豹変するトランプ氏と変われない日本(No.243)
入国禁止令で失敗し、オバマケア代替法案も取り下げ、メキシコとの国境の壁も建設費のメドが立たぬという状況で、元々低かった支持率が更に落ちているトランプ大統領だ。やりたいことが何もやれないと言って大統領を辞任してしまうかもしれないとさえ噂されていたが、突然シリア政府軍をミサイル攻撃した。シリア軍が毒ガスを使ったことに対する制裁だが、これは「世界の警察官はやれない」といい「米国ファースト」という彼の立場とは相容れない。米国議会も国連も無視したトランプ氏の単独行動ではあるが、いやな雰囲気の漂っていた世界情勢に希望を与えたかもしれない。シリア軍の毒ガス使用のみならず、北朝鮮の核ミサイル開発、中国の南シナ海の人工島を軍事拠点化しようという動きなど、無法者がやり放題な行動を取り始めている。これに対してアメリカが力の外交に回帰してくれたとしたら、無法者にストップを掛けてくれるのではないかとの期待が生まれる。尖閣の問題も同様で尖閣を中国が占領したら、米兵投入なくてもミサイルやドローンによる攻撃だけで簡単に奪還可能だ。
米国が北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮はソウルを火の海にすると言った。北朝鮮による米韓への攻撃は、それが先制攻撃であれ反撃であれ、犬がライオンに噛みつくようなものだ。頭がおかしくなった犬でなければ絶対にやらない。米国が北朝鮮に核を放棄せよ、さもなくば攻撃すると言えば北朝鮮は従わざるを得ないように思えるが、果たしてどうだろう。
豹変するトランプ氏とは対照的に、衰退する日本の政治家は変わらない。4月7日内閣府は12年12月の安倍内閣発足と同時に始まった景気拡大局面は51か月となり、バブル期と並ぶ戦後3位の長さに達したことを発表した。しかし、消費増税前の2013年度は順調に消費は伸びていて、2014年1~3月期には307兆円あった実質消費は消費増税で急減し、2016年10~12月期になっても297兆円と落ち込んだままである。「景気拡大」と言われても消費縮小であれば、国民にとっては嬉しくない。
本当の意味の景気拡大は消費拡大が不可欠だ。そのためにはノーベル経済学賞受賞者であるシムズ氏、スティグリッツ氏、クルーグマン氏などの提言に従って財政拡大をするだけでよい。しかし7月5日の日経「大機小機」ではこれを「広がる悪魔のささやき」と称した。かつて与謝野馨氏が7年前「悪魔の手法」と言ったことが思い出される。要するに正統派の経済学者と議論したら太刀打ちできないことが明かだからまともに議論するのを避け、相手を悪魔だと言って国民を騙し、自分の無理な論理を押し通そうとしている。この手法は現在の政府でも変わらない。理詰めで政府の間違いを指摘した福田昭夫氏の質問主意書に対し、まともに答弁が不可能とみた政府は彼に質問主意書を出さないよう圧力をかけた。
政府は「財政を拡大したら通貨の信認が失われハイパーインフレになる」と主張する。あるいは「日銀保有の国債を永久国債に替えたらハイパーインフレになる」「それでも需要は伸びない」という無茶苦茶な答弁をして財政拡大を阻止する。これにより日本は20年を失い豊かな国から貧乏な国へと没落し、未だに変われずにいる。その間、米国や中国では巨大なIT企業が生まれ、かつて世界に誇っていた日本の製造業を圧倒している。
通常の経済であれば人手不足なら賃上げをして人を募集するのだが、将来不安を抱える日本では、賃上げをせず、営業時間を減らしたりして切り抜けようとする。不況の思考法から抜けきれない。それを打破するには、政治家は増税を唱えてきた過去を捨て去り、豹変して減税をし、そして財政拡大に踏み切るべきだ。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。トランプ氏の一連の言動は三橋氏の言う「実践主義」そのものだと思います。翻って日本の政治家、と言いますか日本のマスゴミや野党の体たらくと言ったら・・・。解決策は「ジャパン・ファースト」の政治家が一人でも多く当選するよう我々有権者が発ちあがらなくてはなりません。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年4月13日 (木) 13時19分