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2017年11月

2017年11月28日 (火)

減税すればレーガノミクスの「失敗」の再現となるのか(No.275)

デフレ脱却には減税と財政出動が最適であるのは明かだ。トランプ氏による減税・財政出動は景気がかなり良い中で行われようとしている。それはレーガノミクスの「失敗」の再現になると主張する人がいる。つまり成長は加速するが、金利が急騰し投資が鈍り景気が後退するとの主張だ。しかし当時と現在とでは経済状況は余りにも違う。ましてや日本が今景気対策をすれば金利が急上昇するだろうと予測するのは見当違いだ。

レーガノミクスの理論的支柱の一つになったのが、経済学者ラッファー氏の説である。税率が100%(つまり利益又は売上げの全部を取り上げる)なら利益が全く出ないので全企業は廃業し、税収もゼロになる。そこから徐々に成立を下げていくと企業は活動を始めだんだん税収が上がってくるという説である。だから税率を下げても税収は増えるというラッファー氏の説だったが、レーガノミクスでは、減税したが税収は思うように上がらず財政赤字は拡大した。

今の日本でも減税すると税収は減るかもしれないが可処分所得の増大し消費が伸び間違いなくGDPは増加する。これに関して内閣府の試算がある。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
個人所得税を5兆円減税すると名目GDPは0.54%増大し、その結果、国の借金のGDP比は0.21%PT減少する。つまり経済が活性化し国の借金は実質的に減るのだ。

レーガノミクスでは金利が高騰し景気は悪化したとされている。しかしレーガン大統領が就任した1981年のアメリカのインフレ率は11.1%であり、これを下げるために金融引き締めをせざるを得なかったのである。今の日本のインフレ率はほぼ0%でありインフレ率を上げたいのだから金融引き締め、つまり金利引き上げの必要は全く無い。少しでも金利が上がりそうになったら日銀が国債を買い増すことにより金利は押し下げることが出来る。

インフレ率も1980年頃と今では全然違う。カラーTV、ビデオ、車など普及しつつあったあの頃だが、今はかなりの物は普及してしまい物余りの時代に入っている。むしろ買う前に将来に備え貯金しておこうという気持ちが先に立つ。つまり少々の減税では買う気になれない。だからといって減税に意味がないわけではない。減税をどんどん進めると、個人の蓄えが増え、「こんなに増えたらもういいだろう」と感じるようになったら人は使い始めるし、そこまでやるしかない。1977年から1978年まで筆者はカリフォルニア大学で教えていた。私の学生の一人はトレーラーハウスを買って住んでいた。インフレ率が高いから、借金して大きな買い物をしても借金は目減りする。いくらでも簡単にお金を借りることができ、消費がどんどん拡大する社会のようだった。現在の日本とはまるで違う。

今の日本は政府やマスコミが将来不安を煽る。次々増税プランが出てきて、今貯金をしておかねば大変なことになると誰もが思っている。これは個人も企業も同じだ。こういう状況では消費の停滞が企業に新たな投資を躊躇させ経済は停滞する。これを打破できるのは、政府による思い切った減税、財政拡大だ。確かにパート・バイトの時給は上がったかもしれないが、パートには103万円や106万円といった「年収の壁」がある。それを超えると逆に収入が減ってしまうので時給が増えると逆に働く時間を減らしてこの壁を越えないようにする。だから人手不足に拍車がかかる。政府は国の発展には何が必要か真剣に考えるべきだ。

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2017年11月20日 (月)

デフレから脱却できないのに増税をする日本と、好況でも減税するアメリカ(No.274)

2019年の10%への消費増税、2013年から25年間続く復興増税に加え、年収1000万円超の会社員に対し、給与所得控除を縮小することによる増税を政府は検討している。更に年収800万円超の子どもなし世帯にも増税することや森林環境税導入という案もあるし出国税を新たに課すことが提言されている。このように次々と出てくる増税はデフレ脱却を難しくし、経済を停滞させ、財政健全化を遅らせる。世界的に見て、日本は成長率が際立って低く、増税は成長率を更に低くする。

それとは対照的に米国やEUはリーマンショックから立ち直り、金利は日本よりずっと高くなっている。それでも米国は次々と減税を行おうとしている。
①連邦法人税率を35%から20%に引き下げる。
②米企業が海外子会社の利益を米国に送る時の課税を軽減
③所得税の基礎控除を拡大
④相続税を将来的に廃止

日本は増税が好きでそれが経済を停滞させ、アメリカは減税が好きでそれが経済を活性化する。財政赤字を拡大させると日本では「将来世代へのツケ」を残すと言われ悪いことだと決めつけるがアメリカではそういった意見は聞かれないようだ。経済を活性化させ国を豊かにすることが我々が将来世代に対し行わなければならない唯一の義務だ。将来世代へのツケなど通貨発行権の行使をすれば瞬時に消える。景気はよいのだからもう景気対策としての減税は必要ないなどとアメリカでは言わない。

財政拡大はGDPの拡大に直結し、それが国の借金のGDP比を下げる。このことは内閣府の試算でもはっきり示されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
例えば公共投資を5兆円増やしたら国の借金のGDP比は1.65%PT下がるという試算を内閣府は出している。これは公共投資でなくてもその他の政府支出の増加でも同様だ。つまり国の借金を減らしたければ、財政支出を拡大し経済を活性化するしかない。それが分かっていて減税を進めるアメリカに対し、経済を理解していない日本は緊縮財政で経済を沈滞させているため、国の借金は増える一方だ。日本人は頭がおかしいと思われても仕方が無い。

どうしても納得できない人は次のサイトで確かめると良い。
http://www.tek.jp/p/
景気対策を行った場合と行わなかった場合の比較が示してある。景気対策を行えば、借金は増えるが、増加率はそれほどでもない。一方でGDPも増えるのだが、増加率は借金の増加率を超える。だから借金のGDP比を見れば減少していく。つまり国の借金は減るのだ。国が豊かになり、国民も豊かになり、経済が活性化し、企業の国際競争力も回復しデフレから脱却できる。それに加え将来世代へのツケも減る。こんなに良い政策は他にないのだから、全国民は減税・積極財政を求め声を上げるべきだ。

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2017年11月14日 (火)

AIで周回遅れになった日本を救うための議論をせよ。(No.273)

マスコミも国会もまだ家計学園問題を議論しているが、そんな問題より遥かに重要な問題がある事を忘れている。AIで日本が周回遅れになっており。これが将来日本の発展にとって致命的な問題になりそうなことだ。

日経新聞と学術出版大手エルゼビア(オランダ)が分析した結果では、人工知能研究の論文で引用が多い機関別順位は次の通り。
1 マイクロソフト               米国       6528
2 南洋工科大学           シンガポール      6015
3 中国科学院                中国       4999
4 フランス国立科学研究センター     フランス    4492
5 カーネギーメロン大学           米国      4389  
61  東京大学                日本     1393
262  東工大                  日本      520
日本がAIの分野で大きく遅れているのは明かである。

未来社会では製造業は廃れ、ハイテク企業が世界を席巻する。世界時価総額ランキングでは1位のアップルが8731億ドル、2位のアルファベット(グーグル)が7120億ドル、3位のマイクロソフトが6417億ドル、4位のアマゾンが5326億ドルでいずれもアメリカである。中国も進出が目覚ましく6位のアリババが4676億ドル、8位がテンセントの4216億ドルでアメリカ勢を激しく追い上げている。日本の最高位は39位トヨタの1844億ドルであった。1989年、時価総額ランキング20位までに日本企業は14社入っていた事を考えれば、積極財政でデフレ脱却をせず日本経済を衰退させてしまった政治家の責任は重い。

AIを駆使した自動運転技術は社会を大きく変えようとしている。先頭を走るグーグル系のウェイモは0.36平方kmという広大な走行試験用につくられた「架空の町」で自動運転技術の開発を進めている。ここでは公道ではできない走行試験を行っている。公道ではすでに560万kmの走行試験を終えている。自動運転車の開発では日本は大きく遅れており、やがてトヨタがグーグルの下請けになるのではないかという心配の声が上がっている。

2017年度補正予算の編成作業が始まると、マスコミは財政規律・財政健全化の話を持ち出し、財政拡大を阻止しようとする。今は財政出動の必要な経済状況ではないと主張する。しかし、約20年間デフレ脱却ができず、世界の中で際立って成長率が低い日本で、なぜ財政拡大が必要ないと言えるのか。財政破綻の可能性を取り上げたがるのだが、金利がほぼゼロに貼り付いている今、何を根拠で財政破綻を恐れるのか。最近20年間財政が破綻すると脅し続けた人たちは今こそ主張が間違いであったことを認めるべきだ。そしてデフレ脱却と財政健全化につながり没落する日本を救う財政拡大を主張すべきである。

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2017年11月11日 (土)

前近代的な「物不足の時代の経済学」が国を滅ぼす【1】(No.272)

当然のことながら物不足の時代には、闇市なども出てきて、ハイパーインフレも起こりやすいが、現代のような物余りの時代にはそれはあり得ない。政府や日銀の見解を見てみよう。

質問主意書の答弁書:内閣衆質190第39号  2016年1月22日
 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。

極端な物不足の時にしかハイパーインフレは起きないから現在の日本では起きないと言っている。一方で日銀総裁の見解は異なる。

2011年3月2日白川氏の発言
 国債を買い続けると何が起きるのかと山本幸三衆議院議員に聞かれ『我々が今目的としていますことは、物価安定のもとでの経済の持続的な安定ということであって、インフレあるいはハイパーインフレを起こすということが目的ではありません』と答えた。

白川元日銀総裁は国債を日銀が買っただけでハイパーインフレが起きると考えたようだが、物余りの現代に通用しない経済学しか知らない悲しさであり、実際黒田日銀総裁が国債を買い続けたがインフレは起きなかった。終戦直後の深刻な物不足からくるインフレを連想しているのだろうが、現代は物余りの時代であり全く時代錯誤の経済学だ。

現代は人類がかつて経験したことがない物余りの時代に入っている。アメリカではほぼ1650億ドル(17.8兆円)、もの食糧が毎年破棄されており、これは国で生産するすべての食糧の半分に相当する。そしてまだ食べられる食品の40%が捨てられる。他の先進国でも同様だ。住宅も余っている。日本の住宅総数は世帯数より16%多い。つまり住宅を建てすぎたのにまだ小さな新築住宅がどんどん建てられている。また団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」では大量の持ち家が空き家になるか、中古住宅市場に大量に放出され資産デフレが進行する可能性がある。

筆者が提案するのは、ミニマムサプライという考え方だ。財政を拡大し、全国に国営商店をつくり、まだ食べられるのに捨てている食糧、使えるのに捨てている物を生活困窮者に無料で配布すること。また地方には空き家、空き地が多く存在し、それを国の費用で無料または非常に安い家賃で生活困窮者に提供し、その近くに無料の国営商店をつくる。固定の国営商店でなくても、自動運転車で該当する家を巡回するトラックでもよい。

ミニマムサプライは、うまく制度設計を行えば、生活困窮者を救い、国が最低限の生活を保障してくれるという安心感を国民に与え、地方の活性化、空き地・空き家の有効利用、生活保護費の削減、捨てられていた物の有効利用などが同時に可能になる。ベーシックインカムより生活困窮者には手厚い保護となり、しかも財源も少なくて済む。もちろん、財政拡大が必要となるが、物余りの時代激しいインフレなど起こりようが無い。物不足の経済学を捨て、新しい経済学の下、思い切った財政拡大でデフレ脱却を目指すと良い。

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前近代的な「物不足の時代の経済学」が国を滅ぼす【2】(No.271)

前回はミニマムサプライの利点と、今は物余りの時代の経済学が必要になっていることを述べた。世界には飢餓に苦しんでいる人たちがいる。日本にも生活が苦しいという理由で自殺する人が毎年数千人もいるしホームレスの人もいる。他方ではまだ食べられる沢山の食糧、まだ使える生活用品や衣類も捨てられており、7軒に1軒は空き家であり、今後空き家はますます増加する。

 

多くの国民は少子高齢化で自分たちの老後に不安を持っている。また近い将来AI/ロボットが人の雇用を奪うから自分たちは失業するのではないかという不安もある。AI/ロボットが活躍してくれればますます物余りとなり、政府がそれに対応した経済政策を実行すれば、人は有り余った物をふんだんに使うことができるようになり「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会ができあがるのである。

 

その第一歩がミニマムサプライだ。通常は「まだ食べられるのに」又は「まだ使えるのに」捨てていた食料品・物を集め国営商店で無料で配布する。そこに入れる人達を事前に登録し顔認証でその人達だけ必要な量だけ持って行ってもよいと許可する。最終的には全国規模で国営商店は設置することになるが、最初は試験的に様々な条件を考慮し空き家の多い地方に特区をつくり始めることも考えられる。無料の商品は自動運転トラックが巡回して無料の物資を必要な人の所へ運ぶこともできる。高齢で通常の仕事に従事することが困難な人でも、自宅に近接した畑で自分たちが食べるための野菜を育てることはできるかもしれない。地方の活性化にも役立つ可能性がある。都会で生活保護を受けながら毎日を過ごす老人にとって、このような環境の方が生きがいを感じるかもしれない。また非常に安く生活ができる環境であれば、生活保護費は安くてもよい。

 

無料の国営商店が増えてくれば小規模小売店は経営が難しくなる可能性がある。またアマゾンなど通信販売の普及もそれに拍車を掛ける。さらにAI/ロボットが雇用を奪う。そのようなとき、労働者を適切な職場へ移動させることが重要である。例えば介護の現場では人手不足だ。特別養護老人ホームに申し込んでも入れなかった入所希望者が36万人いると厚生労働省は発表した。介護ロボットの開発は重要だが、それができるまで人手を増やして対応するしかない。「労働はロボットに、人間は貴族に」という目標の下、人間が快適な生活を送れるよう経済システムも根本から変える必要がある。介護がロボットで行われるようになるのは相当先だろうから、取りあえず介護は人海戦術で対応するしかない。

 

どんなに生活が困窮しても、年老いて介護が必要になっても安心して生活できる社会をつくるべきであり、それが経済発展というものだろう。GDPを増やせば良い、国の借金を減らせば良いというものではない。物余り、住宅余りの時代にそれができないわけがない。我々が目指すべき理想の社会では、生活必需品は無料で手に入り、赤ちゃんから老人まですべての人が生活できるだけの収入を国から保証される。他人にあるいは社会に貢献すればその貢献度に応じた収入を余分に得るという仕組みがあるとよい。自由放任にしておけばAI/ロボットを駆使した独占企業が利益を総なめしてしまう。そのような企業は人を雇わないからお金がそこに滞留してしまうが、そこで国が介入し国民へとお金を還流する。これは究極の物余り社会に適応する全く新しい経済学であり、発想の大転換が必要となる。

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