IMFの「40年後日本のGDPが25%減」という説に反論(No.326)
IMFは11月28日に発表された報告書で「日本は人口減によって今後40年で実質GDPが25%以上減少しかねない」との試算を示した。2058年のGDPを予測したと豪語している。要するに日本の財務省がIMFという名を借りて「移民を大量に入れないと大変なことになるぞ」と脅しているのである。しかし人口が25%減少しGDPも25%減少するのなら一人当たりのGDPは変化しないのだから主張はおかしい。
日本の未来に関しては、専門家の見解は収束しつつある。その代表例として鈴木貴博著『仕事消滅』から引用する。
①2025年には自動運転車の普及によりタクシードライバーや長距離トラックのドライバーの仕事が消滅する。これは123万人の雇用に相当。同じ頃、デイトレーダーの仕事も消滅。
②2030年頃パラリーガルと呼ばれる弁護士の助手の仕事、銀行の融資担当者等の仕事がAIにとって代わられ消滅する。
③2045年から2050年頃には人間と同じ能力を持つロボットが実用化される。そのとき人類の90%の仕事が失われる。
人口問題研究所の予測では2058年の日本の人口は9377万人であり現在より約25%減少する。25%人口が減れば25%GDPが減るというのは単純過ぎる計算だ。人類の90%の仕事をAI/ロボットで代替できるのであれば、少なくとも25%の人口減少は生産には何ら影響しない。それどころか、人が有り余るわけだから、外国人など入れるべきでは無いということになる。90%の仕事がAI/ロボットに奪われた経済はどのようなものかを具体的に仮定しなければGDPは計算できないはずだ。
実質GDPが40年間下がり続けるという国は見たことない。日本も40年前に比べれば実質GDPは約2倍になっているし、60年前に比べれば10倍以上になっている。今後、AI/ロボットが次々と人間の仕事を奪うとなれば、生産性は激増するわけだから実質GDPが上がらないわけがない。日本経済は成熟しているからもう発展の余地はないと言う人がいる。しかし、一人当たりの名目GDPは先進国では最低だからまだまだ成熟していないし、米国など日本よりはるかに成熟している国もずっと高い成長率を続けている。
AI/ロボットで人手が不要になれば、人件費が浮くわけだから財・サービスの値段は下がる。例えば自動運転車によるタクシーなら料金は7分の1になると言われている。例えば物価が平均で50%下がったとし、しかもベーシックインカムなど使い可処分所得は変わらなかったとしよう。消費額も変化しないから名目GDPは変わらないが、物価が2分の1になれば、実質GDPは2倍になる。今月から4K8Kテレビの放映が始まった。NHKの受信料も来年、再来年と4.5%程度値下げをする。携帯料金も下がりつつある。パソコンもデジカメも多くの家電も性能は上がり、その割に値段は上がらない。これらは物価を押し下げ実質GDPを押し上げる。全日本、いや全世界の人々が協力して暮らしを豊かにしようとして絶えず努力しているわけであり、40年間実質GDPが上がり続けることはあっても下がり続けることはあり得ない。もし本当に下がり続けるとしたら、それは実質GDPが暮らしの豊かさを表す指標としては相応しくないということを証明するものとなる。
ここで言いたいのは、財務省はIMFという名を借りて欺瞞的な試算を出すべきでないということだ。
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コメント
①
いくら その国全体の実質GDPが下がっても、その国に住む人たちの1人当たりの実質GDP×労働分配率が下がらなければよい。
②
実質GDPは 付加価値/物価 なので、付加価値を増やして 物価を引き下げることに勤労者が取り組めばよい。
実質GDPが上がるかどうかは 付加価値を増やしたり/物価を引き下げるアイデアが出るか否かの問題であって、40年後の実質GDPを予想することに意味は無い。
そんな予想をする暇があったら、付加価値を増やしたり/物価を引き下げる(※)アイデア出しに頭を使うべき。
※その際、給与を引き下げず かつ 失業を増やさないこと。
と思いました。
そして、
機械化(AI化を含む)で物価を引き下げる場合の ヒトの配置転換が一番の課題かもしれない、とも思いました。
投稿: hugoniot | 2018年12月 5日 (水) 03時35分
今日は。higashiyamato1979です。コメントが遅くなりました。財務省がIMFの名を借りて緊縮財政を煽っていると云う事は長年に亘る日本の緊縮財政とそれによる長引くデフレは元を正せばアメリカが望んでいた事なのでしょう。日本がデフレだと国内にカネが落ちず海外、主としてニューヨークのウォール街やロンドンのシティへ向かうでしょうから・・・。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2018年12月16日 (日) 12時57分