無料低額宿泊所とミニマムサプライ(No.277)
物が溢れている時代に我々はいるのにも拘わらず、一方で生活困窮者がいる。溢れた物を集めて国営商店を通じて生活困窮者に配布するシステムが筆者が提案するミニマムサプライだ。このことはすでに以下で説明した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-240c.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/no262-a489.html
生活困窮者に対する支援は生活保護やフードバンクなど様々な形で行われているが、これらを統合しシステマティックに効率的に行うべきだというのがミニマムサプライの考え方だ。
食糧や生活必需品に加え考えなければならないのが住居である。これに関して無料低額宿泊所というものがある。これは1951年に受け入れ開始し生活困窮者のために無料、または低額で住む場所を提供する社会福祉事業である。個室の床面積は7.43㎡以上、使用料は月5.37万円以下と定められている。しかし現実は生活保護費のピンハネが横行、劣悪な居住環境になっている場合が多くある。現在首都圏を中心に全国537カ所、入所者1.56万人、生活保護受給者 1.41万人となっている。国が定めた基準を満たさず、生活保護費をピンハネするケースがあり問題になっている。
男性Aの宿泊所の例:
木造階建ての空き家をベニヤ板で区切り30人が暮らす
月額約13万円の生活保護費の9割を居住費と食費として徴収される。
一方で、うまくいっている例もある。例えばさいたま市のNPO法人「ほっとポット」である。空き家の戸建て民家16軒を使った施設を運営している。計69人の高齢者らがグループホームの形態で生活し、全部屋個室である。社会福祉士が継続的に訪問し、専門性のある生活支援も行い、個々の能力に応じた生活安定を目標に生活支援もする。
このような成功例をベースにして、国が空き家を買い取って、無料宿泊所を提供するとする。食糧や生活必需品等は無料の国営商店から調達する。このようなシステムを最初は小規模につくり成功実績ができれば全国に広めることにより、生活保護費に多少プラスした程度の費用で多くの生活困窮者が救えるのではないだろうか。
2017年2月現在、生活保護を受けているのは163万世帯、214万人であり全体の1.69%である。生活保護費は総額3.7兆円でその約半分は医療費となっている。ベーシックインカムとして一人当たり毎月1万円配るとすると、年間14.4兆円が必要となるが1万円では暮らせない。生活困窮者にはあまり助けにはならない。中流階級の人には少し助けにはなるのだが、財源が税金だとすればプラスマイナスゼロだ。いや税金で徴収する費用と1万円を配布するために莫大な費用がかかることを考えればトータルでは大きなマイナスだ。
食糧配布、生活用品配布、住居提供を生活保護費を活用しながら効率的なシステムを確立すれば、生活困窮者を救う強力な手段となるし、増え続ける社会保障費の効率的な運用にも繋がる。これをベースに「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会を構築していけばよい。
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コメント
今晩は。higashiyamato1979です。こういう議論を野党はもっとするべきですね。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年12月14日 (木) 18時49分
社会保障費かさんでいる現在、生活保護はもう限界。
役所の人員も増やせず、無理です。そんな中、ミニマム
サプライなどの方策の導入が必要です。
投稿: | 2017年12月16日 (土) 13時45分