ナウル共和国はベーシックインカムで崩壊した(No.341)
ナウル共和国は南太平洋に浮かぶ人口約1万人、面積21k㎡の小さな国で、元々は漁業と農業で生計を立てていた。19世紀後半から始まったリン鉱石の採掘で莫大な収入があり、その半分を国民に均等に分配し残りを海外に投資するというベーシックインカムが実施され、一人当たりの所得は世界一になった。税金はなく、医療・教育は無料、年金保障など手厚い社会福祉を国民に提供した。労働はすべて外国人労働者が行いリン鉱石の採掘も外国人労働者に任せきりだった。その結果勤労意欲が失われた。失業率90%である。
2007年に日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』で番組の取材班がナウルに入った。日中の街中をうろつき回る多数の島民の姿が映し出されていた。これは1世紀近くにわたり、働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないためである。食事は外食ばかりで働かない。学校では働き方を教え、新たな産業が生まれることを期待している。政府の家父長制化とともに支配者や特権階級への強権や富の集中が進んでいる。マネーロンダリングや不法パスポートの発行などが行われた。ナウルの政治・経済情勢は毎年のように続く政変、公務員への給料未払いなど混沌としている。20世紀末鉱物資源が枯渇、主要産業は崩壊。インフラ整備が後回しにされている。国民の肥満率が最も高い国、国民の71.1%が肥満で30%が糖尿病を患う。肥満率も罹患率も世界一である。
これで分かることはベーシックインカムでは人は必ずしも幸せにならないということだ。動物園の檻の中のライオンのように意味もなくうろつき回るのと同様にベーシックインカムでは人は何をして暮らせばよいのか分からなくなる。それに対し解放主義社会(注)なら人は生き甲斐を感じる生活を送れる。AI/ロボットに仕事を任せることができる時代が来たら、希望者全員を公務員にして各自が生き甲斐を感じる仕事ができるようにする。例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、哲学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師等である。国が仕事を作り出し、サポートする。これをJODとよぶ。例えば音楽家になりたい人が多数いたら全員を音楽家として雇う。演奏会場を多数準備し、演奏会を支援する。観客が少なすぎる時はロボットで補う。
何としても民主主義は守らなくてはならない。政治は公正な選挙で選ばれた代表者・政治家によって行われるべきだ。富が一部の資本家に集中したら、政治的影響力を持つようになるから、過剰な富の集中が起こらないように、国は通貨発行権を利用し、株や土地などを買い取り、国の主要な利益は国に入るようにし、その利益を国民に分配する。
また才能がある人、頑張る人にはそれなりの報酬を与えるべきだ。私企業の存続も私有財産制も維持し、頑張れば大金持ちになれるようにする。公務員として働く場合でも、その業績に応じて給料は決まる。大成功すれば、公務員として働いてもその給料で財を成すことができる。公務員なら最低でも十分生活できる給料を受けることができる。
(注)解放主義社会
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。「解放主義社会」は事実上自分の好きなことを職業に出来ると云う点でベーシック・インカムを導入したナウルとは決定的に違います。「人は本来、面白いから仕事をするのだ」、この高橋伸夫氏の言葉の重要性を我々は深く胸に刻み付ける必要があります。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2019年3月13日 (水) 12時34分