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2017年3月20日 (月)

政府は激しいインフレの意味を誤解し言論統制を行っている(No.240)

政府は3月14日の経済財政諮問会議に米コロンビア大学のスティグリッツ教授を招き議論した。彼は消費増税は財政赤字解消には逆効果だと述べ、日銀保有の国債を永久債に組み替えよと主張した。今年中に日銀保有の国債は500兆円を超えると言われており、それを永久国債に組み替え事実上国の借金でなくなれば、日本に重くのしかかっていた1000兆円の借金が半減するわけであり、財政拡大の自由度が拡大する。

これとほとんど同じ提案が福田昭夫議員の質問主意書で出されていて、彼はこの組み替えを「コンバート」と呼んだ。政府答弁ではコンバートを行えば通貨の信認が失われ激しいインフレになるとされている。ただし、需要・消費は伸びないし、輸入品の値上がりによるインフレではないとしている。これは需要と供給の関係を全く無視した答弁であり、明らかに政府は間違えており、次に予想される質問への答弁に困った政府は福田議員にこれ以上質問ができないようにした。これは明かに重大な憲法違反の言論統制であり、断じて許すことができない。

3月14日の日経新聞の「経済教室」で池尾和人氏がこの議論に関連していそうなコメントを書いている。彼は、近い将来日本で起きると思われる激しいインフレは1980年代後半に起きたブラジルのハイパーインフレと似ているだろうとしている。しかし、当時のブラジルと現在の日本とは全く異なっており、あのようなハイパーインフレが日本で起きる可能性は全く無い。当時のブラジルでは将来の発展に向け、工作機械や原材料となる中間財を外国から輸入する政策を推進しており、貿易収支が悪化していた。輸入に必要な資金を外国からの借り入れに頼っていた。

1970年に約10億ドルあった対外債務残高は、1980年には約80億ドルにまで膨れあがっていた。国内消費の80%分の原油を輸入していたのだが、オイルショックで原油価格が急騰し外貨準備が急減した。積極財政で外貨が不足し始め輸入が途絶え極端な物不足となりインフレ率が急上昇。通貨の下落で対外債務は更に増加した。物価スライド制でインフレになればインフレ率にスライドして賃金、消費財などすべて価格は調整されていた。物価が2倍になれば賃金も2倍になるので、それほど困らず国民はインフレに慣れてしまっていたのかもしれない。物価スライド制を維持するには、財政赤字もそれに見合うように拡大する必要があり、制御不能なインフレを招いた。

こんなことが日本で起きる可能性は全く無い。日本には外貨がたっぷりあり、しかも日本円は国際通貨であり、世界一安全資産の一つと考えられているので、「外貨不足」で輸入が途絶える可能性はなく、輸入の停止による深刻な物不足など起こり得ない。日本で消費増税を断念し積極財政を行えば、じわりと消費・需要が拡大し、ゆっくりとインフレ率が高まっていくだけだ。輸入が停止しない限り急激なインフレは起こらない。インフレが行き過ぎたら、財政を緊縮気味にするだけで過熱は防げる。ブラジルのように行き過ぎたインフレに対して、更に財政を拡大しなければならぬような制度にはなっていない。逆に日本の場合、インフレが進み賃金が上昇してくると、累進課税なので、所得税が大幅に増えてきて、インフレにブレーキが掛かる仕組みになっていて、この点でもブラジルと正反対だ。

政府は言論統制で、国民の声を封じるのでなく、国民と共に日本経済を復活させる道筋を検討すべきではないか。

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コメント

 今晩は。higashiyamato1979です。つくづく日本の知識人のレベルの低さには困ったものですね。そう言えばつい数年前までは「日本はアルゼンチンのようになる」などとほざいていましたな。理論武装の重要性を痛感しました。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2017年3月26日 (日) 17時54分

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