« 2016年12月 | トップページ | 2017年2月 »

2017年1月

2017年1月27日 (金)

内閣府計量分析室(オオカミ少年)がまた試算を発表した(No.234)

1月25日、例年のごとく内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h29chuuchouki1.pdf
いつも見当違いの高成長を予測し、毎回大きく外れているので「オオカミ少年」とか「大本営発表」とか「狂った羅針盤」とか呼ばれている。筆者は毎回内閣府に電話し厳重に注意しているが、反省の色は全くなく、国民を騙す意図がありありと見える。

残念ながらマスコミはすっかりこのような子供だましの試算にすっかり踊らされているようだ。例えば日経新聞では「20年度黒字化困難に」「基礎的財政収支赤字拡大8.3兆円」という見出しのトップ記事が26日に出た。マスコミは試算に騙されて、あたかも増税や歳出削減が足りないから基礎的財政収支(PB)の赤字が拡大するかのように言うが、実際は単に内閣府の試算が嘘を言っているだけだ。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-9754.html

なぜPBの赤字が拡大したかと言えば、税収が減ったから。なぜ税収が減ったのかと内閣府に聞いたら2016年度の成長率が落ちたからだという。今回の発表で2015年度の名目成長率は2.8%だが、2016年度は1.5%に下がった。1年前には2016年度の成長率は3.1%を予測していたから、大幅な下落(下振れ)だ。これぞ真に内閣府がオオカミ少年と呼ばれる所以だ。「来年こそは日本経済は大きく発展します」と予測し、来年になると、間違いでした、でも次の年はきっと大発展するでしょうと言う。オオカミ少年は毎年同じ嘘を言い続けているのに、なぜ、国民も政府もマスコミも騙され続けているのだろう。

反論する人がいるかもしれない。2015年度は2.8%成長していたのだから、2016年度は3.1%成長と予測しても不思議ではないと。しかしそれはおかしい。なぜなら内閣府は2015年度の名目GDPの成長の大部分は輸入価格の下落、主に原油価格の下落によるものだと言っている。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe161/pdf/gaiyou1611.pdf#search=%272016%E5%B9%B4%EF%BC%91%EF%BD%9E%EF%BC%93%E6%9C%88%E6%9C%9F%E5%9B%9B%E5%8D%8A%E6%9C%9F%E5%88%A5%EF%BC%A7%EF%BC%A4%EF%BC%B0%E9%80%9F%E5%A0%B1%27

原油は1バレル当たり100ドルから50ドルに値下がりした。それが翌年も続いたら原油はタダになってしまい、値下がりは止まることは容易に推測できた。つまり2016年度に3.1%成長させるには原油をタダにしなければならないし、それはあり得なかったのだから当然3.1%成長でなく1.5%成長は予測できたはずだ。だからこれから内閣府はオオカミ少年という名称に変えるべきだ。国民を騙していることを簡単に知るには次のグラフを見ると良い。

2341

地を這うような2本の黒い線は、実際の名目GDPの推移である。GDPの計算方法が変わり、下の線が従来の方法で計算したもので、上の線が新しい計算方法で計算したもの。アベノミクスが始まった2013年度から上昇に転じているように見えるが注意が必要だ。2014年度は消費税が5%から8%に上がり、物価がかさ上げされた。そのお陰で、GDPもゲタをはいたのであり、これは誰も望まない悪い物価高、歓迎されないGDPの伸びでありこのゲタは10兆円程度ある。2015年度は先程述べた原油価格の下落によるゲタであり、アベノミクスの成果とは言えない。安倍総理はアベノミクスで44兆円GDPが増加したと口癖のように言うが、国民を騙すのを止め、44兆円のうちで、アベノミクスの成果はかさ上げされた部分を除くといくらになるのか明かにすべきだ。実際はアベノミクスでは先進国では最低レベルの成長しかしていない。

上図で右上がりの線がたくさん引かれている。これらは各年度で発表された名目GDPの予測だ。毎年3%成長するだろうとして右上がりの線を引っ張っているからこのようになる。今年発表になったのは黒い点線だ。今年のものは新しいGDPの計算法で、それ以前のものは古いGDPの計算法で示してある。本当に3%成長をすれば、600兆円、700兆円はあっという間に到達するのだが、2015年度のGDPですら1997年度のGDPより低い。つまり20年前のGDPの水準さえ達していないというあわれなマイナス成長だ。こんな馬鹿なことをやっている国は世界中探しても無い。3%成長は夢の又夢だ。これだけの低成長を続けているのに、なぜ低成長の予測を出さぬのかと聞くと、彼らは政府は3%成長だと言っているのでそういった予測しか出せないと言う。つまり国民を騙す予測を出すように強要されている。

その最大のネックになっているのが、基礎的財政収支の黒字化という目標だ。目標達成のためには増税と歳出削減が必要だという。それも欺瞞的な内閣府試算(上図を見れば、この試算はデタラメであるのは明か)を元に緊縮財政が必要だと論じる。例えば今年の試算に騙された日経は「20年度黒字化困難に」「基礎的財政収支赤字拡大8.3兆円」と言った。ではどうして8.3兆円に赤字が拡大したかはすでに述べたように「今は経済は停滞してますが、来年は一気に成長します」という決まり文句が根底にある。来年になればまた同じ下方修正をすればよいだけ。なぜ、国民は、いや日経までもがそのトリックに気付かずあのようなトップ記事を書いてしまうのだろうか。

今回の発表で是非注目して頂きたいのは国債費の大幅な減少だ。例えば2024年の予測では、国債費は42.4兆円であった。1年前の試算では52.9兆円と予測していたから約20%もの減少だ。これは「長期金利を0%程度に誘導する」という日銀の新しい金融目標の効果と言える。金利がかなり長い間低い水準に抑えられると予測し、そのお陰で国債費は大きく減少するということだ。

最後に次のグラフを見て頂きたい。これは財政赤字と国の債務のGDP比の関係だ。

2342

2025年まで大幅な財政赤字は続き国の債務は増加を続けるのだが、国の債務のGDP比は確実に減っていく。これを見れば、「基礎的財政収支や財政収支の赤字など気にしなくて良い。国の債務のGDP比さえ減ればいいんだから」という議論が成り立つ。それはGDPが増加するからそう言えるのである。積極財政で名目GDPが増えれば、間違いなく債務のGDP比を減らすことができる。これはどこの国でもやっていることだ。国の借金の増加など気にせず経済成長第一の政策に転換すべきだ。トランプ大統領と歩調を合わせ思い切った積極財政政策への転換を期待する。現在のような緊縮財政を続けるならGDPは伸びないから、債務のGDP比は増え続けるのだということは注意したい。

 

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年1月25日 (水)

アメリカ大統領は本当にトランプでよいのか(No.233)

トランプ氏の大統領就任時の支持率は40%で不支持が54%、就任翌日には全米で数百万人の反トランプデモが行われ、反トランプデモは世界各地でも行われた。人種差別主義者の彼はいつどこで襲われるかもしれない恐怖の中で暮らさなければならないだろう。大統領選挙でもトランプ氏はクリントン氏に300万票差で負けていた。トランプ氏を大統領にしてしまったのは、偏ったアメリカの報道である。彼の考えはどんなパブリシティーも得になるということ。ネガティブな報道が彼を有名にした。ネガティブな話題でも報道されないよりずっといい。スキャンダルでも報道されれば、人は彼に注目し、それが票に繋がった。

クリントン氏の失敗はトランプ氏の政策の間違いを話題にし過ぎたことだ。結果としてトランプ氏の政策ばかりが報道された。トランプ氏の政策は余り触れずに自分の政策を中心にアピールし続ければ勝っていた。

トランプ氏の致命的な過ちは、製造業が「衰退」したのは工場がメキシコに移ってしまったと思い込んでしまったことだ。過去25年でアメリカの製造業雇用は500万人減少したが、NAFTAで増えたメキシコの製造業の雇用の増加は50~80万人にすぎない。アメリカ製造業の雇用減少は機械化、IT化である。実際、製造業は衰退しておらず、鉱工業生産指数は増え続けている。つまり生産性が向上し少ない人数でより多くの生産ができるようになっただけだ。この傾向は誰にも止められず、『労働はロボットに、人間は貴族に』の世界へと移っていく。

単純素朴に考えてもトランプ氏の考えが間違いであることはすぐ分かる。ある企業がある機械を製造しようとしたとする。部品を輸入するときメキシコ製や中国製を使わず、割高なアメリカ製を使えと政府から言われたら、割高な製品となり、アメリカの消費者は割高な製品を買うことにより実質所得が減り貧乏になる。割高な製品は国際競争力を失い売上げも利益も減少し、リストラをしなければならなくなり、多数の雇用が失われる。またそのような部品もアメリカで製造しなければならないのであれば、そのような工場はメキシコや中国との競争に晒され、賃金を低く抑えなくてはならなくなる。100円ショップ(米国ではダラーショップ)の経営は成り立たなくなるし、消費者は割高のものばかり買わされる。

そんな質の低い雇用を増やすべきではない。これからのアメリカ経済を牽引するのはハイテク企業である。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどのような新しいハイテク産業に巨額投資をして雇用を作り出した方が国民を豊かにする。国際競争力があるので、メキシコなどと賃下げ競争をする必要はない。ハイテク産業は高度な技術者だけを採用するだろうか。そうでもない。人工知能にはビッグデータが必要だし、それは人海戦術で蓄積していくしかないので広範囲の人材が必要となる。

ほぼ完全雇用の状態のアメリカに必要なことは質の悪い雇用を増やすことではない。むしろ、質の悪い雇用を質の高い雇用に置き換えることだ。アメリカにはゴーストタウンはたくさんある。大統領のやらなければならぬことは、時代遅れの廃れた産業を復活することではなく、未来を切り開く新しい産業を更に発展させることだ。基軸通貨国であるアメリカは貿易赤字で世界経済に成長通貨を供給する義務があることを忘れてはならない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2017年1月16日 (月)

トランプさん、大統領を本当にやる気あるの?(No.232)

1月20日に大統領に就任するトランプ氏だが、彼は本当に大統領をやる気があるのだろうか。1月11日の記者会見も醜聞・罵倒の大統領らしくない最悪のものだった。大統領就任前から不支持率が支持率を上回っているという惨状だ。大統領職のための勉強をしているとは思えない。大統領は自らのビジネスから完全に撤退することが必要になるが、それを拒否し経営権を2人の息子に託した。こんな状態であれば、例えば海外の要人がトランプ氏の心証を良くするために彼のホテルに泊りその宿泊費を払えば、憲法が禁じる海外からの贈与や報酬に当たるから憲法違反になる。スキだらけだ。いつでも大統領を辞めて自分のビジネスに戻ろうとしているとしか考えられない。

親族を政府機関の職に採用してはならないという反縁故法に抵触すると言われているのにも拘わらず、トランプ氏の長女のイバンカさんの夫のクシュナー氏を次期大統領上級顧問に起用した。また新政権の閣僚候補を見ても、ビジネス界からの登用が目立つ。利益相反で将来追求を受ける可能性が極めて高いように思える。本当に大統領を真面目にやる気があったら、こんな人たちでなく、政治経験の豊かな人を選ぶだろう。トランプ氏は大統領より自分のビジネスのほうが重要なのではないか。

トランプ氏の選んだ次期閣僚は、次々と彼と正反対の主張をしている。彼が本気で大統領をやる気があるなら、自分と同じ主張をする人を閣僚に選ばなければ、自分の公約が実現できない。正反対の主張をする人を閣僚に選んだということは、自分の公約を実現する気はないと言っているようなものだ。例えばトランプ氏はロシアと良好な関係をもつのは良いことだと主張していたが、次期国防長官のマティス氏はロシアは第一の脅威だと言っている。トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ「同盟軽視」とも取れる発言を繰り返してきたが、ティラーソン次期国務長官は「同盟国との関与を強める」ことを強調している。トランプ氏はテロ容疑者の尋問手段で現在は禁止されている「水攻め」などの拷問の復活を主張したが、ティラーソン氏や国土安全保障長官候補のケリー氏はそれを否定している。またCIA長官候補のポンペオ氏は「絶対にやらない」と断言した。その他、イランの核合意、TPP,対メキシコ政策、一つの中国に対する考え方など、トランプ氏と閣僚候補者とは大きく意見が対立している。

要するに彼らはトランプ氏に従わない。従うと言えば閣僚には不適切と言われ議会で承認を得られない。ということは、トランプ氏は公約を守るだけの気力はなく、公約違反を追及されれば途中で投げ出すつもりではないか。

トランプ氏の経済政策に関して言えば、積極財政という点ではアメリカに繁栄をもたらすのだが、保護主義的な政策に関しては、数限りないほどの人がやってはいけないと言っているのに馬耳東風だ。日本総合研修所の試算では、アメリカの17年度後半の経済成長率は政策によって大きく変わる。積極財政だけなら成長率は3%台半ばだが、保護政策が加わると1%台に落ちる。つまり保護政策の効果はマイナス2%だ。しかも保護主義が第二次世界大戦に発展した歴史も忘れてはならない。

トランプ氏には理解不能なのだろうが、米国が海外からの輸入を制限すれば、生産コストが上昇し、ものづくりの効率は悪くなり、価値の低い製品しかできなくなるので、国際競争力を失う。圧力をかけてアマゾンに1年半で10万人の雇用を増やすと言わせたが、その雇用によって小規模小売業が次々倒産し、それ以上の雇用が失われる可能性があることを忘れてはならない。確実に雇用を増やしたければお金を刷るとよい。そのお金で生み出された雇用ならば、確実にアメリカを豊かにするのだから。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2017年1月 9日 (月)

トランプノミクスで経済はどうなるか(No.231)

トランプ次期米大統領がどのような政策を打ち出すのか世界が固唾を呑んで見守っている。円安・株高で、一見望ましい方向に進んでいるようにも見える。10年間で6兆ドル(約700兆円)の減税を行い、法人税は35%から15%に下げ、所得税も下げるという。  日本は法人税を37%から29.97%に下げたばかりだ。10年で1兆ドル(117兆円)のインフラ投資をすると言い、民間投資も活用するのだそうだ。

このように勇ましい積極財政であれば、デフレ気味の世界経済に好影響をもたらしそうだが、財政赤字を拡大して(つまりお金を刷って)行う積極財政ではなく均衡財政を保ちながら行うという。財源を彼が見いだせるとは思えない。米企業が海外にためた300兆円弱もの資金を米国に還流させ、国内投資を増やすのだそうだ。このお金は彼が自由にできるお金ではない。ドルを一気に米国に還流されればインフレとドル高で米企業が競争力を失う。企業の収支とは全く異なる。それよりFRBがドルを刷ったほうがずっとよい。それならドル安が進みアメリカ企業は競争力を増す。米国政府が自由になるお金なので、IT,AI,IoT等、アメリカの将来を見据えて投資すればよい。

刷ったドルで海外の資産を買いまくることもでき、アメリカが世界の警察官を続けることができる。アメリカの若者を送り出すのが嫌なら傭兵でも構わない。経常赤字・財政赤字・貿易赤字になるだろうが、それが世界経済に成長通貨を提供しデフレ気味の世界経済を活性化する。「お金がなければ刷りなさい」とトランプ氏に教えればよい。

彼は雇用創出にやけに熱心だ。2500万人の雇用を創出するという。800万人しか失業者がいないので、本当にそうなれば労働者と取り合いでインフレになり米企業が競争力を失う。条件の悪い雇用を増やすことになり労働者にとっては悪い政策だ。しかも200万~300万人の犯罪歴のある不法移民を追放するのだという。支離滅裂で国民のためになるとは思えない。

フォードが計画していたメキシコでの自動車工場建設を取りやめさせ、GMがメキシコで小型車を生産して米国に逆輸入していると批判、35%の多額の国境税を課すと警告した。トヨタに対しても脅しをかけている。これはNAFTAに違反するから、NAFTAを脱退するのか。そうしてもWTO違反になりWTOまで脱退するとアメリカは完全に世界から孤立する。イギリスもEUは離脱するが、自由貿易は死守したいと必死だ。保護貿易によるダメージがどれだけ甚大か彼は分かっていない。

メキシコの労働者の時給は米国の10分の1程度であり、メキシコの代わりに米国で車を生産すると1台あたり14万円程度高くなる。つまり車のコストに占める人件費の割合は5~10%程度だということで、メキシコでつくれば人件費の割合は1%程度ということになる。すなわち99%はロボットがつくっている。将来は100%ロボットがつくるようになるし、その時はメキシコでつくってもコストは同じだ。ラストベルトと呼ばれる地区で次々工場が閉鎖されたのはNAFTAのせいではなく、ロボットが人間に替わって仕事をするようになったお陰だ。技術革新で暮らしが豊かになっていく移行期間だ。「労働はロボットに、人間は貴族に」という考えで労働者を更に労働条件のよい職場へ移動させるのが大統領の役目だ。

メキシコから条件の悪い雇用を米国に持ち込むのではなく、刷ったお金でもっと条件の良い米国の発展を促進してくれる雇用を作り出せばよいだけだ。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年1月 4日 (水)

デフレなのにハイパーインフレを恐れる政府(No.230)

この20年間、政府はデフレを恐れなければならなかったのに、なんとハーパーインフレを恐れたため、結局デフレが続いてしまったという笑い話のような悲劇が続いている。

2016年1月3日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言した。その事に対し、政府は本当にハイパーインフレになると考えているのかと質問主意書で聞くと、安倍総理からの答弁書では「ハイパーインフレは極端な物不足の時に起こるもので、現在の我が国の経済状態では発生するとは考えていない」と答えた。

日銀保有の国債を無利子・無期限のものに替えたらどうかと質問すると、答弁書では「それは通貨の信認が失われ激しいインフレを引き起こす」と答えた。つまりハイパーインフレということだから前述の答弁と矛盾する。次回の質問主意書でこの点を徹底追求する。ところでハイパーインフレはどのようなときにおきるのだろうか。

例えば戦後の賠償金の支払いなどに伴う財政赤字の急膨張で紙幣を大量発行したときなどに起きるが、紙幣発行を止めればハイパーインフレは止まる。紙幣が大量発行され、それが流通し始めると需要が急拡大し、その需要に供給が追いつかなくなればそのバランスが取れるようになるまで値上がりする。紙幣発行が止まれば、インフレも止まる。日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換しただけでは、国民の可処分所得は増えないわけで需要の急増は考えられない。石破氏の発言も、「財政規律が緩んだ」というのが何を意味するかはっきりしないが、「少しでも財政を拡大した場合」と言いたいのではないか。

そんなに簡単にインフレにすることができるなら、なぜ20年間もデフレを続けなければならなかったのだろう。もし日銀保有の国債を100%交換すると100%のインフレ率になるのなら、2%だけ交換すれば2%のインフレ目標は達成されるわけだろう。インフレ率2%になれば、名目GDP成長率は通常4~5%程度になるし、それによって国の借金のGDP比は4~5%減少する。失われた20年に完全に終止符を打つことができ、歴史的な大偉業になる。

しかし、国債の交換が経済に対してそのような絶大な効果を生み出すものなのだろうか。日銀保有の国債の利子は日銀納付金として国庫に返される借換債の発行により繰り延べも自由自在にできるので、無利子・無期限のものと実質変わりはない。交換によって一部の馬鹿なマスコミが騒いだとしてもそれが自分の生活には関係ないとほとんどの人は考えるだろう。それによって需要と供給のバランスが大きく崩れで深刻な物不足になるとは考えられない。可処分所得は増加しないのに、米やテレビや車の消費量が一気に何倍にもなるわけもない。あるいは、これらの生産量が一気に何分の一に落ち込んで深刻な物不足になることもあり得ない。消費者に、あるいは企業に聞いてみれば良い。全く影響がないと答えるに違いない。つまりハイパーインフレになるというのは、インフレ恐怖症と呼ぶべきで、どこかで治療をしてもらう必要があるのではないか。その恐怖症によって日本が20年に及ぶ深刻な経済低迷に落ち込んでしまっているのだから。

この恐怖症を克服し日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換すれば、日本国民は一人当たり1千万円に近づこうという国の借金の重圧から逃れることができ、一気に経済が息を吹き返すのである。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2016年12月 | トップページ | 2017年2月 »