円が信用を失いビットコインに置きかわる日が来るか(No.279)
ビットコインの高騰が続いている。これは投機であり、いずれはビットコインの価格は元に戻るという説はあるが、そうではない可能性も否定できない。現在人は円を売ってビットコインを買っているからビットコインは高騰している。逆の見方をすれば円はビットコインに対し暴落している。将来、ビットコインがどの店でも使えるようになり、円が使える店など無くなってしまうことはあるのだろうか。
加藤出氏が訪れたストックホルムのラーメン屋には、「現金は使えない」という説明書きがあったそうだ。フィンテックを用いたキャッシュレス化が進んでいるのだ。もちろんこれはビットコインの話ではないのだが、スマホをかざすだけでどんな支払いでも可能であれば、円であろうとドルであろうとユーロであろうとビットコインであろうと関係無い。むしろ世界中どこでも使える通貨であれば何でもよいだろう。加藤氏が訪れたスエーデンでは名目GDPに対する市中現金流通額の比率は僅か1.4%にすぎない。つまり現金はほとんど使われなくなったということだ。
もちろんすぐに円がビットコインに置きかわるわけはない。進むとしても置き換えは徐々にということだ。現在全世界でのビットコインの時価総額は30兆円だというからまだたいしたことは無い。それでも2009年の頃から言えば1千万倍くらいにビットコインは値上がりした。ビットコインが使える店が増えてくると物の値段が円表示だけでなくビットコイン表示もされるようになる。ビットコインの値段は激しく乱高下すると思うかも知れないが、ビットコインの側から見れば円の値段が激しく乱高下しているのだ。例えばあなたの家の価格は円でみれば比較的安定しているが、ビットコインでみれば激しく乱高下しながら暴落しつつある。ビットコインがどの店でも使えるようになり円を使う人が減ってくると、人は徐々に不安になってくる。ビットコイン表示の自分の家の価格が暴落を続けているからだ。家だけでなく、株も銀行預金も現金も同じだ。
そうなってくると自分の財産をビットコインに替えておこうとする人が増えるからますますビットコインは高騰を続ける。日本人全員が大部分の円をビットコインに替えたころには、ビットコインの価格は安定してくる。そして使わなくなった円は日銀に戻っていき、日銀は役割を終える。早く財産をビットコインに替えた人は財産を増やし、遅れた人は財産を失う。例えば家を売り、その代金をビットコインに替え、そのビットコインで直ちに家を買い戻したのであれば、税金や交換手数料で損をするだけだろう。得をしたければまず家を売ってすぐにビットコインに替えそのままビットコインを持ち続けなければならない。待っている間にビットコインが高騰しビットコインで表示した家の価格が暴落した後に家を買い戻せば、元の家よりはるかに立派な家が買えるのである。
例えば円の暴落を防ぐために政府がビットコインの取引に厳しい規制をかけ、ビットコインが暴落する可能性もある。この場合はビットコインを持っている人は大損をする。財産が一夜にして消える可能性もある。ビットコインの売買にタッチしなかった人にとっては、損も得もなく高みの見物である。もしビットコインが広く使われるようになった後で、ある日突然ビットコインの取引禁止を政府が宣言するようなら大混乱を引き起こす。このような経済的混乱を政府は避けるだろうから、一気に取引禁止にすることはないだろうがジリジリ取引をやりにくくして日銀を救うことは考えられる。
日本政府にとっては、円が使われなくなると国の借金も意味をなさなくなる。国債の価値もゼロになるから国の借金も消滅する。ビットコインに対する円の暴落後は税金もビットコインで徴収する。極限まで円が暴落したら、円がビットコインに交換できなくなる。そうすれば国債を発行して歳入を確保することもできなくなり国は通貨発行権も失う。ビットコイン建てで財政赤字が蓄積すれば財政破綻の可能性も出てくる。そこまでビットコインに支配された経済を国が許すわけがないだろう。対抗して日本政府が独自の仮想通貨ニホコインを発行して、資金を調達するICO(Initial Coin Offering)を行ってビットコインに対抗するかもしれない。1ニホコイン=1円に固定する。これなら日本政府が発行するのだから、ビットコインよりも信用される。国民の信認が得られれば日銀の保有する国債をすべてニホコインに置き換えれば、国の借金は激減する。
しかし国際間の取引でできるようにするには海外でもこのニホコインが受け入れなくてはならない。仮想通貨はどこの国でも発行したくなるだろう。アメリカもアメコインを発行し、1アメコイン=1$とするだろう。これによりニホコインとアメコインの交換レートは変動することになる。これがビットコインとの違いだ。ビットコインが世界的に唯一の共通通貨として使われ始めたとすると世界各国の政府は通貨発行権を失い、為替変動という自由度も失ってしまう。つまりユーロ加盟国内で例えばギリシャの債務問題のような問題が世界中に広がってしまう。そのような問題を避けるという意味でもビットコインが円に取って代わるようなことはあり得ない。つまりビットコインの値上がりはどこかで限界を迎えるということだ。現在ビットコインの通貨としての役割は後退したと言われる。これはビットコインの高騰で送金手数料も上がってしまったからだ。もちろん送金手数料を下げればまた通貨としての役割が増す。
ニホコインを発行するのは日銀か政府かという問題がある。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の第4条には貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属するとあり、第5条には貨幣の種類は、500円、100円、50円、10円、5円及び1円の六種類とするとある。ここにニホコインも書き加えればニホコインは政府貨幣となりその発行益が歳入に計上される。通貨を政府が勝手に発行すると激しいインフレになるという意見がある。しかし激しいインフレは物不足の時代にしか起こらない。物余りの先進国が深刻に考えなければならないのはデフレをどうやって防ぐかだ。政治家を見渡しても緊縮をやりたい政治家がほとんどで、激しいインフレになるほど財政出動をしようとする政治家はどこにもいない。つまり通貨を政府が自由に発行できるようにすれば激しいインフレになるというのは幻想にすぎない。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。「今はモノ余りの時代なんだ。日本はそれに加えて極端なデフレなんだ」と事有る毎に訴えていかなければなりません。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2017年12月24日 (日) 15時58分