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2017年4月

2017年4月18日 (火)

人口減を案ずるより、ITやAIに大規模投資を考えよ(No.244)

厚生労働省は4月10日、将来推計人口を発表した。それによると50年後の2065年には日本の人口は8808万人に減少し、働き手は4割減少するのだそうだ。マスコミが大きく報じるから、さぞ大変な事が起きようとしていると思いがちだ。2015年から50年間で日本の人口は1.27億人から0.88億人に減少するということで減少幅は31%だ。一方働き手ということになっている15~64歳の人口割合はこの間、60.8%から51.4%に減少するから僅か9.4%PTの減少にすぎない。

2065年に8808万人にまで減少するがこれは60年前つまり1955年のレベル(8942万人)である。この60年間で実質GDPは47兆円から516兆円まで、つまり10倍以上に拡大した。この間の人口増加率は42%だがGDP増加率は約1000%であり、GDPの増加率は人口増加率の約24倍であり人口増加の影響はほとんど無視できると言えるくらいだ。GDPの増加は主に機械化、IT化によってもたらされ当時より現代ははるかに豊かになった。技術進歩は大きく加速しており今後50年間では第4次産業革命とよばれる産業革命が進行中である。これからの50年間ではるかに豊かになるのは間違いないが、GDPの定義は変わる可能性がある。

野村総合研究所のレポートによれば15~20年以内に日本で働いている人の49%の仕事が人工知能(AI)やロボットで代替可能になるとのこと。単純に考えればAIやロボットが仕事に協力するようになるから働き手は約2倍になる可能性がある。これが15~20年以内にすでに起きるのである。

コンピュータ技術が、今のペースで発達し続けるとある地点で、地球全人類の知能を超える、究極の人工知能が誕生する。これがシンギュラリティーと呼ばれ、これが起きるのが2045年と言われている。そのAIが自分以上に優秀なAIを作り、更にそれ以上のAIを作るというように、AIの知能が果てしなく優秀になっていくからテクノロジーの進歩は果てしなく速くなる。つまり各種事務員、受付係、レジ係、コールセンター、運転手、通訳などの仕事は容易にAIでできるようになる。

このように、ITやAIは人間の替わりに働いてくれる。例えばテスラモーターズの自動運転車は2017年中にロサンジェルスからニューヨークまで自動運転で走破する計画である。このように技術進歩があっても、その現場での利用を妨げるものがいくつかある。
①自動運転車は「運転手なしの車は公道を走れない」という規則
②運転手のいない車は怖いという先入観
③職を奪われることになる労働者による反対運動

このように克服しなければならぬ課題は山積するとはいえ導入されれば、メリットは極めて大きい。運転手なしのタクシーは料金が10分の1以下だし、事故率も10分の1になる。車同士が電子的に連結されれば渋滞は著しく緩和され、誰もが車の保有を止め共有するなら駐車場がいらなくなり好きな所で乗り捨て可能となる。各種事務員、受付係、レジ係、コールセンター、通訳など多くの職業はAI,ロボットに置きかわる。人口減少で働き手が足りなくなるどころか、人間に残された職場が無くなってしまい、お金さえうまく循環する仕組みをつくれば『労働はロボットに、人間は貴族に』という世界が出現する。大切なのはAIに政府が巨額の投資をすることだ。

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2017年4月11日 (火)

豹変するトランプ氏と変われない日本(No.243)

入国禁止令で失敗し、オバマケア代替法案も取り下げ、メキシコとの国境の壁も建設費のメドが立たぬという状況で、元々低かった支持率が更に落ちているトランプ大統領だ。やりたいことが何もやれないと言って大統領を辞任してしまうかもしれないとさえ噂されていたが、突然シリア政府軍をミサイル攻撃した。シリア軍が毒ガスを使ったことに対する制裁だが、これは「世界の警察官はやれない」といい「米国ファースト」という彼の立場とは相容れない。米国議会も国連も無視したトランプ氏の単独行動ではあるが、いやな雰囲気の漂っていた世界情勢に希望を与えたかもしれない。シリア軍の毒ガス使用のみならず、北朝鮮の核ミサイル開発、中国の南シナ海の人工島を軍事拠点化しようという動きなど、無法者がやり放題な行動を取り始めている。これに対してアメリカが力の外交に回帰してくれたとしたら、無法者にストップを掛けてくれるのではないかとの期待が生まれる。尖閣の問題も同様で尖閣を中国が占領したら、米兵投入なくてもミサイルやドローンによる攻撃だけで簡単に奪還可能だ。

米国が北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮はソウルを火の海にすると言った。北朝鮮による米韓への攻撃は、それが先制攻撃であれ反撃であれ、犬がライオンに噛みつくようなものだ。頭がおかしくなった犬でなければ絶対にやらない。米国が北朝鮮に核を放棄せよ、さもなくば攻撃すると言えば北朝鮮は従わざるを得ないように思えるが、果たしてどうだろう。

豹変するトランプ氏とは対照的に、衰退する日本の政治家は変わらない。4月7日内閣府は12年12月の安倍内閣発足と同時に始まった景気拡大局面は51か月となり、バブル期と並ぶ戦後3位の長さに達したことを発表した。しかし、消費増税前の2013年度は順調に消費は伸びていて、2014年1~3月期には307兆円あった実質消費は消費増税で急減し、2016年10~12月期になっても297兆円と落ち込んだままである。「景気拡大」と言われても消費縮小であれば、国民にとっては嬉しくない。

本当の意味の景気拡大は消費拡大が不可欠だ。そのためにはノーベル経済学賞受賞者であるシムズ氏、スティグリッツ氏、クルーグマン氏などの提言に従って財政拡大をするだけでよい。しかし7月5日の日経「大機小機」ではこれを「広がる悪魔のささやき」と称した。かつて与謝野馨氏が7年前「悪魔の手法」と言ったことが思い出される。要するに正統派の経済学者と議論したら太刀打ちできないことが明かだからまともに議論するのを避け、相手を悪魔だと言って国民を騙し、自分の無理な論理を押し通そうとしている。この手法は現在の政府でも変わらない。理詰めで政府の間違いを指摘した福田昭夫氏の質問主意書に対し、まともに答弁が不可能とみた政府は彼に質問主意書を出さないよう圧力をかけた。

政府は「財政を拡大したら通貨の信認が失われハイパーインフレになる」と主張する。あるいは「日銀保有の国債を永久国債に替えたらハイパーインフレになる」「それでも需要は伸びない」という無茶苦茶な答弁をして財政拡大を阻止する。これにより日本は20年を失い豊かな国から貧乏な国へと没落し、未だに変われずにいる。その間、米国や中国では巨大なIT企業が生まれ、かつて世界に誇っていた日本の製造業を圧倒している。

通常の経済であれば人手不足なら賃上げをして人を募集するのだが、将来不安を抱える日本では、賃上げをせず、営業時間を減らしたりして切り抜けようとする。不況の思考法から抜けきれない。それを打破するには、政治家は増税を唱えてきた過去を捨て去り、豹変して減税をし、そして財政拡大に踏み切るべきだ。

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2017年4月 5日 (水)

苦し紛れのトランプ氏による不公正貿易に対する強硬策(No.242)

政治経験のなかったトランプ氏は、無謀な公約を掲げて選挙を戦い大統領になった。しかし現実は厳しく、公約実現の試みは次々失敗し、支持率は歴代大統領の最低レベルにまで落ちている。入国禁止令は裁判所で差し止めされ諦め、作り直した入国禁止令も再び差し止めになっている。比較的易しいとされていたオバマケア代替法案も議会の承認が得られる見込みが無くなって撤回させられた。メキシコとの国境の建設もメキシコ側の建設費支払いの拒否に加え民主党の反対で建設費のメドが立っていない。これを助けようというのか、日本の経産省は公的年金で米国のインフラ債を買おうという案が出てきた。それがダメなら日銀が買う案もあるとのこと。日本からカネを借りて壁をつくる案が賛成を得られるかどうか分からないが、これは壁建設費援助の大義名文で円安誘導をしようというたくらみであり、トランプはこんな策略に引っ掛かるのか。

トランプ氏のドル高けん制発言に外国為替市場はもはや反応しなくなった。つまりトランプ=「オオカミ少年」と市場関係者に馬鹿にされるようになっている。予算案の一部が発表されたが、軍事予算や国土安全保障予算を増大させ、低所得高齢者向けの食事提供事業をはじめ地方空港や下水道設備、長距離鉄道路線への補助金等を削減する。軍事費、国土安全保障費、退役軍人費6~10%の大幅増の一方で、環境保健省、国務省、農務省、労務省、司法省の予算は20~31%削減させ、エネルギー省、財務省、宇宙航空局は1~6%の削減をするという。こんな予算が議会で成立するだろうか。またトランプ氏は温暖化規制撤廃の大統領令に署名し、国の内外から非難を浴びている。

苦し紛れのトランプ氏は中国や日本との通商交渉に国民の目を向けたいようだ。TPPが発効すれば日本の輸入牛肉への関税は38.5%から最終的には9%に削減される予定で、日本市場で豪牛肉と十分戦えたはずだった。しかし、TPP離脱によって関税は下がらない一方で、日豪EPAのお陰でオーストラリアから日本は牛肉を安い関税で買うようになる。これを阻止するために日米自由貿易協定を強力に求めてくるに違いない。日欧EPA交渉でも農産物の関税撤廃をめぐる問題で交渉は進んでいない。

筆者の提案は、刷ったカネを使い農家の大部分が満足するような巨額の財政支援を行って、農業の大規模化、IT化、ロボット化を強力に推し進め自由化交渉には応じるべきだということだ。日本の農林水産業の生産性はアメリカの20分の1以下だと言われている。日本の技術力があれば、生産性の大幅アップは可能である。今日本は深刻な人手不足なのだから、貴重な労働力を必要な分野に回す事ができる。この際、切り捨てられる農民を一人も出さないようきめ細かいそして大規模な財政支援が必要であり結果として農民を豊かにすることが重要だ。

失業率は2.8%にまで下がった。ここで積極財政を行えばインフレを招くだけだとの主張もあるかもしれない。しかし、日本は20年間デフレから脱却できていない。深刻な人手不足を解消するためにも、IT化、ロボット化、AI化を進めるための大胆な財政出動が必要だ。世界の企業の時価総額ランキングを見ても、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックといったアメリカのIT企業が並んでおり、これらはそれぞれが日本トップのトヨタの時価総額の数倍規模である。シャープ、東芝の例に見られるようにハイテクの分野で日本はすっかり遅れてしまった。デフレで消費が伸びない日本では、かつて優秀と言われていた製造業が衰退し、その代わりをしなければならないハイテク企業が育っていない。ここは政府が刷ったカネをふんだんに使ってばん回を試みるべきだ。これによりアメリカからの輸入が増えれば、トランプ氏の強硬策も反論できる。

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