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2019年4月

2019年4月29日 (月)

平成時代に没落した日本経済、どうやれば没落を防げたか(No.347)

平成時代は世界経済の中で日本が大きく没落した時代であった。平成元年の世界時価総額ランキングで日本企業が上位を独占していた。日本企業は上位10位内に7社、上位50社以内に32社も入っていた。平成31年では50位以内に入っているのはトヨタだけでそれもやっと45位である。現在の日経平均は最高値の56%にまで下がっているし、この間米国のダウ平均は約10倍に上昇している。この間、ドル換算でみた名目GDPは日本は1.6倍にしかなっていないが、米国は3.7倍、中国は27倍となっている。

日本を没落させたのは無理なバブル潰しであり絶対にやるべきではなかった。1990年9月、NHK5夜連続の土地問題の特集番組を放映、「地価は下げられる」で日本の地価を半分に引き下げることを提言した。1990年4月から1992年1月の間総量規制を行い、融資に枠をかけた。宮沢内閣は、年収の5年分で住宅確保できるまで地価を下げることを目標とした。地価を下げれば国民はもっと広い土地を安く買えるようになるのだろうか。日本の土地は37万平方キロメートルであって、一人当たりだとそれを人口で割ったものであり地価とは関係ない。国民を貧乏にすれば地価は下がる。実際政府は国民を貧乏にし、地価を下げた。それによって逆に住宅は建てられなくなった。バブルを潰そうとせず、土地の急騰を防ぐ対策だけにしておけば、日本は現在まで豊かなまま続いていただろうし、人はそれをバブルと呼ばなかっただろう。バブル崩壊の後始末も不要だった。

結果として1990年、株安、債券安、円安のトリプル安となり、成長を期待して世界中から集まっていた資金が一斉に国外へ逃避し逆にフランクフルト市場はトリプル高となった。結果として巨額の不良債権が発生し銀行も企業も家計もカネ不足に陥り日本経済の没落が続くこととなった。カネ不足は通貨発行権を有する政府が補えば簡単に解消できたが、政府は逆に増税・歳出削減を行った。カネ不足で成長しない日本に投資しようとする人は減り日本の没落が続いた。

例えば1995年、住専問題が注目を浴びた。これは住宅ローン専門の貸付業者がバブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、その処理に6850億円の公的資金を投入するという閣議決定が騒動の始まりとなった。その処理に手間取る間に不良債権は増え続け、1997年には北海道拓殖銀行が経営破綻、山一証券が自主廃業を決定、1998年には長銀を一時国有化し、日債銀の破綻を認定した。1997年半ばをピークに景気は下降局面に入った。公的資金投入のタイミングが遅れたことが致命傷となった。米国が2008年リーマンショック後の世界金融危機で米国が対応したように、バブル崩壊後、速やかに銀行に資本注入すべきだった。できればこの機会に多くの銀行を国有化し統合しておけばよかった。

戦前にも1927年3月の国会審議で、当時の蔵相がある民間銀行について、営業を続けているにもかかわらず破綻したと不用意な答弁をしたことで金融不安が広がり、多くの銀行が取り付け騒ぎに遭った。その後当時の大手商社、鈴木商店が倒産した。2008年のリーマンショックも国際的な金融危機であった。このように民間銀行がネックとなって大不況が起こされている。もし政府がすみやかにカネを注入していたら、金融危機は簡単に防げた。

2018年11月日銀は資産が553兆円でGDPを上回ったと発表した。これは刷ったお金(通貨発行権を行使してつくり出されたお金)で様々な資産を買い取った結果であり、その額は住専で問題になった6850億円の約1000倍だ。国は通貨発行権を行使すればいくらでもお金はつくれる。たったこれだけで住専問題は簡単に片付いていた。1997年の金融危機などの処理も刷ったカネを使えば簡単だった。実際スティグリッツも榊原英輔もそれを推奨した。銀行に資本注入するタイミングで銀行を国有化していれば、それ以後金融不安は起こりえず、政府は何の不安もなく、財政を拡大でき、デフレ脱却、日本経済の復活ができたはずだ。そもそもバブルの発生自体、無理に金融だけで景気刺激を行おうとしたのが原因であり、金融緩和だけでなく財政拡大を行っていたら、あのようなバブルの発生もなかった。

国債の発行残高が増えてきて、日銀の国債やETFの保有残高が巨額になってくると出口戦略を心配する人が多くなってくる。余計な悩みは尽きないようだ。「景気が回復してきて利払いが増えてくると財政が破綻するのではないか。日銀当座預金の金利が上昇し日銀が損失を被るのではないか。日銀の保有する国債の価値が下がり、日銀が過小資本となれば、信用が揺らぎ、政府の支援が必要となるのではないか。銀行が保有する国債の価値が下がり、銀行が破綻するのではないか。」逆に低金利が続けば銀行が破綻するのではないかということも心配する。このような悩みは銀行が国有化されている中国ではあり得ないし、日本も銀行を国有化したら、これらの悩みは一掃するのだ。政府と国有銀行と日銀は一体となって協力し合えるし、国債やカネがこの3者の中でどのように動こうと国民はほとんど気にしなくて良い。つまり金融が極めて安定し、不況に陥る心配が極めて少なくなる。だからこそ思い切った財政政策を断行できる。失われた20年などということはあり得なかったのである。

減税・財政拡大を行えば需要が拡大し制御不能なインフレになると主張する人がいる。しかし平成の30年間で米・ビール・一般家具・背広服・ネクタイ・男性用下着・スカートなど多くの品目で支出額が大きく減少している。これらは供給が追いつかなくなったというより、供給にはまだ余裕があるが、需要が不足していることや生産の効率化や海外からの調達が進み価格が下がったことなどが原因だろう。逆に支出額が大きく伸びているのは通信費だが、これも需要が増えれば価格が暴騰するという性質のものでもない。ということは供給に余裕があり、需要拡大でも制御不能なインフレになるわけがない。その意味で平成時代、財政拡大で需要不足を補うべきだったし、今でもそうすべきだと言える。

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2019年4月22日 (月)

日本の銀行を国有化せよ(No.346)

平成元年には世界時価総額ランキングの上位に日本の銀行がずらり並んでいた。2位が日本興業銀行、3位が住友銀行、4位が富士銀行、5位が第一勧業銀行、7位が三菱銀行であった。それが平成31年になると没落が著しい。合併したにもかかわらず上位50位以内に日本の銀行はいなくなった。バブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、株の下落で自己資本比率が下がり、BIS規制のお陰で貸し渋りや貸しはがしをやらざるを得なくなり多くの中小企業が破綻した。銀行は続く低金利で利ざやが取れず利益を出すのに苦しんでいる。

一方中国の国有化された銀行の台頭が目覚ましい。2019年の世界時価総額ランキング14位に中国工商銀行、15位に中国建設銀行、40位に中国農業銀行が入っている。中国経済の発展はこれらの国有銀行が大きな役割をしていると思われる。そうであれば日本も銀行を国有化したらまた日本は成長を始める。日本国内の時価増額ランキング20位以内の銀行の時価総額の合計は約59兆円である。日本銀行がお金を刷って買った国債の額が400兆円であることを考えれば、59兆円は大した額ではないから買ってしまったとしよう。そうなると、国債の保有者は日銀、国有銀行、郵便局、年金基金などとなり大部分が国または国の支配下にある金融機関ということになる。 

これは国債の取引がほぼ国の中だけで行われ、「国」がほぼブラックボックス化してしまうことになる。つまりカネの貸し借り、金利の支払いはほぼブラックボックスの中で行われるので国民には関係なくなる。国民に唯一関係あるのは通貨発行権を持つ国が発行したお金が国民に配られることだけである。国債の暴落はあり得ない。国債の保有者が国であれば投げ売りする必要はないのだ。政府が売り出す国債を国が買うのだから財政の破綻もない。金利の上昇でも困らない。利払いは国に対して行われるのだから。1982年の鈴木善幸内閣時代から常に悩まされていた財政危機への懸念がこれで完全に一掃される。そうであれば、デフレ脱却をしたい日本政府は躊躇なく財政を拡大し経済を活性化できる。

そうすればインフレになるという反論があるかもしれない。デフレ脱却を目指している日本政府だし、それはインフレ経済を目指していることだ。制御不能のインフレの恐れを主張する人がいるかもしれないが、銀行の国有化は中国と同じであり中国でもインフレ率はマイルドである。

銀行の国有化と同時に行うべきなのは銀行の統合である。ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併の可能性が検討されている。両行の従業員数の合計は約13万3000人だが合併すれば3万人の削減が可能になるという。つまり銀行の統合で重複する部門を削って収益をアップし、多くの行員を別の仕事に回す事ができる。例えば業務のAI化である。2000年に600人いたゴールドマンサックスのトレーダーはAIに置きかえられ2人になった。これにより2.5億ドル以上の人件費が節約できた。長期に続く低金利のお陰で銀行は経営難に陥っている。過去に安く買った国債を高値で売って利益を出しているが、それも一時的な収入に過ぎず、特に多くの地方銀行は赤字に陥る可能性が増すと日銀は指摘している。不採算の銀行を維持する必要はない。小さな銀行が乱立していては銀行のAI化は進まない。統合してAI化を集中して行うのがよい。トレーディング、不正防止、アンチマネーロンダリング、企業情報の収集、資金運用のアドバイス、融資、接客、コールセンターなどの業務のAI化を進めるとよい。銀行を統合し国有化して信用力を増し、国際競争力を高めれば日本企業を資金的に強力にバックアップでき、日本経済復活に繋がる。

 

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2019年4月10日 (水)

世界を敵に回しても消費増税を強行しますか(No. 345)

4月5日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、日本で10月に予定される消費税率引き上げについて「安倍晋三首相は増税によって、景気を悪化させようと決心しているように見える」とやゆする社説を掲載し、安倍氏にとって「増税は自傷行為になろう」と皮肉った。社説は、日銀企業短期経済観測調査(短観)など日本の経済指標はさえない内容だと指摘。輸出頼みの日本経済は中国や欧州など世界経済の減速の影響を受けやすいと強調した。

そもそも世界的な不況に対しては世界が協力して克服する努力をするべきだ。リーマショックの際には中国だけで57兆円もの景気対策を行い世界を救った。今回の不況でも中国は40兆円超の減税・インフラ投資を行う。アメリカのトランプ大統領は2017年12月、169兆円もの大型減税を実施した。それにより国民は年85万円を得た。それに加え大型法人税減税も行っている。今度は日本が大規模景気対策をする時だ。

トランプ大統領は、『アメリカが日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という補助金を出しているからだ』と言っている。消費増税により国内景気を落ち込ませ、輸入が減り、消費税という補助金により輸出を伸ばすやり方に対し、海外から厳しい批判があるのは避けられない。

日本の経済成長率は世界最低レベルにあり、長期のデフレに苦しみ、政府はデフレ脱却を目標にしている。2019年度予算では増税による需要減少を補うための対策に2兆円が投じられる。増税によるネットの家計負担額2.2兆円が税収増になるが、このほぼすべてが支出されるので財政赤字の削減には回らないのだから増税本来の目的を放棄することになる。しかしプラスマイナスゼロというわけではない。消費者にとってはほとんど意味の無い軽減税率を導入するために、新しいレジの導入で複雑化という大変な負担を国民に強いるし、何か軽減税率が適用され何が適用されないかという無駄な混乱を引き起こす。

時事世論調査「生活のゆとりに関する世論調査」によれば10月の消費増税で家計を見直すと答えた人が57.2%、見直さないと答えた人が37.2%であった。ということは間違いなく消費は落ち込むのである。いくら政府が消費が落ち込まないよう対策を打ったとしても、そんなもの消費者には関係ない。またデフレ脱却を目指す政府だが、景気対策として幼児教育無償化という景気対策は物価を0.3%押し下げてしまいデフレ脱却に逆行するはたらきを持つ。

政府統計の信頼性に関して、実質所得が問題視されたが1990年=100としたときの実質賃金指数は次のようになっている。
スウェーデン  138.4
フランス    126.4
ドイツ     116.3
米国      115.3
日本       89.7

日本だけがマイナスだ。これでは消費が増えるわけがないし、消費増税が消費を更に減らす。消費もGDPも減らし、日本はどんどん貧乏になっていく。貧乏な国に対しては、中国資本が容赦なく入ってきて自分たちのものにしてしまう。2019年度予算が成立した今、もはや増税延期などできないと政府は主張するのだろうが、この時期での消費増税は余りにも大きなリスクのように思われる。

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2019年4月 1日 (月)

古い経済理論では説明できない現代の経済、代わりに新経済理論MMTが登場(No.344)

 

米国で「現代貨幣理論(MMT)」が大論争になっている。「財政は赤字が正常で黒字のほうが異常。むしろ、財政は拡大すべきだ。」とMMT論者は主張する。この理論にアメリカ民主党29歳の新星で、将来の女性初大統領とも言われているオカシオコルテス下院議員が支持を表明したことで、世論を喚起する大きな話題となっている。日本経済復活の会は2002年に発足して以来、一貫して財政拡大を主張してきたのでMMTの考えは大賛成だ。ただしどんな時でも無制限に財政は拡大すべきだとは言わない。例えば1936年の二・二六事件で当時インフレを懸念し財政拡大を拒んでいた大蔵大臣高橋是清が殺害され、軍事費調達のための無理な財政拡大が行われ国民生活に深刻な悪影響をもたらされた。あの時代であれば我々はもちろん財政拡大に反対しただろう。

 

戦後の経済復興の過程で物不足もあり、財政拡大でかなりインフレ率が高い時期も経験した。戦争の前後で物不足時代に財政を拡大し需要が供給を大きく上回りインフレになったことを反省として、政府の財政赤字が供給不足を更に悪化させインフレを加速するから財政赤字は増やすべきでない、政府債務は増やすべきではないという考え(経済理論)が広まったのは理解できる。ちなみに激しいインフレが起きていた戦後の日本で1949年ドッジ・ラインと呼ばれる財政引き締め政策が行われ、インフレは止まるどころか逆にデフレに陥った。このように、インフレは常に制御可能であり簡単に止めることが出来る。

 

しかしその後経済状況は一変した。生産設備の改良や拡充のお陰で大量生産が可能となり供給が飛躍的に伸びたのにも拘わらず、政府はそれにバランスが取れるような需要拡大策を怠ったために、需要が供給に追いつかなくなり、デフレに陥ってしまった。それでもまだ供給不足の時代の古い経済理論から抜けきれない人が沢山いる。「財政赤字=悪、国の借金が増えれば将来世代へのツケになる。」という供給不足の時代の考え方を捨て、新しい時代に対応すべきだという経済理論がMMTである。通貨発行による財政拡大だから将来世代へのツケにはならない。世界を見ても先進国のインフレ率は近年大幅に下がっており、大量生産による供給過剰の時代が来ているのは明かであり、財政拡大を悪という考えを捨て、デフレを脱却するまで財政を拡大すべきだ。

 

世界の中で日本が特に需要不足が深刻になっているのには4つ理由がある。

①日本には倹約が美徳という文化がある。

②バブル崩壊の後、株や土地の下落で失敗した経験を持つ人が多く、再び不況になるのではという警戒感から、ローンを組んでの支出に躊躇する。

③日本人は借金が嫌いで、できるだけ早く返済したいと考える傾向が強く、「国の借金」が増えるのを極端に嫌っている。しかし実際は国の借金と家計の借金ではまるで違う。

④少子高齢化で老後に備え貯金をする必要性を感じている。

 

このような悪条件が重なり、日本はデフレ下でも緊縮財政が続いており、成長する世界経済の中、日本経済は大きく没落しつつある。この状況を止めるにはMMT理論に従い、財政赤字を拡大すべきだ。その方法は

①消費増税を止め、逆に消費減税をする。

②歳出拡大をする。最も資金を投入すべきなのは、将来日本経済の牽引役になってくれる分野、特にAIの分野への投資だ。AIに特化した研究学園都市をつくり、巨大な研究所に超高給で世界中から専門家を引き抜く。国内からも、AIに関し特に優秀な生徒・学生を特別待遇で育てるとよい。

 

政府が財政赤字を拡大するとクラウディングアウトで民間投資を圧迫するという意見があるが、現在日銀当座預金が約400兆円あり、少々の景気対策で民間の資金調達を圧迫することはあり得ない。二・二六事件が起きた後は、民需を圧迫してでも軍備に資金を使いたかったから実際民需は圧迫され、国民生活は不自由したが、国民も「戦争に勝つためなら」とそれを受け入れた。今は財政赤字拡大でも資金的に民需を圧迫はしないが、人的資源の確保という面では失業率が低いので民間を圧迫する可能性はある。しかし、特にAIの分野の強化は日本の将来にとって極めて重要であり、先行する米中を追うには国が本腰を入れるしかないのだから、政府主導を優先すべき時だ。

 

国の借金を増やすとあるいは財政を拡大するとハイパーインフレになると、古い経済学から抜けきれない人は言う。その法則は需要が供給を大幅に上回り、生活物資が極端に不足している場合しか成り立たない。日本で言えば終戦直後だろう。そういう人には時代が変わったのだと教えてやらなければならない。少ない人数で大量生産ができるようになったし、国際分業も進んでいる。国が財政支出を増やしたために、可処分所得が増え、消費が拡大したとして、具体的にどの商品が品不足になるだろうか。米、パン、鉛筆、車、書籍、新聞、家具・・・など考えて見て、各業界の事情を調べれば、どの商品も深刻な品不足に陥って、価格が10倍、100倍に跳ね上がるとは考えられないと分かる。深刻な食糧不足で、闇市でいくら値段が高くても買わなければ餓死するような状況ではないと誰もが知っている。

 

100年余り前、物理学においても古典物理学(ニュートン力学)が成り立たなくなる世界があることが分かった。そこでミクロの世界には量子論、光速に近づいた世界では相対論という新しい物理学が生まれた。今まさに経済学においても古い経済学が適用できなくなり、MMTのような新経済学でなければ役に立たない時代が来た。

 

今、国の借金を増やすと将来世代が返さなければならないと勘違いしている人がいる。しかし、政府が国債(国の借金)を発行し銀行が買った後、日銀がお金を刷ってそれを買い取っている。実質的に日銀がお金を刷ってそれを国が国民のために使っている。同じ事は将来世代もできるわけで、将来世代へのツケにはならない。需要不足の時代には通貨を発行し国民に渡し、消費を伸ばすことによって経済を拡大する必要があるのだから、発行された通貨は成長通貨と呼ばれ健全な経済発展には欠くべからざるものである。IMFによると、世界190カ国中、財政黒字の国は36カ国のみ、僅か19%でしかない。やはり「財政は赤字が普通」と言ってもよさそうである。

 

ところでMMTとセットで語られるのがJGP(Job Guarantee Program)である。これは政府が賃金支払基金を作り、その地域のニーズを鑑みて必要な業務をリストアップして、失業者を雇用してその業務を担わせるというものである。筆者はこれとは別に労働が完全にAI/ロボットに代替された未来社会においては政府が希望する国民全員を、自分がやりたい仕事がやれるように職を用意し公務員として雇うというJOD(Job on Demand)を提案している。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/job-on-demand-2.html

 

ただしこれは未来の世界の話であり今すぐ行うべき対策として筆者はミニマムサプライを提案した。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/no280-cfbf.html

 

JGPは現在すぐにでも実行可能な政策と言うことだが課題はある。失業率もかつては5%を超えていたが、2019年2月現在は2.3%にまで下がっている。この2.3%の失業者を働かせようとしても簡単ではないかもしれない。真剣に職を探しているのに見つからないという人にはJGPは助かるかもしれない。しかし、そうでない人もいる。

 

①議員、特定の分野の研究者、音楽家、弁護士など、競争が激しいとか試験が難しいとかで仕事獲得の準備に長い時間がかかるが生活費は稼がなくてもなんとかなっているという人であれば、JGPで職の提示があっても興味を示さないかもしれない。いわゆる雇用のミスマッチだ。

②財産があり、生活のために稼ぐ必要がないけど、失業保険をもらうためだけに求職の登録をしている人はJDPには興味がないだろう。

③健康上の理由で働けなくなった人はJGPで助けるのか。働けなくなった人に職を紹介できない。

 

最低賃金を低くすればするほど自然失業率は下がる。様々な個人の事情があり、景気がどんなによくなっても自然失業率はある程度のレベルに留まりゼロにはならない。どうしても勉強したくない子どもに勉強をさせることはできないように、どうしても働きたくない人に働かせるのは難しいのではないか。筆者はJGPよりミニマムサプライのほうが現実的だと考える。

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