教育のAI化は如何に進めるべきか(No.330)
筆者は平成元年に教育ソフトの会社を立ち上げ、昨年まで教育のIT化、AI化を目指して頑張ってきた。残念ながらこの分野では日本は諸外国に大きく遅れをとっている。その理由の一つは政府の予算が少なすぎるということだし、もう一つは予算の使い方が間違えているということだ。例えば橋や道路であれば、使う人が余りにも少なすぎればこんなところに道路をつくったのは間違いだったということは誰でも分かる。しかし役人がカネを出して民間に作らせたソフトウエアやシステムが失敗作だったとしても一般の人も政治家もほとんど気づかない。実際は大失敗の連続なのだ。失敗の原因は、役人が将来どのように発展させていくかを考慮せず開発させるから、開発したものが1~ 2年後には使えなくなるものが多い。言っておくが筆者の開発したPC教育シリーズや写真素材集は30年後でも立派に使える。
どうすればよいのかだが、一つのヒントとなるのはインドで急成長しているオンライン教育アプリ「バイジューズ」である。11年に会社を設立し、15年から動画アプリを投入、今では社員3200人、企業価値が4000億円の未上場会社「ユニコーン」にまで成長した。バイジューズの動画は1本3 ~ 5分で図形やアニメーションも組み合わせてあり飽きさせない。このように短い動画がたくさんあると、AIを活用して受講者ごとに最適な教材を提示できる。
日本ではこのように急拡大する教育関連会社は見たことがないのだが、教育の、あるいは学習のAI化を考えればビッグデータの蓄積が欠かせない。AIを使った教育システムを開発したと宣伝する会社もあるが、ビッグデータを使わないAIもどきのものも多い。OECD加盟国の中でのPISA学力調査では日本はトップレベルにあるのだが、学校におけるICT教育は世界最低レベルである。一方では学校の先生の残業時間が長すぎることが問題になっている。例えば中学教員の8割が月100時間(過労死ライン)を超えて残業している。
未来社会は個に応じた教育をAIが行うようになる。そのような教育システムを構築するための近道は国がベースとなるコンテンツを無料で提供し、それを民間企業が自由に使ってAIを駆使した本格的な教育システムを構築できるようにすることだ。まずNHKやその他の民間企業が開発した教育用動画、静止画、音声等を高価で買い取りそれらのコンテンツを民間企業が無料で無制限に使ってシステムをつくってもらう。民業圧迫にならないようにするには、それらのコンテンツを提供してくれた民間企業に対し開発を会社が納得できる条件で委託し、更に動画を各教科、各単元用にきめ細かく追加していくとよい。国から依頼されて制作されたコンテンツは完全に著作権フリーとし、企業はそれらのコンテンツをベースに有料の教育システムを制作して稼ぐ。動画制作には日本中から優れた教師を抜擢し、最高水準の授業をしてもらう。生徒ごとに最適な教材をAIが提示し、どれだけ理解できたかの確認テストを行う。データが蓄積すると、どの先生がどういう教え方をした場合が最も理解度が上がるかがわかるようになり更なる改良の糸口が分かってくる。この方法で授業の質が上がっていけば、やがて先生がいちいち授業をするよりこのAI主導の動画システムで教育したほうが学力が向上すると分かるようになり残業が厳しい学校の先生の仕事が軽減される。しかも個人ごとの履歴よりAIはどの生徒はどの分野に進むべきだというアドバイスも的確にしてくれる。そのためのその生徒の長所を伸ばす特訓もしてくれるだろう。
日本にも優秀な児童・生徒がいる。例えば小学二年生の高橋洋翔君は数学準一級に合格した。これだけできればすでに大学入試は余裕で突破できる。彼は小学5年で数学一級に合格し、すでに世界的に有名な数学者と共同研究を行っておりすでに研究業績もある。こういった天才的な子供たちには特別な教育をしなければならないのだが、それができていない。例えばアメリカだと飛び級という制度があり、また特別な才能がある子供、つまりギフティッドを発掘し、「ギフティッド教育」という特別な教育を受けさせている。こういった子供たちを適切な教育を行ってこなかった日本だが、今こそAIを使ってそのような教育をすべき時だ。
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コメント
明けましておめでとうございます。kuniyoshi1979です。これはドンドンやるべきですね。得意分野・本当に好きな分野なら児童・生徒は大張り切りで勉強に励むでしょうしこれにより「知識を増やす事=良い事」と云う至極当たり前の常識を取り戻すことが出来、勉強に励む子が虐めやからかいの対象にされる事も無くなっていくでしょう。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2019年1月20日 (日) 12時54分