減税すればレーガノミクスの「失敗」の再現となるのか(No.275)
デフレ脱却には減税と財政出動が最適であるのは明かだ。トランプ氏による減税・財政出動は景気がかなり良い中で行われようとしている。それはレーガノミクスの「失敗」の再現になると主張する人がいる。つまり成長は加速するが、金利が急騰し投資が鈍り景気が後退するとの主張だ。しかし当時と現在とでは経済状況は余りにも違う。ましてや日本が今景気対策をすれば金利が急上昇するだろうと予測するのは見当違いだ。
レーガノミクスの理論的支柱の一つになったのが、経済学者ラッファー氏の説である。税率が100%(つまり利益又は売上げの全部を取り上げる)なら利益が全く出ないので全企業は廃業し、税収もゼロになる。そこから徐々に成立を下げていくと企業は活動を始めだんだん税収が上がってくるという説である。だから税率を下げても税収は増えるというラッファー氏の説だったが、レーガノミクスでは、減税したが税収は思うように上がらず財政赤字は拡大した。
今の日本でも減税すると税収は減るかもしれないが可処分所得の増大し消費が伸び間違いなくGDPは増加する。これに関して内閣府の試算がある。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
個人所得税を5兆円減税すると名目GDPは0.54%増大し、その結果、国の借金のGDP比は0.21%PT減少する。つまり経済が活性化し国の借金は実質的に減るのだ。
レーガノミクスでは金利が高騰し景気は悪化したとされている。しかしレーガン大統領が就任した1981年のアメリカのインフレ率は11.1%であり、これを下げるために金融引き締めをせざるを得なかったのである。今の日本のインフレ率はほぼ0%でありインフレ率を上げたいのだから金融引き締め、つまり金利引き上げの必要は全く無い。少しでも金利が上がりそうになったら日銀が国債を買い増すことにより金利は押し下げることが出来る。
インフレ率も1980年頃と今では全然違う。カラーTV、ビデオ、車など普及しつつあったあの頃だが、今はかなりの物は普及してしまい物余りの時代に入っている。むしろ買う前に将来に備え貯金しておこうという気持ちが先に立つ。つまり少々の減税では買う気になれない。だからといって減税に意味がないわけではない。減税をどんどん進めると、個人の蓄えが増え、「こんなに増えたらもういいだろう」と感じるようになったら人は使い始めるし、そこまでやるしかない。1977年から1978年まで筆者はカリフォルニア大学で教えていた。私の学生の一人はトレーラーハウスを買って住んでいた。インフレ率が高いから、借金して大きな買い物をしても借金は目減りする。いくらでも簡単にお金を借りることができ、消費がどんどん拡大する社会のようだった。現在の日本とはまるで違う。
今の日本は政府やマスコミが将来不安を煽る。次々増税プランが出てきて、今貯金をしておかねば大変なことになると誰もが思っている。これは個人も企業も同じだ。こういう状況では消費の停滞が企業に新たな投資を躊躇させ経済は停滞する。これを打破できるのは、政府による思い切った減税、財政拡大だ。確かにパート・バイトの時給は上がったかもしれないが、パートには103万円や106万円といった「年収の壁」がある。それを超えると逆に収入が減ってしまうので時給が増えると逆に働く時間を減らしてこの壁を越えないようにする。だから人手不足に拍車がかかる。政府は国の発展には何が必要か真剣に考えるべきだ。
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