前近代的な「物不足の時代の経済学」が国を滅ぼす【1】(No.272)
当然のことながら物不足の時代には、闇市なども出てきて、ハイパーインフレも起こりやすいが、現代のような物余りの時代にはそれはあり得ない。政府や日銀の見解を見てみよう。
質問主意書の答弁書:内閣衆質190第39号 2016年1月22日
ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。
極端な物不足の時にしかハイパーインフレは起きないから現在の日本では起きないと言っている。一方で日銀総裁の見解は異なる。
2011年3月2日白川氏の発言
国債を買い続けると何が起きるのかと山本幸三衆議院議員に聞かれ『我々が今目的としていますことは、物価安定のもとでの経済の持続的な安定ということであって、インフレあるいはハイパーインフレを起こすということが目的ではありません』と答えた。
白川元日銀総裁は国債を日銀が買っただけでハイパーインフレが起きると考えたようだが、物余りの現代に通用しない経済学しか知らない悲しさであり、実際黒田日銀総裁が国債を買い続けたがインフレは起きなかった。終戦直後の深刻な物不足からくるインフレを連想しているのだろうが、現代は物余りの時代であり全く時代錯誤の経済学だ。
現代は人類がかつて経験したことがない物余りの時代に入っている。アメリカではほぼ1650億ドル(17.8兆円)、もの食糧が毎年破棄されており、これは国で生産するすべての食糧の半分に相当する。そしてまだ食べられる食品の40%が捨てられる。他の先進国でも同様だ。住宅も余っている。日本の住宅総数は世帯数より16%多い。つまり住宅を建てすぎたのにまだ小さな新築住宅がどんどん建てられている。また団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」では大量の持ち家が空き家になるか、中古住宅市場に大量に放出され資産デフレが進行する可能性がある。
筆者が提案するのは、ミニマムサプライという考え方だ。財政を拡大し、全国に国営商店をつくり、まだ食べられるのに捨てている食糧、使えるのに捨てている物を生活困窮者に無料で配布すること。また地方には空き家、空き地が多く存在し、それを国の費用で無料または非常に安い家賃で生活困窮者に提供し、その近くに無料の国営商店をつくる。固定の国営商店でなくても、自動運転車で該当する家を巡回するトラックでもよい。
ミニマムサプライは、うまく制度設計を行えば、生活困窮者を救い、国が最低限の生活を保障してくれるという安心感を国民に与え、地方の活性化、空き地・空き家の有効利用、生活保護費の削減、捨てられていた物の有効利用などが同時に可能になる。ベーシックインカムより生活困窮者には手厚い保護となり、しかも財源も少なくて済む。もちろん、財政拡大が必要となるが、物余りの時代激しいインフレなど起こりようが無い。物不足の経済学を捨て、新しい経済学の下、思い切った財政拡大でデフレ脱却を目指すと良い。
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コメント
今晩は。higashiyamato1979です。「日本はハイパーインフレにならない」・・・この常識を周知徹底する必要がありますね。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年11月11日 (土) 17時07分