デフレなのにハイパーインフレを恐れる政府(No.230)
この20年間、政府はデフレを恐れなければならなかったのに、なんとハーパーインフレを恐れたため、結局デフレが続いてしまったという笑い話のような悲劇が続いている。
2016年1月3日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言した。その事に対し、政府は本当にハイパーインフレになると考えているのかと質問主意書で聞くと、安倍総理からの答弁書では「ハイパーインフレは極端な物不足の時に起こるもので、現在の我が国の経済状態では発生するとは考えていない」と答えた。
日銀保有の国債を無利子・無期限のものに替えたらどうかと質問すると、答弁書では「それは通貨の信認が失われ激しいインフレを引き起こす」と答えた。つまりハイパーインフレということだから前述の答弁と矛盾する。次回の質問主意書でこの点を徹底追求する。ところでハイパーインフレはどのようなときにおきるのだろうか。
例えば戦後の賠償金の支払いなどに伴う財政赤字の急膨張で紙幣を大量発行したときなどに起きるが、紙幣発行を止めればハイパーインフレは止まる。紙幣が大量発行され、それが流通し始めると需要が急拡大し、その需要に供給が追いつかなくなればそのバランスが取れるようになるまで値上がりする。紙幣発行が止まれば、インフレも止まる。日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換しただけでは、国民の可処分所得は増えないわけで需要の急増は考えられない。石破氏の発言も、「財政規律が緩んだ」というのが何を意味するかはっきりしないが、「少しでも財政を拡大した場合」と言いたいのではないか。
そんなに簡単にインフレにすることができるなら、なぜ20年間もデフレを続けなければならなかったのだろう。もし日銀保有の国債を100%交換すると100%のインフレ率になるのなら、2%だけ交換すれば2%のインフレ目標は達成されるわけだろう。インフレ率2%になれば、名目GDP成長率は通常4~5%程度になるし、それによって国の借金のGDP比は4~5%減少する。失われた20年に完全に終止符を打つことができ、歴史的な大偉業になる。
しかし、国債の交換が経済に対してそのような絶大な効果を生み出すものなのだろうか。日銀保有の国債の利子は日銀納付金として国庫に返される借換債の発行により繰り延べも自由自在にできるので、無利子・無期限のものと実質変わりはない。交換によって一部の馬鹿なマスコミが騒いだとしてもそれが自分の生活には関係ないとほとんどの人は考えるだろう。それによって需要と供給のバランスが大きく崩れで深刻な物不足になるとは考えられない。可処分所得は増加しないのに、米やテレビや車の消費量が一気に何倍にもなるわけもない。あるいは、これらの生産量が一気に何分の一に落ち込んで深刻な物不足になることもあり得ない。消費者に、あるいは企業に聞いてみれば良い。全く影響がないと答えるに違いない。つまりハイパーインフレになるというのは、インフレ恐怖症と呼ぶべきで、どこかで治療をしてもらう必要があるのではないか。その恐怖症によって日本が20年に及ぶ深刻な経済低迷に落ち込んでしまっているのだから。
この恐怖症を克服し日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換すれば、日本国民は一人当たり1千万円に近づこうという国の借金の重圧から逃れることができ、一気に経済が息を吹き返すのである。
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コメント
明けましておめでとうございます。higashiyamato1979です。本年も宜しくお願いします。歴史認識などと違い、経済・財政に関しては正しい知識が中々広がりませんね・・・。新聞もテレビも殆どが嘘吐き財務省のプロパガンダを垂れ流すばかりでまともなのは共産党の赤旗と零細な地方紙(我が千葉県では「稲毛新聞」がお勧めです!)だけですから・・・。しかし、それでも自分は諦めません。一介の警備員にだって出来ることはたくさんあると信じます!
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年1月 4日 (水) 14時41分