トランプさん、お金がなければ刷りなさい(No.241)
オバマケア代替法案が撤回された。就任後失敗続きのトランプ大統領にとって、更なる大打撃となった。共和党は上院・下院で過半数の議席を持ちながら、共和党内での支持が十分得られなかったわけである。元々、共和党はオバマケア反対で一致していたのだから、それを変えることは最も簡単に実現できる公約だったはずだったから、トランプ氏は選挙戦でこの改廃を最重要公約としていたが、議会対策に失敗した。オバマケアの見直しで捻出できる財源は1兆ドル(約110兆円)と言われ、インフラ投資や法人税減税に当てるはずだった。オバマケア代替法案延期で、今度は同様に議会の承認が必要な大型減税を含む税制改革の実現が危ぶまれトランプ氏への期待がしぼむ可能性がある。
CNNの世論調査によればトランプ大統領の支持率は37%まで下がったことが3月21日までに分かった。不支持率は58%だった。オバマケア代替法案の撤回は支持率の下落に更に拍車をかけるだろう。入国禁止令も地裁と控訴審で敗訴し取り下げ、その後改良版を再提出したが、それも再び地裁で敗訴しストップしている。
予算案の一部が発表された。年間予算約4兆ドルのうちの1兆ドルの分の使途を決めている。予算案の段階だが、軍事予算や国土安全保障予算を増大させた分、低所得高齢者向けの食事提供事業をはじめ地方空港や下水道設備、長距離鉄道路線への補助金等が削減されている。具体的には軍事費、国土安全保障費、退役軍人費が6~10%の大幅増に対し環境保健省、国務省、農務省、労務省、司法省の予算は20~31%削減、保健福祉省、商務省、教育省、運輸省、住宅都市開発省は10~20%削減、エネルギー省、財務省、宇宙航空局は1~6%の削減となっている。この緊縮予算は民主党だけでなく、共和党からの反発の声が上がっている。非国防予算でこれだけの緊縮予算を提案した大統領は近年いない。大規模な予算削減は大規模なリストラとなり、トランプ氏の掲げる雇用創出に矛盾する。身内の共和党からも批判が噴出し、予算化される見通しは立たない。メキシコとの国境に壁をつくる費用は4600億円でメキシコに払わせると主張していたが、これも他の予算を削って財源を捻出するとなると、国民の不信が高まるだろう。
1月に就任したトランプ大統領だが、早くも大きな壁にぶつかっている。与党内に政治基盤を持たないという問題もあるが、やはり最大の問題は公約実行のための財源のようだ。これはかつての日本の民主党政権誕生の時と事情が似ている。このまま何もしなければ公約違反で支持率が急落しレームダック化する。日本の民主党政権のように、「決められない政治」「相次ぐ離党者」「選挙で大敗」や更にトランプ大統領の辞職の可能性さえある。トランプ氏にアドバイスしたいことは「お金がなければ刷りなさい」ということだ。これは企業の経営ではなく、通貨発行権を有する政府の経済運営だ。お金は人体における血液のようなもの。子どもが成長するには、血液も増やしていく必要がある。国を成長させるために必要な成長通貨を供給できるのは政府・中央銀行しかない。具体的には国債を発行し、財源を確保し財政赤字を拡大する。均衡予算を放棄すれば、公約の大規模インフラ投資も大規模減税も容易に実現可能だ。これは企業の借金とは全く異なり、独自通貨を保有する国の持つ固有の権利だ。保護貿易をしなくても、カネさえあればいくらでも雇用は創出できる。貿易赤字も気にしなくても良い。基軸通貨であるドルの増刷は世界経済の発展に貢献する。
多少インフレ率が上振れするかもしれないが、金利引き上げ等、景気過熱を防ぐ様々な手段がある。国債価格の下落があるとしても暴落ではない。そこで生じる様々な問題はカネで解決できる。政府は国債発行により無限にカネを調達できるのだから。
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