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2017年10月

2017年10月25日 (水)

前近代的な「物不足の時代の考え方」が国を滅ぼす(No.270)

現在の日本は物不足の時代から物余りの時代へと急速に変化しているが、日本人は昔の物不足の時代の考え方から抜け出せていないし、それが日本経済を衰退させていることに気づいていない。例えば日本人はハイパーインフレを恐れるのだが、それは極度の物不足に陥り、闇市でしか物が手に入らない時代のこと。そんな時代がこれからやってくる可能性は無いのだから、そんなことを恐れて積極的な経済政策を躊躇すべきでない。財政拡大を主張するとすぐに通貨の信認が失われハイパーインフレになると主張する者が現れるが時代錯誤も甚だしいと言いたい。時代はAI/ロボットが雇用を奪う、つまり逆に物余りの時代へどんどん進行して行きつつある。

住宅に関しても古い考えから脱却する必要がある。2013年・住宅土地統計調査によると、日本の住宅総数は世帯数より約16%多い。つまり住宅はすでに余っているのに、小さな家が次々建てられている。少子高齢化で老人を支える若者が減って支えきれなくなると日本人は心配するが住宅はすでに余っているし若者が減っても老人を住まわせるための家は残る。戦後暫くは米不足だったが、今は米余りだ。準天頂衛星システムみちびきができたのだから、これからは無人の農業用トラクターで農作業が可能で大量の人手が必要だった過去とは違う。あらゆる分野で機械化、AI化が進んでいき人手をかけず財・サービスが提供できるから究極の物余りの時代に入りつつあり若者の減少は関係無い。こういった時代に増税・歳出削減という緊縮財政を行うとますます物余りに拍車がかかり折角の生産設備が使われず無駄になるということになる。だからこのような無駄を無くすには減税・財政拡大をして国民に十分なお金を渡し需要を増やすしかない。

現政権のように、消費増税、歳出削減の方針で国民からお金を取り上げる政策を続けると、結局国民は小さな家を建ててひっそり住むしかなくなる。今ですら7軒に1軒は空き家と言われている。今後、人口の5%を占める団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」を背景に、団塊の世代が保有する大量の持ち家が空き家になるか不動産市場に売りに出される。そこで住宅余りに拍車がかかりデフレが進行する。国民に十分なお金を渡していなければ不動産の投げ売りとなり、十分な手入れができない空き家が増加し、国民は放置された空き家が近所に乱立する中、貧しい生活を強いられる。発想を転換し、財政を拡大し十分なお金を政府と国民に供給すれば空き家・空き地の適切な処理が可能となり、また小さな家ばかり建てるのを止め、一戸当たりの床面積を拡大することも可能となる。供給力拡大に対する報酬を国民は受けるべきであり、それは増税ではなく減税、歳出削減でなく歳出拡大で、教育・福祉・防衛・研究・医療等あらゆる分野で国はふんだんにカネを使うべきである。

財政拡大が将来世代へのツケを増やすという考えは時代錯誤であり物不足の時代の考えだ。物不足の時代に通貨発行をすると物不足に拍車がかかり、激しいインフレになるので通貨発行は制限せざるを得なかった。国債残高が増加しても通貨を発行して買い取れないから緊縮財政にするしかなかった。今は時代が変わったのだ。住宅余り、物余りの時代、日銀がいくら通貨を発行して国債を買い取っても物価はさっぱり上がらない。ネットを使ったビジネスも増えてきたしAIも参入しつつある。その需要が何倍に拡大してもハイパーインフレにはなりそうもない。逆にユーザーが増えれば企業は価格を下げる可能性もでてくる。昔、米の需要が急増したときは、米の価格は急騰した。あの時代とは違う。今はお金があっても急いで米を大量に買っておく必要はないし、生活用品も同様だ。政府も国民も新しい時代に相応しい発想の転換が必要だ。

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2017年10月19日 (木)

財政を拡大すれば、デフレ脱却、インフレ目標達成、財政健全化が可能(No.269)

10月22日に投開票される衆議院選だが、残念ながら財政を拡大せよと主張する政党がいない。デフレ脱却が最優先されるべきこの日本で最重要な政策は財政拡大である。国の借金が1000兆円を超えたのにこれ以上国の借金を増やして将来世代へのツケを増やす事ができないと多くの国民は考える。しかし、これは偏向したマスコミが間違えた考えを広めた結果である。実際は国の財政と家計とは全く似ても似つかないものである。

 

92日の日経新聞は「国を家計に例えるのをやめよう」と呼びかけた。それでも財務省のホームページでは、国の財政を家計に例えると50万円の月収の家庭の一月の生活費が80万円で、不足分30万円は借金で補っていて、その結果借金の残高は8400万円に達していると書いてある。日経新聞が主張するように国には通貨発行権がある。巨額の残高のある貯金を持っているようなものだ。例えば100億円の貯金があるとしよう。たった8400万円の借金が問題になるのか、僅か毎月30万円の借金の増加が問題か。

 

通貨発行権を行使したらハイパーインフレになると主張する人がいるが、一方ではこの日本では2%のインフレ率は達成不可能という人がいる。驚くべき事に同一人物が矛盾する2つの主張をする。合理的思考ができない人の悲しい現実である。当たり前なのだが、適度の財政拡大をするだけで2%のインフレ目標は簡単に達成できる。ハイパーインフレを恐れて緊縮財政を続けたために20年間もデフレ脱却ができず国がどんどん貧乏になっている。そんな国は日本だけだし、世界の笑い者だ。長期にデフレを続けて借金を増やし続けている国は日本だけだ。

 

例えばエジプトだが、財政赤字のGDP比は10%を超え、日本以上だ。国の借金が増える速度も日本よりずっと早く、最近10年間で5倍以上になった。しかし名目GDPも同様に増加しており、国の借金のGDP比は100%程度に抑えられており日本の半分以下だ。このように国の借金のGDP比を抑える原理はどこの国でも共通であり、デフレを長期に続けない限り国の借金のGDP比は200%を超えたりはしない。逆に言えば日本が財政を拡大しGDPが本格的に増え始めれば確実に国の借金のGDP比は減るのは確実だ。

 

人口減少が続く日本では、ハイパーインフレになったとしても名目GDPは増えないだろうと悲観的な人は考えるがそんなわけがない。実際ハイパーインフレと需要・消費の関係を質問主意書で政府に質問したら需要は増えなくてもハイパーインフレになるとの耳を疑うような答弁書(平成二十九年二月三日内閣衆質一九三号)が安倍首相から来た!!例えば消費が停滞しているとき、突然物価が10倍になったらどうなるか。国民は買い物に使う額が10分の1になり、大量の商品が売れ残り、結局10分の1に下げなければ売れなくなる。

 

インフレ目標を達成したいなら、国の借金を増やしてでも減税や財政拡大で国民の可処分所得を増やせば良い。それにより消費が増え、企業の利益が増え、企業は消費増に対応するため設備投資をし、人手の確保のために賃金を上げ、それが更なる消費の増大につながる。結果として名目GDPが増える。国の借金の増える速度と名目GDPが増える速度のどちらが大きいかだが、日本のように借金のGDP比が200%を超えるような国では後者のほうがずっと大きく、その結果国の借金のGDP比は減少していく。この事実をよく理解し、財政拡大が今の日本では最優先事項であることを政治家になりたいなら理解して欲しい。

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2017年10月12日 (木)

いつまで基礎的財政収支の黒字化を追い続けるのか(No.268)

2017衆議院選の自民党公約が発表された。自民党のホームページからは「この国を守り抜く」と書かれた表紙のパンフレットをダウンロードできる。かつては基礎的財政収支の黒字化を随分強調する傾向があったが、10頁に及ぶこのパンフレットからは基礎的財政収支という文字が消えた。

内閣府の試算に政府が騙されて、政策目標の中心に置いていた「基礎的財政収支の黒字化」であるが、内閣府の予測が毎回大きく外れ続け我々が「オオカミ少年」と非難し続けた成果があって、恥ずべき事と認識するようになったのではないか。当たり前の事なのだが、デフレ脱却なしに財政健全化はあり得ない。逆にデフレ脱却し、インフレ率が2~3%程度になれば、経済は大きく成長を始め財政健全化は容易に達成できる。

小泉内閣では竹中平蔵のアドバイスに基づいて2011年度に基礎的財政収支(PB)を黒字化するという「財政健全化」目標を立てた。内閣府の試算がそれを予測していたからである。しかし、実際は2011年のPBは巨額の赤字となり、全く内閣府の試算はあたらないことが示された。それだけではない。内閣府は毎年、どれだけ財政を圧縮し増税をすれば2011年にPBが黒字化するかを毎年計算し直し発表し、政府はそのアドバイスに従い緊縮財政を続けた。その結果諸外国が好景気で大きくGDPを伸ばす中、日本経済は停滞したままで、折角のデフレ脱却のチャンスを失い、一人当たりのGDPも世界トップレベルであったものが一気に18位まで落ちてしまった。つまり日本は一気に貧乏になったのだ。2011年度にPBが黒字化しないと分かった後は、政府は2020年度にPBの黒字化を先延ばしし懲りもせず緊縮財政を続けた。その結果2017年現在、まだデフレ脱却はできていない。さすがにここまで来るとPBに疑問を感じ始めたか、今回の衆議院選では2020年度にPBの黒字化などという馬鹿なことは主張していない。

単なる財政収支でなくPBを問題にし始めたのは、国債残高が増加し利払い費が馬鹿にできなくなったためだ。しかし、今や国債の半分近くが日銀によって保有されており、日銀に払った利払い費は国庫納付金として国庫に返って来るのだから事実上金利は無いと同じだ。マクロ計量モデルで計算してみればすぐ分かることだが、財政拡大で景気をよくし成長を加速すれば税収が増えてきて財政収支は大幅に改善する。つまり日本政府はデフレ下で緊縮財政を続けることにより景気を悪化させ財政を悪化させているから逆の事をやっているのだ。

希望の党は消費増税凍結を主張する。このことは評価できるが、小池氏は財政規模を縮小させたいようにみえる。企業の内部留保に課税するとか「身を切る改革」という主張は緊縮財政の内容だ。政府は通貨発行権を持っており、将来世代へのツケを回す事無く財政拡大・減税を行うことができる。これは例えば江戸時代には毎年行っていたことだ。徐々にお金の量を増やし経済を拡大する。なぜこのことに理解を示す政党が現れないのか。

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2017年10月 4日 (水)

今回の衆議院選では消費増税への賛否を徹底議論せよ(No.267)

10月10日公示、22日投開票の衆議院選は、2019年10月に消費増税を行うと宣言している与党に対し、凍結すべきだと主張している希望の党などの野党が対抗する。ここはじっくり論戦を戦わして頂きたい。森友・家計問題などで内閣支持率が落ちたと言われているが、アベノミクスが本当に成功していて、多くの国民が景気回復を実感していたら、そのような些末な問題は無視されていたに違いない。実際、アベノミクスに国民が期待を寄せていた2013年頃は、大臣の不祥事などほとんど無視されていた。諸外国ではこの程度の問題は無視されている。

安倍内閣の支持率が落ちてきた本当の理由はアベノミクスでは国民の生活は良くならないと思い始めたことであり、アベノミクス以外の選択肢として希望の党に望みを掛けている国民が出てきたということだろう。

世界経済は上向きであり、金融引き締めに向かっている一方、日本はデフレ脱却ができておらず、相変わらず異次元金融緩和の続けざるを得ない状況である。この状況で本当に消費増税をすべきだろうか。政府が消費増税を2年後にすると宣言するだけで、国民は身構え、節約志向になる。そもそも政府の異常なまでの楽観主義が20年に及ぶ景気低迷を招いたのである。例えば平成25年10月1日甘利大臣は次のように述べている。「来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模(景気対策の規模)とする。」これは財務省のホームページにも書き込まれていた。消費増税による景気の落ち込みを防ぐ手立ては万全だと主張していたが、実際の実質GDPは2013年度が2.0%、2014年度がマイナス0.9%となり2.9%もの深刻な落ち込みとなった。

2012年1月24日に出された内閣府の試算でも消費増税をした場合としない場合で、4年間累計で0.1%しか差が無いとしていた。上記の数字と比較すれば実際はその約100倍程度の落ち込みが生じたということになる。

この大失敗を忘れてしまったのだろうか。消費増税は政府の予想よりケタ違いの景気への悪影響を及ぼしており、景気対策が金融緩和では取り戻せないことが証明されているのだ。景気の落ち込みは単に国民生活を苦しくするだけでなく、税収の伸びを抑え基礎的財政収支を悪化させる。また名目GDPの伸びを抑えるために国の債務残高の対GDP比を増加させるから財政健全化にも悪影響を与える。その意味で逆に将来世代へのツケを増やす結果になるということだ。痛みに耐えることによって将来世代へのツケを増やすのだから踏んだり蹴ったりではないか。

教育への投資とか社会保障費への補填とかのための財源確保に消費増税が必要と主張するのはおかしい。消費増税によって法人税や所得税が減ってしまったらいずれにせよそのような財源は確保できない。

この選挙では、消費増税をすべきかすべきでないか、与野党でちゃんと議論していただきたいし、どちらの議論が正しいのかしっかり見極めようではないか。

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