前近代的な「物不足の時代の考え方」が国を滅ぼす(No.270)
現在の日本は物不足の時代から物余りの時代へと急速に変化しているが、日本人は昔の物不足の時代の考え方から抜け出せていないし、それが日本経済を衰退させていることに気づいていない。例えば日本人はハイパーインフレを恐れるのだが、それは極度の物不足に陥り、闇市でしか物が手に入らない時代のこと。そんな時代がこれからやってくる可能性は無いのだから、そんなことを恐れて積極的な経済政策を躊躇すべきでない。財政拡大を主張するとすぐに通貨の信認が失われハイパーインフレになると主張する者が現れるが時代錯誤も甚だしいと言いたい。時代はAI/ロボットが雇用を奪う、つまり逆に物余りの時代へどんどん進行して行きつつある。
住宅に関しても古い考えから脱却する必要がある。2013年・住宅土地統計調査によると、日本の住宅総数は世帯数より約16%多い。つまり住宅はすでに余っているのに、小さな家が次々建てられている。少子高齢化で老人を支える若者が減って支えきれなくなると日本人は心配するが住宅はすでに余っているし若者が減っても老人を住まわせるための家は残る。戦後暫くは米不足だったが、今は米余りだ。準天頂衛星システムみちびきができたのだから、これからは無人の農業用トラクターで農作業が可能で大量の人手が必要だった過去とは違う。あらゆる分野で機械化、AI化が進んでいき人手をかけず財・サービスが提供できるから究極の物余りの時代に入りつつあり若者の減少は関係無い。こういった時代に増税・歳出削減という緊縮財政を行うとますます物余りに拍車がかかり折角の生産設備が使われず無駄になるということになる。だからこのような無駄を無くすには減税・財政拡大をして国民に十分なお金を渡し需要を増やすしかない。
現政権のように、消費増税、歳出削減の方針で国民からお金を取り上げる政策を続けると、結局国民は小さな家を建ててひっそり住むしかなくなる。今ですら7軒に1軒は空き家と言われている。今後、人口の5%を占める団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」を背景に、団塊の世代が保有する大量の持ち家が空き家になるか不動産市場に売りに出される。そこで住宅余りに拍車がかかりデフレが進行する。国民に十分なお金を渡していなければ不動産の投げ売りとなり、十分な手入れができない空き家が増加し、国民は放置された空き家が近所に乱立する中、貧しい生活を強いられる。発想を転換し、財政を拡大し十分なお金を政府と国民に供給すれば空き家・空き地の適切な処理が可能となり、また小さな家ばかり建てるのを止め、一戸当たりの床面積を拡大することも可能となる。供給力拡大に対する報酬を国民は受けるべきであり、それは増税ではなく減税、歳出削減でなく歳出拡大で、教育・福祉・防衛・研究・医療等あらゆる分野で国はふんだんにカネを使うべきである。
財政拡大が将来世代へのツケを増やすという考えは時代錯誤であり物不足の時代の考えだ。物不足の時代に通貨発行をすると物不足に拍車がかかり、激しいインフレになるので通貨発行は制限せざるを得なかった。国債残高が増加しても通貨を発行して買い取れないから緊縮財政にするしかなかった。今は時代が変わったのだ。住宅余り、物余りの時代、日銀がいくら通貨を発行して国債を買い取っても物価はさっぱり上がらない。ネットを使ったビジネスも増えてきたしAIも参入しつつある。その需要が何倍に拡大してもハイパーインフレにはなりそうもない。逆にユーザーが増えれば企業は価格を下げる可能性もでてくる。昔、米の需要が急増したときは、米の価格は急騰した。あの時代とは違う。今はお金があっても急いで米を大量に買っておく必要はないし、生活用品も同様だ。政府も国民も新しい時代に相応しい発想の転換が必要だ。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。自分もほんの数年前まではこのような意見は所謂「トンデモ論」か詐欺か何かと片付けていたでしょう。ですが三橋氏や齊藤元章氏の著作や論説を読んだ今となっては全く疑う余地が無いと確信しています。これからの物余りの時代にはおカネや労働に関する常識がガラリと変わっていくことは間違いありません。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年10月29日 (日) 16時33分
このままなら、衣食住は大量にあるのに、お金が無くて、物が買えず、家に住めない国民が続出しそうですね。アホくさくて、やってられません。
そのうち、勝手に空き家に住む人や、食べ物を万引きする貧しい人が続出するでしょうね。
そうすると、今度は刑務所が足りなくなって、勝手に空き家に住もうが、食べ物を万引きしようが罪にならず、放免される世の中になるかもしれませんね。
緊縮財政は治安放棄とも言えるでしょう。
投稿: MAN | 2017年10月31日 (火) 20時50分