MMT理論の正しさは、マクロ計量モデルで証明できる(No.350)
米中貿易戦争で米国も中国も経済的に大きなダメージを受けている。それによりGDPはアメリカで0.3%、中国で1.2%押し下げられる。アメリカは2017年12月に169兆円もの大型減税を実施し、中国は2019年1月15日と25日に預金準備率を0.5%ポイントずつ引き下げ、約2兆元(32兆円)の減税をした。イタリアは金融緩和、フランスは家計に対する減税政策を発表している。
日本の経済成長率は世界最低レベルであり政府の景気判断は6年ぶりに「悪化」に転じた。このような時に政府は10月に消費増税を実施しようとしている。本当に消費増税が予定通り実施されたら世界の笑いものになるのではないか。それに対し最近MMT(現代金融理論)が話題になっている。これは通貨発行権を持つ政府は財政赤字を増やしても財政破綻はあり得ない。だから不況時に増税も不要であり、財政を拡大して景気を回復させるべきだというものである。
日本経済復活の会の主張は捕捉した2002年以来、MMTを更に強化したものであり、マクロ計量モデルを使い経済への影響を確認しながら経済運営をせよというもの。我々は日経の日本経済モデルを使用し財政を拡大した場合の経済への影響を詳しく調べ、その結果は
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-8c6d.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/no115-e161.html
に公表している。結果は名目GDP,実質GDP、雇用者報酬は上昇し、物価も穏やかに上昇するのでデフレから脱却できる。金利は暴騰することはない。国の借金は増えるが、名目GDPはもっと増えるので、結果として国の借金のGDP比は減っていくので問題ない。この試算は完璧にMMT理論の正当性を証明するものである。金利やインフレ率の暴騰を予測し、MMTを否定する人がいる。しかしそんな話は1982年の鈴木善幸内閣の時代から繰り返し出てきている。何と37年間もの間ずっとウソを言い続けているのである。これだけ予言が当たらなければその論理はウソだったことぐらい馬鹿でもわかる。オオカミ少年ですら3回目のウソには誰も信用しなくなっている。
確かに物不足の時代には国の借金残高が増えれば金利もインフレ率も上がった。しかし、今は物余りの時代だ。政府が財政支出を増やしたからと言って急に深刻な物不足になる可能性はゼロである。そもそも世界は複雑なサプライチェーンでつながっており、日本が物不足になれば、これがチャンスとばかり、外国から商品がどっと入ってくる。それにロボットによる大量生産が可能な時代、生産はいくらでも拡大でき、大量に注文が来ればむしろ値段を下げることも可能だ。
我々は日経のモデルだけに頼るわけではない。「今増税などせずに減税・財政拡大をすべき」ということは日本の運命を決する大切な結論なのだから日本中のシンクタンクが持つマクロモデルを総動員して財政を拡大したら日本経済はどのような影響を受けるのかを検討すべきである。もし財政拡大でハイパーインフレになったり金利暴騰したりするという結論が導けたりしたら、過去の景気対策でなぜそうならなかったかも説明しなければならない。一度超インフレになると止められなくなるという珍説もあるが、第1次世界大戦後のドイツやオーストリアのハイパーインフレや終戦直後の日本のインフレも為政者の決断でピタリと止まっていることを忘れるなと言いたい。