政治家は国を豊かにする方法を議論せよ。(No.250)
約5か月間の通常国会が終わろうとしている。6月9日には骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)が発表された。新聞各紙、それほど大きく取り扱ってはいないが、債務のGDP比を減らす事が財政の目標に加えられたことで、歳出拡大の布石になるおではないかとか、10%への消費増税に暗雲がたれ込み始めたのではないかとか、財政規律が緩むのではないかとか様々な見解が出されている。これまでの成長戦略は家計を潤さなかったという指摘もある。
残念ながら国会議員達はこういう「家計を潤させるための」議論にはほとんど興味を示さず、国民生活からはほど遠い森友学園問題とか、加計学園問題とかばかりに焦点があたっていた。ということは、与党はこの議題なら逃げ切れると考えなのだろう。野党は追求のための追求であり政権奪還のための追求にはとうてい思えない。この野党の追及が功を奏したとしても、民進党に再び政権を担って欲しいなどと思う人はいないだろう。一度民主党に政権を任したが悪い記憶しかない。マニフェストは何一つ実現しなかったし、沖縄を混乱に陥れ、原発事故対応では大失敗をし、マニフェストにはなかった消費増税法案を定め、消費増税は国民を苦しめデフレ脱却を困難にした。野党の政権奪還には、まずこれらの失敗の総括が欠かせない。
日本は二十数年前には一人当たりのGDPという意味で世界一豊かな国であった。経済政策の失敗で今は先進国の中では最も貧しい国になってしまった。しかも国の借金のGDP比は世界最悪だ。本当に日本経済を救いたいのであれば、何が悪かったのかを国会議員は真剣に議論しなければならないのだが、そういう議論は全く聞かれない。国の借金を減らすために緊縮財政政策を続けた小泉元首相だったが、国の借金もそのGDP比も増え続け、デフレ脱却にも失敗した。しかし国の債務のGDP比を減らすにはGDPを増やせば良いだけだという議論が最近チラホラ出てきた。全くその通りでGDPを増やすには積極財政政策を行えばよいだけだ。小泉氏の緊縮財政ではGDPが増えないし、逆に減ってしまうから債務のGDP比は増えてしまう。
積極財政政策では国の借金そのものが増加してしまうと心配する人がいる。つまり分母のGDPも分子の借金も増えてしまうから、どちらの増加率が大きいかという問題になる。財政規模を拡大するのがよいのか、縮小するのがよいのか、現在の規模が最良なのかという問題は、日本の運命を決める極めて重要な問題であり、国会議員は最優先して議論しなければならないはずである。このことについて我々は十数年間その議論の重要性を訴えてきたが、与党も野党もこの問題を議論するのを避けている。一方で、内閣府は計量モデルで中長期試算を発表しており、その試算に基づいて政府の様々な政策立案を行っている。その試算を行う基となる方程式や乗数は2010年まで毎年のように発表されていたし、内閣府計量分析室のホームページに公表されている。そこではっきり示されているのは、財政を拡大すれば、債務のGDP比は減少するということだ。だったら、財政を拡大することにより、国の借金は実質的に減るし、デフレから脱却できるし、景気は回復できるし、日本国民にとってこれほど素晴らしいことはない。
昨年度の国の税収は7年ぶりに減るそうだ。成長しない日本を離れ企業は海外に出て行くために国内産業は廃れていることにも原因がある。また預金が1000兆円を超えたそうだ。将来不安を抱く国民が手持ち資金を消費や投資に使わず、利子がほぼゼロの預金に積んでおこうとしており、「死に金」が増え続けている。これが増え続ければ、経済全体が衰えていく。経済を生き返えさせるには、財政を拡大し、緩やかなインフレを起こし、預金を活用しないと目減りしてしまう経済状態にすればよい。その時、死んだお金が再び動き出し、経済が活性化し、国の借金の問題も解決する。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。高度成長期の頃は当たり前だった「常識」を取り戻さなければなりません。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年6月12日 (月) 14時47分