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2019年6月10日 (月)

AIの発達で資本主義が崩壊し解放主義社会へと移行する: (No.352)

このタイトルで筆者は吉野守氏と共に6月7日に人工知能学会(新潟)で発表させて頂いた(4Rin1-07)。解放主義社会に関して詳細は以下を参照して下さい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-36a9.html
AI/ロボットが雇用を奪ったとき、人は失業する。それに対応するためにベーシックインカムとして国民全員に同額の給料を配るという案には2つの問題点がある。第一の問題点は、どんな人にも同一給料を払うのであれば、頑張る人は頑張らない人と同じ給料では、頑張る人は満足せず、労働意欲が失われるということ。第二の問題点は余りにも巨額の財源が必要となるということである。

そこで我々は解放主義社会を提案する。ロボットしかいない企業は国有化する。従業員がいない会社は巨額の収入が約束されるから、国は巨額の利益を得る。その収益で希望する国民全員を公務員として雇い、それぞれの国民がやりたい仕事がやれるよう職を用意してやるということである。国民全員がやりたいことがやれるような世界が理想社会と考える。

学会では大変多くの方が質問をして下さった。一番多くの方が心配しておられたのは、企業の国有化である。
質問1 企業が国有化をいやがったらどうするか。
回答  大部分の大企業は株式を公開しており、今でも日銀は刷ったお金で株を年間6兆
    円も買っている。このまま買い進めばいつの間にか国有化される。本当に必要にな
    るまで国は「物言わぬ株主」として株を買い続ける。
質問2 株式公開をしない会社はどうするか。
回答  100%の企業を国有化する必要はないし、私企業の立ち上げも許す。ただし、そ
のような未上場の会社が国を支配するだけの富を蓄えたら、規制することも検討
する。
質問3 国有化したら人は働かなくなり競争も無くなり経済が発展しなくなるのではない
か。
回答  中国を見れば沢山の国有企業が活躍して経済が発展している。ロボットしかいな
い会社が国有化されたからと言ってロボットが働かなくなることはない。公務
員は働かないというわけでもない。国立大学の研究者は世界の中で厳しい競争を
しているわけであり、研究・開発は公務員であっても進む。国としてはそれを助け
るための十分な環境を整えてやり成果が上がれば十分な報酬を払うのが重要であ
る。
質問4 ベーシックインカムではうまくいかないのか。
回答  もし会社で社長も平社員もパートもバイトも全員が同じ給料だったとしたら、頑
張る社員は不満でやる気を無くす。巨額の財源を調達しにくいという問題もある。
質問5 給料に差をつけるとして、どうやって給料を決めるか。
回答  ビッグデータを集め、AIが「国民がどうすれば最も幸せになるか」を判断して決
める。どうすれば幸せになるのかは進化生物学に基づいて検討すればよい。
質問6 ベーシックインカムの実験結果はどうなっているか。
回答  ほとんどの例では限られた人に限られた期間行われており、これでは本当の意味
のベーシックインカムの実験とは言えない。唯一ナウル共和国ではリン鉱石の輸
出で莫大な収入があり、国民は永遠に高額の収入が約束されると信じた。結果とし
て国民は労働を忘れ国民の90%が失業し、肥満や糖尿病に悩まされることとな
った。しかも国の巨額の収入は一部の人達に私物化されることが多かった。

ご清聴有り難うございました。

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コメント

 今日は。higashiyamato1979です。シンポジウムでの御講演と質疑応答、御疲れ様でした。一番重要なのは質問3とそれに対する回答ですね。未だに「国有・国営=競争の無い親方日の丸体質・社会主義・技術革新が停滞する」とハナから思い込んでいる者が多いこと多いこと・・・。正当な報酬や経費が約束されるなら公務員の方が良いと云う人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか?
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2019年6月10日 (月) 13時10分

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