平成時代に没落した日本経済、どうやれば没落を防げたか(No.347)
平成時代は世界経済の中で日本が大きく没落した時代であった。平成元年の世界時価総額ランキングで日本企業が上位を独占していた。日本企業は上位10位内に7社、上位50社以内に32社も入っていた。平成31年では50位以内に入っているのはトヨタだけでそれもやっと45位である。現在の日経平均は最高値の56%にまで下がっているし、この間米国のダウ平均は約10倍に上昇している。この間、ドル換算でみた名目GDPは日本は1.6倍にしかなっていないが、米国は3.7倍、中国は27倍となっている。
日本を没落させたのは無理なバブル潰しであり絶対にやるべきではなかった。1990年9月、NHK5夜連続の土地問題の特集番組を放映、「地価は下げられる」で日本の地価を半分に引き下げることを提言した。1990年4月から1992年1月の間総量規制を行い、融資に枠をかけた。宮沢内閣は、年収の5年分で住宅確保できるまで地価を下げることを目標とした。地価を下げれば国民はもっと広い土地を安く買えるようになるのだろうか。日本の土地は37万平方キロメートルであって、一人当たりだとそれを人口で割ったものであり地価とは関係ない。国民を貧乏にすれば地価は下がる。実際政府は国民を貧乏にし、地価を下げた。それによって逆に住宅は建てられなくなった。バブルを潰そうとせず、土地の急騰を防ぐ対策だけにしておけば、日本は現在まで豊かなまま続いていただろうし、人はそれをバブルと呼ばなかっただろう。バブル崩壊の後始末も不要だった。
結果として1990年、株安、債券安、円安のトリプル安となり、成長を期待して世界中から集まっていた資金が一斉に国外へ逃避し逆にフランクフルト市場はトリプル高となった。結果として巨額の不良債権が発生し銀行も企業も家計もカネ不足に陥り日本経済の没落が続くこととなった。カネ不足は通貨発行権を有する政府が補えば簡単に解消できたが、政府は逆に増税・歳出削減を行った。カネ不足で成長しない日本に投資しようとする人は減り日本の没落が続いた。
例えば1995年、住専問題が注目を浴びた。これは住宅ローン専門の貸付業者がバブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、その処理に6850億円の公的資金を投入するという閣議決定が騒動の始まりとなった。その処理に手間取る間に不良債権は増え続け、1997年には北海道拓殖銀行が経営破綻、山一証券が自主廃業を決定、1998年には長銀を一時国有化し、日債銀の破綻を認定した。1997年半ばをピークに景気は下降局面に入った。公的資金投入のタイミングが遅れたことが致命傷となった。米国が2008年リーマンショック後の世界金融危機で米国が対応したように、バブル崩壊後、速やかに銀行に資本注入すべきだった。できればこの機会に多くの銀行を国有化し統合しておけばよかった。
戦前にも1927年3月の国会審議で、当時の蔵相がある民間銀行について、営業を続けているにもかかわらず破綻したと不用意な答弁をしたことで金融不安が広がり、多くの銀行が取り付け騒ぎに遭った。その後当時の大手商社、鈴木商店が倒産した。2008年のリーマンショックも国際的な金融危機であった。このように民間銀行がネックとなって大不況が起こされている。もし政府がすみやかにカネを注入していたら、金融危機は簡単に防げた。
2018年11月日銀は資産が553兆円でGDPを上回ったと発表した。これは刷ったお金(通貨発行権を行使してつくり出されたお金)で様々な資産を買い取った結果であり、その額は住専で問題になった6850億円の約1000倍だ。国は通貨発行権を行使すればいくらでもお金はつくれる。たったこれだけで住専問題は簡単に片付いていた。1997年の金融危機などの処理も刷ったカネを使えば簡単だった。実際スティグリッツも榊原英輔もそれを推奨した。銀行に資本注入するタイミングで銀行を国有化していれば、それ以後金融不安は起こりえず、政府は何の不安もなく、財政を拡大でき、デフレ脱却、日本経済の復活ができたはずだ。そもそもバブルの発生自体、無理に金融だけで景気刺激を行おうとしたのが原因であり、金融緩和だけでなく財政拡大を行っていたら、あのようなバブルの発生もなかった。
国債の発行残高が増えてきて、日銀の国債やETFの保有残高が巨額になってくると出口戦略を心配する人が多くなってくる。余計な悩みは尽きないようだ。「景気が回復してきて利払いが増えてくると財政が破綻するのではないか。日銀当座預金の金利が上昇し日銀が損失を被るのではないか。日銀の保有する国債の価値が下がり、日銀が過小資本となれば、信用が揺らぎ、政府の支援が必要となるのではないか。銀行が保有する国債の価値が下がり、銀行が破綻するのではないか。」逆に低金利が続けば銀行が破綻するのではないかということも心配する。このような悩みは銀行が国有化されている中国ではあり得ないし、日本も銀行を国有化したら、これらの悩みは一掃するのだ。政府と国有銀行と日銀は一体となって協力し合えるし、国債やカネがこの3者の中でどのように動こうと国民はほとんど気にしなくて良い。つまり金融が極めて安定し、不況に陥る心配が極めて少なくなる。だからこそ思い切った財政政策を断行できる。失われた20年などということはあり得なかったのである。
減税・財政拡大を行えば需要が拡大し制御不能なインフレになると主張する人がいる。しかし平成の30年間で米・ビール・一般家具・背広服・ネクタイ・男性用下着・スカートなど多くの品目で支出額が大きく減少している。これらは供給が追いつかなくなったというより、供給にはまだ余裕があるが、需要が不足していることや生産の効率化や海外からの調達が進み価格が下がったことなどが原因だろう。逆に支出額が大きく伸びているのは通信費だが、これも需要が増えれば価格が暴騰するという性質のものでもない。ということは供給に余裕があり、需要拡大でも制御不能なインフレになるわけがない。その意味で平成時代、財政拡大で需要不足を補うべきだったし、今でもそうすべきだと言える。