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2019年3月

2019年3月26日 (火)

レント(不労所得)収入に依存し過ぎる国は衰退する(No.343)

レンティア国家という言葉が広く知られている。レント収入(石油などの天然資源)に依存する国家のことであり、財政が潤っているように見えるが、実はネガティブな面もあるとされ、「資源の呪い」と言われている。その内容は
①豊富な外貨を使って安い輸入品が大量に入ってきて国内産業を育てにくくなる。
②資源価格の変動が経済に悪影響を及ぼす。
③レント収入の奪い合いが発生しがちであり、紛争に巻き込まれることが多い。
④為政者が莫大な富を得て、非民主的な政府を維持しやすくなる。
などである。


ところで未来社会ではAI/ロボットに働かせて得た所得も不労所得(レント)に近いから、呪いはあるのだろうか。この場合、富を得るのは資本家だが、もし巨万の富を得た資本家が小さな政府に影響力を及ぼすようになれば民主主義が脅かされる。これは石油王が金満国家を統治している湾岸産油国に似たところがある。そこでは所得税はなく、教育費も無料であり、恩恵を受けている国民を支配しやすい。一度国民が非民主主義国家を受け入れたら、民主主義に戻すことは簡単ではない。前回取り上げたナウル共和国の場合も資源の呪いの被害を受けた国の例である。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/no341-2c19.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-a2f9.html


1965年から1998年のOPEC諸国の一人あたりGNP成長率は年平均で1.3%ほど減少している。一方その他の世界の国々は毎年平均で2.2%の成長を遂げている。石油生産地域を武力で掌握しようとして紛争が起きる。石油産油国は為政者が莫大な富を得て、その富で非民主的政府を維持しやすくなる。また女性の社会進出が難しくなる。


2007年の一人当たりのGDPを比べると、カタール 76373ドル、UAE 40147ドル、アメリカ 45778ドル、日本 34318ドルとなっている。UAEは石油収入を人口1割に満たない自国民に分配し、自国民は主に政府部門に就職し外国人の約3倍の給料を稼ぐ。カタールの場合は自国民の公的部門就職割合は94%、外国人の割合は12% 外国人は建設、製造業、レストラン、ホテル等の職場で働く。一般公務員の平均給与は41.4万円、民間企業の平均給与は16.7万円。結局、産油国は事実上不労所得として稼いだカネを自国民に配り、そのカネで外国人を奴隷のごとく使って、自分たちがやりたくない仕事を低賃金でやらせている。レンティア国家では出稼ぎ少女への暴行や性的虐待もあると言われている。


ベネズエラもレンティア国家である。石油など世界有数の埋蔵量を誇る鉱物資源に恵まれた国だ。石油収入をうまく使えば豊かな近代国家へと発展できただろう。しかし「石油の呪い」とはここにもあった。独裁政権は社会主義政策で失敗した。ニコラス・マドゥロが新大統領に就任。酪農やコーヒー、肥料、靴などの生産、スーパーマーケットの事業などを相次ぎ国営化した。だが、多くはその後、「縮小または完全に停止」している。赤字でも国が助成して安い商品を国民に提供しようとしたのだろう。実際に起こったことは、人々は価格統制された非常に安価で売られているものを買い、それらをため込み始める。また、繰り返し何時間も行列に並んでモノを買い、ずっと高い値段でそれらを闇市で売る。その結果、商店から商品が消え、闇市で非常に高い値段で買うしかなくなる。しかも財政は大赤字で石油収入では賄いきれなくなる。民主主義国であれば、国民が選挙で新しい指導者を選ぶことができただろうが、「石油の呪い」で非民主的政府が誕生しており、政府にNOと言えない。


ソ連も世界最大の産油国として莫大な外貨を獲得したが、西側諸国からの機械、穀物や奢侈品の輸入に浪費されて新規事業の開拓や技術開発がほとんど進まず、西側と製品の質の点で大きく水を開けられた。また自国の発展を宣伝するために、見境なく歳出を膨張させた。ここでも「石油の呪い」があった。


レンティア国家においては一定の額のカネを国民にばら撒くのだからベーシックインカムの部分的実現と言ってよいが、「呪い」が掛かっていて余りよい結果が生まれているとは言えないのではないか。


未来社会ではAI/ロボットに働かせて得た所得は不労所得(レンテ)に近く、レンティア国家に近い状況になる可能性がある。そこでは資本家だけが莫大な富を独占し、それ以外の国民が奴隷扱いされる。つまりレント(不労所得)の呪いだ。それを避けるために我々が提案しているのが解放主義社会である。
(1)生活のための労働からの解放
AI/ロボットが人間の代わりに労働を行ってくれる。
(2)通貨発行権を行使して資本家による富の搾取からかの解放
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/no178-f971.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-a2f9.html
AI/ロボットが発達してくると資本家に富の集中が起きる。赤字財政が続く政府は弱い立場に立たされ、資本家は圧倒的な資金力で政府に圧力を加えるようになる。法人税を下げ、消費税を上げるのはその圧力のためだ。この傾向が続くと、「資本家は貴族に、それ以外は奴隷に」ということになる。そういった悲劇から脱するには、政府が通貨発行権を行使して資本家から富を買い取ってしまうことだ。
(3)JODにより失業からの解放
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/job-on-demand-2.html
AI/ロボットが雇用を奪ってしまうと、国民は全員が失業者になる。しかし、政府が豊富な資金力を駆使して国民がやりたいことがやれるように「仕事」を用意しておけば失業しなくてすむ。


 

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2019年3月17日 (日)

ベーシックインカムvs解放主義(No.342)

将来AI/ロボットが雇用をすべて奪ってしまったら人はどうやってお金を稼いだらよいのか。国民全員に同額の給料を払えというのがベーシックインカムというアイディアである。しかし、もしもある会社で社長から平社員、パート、バイトまですべて同じ給料にしたらやる気を失ってしまう人も多いし同じ給料なら働いたふりをしてろくに働かない社員も出てくるのではないだろうか。旧ソ連や東欧諸国の失敗を繰り返すことになるかもしれない。

日本の生活保護制度は生活困窮者を必ずしも救っていない。財政難の問題があり受付担当者が生活保護を申し込みに来た人にできるだけ他の手段で収入を得るよう説得する。そのため受給資格があるのに諦めてしまう人も少なくない。その結果公平性に欠くことになるのだが、ベーシックインカムであれば、それがない。しかし財源は桁違いに大きくなる。やはりベーシックインカムの問題は巨額の財源をどうするのかということと、働かなくても一生の間一定の収入を得られるなら労働意欲が失われるのではないかということだ。

2016年、スイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われ、賛成23%、反対77%の圧倒的多数で否決された。次のように世界各地でベーシックインカムの導入実験が行われている。
2016年1月オランダのユトレヒト
2017年フィンランド
2017年カナダのオンタリオ州
しかしながら、国全体で、無期限に行われないと本当の意味のベーシックインカムの実験にはならない。国の一部だけで行われると、それ以外の地区から激しい不満の声が出るし、期間限定で行われると、本人はそれが終わった後の準備をするから、ベーシックインカムの実験にはならない。国民全体が無期限に生活費を支払ってもらえると分かったとき、国民の生活はどう変わるのかということは、実際にそういう環境にならないと分からない。

唯一、本当の意味のベーシックインカムに近い「実験」が行われたと言えるのは、ナウル共和国である。これは太平洋の赤道付近に浮かぶ人口1万程度の小さな常夏の島国である。

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もともとナウル人はココナツを採ったり漁に出たりして自給自足で生活していた。ナウル島はアホウドリの糞でできた島であり、リン鉱石が産出することが分かり、1907年、リン鉱石の採掘が開始された。ツルハシとバケツで採掘したのは中国人、島の先住人は海辺で釣りなどしてぼんやりと過ごした。

1970年リン鉱石の採掘権がナウルに完全譲渡、リン採掘事業の国有化しその収益のほとんどがナウルの国庫に収まりナウルのGDPは一人当たり2万ドル近くになり世界で最も豊かな国の一つになった。ナウル燐鉱公社が採掘と輸出を行い、利益の半分は国庫に、残りの半分は長老たちがつくるナウル地方政府評議会が管理した。評議会は採掘場の土地を持っている人に平等にお金を支払い、残ったお金は積立預金にしたり投資したりした。ナウル人のほとんどが土地の所有者だった。野菜や果物を作っていた土地を採掘場にし、食料は缶詰で輸入した。リン鉱石の採掘は外国人が行った。税金はタダ、教育、病院、電気代もタダになり結婚すると2LDKの新居を提供してもらえた。ナウル人はドライブや魚釣りを楽しみ海外へショッピングに行く人もいた。

ナウル人は公務員となった10%の人をのぞきほとんど働かなかった。つまり失業率は90%だったが収入は大統領まで含めほぼ同額であった。ナウル人の多くはこの生活が永遠に続くものと考えていただろうし、その意味でベーシックインカムの実験が始まったと言える。自炊もせず、食事は外国人が経営するレストランですませ、個人の住宅の片づけや掃除のため、国が家政婦を雇った。

ナウル人の肥満率は高く、成人の肥満率ランキングでは189か国中トップの71.1%(偏差値91.7)である。ちなみに日本は166位で肥満率4.5%である。また国民の30%以上が糖尿病を患っており、人口比の罹患率は世界一である。贅沢を覚え働かないと不健康になるのではないか。

ナウル人は1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。政府が小学校の高学年で働き方を教える授業を行い、将来の国を担う子供たちの労働意欲を与えようという対策がなされた。

政府は漁港を開発し公営の魚市場が作られたが、魚師のなり手はいなかった。ナウル人にとって魚を獲るのはレジャーになっていた。魚が獲れれば自分で食べてしまう。レストランに行けばいくらでも魚料理は食べられる。せっかくの漁港も暑さしのぎのプールになってしまった。

巨額の収入をもたらしたリン鉱石の採掘だが、資源には限りがあり、1990年代には収入が目に見えて減ってきて電力不足や燃料不足、飲料水不足が深刻化した。収入が多かった頃に適切な対応がなされていたらナウルは末永く豊かな国でありつづけていただろう。あるいはノルウェー政府年金ファンドや日本の年金積立金の運用方法を真似て稼いだ資金を運用すべきだった。実際の資金運用は失敗続きだった。海外投資からはリターンは得られず元本さえも消えた。1986年からは大統領が次々入れ替わった。政治指導者は国家のお金と自分の財布を混同。閣僚の妻や子供をはじめとする親族が国家のカネをネコババした。銀行を次々設立、税金はタダ、財産が隠せるようにし、マネーロンダリングに手を貸した。国籍を2.5万ドルで販売しパスポートを発行、アメリカはナウルをならず者国家と呼んだ。アメリカの2001年9月11日のテロの後、世界中がテロリストに対する引き締めを行い、ナウル銀行は破綻しナウルは蓄積していた資金を失った。

2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』が「地球の歩き方」のナウル版を制作する企画で取材班が訪れた際には、日中の街中をうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。これは1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。かつては農業もあったのだが、リン鉱石を採掘して農地は荒らされ今は農業もできなくなっている。

お金がたくさんあれば、それを国民に配るだけでいいというベーシックインカムの考えが一つの国を破産へと導いたのではないか。お金があるから自炊せずレストランで食事をし、島の周りをぐるぐる回るだけ。国民がもっと生き甲斐を感じられる社会システムはなかったのだろうか。例えば、リン鉱石の年間の採掘量を制限し不必要に所得を増やすことを止め、国内の観光業を育てるため島をテーマパーク化したり、海水浴場やダイビングができる海として整備したりしていたらどうなったか。一部の国民に外国から専門家を招きノルウェー政府年金ファンドや日本の年金積立金の運用方法を勉強させ資金の運用をさせる。世界の金融制度を勉強させていたらナウル銀行の破綻もなかっただろう。様々な分野の専門家を海外から招き、学生に勉強をさせて専門家を育てていたらナウル経済の破綻はなかった。カネがあるから単に配るというのでなく、国民全員がより充実した仕事ができるようにするためにカネを使うのがJODであり、解放主義社会の精神である。もしナウル政府が国民に対し、「ナウルを近代国家にするために協力してほしい。協力してくれた人にはその貢献度に応じ奨励金を払う」と宣言していたら、ナウル人の協力者が多数現れたに違いない。それは明治維新の時の日本の事情に似ていただろう。

同じような事情はAI/ロボットが雇用を人間から奪ったときも遭遇するに違いない。その時人間は何をすればよいのか皆で考えなければならない。よいアイディアを出した人には報奨金を払うべきだ。全員が同額の給料を受け取るというベーシックインカムから一歩進んだ考えとなる。

ナウルの失敗はどこの国でも起こりうる。AI/ロボットが発展し一握りの資本家だけに富が集中すると資本家は国民の利益を無視し国を間違った方向に変えてしまう可能性がある。

ナウルの状況と似ているところがあるのがベネズエラである。1950年頃から原油高のため西半球で最も経済的に繁栄する国となったが石油収入に頼り国内産業を育ててこなかった。富が一部の富裕層に集中した。2013年3月5日、チャベス大統領は癌により死去した後、腹心であったニコラス・マドゥーロ副大統領が政権を継承した。その後の数年間、暴力と飢えがベネズエラの象徴となり、ハイパーインフレが発生し、同国から脱出する移民の数がかつてないレベルにまで達した。ベネズエラ経済は政策の失敗や汚職により急激に悪化し、同国は危機の只中にあった。2018年5月のマドゥロ氏は再選されたが、抑圧・詐欺・不正選挙であると報じられ、大いに批判された。かつて裕福な国だったベネズエラだが、原油収入に頼り国内産業が育たず、富の集中が起こり、原油価格の下落で経済が破綻し極度の物不足となった事を考えればナウル共和国の失敗に共通するところがある。ただし豊富な原油や天然資源により莫大な貿易利益がありながら貧富の格差が大きく、政府の腐敗に反発した国民が暴動を起こしている点は異なっている。つまりベネズエラの場合はベーシックインカムとは程遠いのである。

ナウルとベネズエラで共通していることは、富と権力がごく一部の人たちに集中し民主主義が守られず国民のための政治ができなくなってしまっていることである。現在も格差拡大が問題になっている。労働がAI/ロボットに奪われると富はごく一部の資本家に集中することとなり、悪くすると一握りの資本家が政治にも影響力を及ぼすようになり政治が腐敗すると国民は悲惨な運命をたどることとなる可能性がある。それを防ぐには民主的な政府が続いている間に国が通貨発行権を行使し政府が資本家に集中しつつある富を買い取ることだ。具体的には例えば株式を徐々に買っていくことだ。ただし、原則的に経営には口出ししないほうがよい。政府はその企業の経営など分かるわけがなく、余計な口出しをすると経営がおかしくなる可能性がある。ただし企業の利益の一部を政府が吸収し、それを国民に配るようにする。国民から公正な選挙で選ばれた政府であれば、国民の生活を第一に考えるだろうから、このようなことができるはずでありこれこそが解放主義である。

解放主義においては、希望者全員を公務員として採用する。そして本人の希望を聞き適材適所で仕事を割り当てる。社会の発展、人の幸福に大きく貢献した人には多くの給料を払うが、最も給料の少ない人でも十分暮らしていけるようにする。この意味解放主義はベーシックインカムの考えを含んでいるし、その改良版であるともいえる。

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2019年3月11日 (月)

ナウル共和国はベーシックインカムで崩壊した(No.341)

ナウル共和国は南太平洋に浮かぶ人口約1万人、面積21k㎡の小さな国で、元々は漁業と農業で生計を立てていた。19世紀後半から始まったリン鉱石の採掘で莫大な収入があり、その半分を国民に均等に分配し残りを海外に投資するというベーシックインカムが実施され、一人当たりの所得は世界一になった。税金はなく、医療・教育は無料、年金保障など手厚い社会福祉を国民に提供した。労働はすべて外国人労働者が行いリン鉱石の採掘も外国人労働者に任せきりだった。その結果勤労意欲が失われた。失業率90%である。

2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』で番組の取材班がナウルに入った。日中の街中をうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。これは1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。食事は外食ばかりで働かない。学校では働き方を教え、新たな産業が生まれることを期待している。政府の家父長制化とともに支配者や特権階級への強権や富の集中が進んでいる。マネーロンダリングや不法パスポートの発行などが行われた。ナウルの政治・経済情勢は毎年のように続く政変、公務員への給料未払いなど混沌としている。20世紀末鉱物資源が枯渇、主要産業は崩壊。インフラ整備が後回しにされている。国民の肥満率が最も高い国、国民の71.1%が肥満で30%が糖尿病を患う。肥満率も罹患率も世界一である。

これで分かることはベーシックインカムでは人は必ずしも幸せにならないということだ。動物園の檻の中のライオンのように意味もなくうろつき回るのと同様にベーシックインカムでは人は何をして暮らせばよいのか分からなくなる。それに対し解放主義社会(注)なら人は生き甲斐を感じる生活を送れる。AI/ロボットに仕事を任せることができる時代が来たら、希望者全員を公務員にして各自が生き甲斐を感じる仕事ができるようにする。例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、哲学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師等である。国が仕事を作り出し、サポートする。これをJODとよぶ。例えば音楽家になりたい人が多数いたら全員を音楽家として雇う。演奏会場を多数準備し、演奏会を支援する。観客が少なすぎる時はロボットで補う。

何としても民主主義は守らなくてはならない。政治は公正な選挙で選ばれた代表者・政治家によって行われるべきだ。富が一部の資本家に集中したら、政治的影響力を持つようになるから、過剰な富の集中が起こらないように、国は通貨発行権を利用し、株や土地などを買い取り、国の主要な利益は国に入るようにし、その利益を国民に分配する。

また才能がある人、頑張る人にはそれなりの報酬を与えるべきだ。私企業の存続も私有財産制も維持し、頑張れば大金持ちになれるようにする。公務員として働く場合でも、その業績に応じて給料は決まる。大成功すれば、公務員として働いてもその給料で財を成すことができる。公務員なら最低でも十分生活できる給料を受けることができる。 

(注)解放主義社会
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html 

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2019年3月 4日 (月)

明石順平の財政破綻論に反論する(No.340)

明石順平氏の『データが語る日本財政の未来』という本を読んだ。明石氏はこの本を読んでも「日本は絶対に財政破綻しない」と言えますかと聞いている。答えは簡単、もちろん「言える」である。

明石氏の主張1:日本には資産があるから財政破綻しないと言う人がいるが、これらは借金返済に使えない。資産というのは年金積立金の運用寄託金(121兆円)、道路・堤防等の公共用財産、外貨証券(82兆円)、財政融資資金貸付金(139兆円)、対外純資産だそうだ。
反論:もちろん、こんなもの借金返済には使えないし使う必要は全くない。日本の国の借金は過去130年間で500万倍になった。この間借金は増え続けており、借金の増加は流通する通貨量の増加と密接に関係している。経済を拡大するにつれ借金は増えていくのは自然の成り行きであり、明石流のやり方での借金返済は空想にすぎず無意味であり馬鹿げている。

明石氏の主張2:日銀がお金を刷って国債を買っても、日銀当座預金という負債に入れ替わるだけだから借金は無くならない。
反論:例えば日銀が日銀券を刷って国債を買ったとしよう。明石氏によれば日銀券は日銀の負債だから借金返済になっていないと言いたいのだろう。百歩譲って日銀券が借金だとして、無利子・無期限の借金であり放っておいて構わない。そもそもこれを税金で返済しなければならないわけがない。預金通貨も同様であり、日銀当座預金が借金だという主張には無理がある。主張1で述べられたような馬鹿げた借金返済方法などではなく、日銀が刷ったお金で借金を返済すれば何の問題も起こらない。それが財政が破綻しないと言える十分な根拠である。

明石氏の主張3:日銀当座預金残高が増えると、インフレを止められなくなる。
反論:これも物余りの日本経済の現状を無視した空想にすぎない。インフレが止められなくなった例はすべて極度の物不足の状況下であり、しかも財政規模が急激に拡大している場合だ。これと反対に日本は物余りの状況であり、しかも財政規模はむしろ減少気味で歳出は2009年度には101兆円だったものが、2018年度には97.7兆円にまで下がった。デフレ脱却を目指しインフレ率を上げたいなら財政規模を拡大しなければならない。実質賃金も減少しているから消費も低迷が続く。物価は需要と供給の関係で決まる。需要不足の今、インフレ率を高めようとしても無理だし止められなくなるほどのインフレなど論外だ。デフレ脱却を困難にしているのは、「財政破綻するぞ」という悪質なデマを流す連中(明石氏のように)の存在だ。騙されやすい人たちは、このようなデマに簡単に騙されてしまう。その結果、企業の経営者は設備投資を抑え、消費者は消費を抑える。

消費増税などで消費を抑えている反面供給力は増している。辞書や地図帳や旅行ガイドなどはかつては本屋で買っていたが、今はネットでもっと良いものが無料で見ることができる。音楽CDもネットで無料で聞けるし、安くダウンロードも可能だ。AI/ロボットが次々と人の労働を奪いつつあるのも物価が上がりにくくしている。コメの供給過剰も続いており、減反政策も事実上維持されている。現代では昔と違い需要が増えても生産ラインを増やし生産を増強すれば、大量生産で逆に値段を下げることもできる。明石氏の言うように日銀当座預金残高が増えると、インフレを止められなくなるのであれば、もうとっくに2%のインフレ目標は達成されていなければならない。

今、日本で必要なのは、明石氏のようなデマで国民が不安に陥るようなことがないよう教育し、安心して生活ができるようにすることだ。

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