日本の銀行を国有化せよ(No.346)
平成元年には世界時価総額ランキングの上位に日本の銀行がずらり並んでいた。2位が日本興業銀行、3位が住友銀行、4位が富士銀行、5位が第一勧業銀行、7位が三菱銀行であった。それが平成31年になると没落が著しい。合併したにもかかわらず上位50位以内に日本の銀行はいなくなった。バブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、株の下落で自己資本比率が下がり、BIS規制のお陰で貸し渋りや貸しはがしをやらざるを得なくなり多くの中小企業が破綻した。銀行は続く低金利で利ざやが取れず利益を出すのに苦しんでいる。
一方中国の国有化された銀行の台頭が目覚ましい。2019年の世界時価総額ランキング14位に中国工商銀行、15位に中国建設銀行、40位に中国農業銀行が入っている。中国経済の発展はこれらの国有銀行が大きな役割をしていると思われる。そうであれば日本も銀行を国有化したらまた日本は成長を始める。日本国内の時価増額ランキング20位以内の銀行の時価総額の合計は約59兆円である。日本銀行がお金を刷って買った国債の額が400兆円であることを考えれば、59兆円は大した額ではないから買ってしまったとしよう。そうなると、国債の保有者は日銀、国有銀行、郵便局、年金基金などとなり大部分が国または国の支配下にある金融機関ということになる。
これは国債の取引がほぼ国の中だけで行われ、「国」がほぼブラックボックス化してしまうことになる。つまりカネの貸し借り、金利の支払いはほぼブラックボックスの中で行われるので国民には関係なくなる。国民に唯一関係あるのは通貨発行権を持つ国が発行したお金が国民に配られることだけである。国債の暴落はあり得ない。国債の保有者が国であれば投げ売りする必要はないのだ。政府が売り出す国債を国が買うのだから財政の破綻もない。金利の上昇でも困らない。利払いは国に対して行われるのだから。1982年の鈴木善幸内閣時代から常に悩まされていた財政危機への懸念がこれで完全に一掃される。そうであれば、デフレ脱却をしたい日本政府は躊躇なく財政を拡大し経済を活性化できる。
そうすればインフレになるという反論があるかもしれない。デフレ脱却を目指している日本政府だし、それはインフレ経済を目指していることだ。制御不能のインフレの恐れを主張する人がいるかもしれないが、銀行の国有化は中国と同じであり中国でもインフレ率はマイルドである。
銀行の国有化と同時に行うべきなのは銀行の統合である。ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併の可能性が検討されている。両行の従業員数の合計は約13万3000人だが合併すれば3万人の削減が可能になるという。つまり銀行の統合で重複する部門を削って収益をアップし、多くの行員を別の仕事に回す事ができる。例えば業務のAI化である。2000年に600人いたゴールドマンサックスのトレーダーはAIに置きかえられ2人になった。これにより2.5億ドル以上の人件費が節約できた。長期に続く低金利のお陰で銀行は経営難に陥っている。過去に安く買った国債を高値で売って利益を出しているが、それも一時的な収入に過ぎず、特に多くの地方銀行は赤字に陥る可能性が増すと日銀は指摘している。不採算の銀行を維持する必要はない。小さな銀行が乱立していては銀行のAI化は進まない。統合してAI化を集中して行うのがよい。トレーディング、不正防止、アンチマネーロンダリング、企業情報の収集、資金運用のアドバイス、融資、接客、コールセンターなどの業務のAI化を進めるとよい。銀行を統合し国有化して信用力を増し、国際競争力を高めれば日本企業を資金的に強力にバックアップでき、日本経済復活に繋がる。
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コメント
今晩は。higashiyamato1979です。途轍もなく重要な論文です。日本全国に拡散しなければなりません。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2019年4月22日 (月) 17時49分
銀行に限らず金融機関の機能として投資的支出に対する資金供給がある。今の日本では海外に比べて投資機会が少ないうえにリスクを覚悟で新たな投資分野を創造する(企業がリスクを冒して新たな市場を創造する)こともあまり見られない。内部留保を貯め込んで経営の安定化を図ることに熱心だが、貯め込んだ資金を生かす能力が今の経営者には不足しているともいえる。特に大手企業組織は高齢化し官僚化している。既にビジネスモデルを確立した海外企業を巨額の資金で割高な値で買収するのが精々といったところ。そんな状況で銀行を国有化すれば「安定」はあっても「革新」や「発展」はない。巨大な官僚組織を生み出し非効率な資金運用がなされるだけのような気がしてならない。
投稿: デカメロン | 2019年4月22日 (月) 20時38分
今の銀行は経営基盤が弱く、斬新なアイディアを持つ意欲的な企業に思い切った融資をしないのでユニコーン等が育たなくなっています。これが国有企業となれば資金的に余裕ができるのでユニコーンを育てることができるようになります。またAI/ロボット開発のためにも巨額の資金が必要となり、銀行を統合し国有化することにより革新や発展の基礎が出来上がります。
投稿: 小野盛司 | 2019年4月22日 (月) 20時50分