7%赤字になります。
第5回目のウソ 2009年1月 第4回の宣言もウソでした。 2011年度黒字化はできません。
ここで2011年度の黒字化を完全に放棄したが、なんと次は2020年度の黒字化にターゲットをすり替えた。
第6回目のウソ 2009年6月 第5回の宣言もウソでした。 2020年に黒字化す
るには消費税を13%にしなければなりません。
第7回目のウソ 2010年6月 2020年に黒字化する。 
第8回目のウソ 2011年1月 第7回の宣言もウソでした。2020年に黒字化する
にはGDP比で4.6ポイント(約22兆円)程度収支の改善が必要となります。
第9回目のウソ 2012年1月 第8回の宣言もウソでした。 2020年にPBを黒
字化するには消費税は17%にしなければなりません。
あきれて物が言えないのだが今回は2020年度はPB赤字5.5兆円というもの。マスコミはこのウソにすっかり騙されている。

今回の発表もウソの羅列に間違いない。こんなウソの中に何か役立つ情報はないだろうか。半年前の発表と今回の発表のデータを比較するのは面白い。それは前回の発表は消費増税時期が17年4月としての試算だったが、今回は19年10月へ延期した場合の試算だから。2年半延期したことで財政は悪化したのだろうか。発表された試算を見ると逆に財政は改善したことが分かる。まず2020年度のPBだが、6.5兆円の赤字だったが、今回のPBは5.5兆円の赤字だから1兆円の改善だ。では債務残高はどうなったかと言えば、例えば18年度で比べると、前回は1054.5兆円、今回は1051.8兆円だから2.7兆円だけ債務は減っている。つまり、増税を2年半延期したことで、財政は悪化でなく改善している。そうであれば、19年10月に予定されている消費増税も無期延期すると更に財政は改善する。それだけでなく、17年度は消費増税を延期したほうが、しないほうより消費が伸びてGDPが拡大、国が豊かになるというメリットもある。

このように言うと内閣府の担当者は「様々なファクターがありますから一概にそうとは言えません」と答えた。そうであれば、増税を延期するかしないかだけを変えて2つのケースを比較して発表して下さいとお願いしておいた。とくに19年度の増税を再延期するかどうかを判断するために内閣府の試算を出してもらいたい。筆者と内閣府との電話でのやり取りを以下に書く。

Q:増税を延期する場合と延期しない場合の比較を計算すべきではないのか。
A:増税は閣議決定されていたことで、閣議決定されたことに反する試算はできなかった。
Q:しかし、リーマンショック級のショックがあれば増税を延期すると安倍総理も言っていた。しかも国際金融会合に増税反対派のスティグリッツやクルーグマンを招いて話を聞いていた。両方の選択肢を検討するのは当然であり、それをやらない限り、このような試算は価値がない。
A:そうですか。
Q:今回(7月)の試算と前回(1月)の発表を比べてみる。今回は増税延期、前回は増税延期しないケースである。比較すると2020年度の基礎的財政収支は延期の場合が1兆円改善、しかも国の債務残高も減っている。このことから、増税は延期したほうが財政健全化に資するのではないか。
A:様々なファクターがあり、一概にそうは言えません。
Q:だから言っているのでしょう。他のファクターは全部同じにして、増税延期ケースと延期しないケースの比較を発表せよと。
A:すいません。
Q:2019年10月にも増税するかしないかを決めなければならなくなる。今回の試算を見れば、増税しないほうが、財政健全化に資するという結果だから、2019年10月も同様でしょう。その比較を出して下さい。
A:また再び国際金融会合のような会合が開かれて検討することになるかもしれません。
Q:試算が毎年ひどく上振れしていて、毎年下方修正している。もっとまともな予測はできないのか。
A:短期の予測は経済見通し担当に聞いて下さい。

次に経済見通し担当に電話して質問
Q:名目GDP、物価、長期金利等毎年の予測が上振れしており、毎年下方修正している。もってお信頼できる経済見通しを出して欲しい。
A:今回の発表で2016年度、17年度に関してはこちらで担当したが、18年度以降に関しては、こちらは関与していない。名目GDP,実質GDP,設備投資、個人消費、などはこちらで数字を出すが、長期金利などは出していない。
Q:実質GDP成長率では16年度が0.9%、17年度が1.2%となっている。IMFの予測は日本が先進国の中で際立って低い成長率となっていて16年度が0.3%、17年度が0.1%と低い成長率を予測している。

もう一度計量分析室に戻って質問
Q:17年度の消費増税が19年10月に延期された。その効果が今回の試算に入っていれば19年度からの数字に効いてくるはずだがそれが見られない。
A:19年10月は丁度年度の中間点なので、年度の前半は駆け込み需要が発生し、後半はその反動がある。だかれ19年度のデータは駆け込みと反動が打ち消し合って、何も無かったように見える。
Q:しかし、消費増税は可処分所得を減らし、消費を減らす。駆け込みとその反動では説明できない効果があるはず。
A:それは入っている。4頁の物価のグラフを見て欲しい。
Q:長期金利に関しては経済見通し担当では計算しないと言った。計量分析室でどのように計算したのか。
A:名目GDP成長率や物価などから推測した。物価が上がって金利が上がらないのはおかしい。
Q:そもそも名目GDP成長率の予測が完全に間違っているから、試算のすべてが間違った結果を出している。

内閣府試算の致命的な欠点は、実質2%、名目3%成長を、何の根拠もなく仮定してしまう事だ。政府がそれを目標としているからそうするのだと言う。でも1997年度に521兆円であった名目GDPが2015年度には500兆円にまで下がっている。18年かけて21兆円下がった。それなのに毎年3%成長を仮定して計算してたら、間違った結果が出るのは当たり前だ。3%成長と言えばGDPが15兆円増えるということ。普通の国であれば、3%成長くらい当たり前だ。しかしデフレが続く日本では当たり前ではない。3%成長のためにはどの程度の財政出動が必要かを試算で示して欲しいものだ。

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