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2017年10月 4日 (水)

今回の衆議院選では消費増税への賛否を徹底議論せよ(No.267)

10月10日公示、22日投開票の衆議院選は、2019年10月に消費増税を行うと宣言している与党に対し、凍結すべきだと主張している希望の党などの野党が対抗する。ここはじっくり論戦を戦わして頂きたい。森友・家計問題などで内閣支持率が落ちたと言われているが、アベノミクスが本当に成功していて、多くの国民が景気回復を実感していたら、そのような些末な問題は無視されていたに違いない。実際、アベノミクスに国民が期待を寄せていた2013年頃は、大臣の不祥事などほとんど無視されていた。諸外国ではこの程度の問題は無視されている。

安倍内閣の支持率が落ちてきた本当の理由はアベノミクスでは国民の生活は良くならないと思い始めたことであり、アベノミクス以外の選択肢として希望の党に望みを掛けている国民が出てきたということだろう。

世界経済は上向きであり、金融引き締めに向かっている一方、日本はデフレ脱却ができておらず、相変わらず異次元金融緩和の続けざるを得ない状況である。この状況で本当に消費増税をすべきだろうか。政府が消費増税を2年後にすると宣言するだけで、国民は身構え、節約志向になる。そもそも政府の異常なまでの楽観主義が20年に及ぶ景気低迷を招いたのである。例えば平成25年10月1日甘利大臣は次のように述べている。「来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模(景気対策の規模)とする。」これは財務省のホームページにも書き込まれていた。消費増税による景気の落ち込みを防ぐ手立ては万全だと主張していたが、実際の実質GDPは2013年度が2.0%、2014年度がマイナス0.9%となり2.9%もの深刻な落ち込みとなった。

2012年1月24日に出された内閣府の試算でも消費増税をした場合としない場合で、4年間累計で0.1%しか差が無いとしていた。上記の数字と比較すれば実際はその約100倍程度の落ち込みが生じたということになる。

この大失敗を忘れてしまったのだろうか。消費増税は政府の予想よりケタ違いの景気への悪影響を及ぼしており、景気対策が金融緩和では取り戻せないことが証明されているのだ。景気の落ち込みは単に国民生活を苦しくするだけでなく、税収の伸びを抑え基礎的財政収支を悪化させる。また名目GDPの伸びを抑えるために国の債務残高の対GDP比を増加させるから財政健全化にも悪影響を与える。その意味で逆に将来世代へのツケを増やす結果になるということだ。痛みに耐えることによって将来世代へのツケを増やすのだから踏んだり蹴ったりではないか。

教育への投資とか社会保障費への補填とかのための財源確保に消費増税が必要と主張するのはおかしい。消費増税によって法人税や所得税が減ってしまったらいずれにせよそのような財源は確保できない。

この選挙では、消費増税をすべきかすべきでないか、与野党でちゃんと議論していただきたいし、どちらの議論が正しいのかしっかり見極めようではないか。

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コメント

 今晩は。higashiyamato1979です。同感です。消費税についてのタブーなき議論が必要です。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2017年10月 7日 (土) 17時01分

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