前近代的な「物不足の時代の経済学」が国を滅ぼす【2】(No.271)
前回はミニマムサプライの利点と、今は物余りの時代の経済学が必要になっていることを述べた。世界には飢餓に苦しんでいる人たちがいる。日本にも生活が苦しいという理由で自殺する人が毎年数千人もいるしホームレスの人もいる。他方ではまだ食べられる沢山の食糧、まだ使える生活用品や衣類も捨てられており、7軒に1軒は空き家であり、今後空き家はますます増加する。
多くの国民は少子高齢化で自分たちの老後に不安を持っている。また近い将来AI/ロボットが人の雇用を奪うから自分たちは失業するのではないかという不安もある。AI/ロボットが活躍してくれればますます物余りとなり、政府がそれに対応した経済政策を実行すれば、人は有り余った物をふんだんに使うことができるようになり「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会ができあがるのである。
その第一歩がミニマムサプライだ。通常は「まだ食べられるのに」又は「まだ使えるのに」捨てていた食料品・物を集め国営商店で無料で配布する。そこに入れる人達を事前に登録し顔認証でその人達だけ必要な量だけ持って行ってもよいと許可する。最終的には全国規模で国営商店は設置することになるが、最初は試験的に様々な条件を考慮し空き家の多い地方に特区をつくり始めることも考えられる。無料の商品は自動運転トラックが巡回して無料の物資を必要な人の所へ運ぶこともできる。高齢で通常の仕事に従事することが困難な人でも、自宅に近接した畑で自分たちが食べるための野菜を育てることはできるかもしれない。地方の活性化にも役立つ可能性がある。都会で生活保護を受けながら毎日を過ごす老人にとって、このような環境の方が生きがいを感じるかもしれない。また非常に安く生活ができる環境であれば、生活保護費は安くてもよい。
無料の国営商店が増えてくれば小規模小売店は経営が難しくなる可能性がある。またアマゾンなど通信販売の普及もそれに拍車を掛ける。さらにAI/ロボットが雇用を奪う。そのようなとき、労働者を適切な職場へ移動させることが重要である。例えば介護の現場では人手不足だ。特別養護老人ホームに申し込んでも入れなかった入所希望者が36万人いると厚生労働省は発表した。介護ロボットの開発は重要だが、それができるまで人手を増やして対応するしかない。「労働はロボットに、人間は貴族に」という目標の下、人間が快適な生活を送れるよう経済システムも根本から変える必要がある。介護がロボットで行われるようになるのは相当先だろうから、取りあえず介護は人海戦術で対応するしかない。
どんなに生活が困窮しても、年老いて介護が必要になっても安心して生活できる社会をつくるべきであり、それが経済発展というものだろう。GDPを増やせば良い、国の借金を減らせば良いというものではない。物余り、住宅余りの時代にそれができないわけがない。我々が目指すべき理想の社会では、生活必需品は無料で手に入り、赤ちゃんから老人まですべての人が生活できるだけの収入を国から保証される。他人にあるいは社会に貢献すればその貢献度に応じた収入を余分に得るという仕組みがあるとよい。自由放任にしておけばAI/ロボットを駆使した独占企業が利益を総なめしてしまう。そのような企業は人を雇わないからお金がそこに滞留してしまうが、そこで国が介入し国民へとお金を還流する。これは究極の物余り社会に適応する全く新しい経済学であり、発想の大転換が必要となる。
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コメント
今晩は。higashiyamato1979です。つくづく物不足か物余りかで大きく発想を転換させる必要があるのですね・・・。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年11月11日 (土) 17時04分