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2018年11月28日 (水)

外国人単純労働者を入れるより、最低賃金を引き上げよ(No.325)

人手不足解消のため外国人単純労働者を入れるより良い方法がたくさんある。ここでいくつか提案する。

【提案1】最低賃金を引き上げよ

平成29年度の法人企業統計によると企業が蓄えたもうけを示す内部留保が前年比9.9%増の446兆円になった。また企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す労働分配率は66.2%にまで下がり、43年ぶりの低さとなった。これらのことは企業にとって賃金を上げる余地が十分あることを示している。

日本の最低賃金は、G7の中で最低賃金のないイタリアを除けば低い方から2番目である。一方安倍首相は毎年最低賃金を3%上げると言っており、平均賃金が上がらないまま最低賃金はじわじわ上がっている。
                      出所:厚生労働省
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2018年9月時点の有効求人倍率は1.64倍で、1974年1月以来の高水準になった。また同月の完全失業率は2.3%だった。これは安倍首相がアベノミクスの成功をアピールするための宣伝材料になっているのだが、不都合な事実もある。実質賃金は下がり続けており、1997年を100とすると2017年は86.8まで下がっている。

                    出所:厚生労働省
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来年は消費増税もあり、実質賃金は更に下がる。一方でベトナム、ネパール、中国、フィリッピン等近隣のアジア諸国の賃金は急激に増加しており、日本だけが没落しつつあるのは明かだ。次のグラフは11月22日の東京新聞より引用する。

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韓国では文在寅大統領が. 2年間で29%も最低賃金を上げると決めたがこれだと日本の最低賃金を上回ってしまう。韓国の体感失業率は11.8%と言われ、急激な最低賃金の上昇は雇用を更に悪化させてしまうから経済には悪影響がある。

日本は逆に失業率は極めて低い。賃金が低すぎるために本来退場すべき企業ですら、低賃金でも人が集まるなら利益が出せるということで求人をするから有効求人倍率は高まる一方である。そのため人手不足を補うため低賃金で働く外国人を大量に入れようとしている。筆者は最低賃金を思い切って上げることを提案する。低賃金で募集していた会社は給料を上げ、自社製品の値上げをするかもしれない。この場合はデフレ脱却にはプラス材料だ。あるいは募集をあきらめるかもしれないが、この場合、人手不足は緩和され低賃金の外国人を入れる必要がなくなる。下がり続ける実質賃金も上昇を始め可処分所得の増加で内需拡大となる。企業には積み上がった内部留保があり賃上げの余力はあるし、労働分配率も回復してくるであろう。政府は景気失速を防ぐため最低賃金を上げると同時に強力な経済対策を行うと良い。特に人手不足に対応するための自動化への強力な資金援助は最大限行うべきであり、AI技術の開発に関しては大規模国家プロジェクトとして行ってもらいたい。もちろん、消費増税はストップすべきだ。

筆者は2005年に『労働はロボットに、人間は貴族に』という本を書いた。AI/ロボットが雇用を奪ったら、人間は貴族のような生活ができるというもの。しかしその大前提は、やらなくてもよい仕事は辞め、もっと大切な仕事に労働者を移動することである。やらなくてもよい仕事とは、低賃金でなければ利益が出ない仕事だ。重要な仕事は給料を上げでも利益が出る。製造業であれば商品の値上げをしても売れる、サービス業でも人気があればサービスの価格を上げても需要がある。

デフレ経済では賃金を上げなくても人は集まる。その惰性で企業は賃上げをしない。この状況をいつまでも続けてはいけない。ここは最低賃金を上げ、大規模経済対策をすれば、それが引き金となり賃金が上がり始め、失われた20年が終わる。

低賃金できつい仕事を長時間しなければならない生活から決別するためにやらなければならない政府の仕事は山ほどある。以下でいくつか提案を書いてみる。民間でできることは民間でやるべきだと主張する人もいるが、巨額の投資を行ってAI/ロボットを開発し、インターネット・クラウドを使った大規模なシステムを開発しサービスを提供するといったビジネスであれば、小さな企業では無理であり人手の無駄遣いになる。人手不足解消のためには規模の拡大が必要であり、国がまとめて行った方がはるかに効率的にできる。もし国がAI/ロボットに大規模投資を行い、質の高いサービスを行うことができたら、少ない労働者で巨額の利益を生みだすことができたら、人手不足解消だけでなく、生み出された利益を財源に大規模な減税も可能となる。

【提案2】大規模農業が可能になるよう農地を国が買い上げよ。
どの農家も納得できる価格であれば、買い上げは進む。生産性において、日本農業は米国の20分の1以下。国有化した農地を国有企業がAI/ロボットを駆使した大規模農業を行えば、多くの農民を他産業へ移すことができる。この国有企業の公務員の数は極めて少なくてよいので大きな利益を生み、それを財源に減税が可能となる。

大規模化はジワジワ進んでいる。耕地面積10ヘクタール以上の大規模農家は5%にも満たないが、全耕地面積の半分近くを占めている。

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次の表は農家1戸あたりの農地面積の国際比較をしたものである。農業の大規模化、AI/ロボット化を進めなければならないのは明かだ。

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【提案3】薬の調剤を自動化せよ。

薬の調剤を自動化すれば、多くの人手を他産業に回せる。薬局の数は増えており、その数はコンビニより多い。
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薬は医者の処方箋から自動的に準備できる仕組みにしたらどうか。抗癌剤など副作用の強い薬は特別に薬剤師から説明を受ける。薬剤師の代わりに説明できるAIを開発する。

【提案4】不動産業など情報提供が仕事である場合、インターネットとAI/ロボットで代替する。
例えば不動産業は賃貸と売買だが、借りたい人と貸したい人をつなぐ仕事、売りたい人と買いたい人をつなぐ仕事は、インターネットとクラウドとAIがあれば、ほとんど人手を借りることなくできる。例えば国がそのような取引のサイトを立ち上げ、その使い方をAIが丁寧に教えるようにしたとする。そして契約書もAIが分かりやすく説明し誰でも簡単に作成できたとすれば、人手はほとんど使わなくてもすむから大量の労働者を他の産業に回す事が可能になる。

例えば、部屋を借りようとする。ネットで検索すると、たくさんの不動産業者が関与していることが分かる。そしていくつものサイトを探し回らなければならない。部屋にはそれぞれ担当の不動産屋がある。各不動産屋はそれぞれ小さな事務所を持ち、滅多に来ない客をじっと待っている。これは時間の無駄であり、人手を無駄に使っている。不動産の賃貸、売買を一手に引き受ける所が一箇所あれば十分でありその方がはるかに効率的だ。

その他旅行斡旋業,人材紹介業、結婚相談所なども同様である。官僚に商売をやらせるとろくなことはないのだが、各業界には破竹の勢いで伸びていく企業がある。そういった企業に国が物言わぬ株主として資本参加しAI/ロボットの導入を財政支援し、ある程度業界の独占を許し、将来的にはその企業の国有化も視野に入れる。そのような企業は従業員は少ないから利益が極めて大きいからそれを減税等の財源にする。しかも人手不足対策にもなる。

【提案5】国を挙げて日本語が理解できるAIを開発せよ。
予算10兆円で完成したら、人手不足の問題は永久に解消される。
①各社のコールセンターはAIが代行
②各社の受付係、商品説明、苦情対応、社員教育
③官庁も大幅人員削減が可能
このAIは莫大な利益を生み出し、国の大きな財源となる。「労働はロボットに、人間は貴族に」という世界に大きく近づく。

【提案6】中古住宅をもっと積極的に活用せよ。
7軒に1軒は空き家だと言われている。また野村総研によると2033年には空き家率は30.2%になるそうである。
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いっぱい家が余っているのに、そして人口は減っているのに、どんどん新しい家を建て続けなければならないのか。日本では新築住宅は僅か20年で価値がゼロになると言われている。国は中古住宅の売買では消費税が入らなくなるから新築を建てさせたいのか。建築業者も新築住宅をどんどん建ててもらわないと儲からないということか。住宅の平均耐用年数はイギリスで141年、アメリカは103年、ドイツは79年、日本は30年と言われている。日本でも諸外国並に中古住宅の積極的活用で建築業界の人手不足は緩和される。

結論としては、人的資源の無駄遣いを防ぎ、AI/ロボットを活用し、最低賃金を上げれば、貧しい外国人労働者を大量に入れなくてもやっていける。

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コメント

 今日は。higashiyamato1979です。まさに「救国の提案」ですね。日本の大メディアは相変わらず当たり障りの無いことしか云いませんね。ひょっとしたら一番にAI化すべきは大メディアなのかもしれません。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2018年12月 1日 (土) 15時37分

人手不足の建設、介護、病院、保育、物流、飲食、農林水産、といったところは、ちょうど 省人化が難しかった所に対応しているのではないかと思います。

ヒトの判断やヒトの手足の器用さが機械を上回っていて、ヒトのレベルの能力が必要だという産業分野では、機械への切り替えが行われませんね。

こう考えると、各分野でヒトがどう判断しているかの研究-アルゴリズム化 と ヒトの動作再現の研究開発 あるいは 判断や器用さの必要レベルが低いシステムの開発 に期待がかかるところです。

私は、こういった研究開発の効率化-スピードアップに注力していこうと思っています。

投稿: hugoniot | 2018年12月 5日 (水) 03時08分

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