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2018年12月 9日 (日)

日本は1982年から財政非常事態だった??(No.327)

―国の借金は僅か96兆円なのに、首相は引責辞任―

 ここに示すのは、1982年の朝日新聞の記事である。これは非常に面白いのでここで紹介する。

結論から言えば、1982年から日本の財政は「非常事態?」であったそうだ。その当時国の借金はたった92兆円。これで非常事態?!と、今なら笑ってしまうだろう。1982年から現在まで、借金が10分の1の頃から毎年財政危機を言い続けてきた政府・財務省。まさにオオカミ少年だ。通貨発行権を持ちお金が無ければいくらでも刷れるのに、財政危機などあるわけがないのに、どうして国民は騙され続けているのだろうか。

「財政非常事態宣言」が出された1982年の新聞を読むと面白い。現在とそっくりで、「財政危機」という存在しない魔物におびえているのだ。魔物は存在しないのだが、それに対する恐怖感が日本経済をじわじわ破壊している。当時(1982年)の新聞の記事を紹介しよう。9月2日の1面には「国債償還政策を転換 大蔵省方針」とある。赤字国債は10年で返す方針だったが、返しきれないので借換債を発行する方針にしたのが、政策転換だった。これを新聞では「財政“サラ金地獄に”」と酷評してある。

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このように朝日新聞は恐怖を煽る表現をとっているが、その後現在まで借金を増やし続け、残高が約10倍になるまで増やしても、利子は下がる一方というのだから、サラ金ならあり得ないことだろう。全く当時から新聞は無責任だったということだ。恐怖を煽ることをせず、経済の健全なる成長を第一に考えて経済財政運営を行っていたら、今頃日本は世界で最も豊かな国であり続けていたことは間違いない。

当時は不況だったようで、9月10日には「景気対策を急げ」と安倍通産大臣と河本経済企画庁長官が迫ったが、鈴木首相や渡辺蔵相は消極的だったとある。二階堂幹事長や公共投資推進議員連盟会長の金丸氏が9月中に景気対策を取りまとめ政府に申し入れたいと言っている。僅か96兆円しか国の借金は無かったのだから、思い切った景気対策をやっておけば、景気は回復し、税収が増えて財政は健全化しただろうが、実在しない魔物への恐怖感がじわじわ影響力を増してくる。

その証拠に9月16日に鈴木善幸首相は、財政危機を国民に訴え、不況にも拘わらず国民に負担増を要請している。新聞には「人事院勧告は凍結の方向を示唆」「厚生・国民年金 物価スライド中止、歳出削減大蔵方針、恩給・共済も凍結へ」と厳しい経済政策の見出しが並ぶ。こんな政策は不況の時にするべきではない。世界経済が世界的高金利のお陰で停滞し、それが日本を襲い歳入欠陥は5~6兆円に及ぶ。景気後退で、自民党の支持率も落ち不支持が支持の2倍になった。

朝日新聞の9月2日の社説には「歳出削減に小細工するな」とある。2年後となる「昭和59年に赤字国債からの脱却」という公約を鈴木首相がしていたわけで、それを達成するには、来年度2兆円の赤字国債の減額をしなければならないとある。財政当局は「ぜい肉はおろか、骨まで削る」ことをスローガンにした。その後、「骨の髄までえぐり出す」とまでエスカレートした。

現在の僅か10分の1程度の国債残高で過剰反応をしているのは滑稽に思える。しかし、このとき政府・財務省が気にしていたのは利払いなどに必要な経費が、この年の予算で7兆8000億円に達していたことだ。これは公共事業費の6兆7000億円を上回っていた。現在は国債費は23兆円、そのうち利払いは10兆円程度なので、借金が少ないわりに、利払いは随分多いことが分かる。それもそのはず、1982年の公定歩合は5.5%、長期金利は8%程度だった。現在長期金利は0.1%程度だから同額の国債でも利払いは数倍にもなったわけだ。現在の国の借金残高で当時の金利なら毎年の利払いだけで50兆円を越し、税収と同額レベルになっただろう。つまり政府は景気が回復し金利が上がっては困ると考えており、これでは日本経済は衰退するばかりだ。

鈴木首相は9月16日の午後「財政非常事態宣言」をした後、記者会見をしている。そこでは来年度予算では聖域を設けず歳出カットをしていく。同時に特別会計から一般会計への繰り入れ、国有財産の売却、特殊法人からの剰余金の繰り入れなど、最近まで政府が言っているようなことをそのまま述べている。そして赤字国債からの脱却という公約が守れそうにもないということで、鈴木首相は10月12日に責任を取って退陣することを表明している。

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「財政危機」という、想像上の魔物に1982年からずっとおびえ続けてきた日本。その間魔物は日本人の心の中に存在し続けたが、誰も見たことがないし、そんなものいるわけないのだ。なにしろお金を刷れば、簡単に魔物は退治できるのだから。しかし、魔物に対する恐怖感で日本経済は確実に衰退の一途を辿っている。1982年には、なんとこの魔物が首相の首さえ奪った。こんなことで、首相の首が飛ぶようでは、首相の首はいくつあっても足りない。当時のレベルでは世界的に見て、この借金のGDP比が決して多いとは言えないし、外国から借りた借金ではないのだから、諸外国同様何の気にする必要は無かったし、もちろん責任を取らなくても良かった。

そろそろ、架空の魔物におびえるのをやめたらどうだろう。国の借金(外国から借りたわけではないのだ)のことは忘れて、むしろ経済を活性化するには、どの程度減税をし財政支出を拡大するのがよいかを、マクロ計量経済モデルで徹底して分析し、その結果に従って経済政策を行う時が来たのだと思う。

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コメント

 今晩は。higashiyamato1979です。自民党の「経済オンチ」っぷりはつくづく根が深いですね・・・。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2018年12月 9日 (日) 17時05分

大変興味を持ちました…あなたの言ってると-り.同感.今の時期に.消費税.頭変.国際わ自国物.国際買取れ.借金0

投稿: 世直しマン | 2018年12月17日 (月) 21時09分

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