« トランプさん、大統領を本当にやる気あるの?(No.232) | トップページ | 内閣府計量分析室(オオカミ少年)がまた試算を発表した(No.234) »

2017年1月25日 (水)

アメリカ大統領は本当にトランプでよいのか(No.233)

トランプ氏の大統領就任時の支持率は40%で不支持が54%、就任翌日には全米で数百万人の反トランプデモが行われ、反トランプデモは世界各地でも行われた。人種差別主義者の彼はいつどこで襲われるかもしれない恐怖の中で暮らさなければならないだろう。大統領選挙でもトランプ氏はクリントン氏に300万票差で負けていた。トランプ氏を大統領にしてしまったのは、偏ったアメリカの報道である。彼の考えはどんなパブリシティーも得になるということ。ネガティブな報道が彼を有名にした。ネガティブな話題でも報道されないよりずっといい。スキャンダルでも報道されれば、人は彼に注目し、それが票に繋がった。

クリントン氏の失敗はトランプ氏の政策の間違いを話題にし過ぎたことだ。結果としてトランプ氏の政策ばかりが報道された。トランプ氏の政策は余り触れずに自分の政策を中心にアピールし続ければ勝っていた。

トランプ氏の致命的な過ちは、製造業が「衰退」したのは工場がメキシコに移ってしまったと思い込んでしまったことだ。過去25年でアメリカの製造業雇用は500万人減少したが、NAFTAで増えたメキシコの製造業の雇用の増加は50~80万人にすぎない。アメリカ製造業の雇用減少は機械化、IT化である。実際、製造業は衰退しておらず、鉱工業生産指数は増え続けている。つまり生産性が向上し少ない人数でより多くの生産ができるようになっただけだ。この傾向は誰にも止められず、『労働はロボットに、人間は貴族に』の世界へと移っていく。

単純素朴に考えてもトランプ氏の考えが間違いであることはすぐ分かる。ある企業がある機械を製造しようとしたとする。部品を輸入するときメキシコ製や中国製を使わず、割高なアメリカ製を使えと政府から言われたら、割高な製品となり、アメリカの消費者は割高な製品を買うことにより実質所得が減り貧乏になる。割高な製品は国際競争力を失い売上げも利益も減少し、リストラをしなければならなくなり、多数の雇用が失われる。またそのような部品もアメリカで製造しなければならないのであれば、そのような工場はメキシコや中国との競争に晒され、賃金を低く抑えなくてはならなくなる。100円ショップ(米国ではダラーショップ)の経営は成り立たなくなるし、消費者は割高のものばかり買わされる。

そんな質の低い雇用を増やすべきではない。これからのアメリカ経済を牽引するのはハイテク企業である。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどのような新しいハイテク産業に巨額投資をして雇用を作り出した方が国民を豊かにする。国際競争力があるので、メキシコなどと賃下げ競争をする必要はない。ハイテク産業は高度な技術者だけを採用するだろうか。そうでもない。人工知能にはビッグデータが必要だし、それは人海戦術で蓄積していくしかないので広範囲の人材が必要となる。

ほぼ完全雇用の状態のアメリカに必要なことは質の悪い雇用を増やすことではない。むしろ、質の悪い雇用を質の高い雇用に置き換えることだ。アメリカにはゴーストタウンはたくさんある。大統領のやらなければならぬことは、時代遅れの廃れた産業を復活することではなく、未来を切り開く新しい産業を更に発展させることだ。基軸通貨国であるアメリカは貿易赤字で世界経済に成長通貨を供給する義務があることを忘れてはならない。

|

« トランプさん、大統領を本当にやる気あるの?(No.232) | トップページ | 内閣府計量分析室(オオカミ少年)がまた試算を発表した(No.234) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

 今日は。higashiyamato1979です。トランプがアメリカ国内の生産に拘るのは安い労働力に釣られて工場が海外にシフトし、膨大な雇用が失われたからです。先生が安い外国製を使えなくなることをそんなに危惧するのなら刷ったお金で政府が直接仕事を国民に分け与えるーアメリカ版国鉄・アメリカ版電電公社の設立ーという案は如何でしょうか?とにもかくにも本人が望めばいつでも国民が安定した雇用を得ることが出来るようにしておくことは必要だと思います。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2017年2月 1日 (水) 10時36分

どこの国もIT化、機械化のため製造業の人口は減ってきており、これは誰にも止められません。労働者は第3次産業へと移っていますね。アメリカはほとんど完全雇用です。刷ったお金を使えば雇用はいくらでも創出できます。ITやAIなどのように未来への投資が一番よい。労働はロボットに、人間は貴族にですよ。低賃金でなければやれないような仕事をアメリカに取り戻す必要はありません。

投稿: 小野盛司 | 2017年2月 3日 (金) 14時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ大統領は本当にトランプでよいのか(No.233):

« トランプさん、大統領を本当にやる気あるの?(No.232) | トップページ | 内閣府計量分析室(オオカミ少年)がまた試算を発表した(No.234) »