日本経済を活性化するエネルギー政策とは(No. 311)
2018年7月の日本は記録的な豪雨の後、凄まじい猛暑に見舞われた。温暖化が進む中、このような災害は規模を拡大しながら繰り返しやって来そうな気がする。それを少しでも食い止めるためにCO2削減は待ったなしだろう。かつては日本の太陽光パネルは世界を席巻していた。2006年まではシャープが世界シェアトップで京セラ、三洋電機、三菱電機などの日本メーカーが続いていた。しかし2017年には、上位は中国や韓国のメーカーで占められ、トップ10の中に日本メーカーはいない。日本のメーカーが投資を躊躇している間に、海外のメーカーにシェアを奪われたのである。シャープの液晶への投資の失敗の印象が強烈だったのだろう。
世界各国の政府は自国の企業を守ろうと必死なのだが、日本だけは自国産業を犠牲にしてでも財政健全化をしようとする。デフレ経済で財政健全化しようとしても企業は弱体化し国民は貧乏になるだけなのだが。中国は再生エネルギーを固定価格で買い取る制度で、大規模な太陽光発電設備を建設したお陰で、中国企業は太陽光パネルにおいて圧倒的な競争力を獲得した。ここにも日本経済衰退の縮図が見えてくる。
我が国のコスト等検証委員会は1kWhあたりの発電コストを2014年原子力は10.1円、太陽光は29.4円、風力は21.6円、天然ガスは13.7円としたのに対し、2030年になると原子力は10.3円、太陽光は12.5~16.4円、風力は13.6円~21.5円、天然ガスは13.4円としている。要するに発電コストは2030年になっても下がらず、相変わらず原子力が一番安いと言いたいようだ。
一方、海外に目を向けると国際再生可能エネルギー機関(IRENA)はすでに太陽光や風力が最も経済的になりつつあると述べている。太陽光発電や陸上風力発電では3セント(3.3円)という低価格で入札が成立する場合が出てきたとのことだ。電力コストは産業の基礎となるのであり、ここまで圧倒的な差を付けられれば日本経済にとって大きなハンディになるのではないか。海外では労働コストが安く、しかも風が強かったり、砂漠のように太陽光発電に適したりする場所がある。
例えば樺太や北方領土のように風力発電に適した場所で大規模風力発電所を建設し、電気を直流送電で日本に送れば良い。北海道から九州まで直流送電で結び融通し合えば、電力供給が安定してくる。東日本大震災の際には、なぜ東と西で電力の融通ができないのかと日本中が嘆いたものだ。直流送電ならこういった問題も一挙解決するし、海外から電気を安く輸入することも可能となる。
また地球上の一部で太陽光や風力で安く電気をつくることができるのであれば、そこで電気を水素に変えたり、水素をトルエン等の有機物に化合させて有機ハイドライドの形で輸送・貯蔵したりできれば安い水素を大量に日本に運ぶことが出来る。水素で燃料自動車を走らすこともできるし、電気が足りなくなった時に発電に使うこともできる。これらは技術的に日本が得意とする分野であり、思い切って投資し開発をすれば世界をリードすることができる。太陽光パネルや風力発電の技術など、日本は競争に負けてしまったけれど、どこか確実に勝ち続けることができる分野をしっかり押さえておく必要がある。その意味で日本の得意とする分野に大規模に投資し、世界を席巻し続けるべきだしCO2排出量削減という意味でも日本は世界の先頭に立つべきである。
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