日本国の借金は完済された、今は貯めたカネを使うとき(No.348)
国の借金が1000兆円を超えたと言われることがあるのだが、これは本当の意味の国の借金ではない。これは日銀が刷ったカネで買い取れば簡単に返済可能であり、実際すでにその多くは日銀が買い取って返済している。外国から借りたカネはそう簡単ではない。なぜなら日本はドルなどの外国のカネを刷ることはできないから。
日清・日露戦争の頃は日本は外貨不足に苦しんでいた。日清戦争での勝利で賠償金3億円を得たが、それに続く日露戦争では多額の外貨を必要とし外国から借りるしかなかった。そのため1904年から1907年にかけて、借換債調達まで含め約13億円弱の外債公債を発行した。1903年の一般会計歳入が2.6億円であったのを考えると、この借金がいかに巨額であったか分かる。日本は勝利に次ぐ勝利でロシアを土壇場まで追い詰めたものの、19か月の戦争期間中に巨額の出費があり国力の消耗が激しかったので、賠償金なしの講和の提案を受け入れるしかなかった。このため巨額の借金が残り、多額の金利を含む借金返済に追われることになった。更に重工業製品鵜入を通じた大幅な貿易収支赤字もあり、デフォルトの危機に瀕していた。
しかし、その後第一次世界大戦が勃発し欧州諸国の企業がアジア市場での活動が難しくなり、その代わりに日本の商品輸出が急増し、空前の好景気となり、巨大な貿易黒字で外国からの借金返済がでたばかりでなく27.7億円以上の対外債権を有する債権国となった。しかしこの景気が永遠に続くと信じた政府はインフレになったにも拘わらず金融緩和と積極財政を続けたため、景気は過熱し投機が過熱し貿易収支は悪化した。それに欧米諸国は戦争終結で喪失したアジア市場を日本から取り戻し日本の輸出は停滞した。経済成長が輸入超過を生み、外貨は一気に失われた。
その後、日中戦争で最大100万もの兵力を中国大陸に送り、さらにアメリカ・イギリスとの全面戦争に突入し、8年間で7558億円もの戦費がかかった。この戦費は「戦争を以って戦争を養う」という考えで占領した朝鮮、台湾、満州などで現地で発券銀行をつくり通貨を発行することで、戦費を賄った。発行された通貨の信認を高めるために日本円を担保にした。ある意味で日本は借金をしたことになる。
1945年、第2次世界大戦で敗れアメリカの占領政策は懲罰的であり日本の生産設備の一部をフィリッピンに移そうとした。しかし1948年に始まった「冷戦」と1949年の中国における共産党政権の誕生を受けて、日本を共産主義の砦と位置づけた。その結果アメリカはガリオアエロア資金で日本を援助し、また発行された通貨で復興に必要な産業の育成が進み焼け野原だった日本が徐々に復活し始めた。1949年2月1日にアメリカからドッジ氏が来日した。彼は「日本経済は2本の竹馬に乗っている。1つはアメリカの援助、もう一つは補助金。竹馬の足は徐々に縮めるべきだ」と主張した。その結果財政赤字を大幅に縮小させた。日本はデフレ経済に陥り中小企業の倒産、労働者の解雇、賃金ストップなどが相次ぎ失業者は1948年19万人、1950年46万人にのぼった。
アメリカからの援助資金(ガリオアエロア)や世界銀行からの借り入れで借金まみれになった日本だが、1952~56の朝鮮戦争による特需景気になった。その後の日本経済は奇跡の経済復興と言われるほどの高成長が持続した。1960年代後半から貿易収支が黒字基調になり長い間、外国からの借金に苦しんでいた日本だが、逆に日本の対外純資産は2017年末で328兆円で世界一になった。現在日本円はハードカレンシー(国際決済通貨)と認められている。つまり額面価額通りの価値を広く認められ国際市場で、他国の通貨と容易に交換が可能な通貨とされており日本円以外は米ドル、ユーロ、英ポンド、スイスフランである。日本のように多額のカネを諸外国に貸している国の義務は、もっとカネを使って世界経済の発展に貢献する義務がある。そのためには減税と財政を拡大し経済を活性化することだ。
世界に十分な貨幣を供給しなかったために引き起こされたのが1929年から始まる世界大恐慌であった。1929年10月24日 ニューヨーク株式が大暴落し、1週間で株式時価総額で300億ドルを失なった。これは当時の米国連邦年間予算の10倍に相当し、アメリカが第一次世界大戦に費やした総戦費をも遥かに上回った。1933年までに9000の銀行が倒産し失業者は1300万人、全労働者の25%に達した。名目GDPは1929年から45%減少、元の水準に戻るのに12年かかった。株価は80%以上下落し、こちらは元の水準に戻るのに25年かかった。
1930年 スムート・ホーリー法を定め、保護貿易政策を採り関税を大幅に引き上げたがただちにヨーロッパ諸国からの報復措置があり世界貿易は縮小していった。当時は金本位制を採っていたために、中央銀行は保有する金の量に見合った通貨発行しかできなかった。金は、アメリカに集まっていたのに、アメリカはインフレを恐れ通貨発行をしなかった。つまりアメリカが基軸通貨の役割を果たしていなかった。
現在のトランプ大統領は保護貿易の色彩が濃く、やり過ぎると世界大恐慌が再び訪れる。彼に保護貿易を止めさせるべきであるのはもちろんだが、その他の国も積極財政で世界経済が成長するための通貨を供給すべきである。しかし経常赤字が続いている国とか、巨額の債務を抱えている国はそれができない。その意味で日本は最も積極財政が出来る国である。減税と財政拡大をやれば、デフレから脱却し経済は成長し、世界経済の牽引役になれる。しかも経済が拡大すれば、将来の社会保障の安定財源も確保できるのである。
そもそも世界的な不況に対しては世界が協力して克服する努力をするべきだ。リーマショックの際には中国だけで57兆円もの景気対策を行い世界を救った。今回の不況でも中国は40兆円超の減税・インフラ投資を行う。アメリカのトランプ大統領は2017年12月、169兆円もの大型減税を実施した。それにより国民は年85万円を得た。それに加え大型法人税減税も行っている。今度は日本が大規模景気対策をする時だ。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。「積極財政を最も大胆に行うことの出来る国は日本」、この事を当の日本人が殆ど知りません。情報の歪みは深刻です。メディアの「大掃除」が必須です。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2019年5月 7日 (火) 14時36分