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2018年7月

2018年7月30日 (月)

石破さん、財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないのですか(No.312)

かつて石破氏はTBSの時事放談で「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言した。政府はデフレ脱却ができていないのに来年には消費増税を行ってデフレ脱却を更に困難にしようとしているのは、ハイパーインフレを恐れているからだ。ハイパーインフレは極端な物不足のときしか起こらない。

現在ハイパーインフレになっているのはベネズエラである。IMFによるとインフレ率は年内に100万%に達する可能性があるそう。日本は国の借金が大変だと言うが、国の借金のGDP比はハイパーインフレとは全く関係無い。実際ベネズエラの債務のGDP比は僅か35%であり、日本の236%より遥かに低い。ベネズエラのインフレの原因は深刻な物不足だ。スーパーの棚は空っぽで、長時間並んでも食糧も医薬品も手に入らない。いくら高くても良いから手に入れようとするからどんどん値段が上がる。国内にいては何も買えないから国民は大量に国外へと逃げる。

日本も石破氏の言うように財政規律を緩め積極財政をするとそうなるのか。スーパーもデパートもコンビニも百円ショップも棚は空っぽになり、日本国民は食糧を求め、難民として中国やロシアに逃げることになるだろうか。大災害などの理由で全国の生産設備が壊滅的な被害を受け供給が停滞すればそうなる可能性はあるかもしれないが、財政規律が緩んだ程度ではそのようなことは起こらない。財政規律が緩めば需要が増えむしろ生産活動は活性化するだろう。日本は外貨をたくさん持っているから輸入はいくらでもできる。中国や米国の工場が生産しきれなくなるほど日本の需要が増えるということはあり得ない。そんなことも分からない石破さんを次の総理にしてしまったら悲惨なことになる。

先日長谷川陽一という方からメールを頂いた。内閣府の知的財産戦略推進事務局から、今年2月に『「知財創造教育」の実施に向けた取組状況』という資料が出された。  https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/sangyou/dai3/siryou3-2.pdf
この2頁に20世紀は需要が供給を上回っていた時代だが、21世紀は需要が供給を下回っている時代なのだそう。これが政府の認識なのだろうが、それは違う。20世紀は毎年財政規模を拡大していたから需要が供給を上回り経済は発展していたが、21世紀は財政規模を拡大しなくなった結果需要が供給を下回るようになり、不況が続いているという表現が正しい。インフレ目標を定めたのだから、インフレ率がそれを下回れば財政を拡大し、上回れば財政拡大率を押さえるようにすればよいだけだ。今は需要を増やさなければならないときなのに、消費増税を行うなど正気の沙汰とは思えない。

これからはAI/ロボットが人間から職を奪っていく。職を奪われれば収入が絶たれ需要はますます減っていく。この状況をただ指をくわえて見ているだけの政治家などいらない。

政治家よ、頭を冷やせと言いたい。アメリカは好景気なのに大規模減税、大規模公共投資をやっているのに、誰もハイパーインフレになるぞなどと馬鹿なことは言ってはいない。超積極財政による好景気で米国国民は潤っている。日本は世界で際立って成長率が低いのであり、今積極財政に転じればその効果は絶大である。

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2018年7月24日 (火)

日本経済を活性化するエネルギー政策とは(No. 311)

2018年7月の日本は記録的な豪雨の後、凄まじい猛暑に見舞われた。温暖化が進む中、このような災害は規模を拡大しながら繰り返しやって来そうな気がする。それを少しでも食い止めるためにCO2削減は待ったなしだろう。かつては日本の太陽光パネルは世界を席巻していた。2006年まではシャープが世界シェアトップで京セラ、三洋電機、三菱電機などの日本メーカーが続いていた。しかし2017年には、上位は中国や韓国のメーカーで占められ、トップ10の中に日本メーカーはいない。日本のメーカーが投資を躊躇している間に、海外のメーカーにシェアを奪われたのである。シャープの液晶への投資の失敗の印象が強烈だったのだろう。

世界各国の政府は自国の企業を守ろうと必死なのだが、日本だけは自国産業を犠牲にしてでも財政健全化をしようとする。デフレ経済で財政健全化しようとしても企業は弱体化し国民は貧乏になるだけなのだが。中国は再生エネルギーを固定価格で買い取る制度で、大規模な太陽光発電設備を建設したお陰で、中国企業は太陽光パネルにおいて圧倒的な競争力を獲得した。ここにも日本経済衰退の縮図が見えてくる。

我が国のコスト等検証委員会は1kWhあたりの発電コストを2014年原子力は10.1円、太陽光は29.4円、風力は21.6円、天然ガスは13.7円としたのに対し、2030年になると原子力は10.3円、太陽光は12.5~16.4円、風力は13.6円~21.5円、天然ガスは13.4円としている。要するに発電コストは2030年になっても下がらず、相変わらず原子力が一番安いと言いたいようだ。

一方、海外に目を向けると国際再生可能エネルギー機関(IRENA)はすでに太陽光や風力が最も経済的になりつつあると述べている。太陽光発電や陸上風力発電では3セント(3.3円)という低価格で入札が成立する場合が出てきたとのことだ。電力コストは産業の基礎となるのであり、ここまで圧倒的な差を付けられれば日本経済にとって大きなハンディになるのではないか。海外では労働コストが安く、しかも風が強かったり、砂漠のように太陽光発電に適したりする場所がある。

例えば樺太や北方領土のように風力発電に適した場所で大規模風力発電所を建設し、電気を直流送電で日本に送れば良い。北海道から九州まで直流送電で結び融通し合えば、電力供給が安定してくる。東日本大震災の際には、なぜ東と西で電力の融通ができないのかと日本中が嘆いたものだ。直流送電ならこういった問題も一挙解決するし、海外から電気を安く輸入することも可能となる。

また地球上の一部で太陽光や風力で安く電気をつくることができるのであれば、そこで電気を水素に変えたり、水素をトルエン等の有機物に化合させて有機ハイドライドの形で輸送・貯蔵したりできれば安い水素を大量に日本に運ぶことが出来る。水素で燃料自動車を走らすこともできるし、電気が足りなくなった時に発電に使うこともできる。これらは技術的に日本が得意とする分野であり、思い切って投資し開発をすれば世界をリードすることができる。太陽光パネルや風力発電の技術など、日本は競争に負けてしまったけれど、どこか確実に勝ち続けることができる分野をしっかり押さえておく必要がある。その意味で日本の得意とする分野に大規模に投資し、世界を席巻し続けるべきだしCO2排出量削減という意味でも日本は世界の先頭に立つべきである。

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2018年7月12日 (木)

内閣府計量分析室に電話して中長期展望について聞いてみました(No.310)

内閣府計量分析室に電話して2018年7月9日に発表された『中長期の経済財政に関する試算』について質問した。

Q 消費増税のお陰で2019年度と20年度の物価がかさ上げされるはずで、半年前の予測では確かに物価ははね上がっていた。物価上昇率は2018年度は1.1%だが2019年度は2.1%にはね上がっていたが、今回の発表では2019年度は1.5%に下がっている。これはなぜか。

A それは政府経済見通しの方で置いている前提なのだけど、消費税増税にあわせて幼児教育の無償化というのが実施される予定でして、それが消費者物価を0.3%ほど引き下げると政府経済見通しでは見込んでいるということです。19,20でそれぞれ0.3%です。試算では0.6%だけ下がったわけで、残りの0.3%は政府経済見通しが下方修正された事から来てます。

Q 2020年も下方修正されてます。

A そうですね。足下の傾向も引きずって2020年も下方修正されました。

Q 具体的に下方修正の原因となるものがあったということですか。17年も18年も下方修正されているんですよね。例えば実質GDPを見ても2017年度も前回1.9%だったのが1.6%というように全般的に下方修正されていますね。2018年も前回1.8%だったのが1.5%に下がっている。

A そうですね。2017年度はGDP速報からの修正があって、実績が速報より下がっていたということになります。

Q 17年、18年は全体的に下がっていますね。

A はい。成長率に関してはそうです。

Q これは特殊要因があったりしたのですか。

A それは政治経済見通しでやられていて、詳細は知らされていない。

Q 部門が違うので、自分の担当でないということですか。

A そうです。知らされていないということです。

Q 10年以上前からさかのぼって見ると、だいたい下方修正するんですね。どうせ毎回下方修正するくらいなら、もともとズバリこの位だという予測を出した方がよいのではないですか。毎回過大な見通しを出しておいて、毎回下方修正をするというのはみんな知ってます。そんなことをやらずに、もともとこんなものだと出すわけにはいかないのですか。どうせすぐ下方修正するんだと政治家を含めみんな思っていますよ。天気予報だって今日は晴れと言っておいて、いつも雨が降ってくればみんな怒りますよね。

A はい。

Q その年の成長見通しくらいはだいたい分かるでしょう。民間でも出しているのがあります。日経新聞が民間のデータをまとめていますよね。

A はい。そうですね。

Q ESPフォーキャストというのがあって40くらいのフォーキャスター(機関)の予測の平均が出ています。比べてみると、そちらのほうが、内閣府試算よりよほど正確です。内閣府の予測は毎回大変上振れしています。これを正しい予測にしておかないと、政府として困るのではないですか。そうしないと正しい政策が出せないと思いますが。

A そうですね。政府経済見通しがどういった目的で作られているかということが重要なところになってくると思います。毎回はずしているようじゃあ政策へのコミットメントが弱くなるのではないかと思います。

Q 政府経済見通しが出される目的は知らされていないのですか。これは予測ではなく目標だと宣言するのならよい。でも目標だけでなく、予測も出して欲しいですね。

A そうですね。

Q いつも過大な成長予測を出しておいて、その後直ぐに下方修正をするのはおかしいのではないかと思います。これでは日本経済はよくならない。改善しようよと内部から声を出して欲しいですね。

A そうですね。

Q 来年消費増税をする予定なのですね。そうすると実質GDPは落ち込むだろうなと考えます。前回の2014年のときも落ち込みました。半年前の予測では落ち込むという予測が出ていました。17、18に比べ19,20はガタンと落ちていました。今回は落ちてない。どうしてですか。民間のESPフォーキャストも実質成長率ですが2019年は0.8%、20年は0.76%というようにかなり落ち込むという予測を出しています。ところが内閣府では1.5、 1.4と出している。こんなに成長しないと我々は素朴に思うのですが如何でしょう。

A 2020年に関しては消費が少し弱くなっていると言うことはあります。

Q この位の落ち込みですむんですか。

A 政府としては駆け込み反動とかという影響を最小限に抑えるために特別な措置を講ずると骨太方針にも書かせて頂いている。それがどれだけの効果があるのかということは実際やってみなければ分からない。政府としては対策を行う予定ではあります。

Q 2014年のときは消費増税でほとんど落ち込まないという予測を出しておられた。しかし実際はガタンと落ち込んだ。5兆円の経済対策を出すのでこれは落ち込みを大きく上回る規模だと言っていた。財務省のホームページにも今でも書いてあるし、大臣もそう言っていた。しかし大きく落ち込んだ。

A そうですね。

Q 2014年の消費増税の前に、民間のESPフォーキャストは消費増税で景気は大きく落ち込むと予測していた。やはり民間予測のほうがあたった。だからESPの方が全然あたるじゃないかと素朴に思います。

A はい。政府見通しは当てにいっているのではなく、アベノミクスが上手くいったらこうなるという試算をお示ししています。

Q アベノミクス、つまり安倍首相に忖度して、首相の言う通りになったらいいなという首相の願望に沿ったものを出していると言うことですか。

A まあ、ある意味、うまくいったらということです。ベースラインでは現状のままではどうなるかというアベノミクスがうまくいかなかったらどうなるかという場合も出しています。

Q やはり消費増税は経済に大きな打撃を与えていますから、それを理解していただきたい。対策をしたつもりかもしれないが、2014年のときもこれで十分だとアナウンスしていたのですが、全然足りなかった。

A そうですね。

Q 今回も同じではないですか。もちろん希望的観測をお持ちかもしれませんし、私も希望的観測を持っていますが、現実はそんなに甘くなくて落ち込んでしまうのでは無いですか。

A おそらく2014年のときのような対応をすれば、同じような落ち込みをするだろうという危機感を持っている方は政府の中にも多くおられます。今回はその反省を踏まえて対策をしようということとになっています。補正、経済対策です。

Q 補正を組むのですか。予算案はでていますよね。100兆円を超えるとか超えないとか。4.4兆円の特別枠を設けるとか言っていますね。

A 消費税増税に伴う補正に関しては織り込んで計算はしてないです。

Q 2017年の歳出は98.1兆円になっていますが、半年前は99.1兆円と言っていましたね。下げてしまった。2018年は前回の発表と変わらない。2017年から少し下げた。2019年は99.0だから前回発表より少し増やした。4.4兆円の特別枠はここには反映されてないのですか。

A もう決まっているものだけ反映されています。将来のものに対しては反映していない。歳出がモデルの中でどのように決められているかと言えば、基本的には自然体での伸びと言います。賃金や物価に連動して増えるというような試算をしておりまして、賃金や物価が変わると歳出も微妙に変わることになっている。歳出改革といった努力を行う。19年度に関してはここだけは特殊で歳出改革は半分だけ織り込んでいる。それ以外はすべて自然体で織り込んでいる。

Q 歳出改革というのは増やす分も減らす分もあるということですか。

A 具体的には、予算のシーリングですかね。

Q シーリングは設けないと言ってなかったですか。

A 将来に関しては設けない。来年度予算では大まかな上限みたいなものは決められているかと思います。そういったものが歳出改革努力ですね。社会保障費を抑える、そうしたものを半分織り込むのが19年度です。夏試算は半分織り込むとして試算を計算しています。

Q 補正があるかもしれないと考えているのですか。

A 補正は決まっていないから織り込んでいない。

Q 2017年度の歳入が上振れしていたのですね。だからそのお金を使っていいというわけにはいかないのですか。

A 実際の政策はどうなるかということは分かりませんが、試算上は歳入が増えたからと言って歳出を増やすということはせず、歳出は物価などの伸びに従って伸びてていくという形にしています。

Q 新聞だと2019年度予算の100兆円超えは確実と書いてありますね。

A 特に報道などには左右されません。試算は試算の中で完結しています。

Q 長期金利ですが全般的に下げ気味ですよね。

A そうです。物価が足下低くなったために、日銀の2%の物価目標がうしろにずれてしまった。それで試算の前提では物価が2%ほどにいったときに0金利は止めるということにしていまして、0金利を続ける期間が長くなってしまって、金利が発射するタイミングが遅くなったのでちょっと低くなってしまった。

Q この試算で潜在成長率がかなり重要なパラメーターになっているということでしょうか。

A そうですね。この中長期試算というものは、経済財政モデルというもので基本的には、潜在成長率、まあ供給、潜在成長率が長期の成長を決めると言うことで、GDPとか実質GDPとか、実質GDP、まあ需要面が結局潜在成長率に収束するというみたいなモデルになっておりまして、ある意味経済のあすを作っているのはこの潜在成長率です。

Q 1982年から87年の潜在成長率は前回の発表では0.8%だと言っていたのに今回は0.9%になっているのですが、なぜ上がったのですか。

A TFP上昇率ですね。潜在成長率は別の部署で計算するのですが、国民経済計算の基準会計というものが2年前にありましてR&Dを含めるといったことがありました。それが今まで94年までしかなかった。それが82年まで伸ばされた。こうした影響で、潜在成長率自体は変わらない。潜在成長率は労働と資本とTFPで決まるが、資本がR&Dを含めることによって大きくなった。そうすると潜在成長率も大きくなった。

Q 以前聞いた話では、昨年夏の試算だと2019年度の潜在成長率は2.4としていた。それを今年の1月の試算では2.0に下げたと聞いています。今回の試算ではどうなっていますか。

A 半年前の試算と同じ2.0です。

Q 潜在成長率を下げた理由は何ですか。

A 経済財政諮問会議の委員から下げるように意見があったので下げました。

Q 経済財政諮問会議では具体的にモデルで計算しているのですか。

A 中長期試算というものは、経済財政諮問会議の求めに応じて作られているものなのですが、昨年12月の諮問会議において、伊藤元重委員からもっと形式的なパスにしたらどうかという御指摘を頂きまして、ちょっと潜在成長率を下げました。

Q 彼はモデルを走らせて計算したということなのですか。

A そういうことではなくて、試算をご覧になってということです。

Q 試算をご覧になって成長率が高すぎるから、低くしろよと。

A そうですね。

Q 成長率を下げるには潜在成長率だけではないと思います。潜在成長率をそういう使い方をしていいのかなと思うのですが、潜在成長率を下げれば成長率も下がるからいいじゃないかというのは単純すぎる気がする。それより過去10年か20年のデータにフィットするようにパラメーターを定めて、将来の予測をしたほうがいい。単なる一学者の勘に頼るより良いのでは無いでしょうか。伊藤先生から言われたから下げましたというのでは、モデルの計算にならない。鉛筆なめなめでやってるだけじゃないかということになります。

A そうですね。供給力を過去の実績に基づいていますからいいのではないかと思いますが。

Q 供給力と言いますが、本当に供給力で頭を抑えられているのか、みんな消費しないのは供給力が無いから消費しないのではなく、むしろ将来不安があるから、将来大増税があるのではないか、国の借金がこんなに大変だから、少子高齢化で自分たちの年金がもらえなくなるのではないかとか、色んな不安を日本人が持っている。だから消費が伸びない。政府がそういう心配はいりません。政府が保証しますから大いにお金を使って下さいといい、政府自身がどんどん使っちゃうということをする、例えば田中角栄みたいにやれば需要が出てきて、物価が上がりデフレから脱却でき、潜在成長率も上がってくる。

A そういう考えもあると思いますね。

Q 増税をやって国民はお金使うなと言うと国民はお金を使わない。そうするとだんだん経済が小さくなっていき貧乏になっていく。そういう経済にしないほうがいいのではないですか。日本の財政を見ても、財政規模が拡大していない。経済規模は財政規模でほとんど決まって財政が伸びない限り経済も大きくならない。実際財政支出をどの国でもどんどん伸ばしている。日本はちょっと景気対策をして直ぐ止める。そしてまた減らす。それを繰り返しているからいつまで経っても経済は大きくならない。歳入にしても26年前のレベルを超したとか言ってますが、他の国で26年前のレベルにやっと到達したという国は他にあるでしょうか。26年前に比べると何倍にもなっている、最低何十パーセント増えてるということで日本ほど歳入が伸びない国はない。これは政策の大失敗で国民がお金を使わないから歳入は伸びない。結局それは歳出を伸ばさないからだと思うのですが。

A はい。

Q 全要素生産性は足下では0.6でそれが1.5まで上がるのですか。

A デフレマインド解消で5年間で0.9%上昇で1.5%にまで上がると考えています。

Q 5年間で均等に上がっていくのですか。

A そうですね。機械的ではありますが、均等に上がっていくと考えています。

Q 上がっていく理由は何でしょう。

A これは仮定ですが、アベノミクスによる政策効果が発現したらデフレ前の姿に戻るだろうということです。

Q ということはこれまではアベノミクスでもデフレマインドは払拭されなかったということですか。つまりこれまではアベノミクスは失敗しているということですか。

A はい。TFPでみればこれまではそれほど上がっていないということです。これからの5年間で発現するということです。

Q 期待ですね。言ってみれば忖度と言えるかもしれないですね。

A そうですね。

Q この試算はマスコミも大きく取り上げるし、政府ももっぱらこれに頼っている。だからもっと正確な予測を出して欲しいという希望はあります。だから例えばESPフォーキャストを参考にしてほしい。過去の予測を比べてみれば、あちらの方がはるかに正しい予測を出している。あれを上回るような精度にしてほしい。政府が目標を出すのはよいのだけど、実際はどうなるだろということで、やはりESPを上回る精度で出して欲しい。気象庁でもどんどん精度は上がっている。大型コンピュータを駆使してもよいし、人工知能で判断させてもよい。ビッグデータを集めてできるだけ誤差を少なくして欲しい。誤差が大きいと政府が道を誤る。消費税増税をやって、あれは失敗だったと言うだけではすまない。国民はどうなるのか。他の国は成長しているのに日本だけはどうして成長しないのか。結局緊縮をやっているから、これにつきますね。他の国は歳出を増やし続け経済をどんどん拡大させている。

A アベノミクスで重要なのはまずは経済再生。そして財政の健全化も進めていくのが一番理想的ではあるのですが。

Q 財政健全化という意味ですが、債務のGDP比が減れば、財政健全化と言えるのではないか。プライマリーバランスが気になりますか。

A プライマリーバランスは政府が一番コントロールできるものです。

Q コントロールできないですよ。コントロールできるのであればもうとっくに黒字化しているはずです。小泉さんのときも2011年度黒字化するとして一生懸命やっていたけれど実際2011年度は大赤字だった。それで2020年度に延期してまた一生懸命やっていましたがコントロールできなくて無理ということになり、更に2025年に伸ばし、更に2027年へとズルズルと後へ伸ばしている。結局プライマリーバランスは政府がコントロールできない。

A 現実はそうですね。

Q 歳出を減らすとプライマリーバランス黒字化すると誤解している人がいます。しかし歳出を減らして歳入は増えない。GDPは減る。むしろ歳入は減るかも知れない。だからいつまで経ってもPBは黒字化しない。モデルで計算してみると分かりますが、逆に思い切って財政を拡大すると歳入が増えます。意外と財政健全化は財政拡大のほうが余程早く達成できる。他の国はPBなど気にしていません。ほとんどの国はPB赤字です。PBを黒字化しようという国は聞いた事無い。トランプさんもPBを黒字化しようとしていない。大規模公共投資、大規模減税で財政赤字は拡大、でも国民の支持はそれほど落ちてない。貿易戦争は支持できませんが、すごい積極財政ですよ。

A そうですね。

Q 失われた20年、デフレ脱却には何をすればよいのか。日本も積極財政をすべきではないのか。財政拡大でインフレ率は上がってきます。

A はい。そうですね。なかなかこの辺が難しいところです。財政を増やすにしても今までのような純粋なバラマキではいけなくて、やはり乗数効果を考えて、効果のあるものを選んでやる必要がありますね。それができれば、財政にもよい影響があると思いますし経済にもよい影響があると思います。

Q 内閣府は2010年度までは乗数を出していた。そこから乗数を計算しなくなった。それを見て政治家は何をやれば良いかが分かるわけですから是非出して欲しいですね。

A 我々としてもそういう希望はあるところであります。

Q 計算しようと思えば簡単に計算できるわけですから出せばいいじゃないですか。中でそういう運動を起こして下さい。是非出して下さい。

A はい。

Q 有り難うございました。

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2018年7月 9日 (月)

内閣府計量分析室は今年の夏もオオカミ少年だった(No.309)

2018年7月6日に内閣府は経済指標を発表した。これは長年の年中行事になってしまったが、政府に忖度し一旦政府の意向に沿った過大な成長見通しを発表しておき、その後順次現実に沿った成長率へと下方修正するのである。今回の発表もやはり半年前に予測した成長率から大きく下方修正している。例えば2017年度の名目成長率は2.0%から1.7%へ、2018年度の名目成長率は2.5%から1.7%へと下方修正された。

このような忖度と下方修正はすでに十数年間繰り返されている。滑稽な話だが、内閣府はその年の成長率さえも正しく予測できない。これは気象庁が政府に忖度し「今日の天気」ですら、毎回間違えた予測をするようなものだ。以下に発表した年の名目GDP成長率の予測を示す。
        内閣府試算  実際の成長率
2007年度  2.0%   0.8%
2008年度  2.1%  -1.3%
2009年度  0.1%  -3.7%
2010年度  1.8%   1.1%
2011年度  1,0%  -1.9%
2012年度  2.0%   0.3%

すべてとてつもなく過大評価していることが分かる。2013年度以降は民間の機関の予測と比べてみよう。
        内閣府     ESP     実績
2013年度  2.6%   1.16%   1.8%
2014年度  3.3%   2.35%   1.5%
2015年度  2.7%   2.45%   2.8%
2016年度  3.1%   2.02%   1.0%
2017年度  2.5%   1.44%   1.7%

ESPとは日本経済フォーキャスター41人(民間機関)による予測の平均である。内閣府の予測の方が正確だったのは2015年度の1回だけ。つまり4勝1敗で民間の圧勝である。2015年度はアメリカのシェールオイル開発による原油価格の暴落でGDPが一時的に押し上げられたのだが、原油価格の暴落は誰も予測できなかった。通常ならOPECが生産調整し価格を維持するのだが、当時OPECは予想に反し米国のシェールオイル産業を潰そうとして減産しなかった。内閣府は政府に忖度しほぼ毎回過大な予測を出しでいるが、ESPはそのような忖度はなく、過大予測と過小予測が混じっている。この比較から明かである事は、内閣府の予測よりESPの予測の方がはるかに正確だということだ。そうであれば、内閣府に巨額の費用(税金)を払って、全くお粗末な予測を出す必要があるのかということだ。ESPの結果があれば十分だ。

これまではお粗末な内閣府の予測を基にして経済政策の立案がなされている。マスコミも経済評論家も日本経済の将来を語るときは必ず内閣府の予測をベースに論じた。しかし、内閣府の予測よりESPの予測のほうが、はるかに正確なのだから、今後はESPの予測をベースに考えるべきだ。政府の経済目標も、お粗末な内閣府試算をベースに立てられていたから、達成に失敗し無残な結果に終わっていた。ESPに切り替えればはるかに正確な予測が可能となり、政府目標の達成も可能となる。

政府(内閣府)は2019年度は消費増税があっても1.5%成長ができると主張している。またオオカミ少年がウソを言っているのである。これから実際起こることは、予想をはるかに超えた消費の落ち込みである。トランプが起こした貿易戦争の影響もあるし、オリンピック需要が終わることもある。失われた20年を止めデフレ脱却、インフレ目標達成、景気回復のためには来年の消費増税を撤回し、消費減税を実現し、十分な財政拡大をすることである。

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どうすれば労働生産性が向上するのか(No.308)

6月29日働き方改革法が成立した。失われた20年で日本の発展は止まったまま。これは労働生産性が伸びないからだと政治家は思っているのかも知れない。働き方を変えれば経済は成長するのだろうか。残業時間を減らして少ない時間で同じ生産量が確保できるなら生産性が上がるから成長するのだろうか。しかし、残業時間を減らしたら、給料も減るわけだから可処分所得は減り消費が落ち込み結果としてGDPは減る。

もしもデフレ脱却しGDPを増やしたいなら、残業時間を減らして給料を減らした分を何らかの穴埋めをして可処分所得を増やし消費を伸ばす必要がある。しかし政府がやっていることはその逆で、来年は消費増税を行い可処分所得を減らす政策だ。これに残業代を減らすと労働者にとってはダブルパンチだ。

筆者は1970年代から1980年代にかけて欧米の大学・研究所で素粒子論の研究を行っていた。この頃ドイツのテレビは時々日本経済の特集をやっていた。日本の奇跡の経済復興に注目が集まっていた証拠だろう。テレビでは「日本の会社では驚くほど休みも少なく長時間労働が行われている」という点にスポットが当たっていた。あんなに働けば経済成長もできると言いたいようだった。

1990年代の初めには日本の一人当たりの名目GDPは世界トップレベルだったが今や先進国で最低レベルにまで落ちてしまった。この原因が日本人が勤勉に働かなくなったとか、非効率は働き方になったからだとかと説明する人がいるかもしれない。あるいは生産年齢人口減少が原因と主張する人がいるかもしれない。ご承知のように失われた20年で日本の経済成長は急速に落ち込んだ。名目GDPと生産年齢人口と歳出の伸びを比較してみよう。
              名目GDP   生産年齢人口   歳出
1970年から1980年  327%    109%    492%
1980年から1990年  182%    109%    159%
1990年から2000年  114%    100%    129%
2000年から2010年   97%     94%    106%

GDPの伸びの急激な落ち込みは日本人の勤務態度などほとんど関係ない。この表で分かるように生産年齢人口の減少もほんの僅かであり、とても説明できない。歳出の伸びの急激な落ち込みと関係しているのは明かだ。かつてのように大幅に財政を拡大できるのだろうかと心配する人がいるかもしれない。そんなに心配なら10兆円、20兆円、30兆円・・・と徐々に財政拡大幅を増やしていけばよい。物価の動向を注視し、行き過ぎないよう配慮すればよい。ただし、これまでデフレが続いていたのであり、適正な物価水準を取り戻すにはある程度高めのインフレ率を目指した方が良い。

日本はすでに成熟した経済なのでこれからはそんなに大きく伸びないと決めつけている人もいる。しかし一人当たりの名目GDPを国際比較しても現在の水準は1970年代か1980年代のレベルにまで逆戻りしていて、まだまだ未熟な国家のレベルである。成熟した経済でも成長しないわけではない。1990年頃スイスとルクセンブルグは日本と共に一人当たりのGDPで世界のトップを争っていた。次に示すのは内閣府の国民経済計算報告(昭和30年~平成10年)であり一人当たりの名目GDPにおいて1993年と1994年、日本が世界一であった。

302



2017年になると一人当たりの名目GDPは
日本              38439ドル
スイス             80590ドル
ルクセンブルグ    105803ドル
となっており、間違えた経済政策のお陰で日本はここまで貧乏になってしまった。日本より遥かに成熟したルクセンブルグやスイスも現在でも力強く成長を続けているのであり、経済政策を改めれば日本も今後大いに発展できる。

ルクセンブルグは年率4%~5%で成長している。アルセロール・ミッタルという世界最大の鉄鋼メーカーの本社はルクセンブルグにある。スカイプやeBay、アップルなどを筆頭として数多くのインターネット関連企業が本社機能をルクセンブルグに移転した。ユーロ圏における金融センターとしての役割を果たしている。外国の巨大企業が集まるのは税率が低いことと、様々な言語を話す人材が豊富にいることと、ヨーロッパの中心に位置していることの便利さもメリットとなっている。人口57万人の国に毎日20万人が国境をこえて通勤している。

スイスは物価が高く、高価な時計や医薬品を輸出している。金融機関の秘密性に基づく金融王国「秘密こそが収益」としている。富裕層の個人資産運用に活用されており、世界のオフシュア市場資金の3分の1を握っている。観光業も重要な産業となっている。税金が安く、独仏伊の3言語と英語においてのサービスが可能で企業の立地拠点として魅力であり世界の多国籍巨大企業がスイスに拠点を置く。対外投資収益の巨大な黒字となっていて GDP比では日本の2倍である。1990年代のバブル崩壊後も、金融システムは日本より遥かに健全な状態で維持されたから「失われた20年」を免れた。

スイスもルクセンブルグも歳出を大きく増やし続けているところが日本と異なるところである。日本もこれらの国と同様に歳出を増やし続けていたら発展できたのは間違いない。一時的な景気対策ではなく、計画的な財政拡大策が必要なのである。経済が拡大を始めれば海外の投資家にとっても日本という市場が魅力的になってくる。また外国企業の誘致には法人税を含む減税が必要となる。それに外国語教育も充実させなければならない。AIを使った外国語教育は期待できる。

労働生産性を上げるということは一人当たりの名目GDPを上げることと密接に関係しており、働き方改革だけではないことを忘れてはいけない。

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