それでも10月の消費増税は止めた方がよい(No.351)
消費増税で景気が落ち込むのを阻止するための様々な対策はすでに終わっているから今更消費増税の中止・延期はできないと政府は主張するが、国の経済の事を真剣に考えていたら、この時期に消費増税などできないはずである。米中貿易戦争はもちろんの事、国内の景気悪化も著しい。消費者態度指数も8か月連続で下がったし、昨年から下落傾向が止まらない。1~3月の実質GDPの速報値もプラスであったものの、個人消費も設備投資も輸入も輸出も減少したのだ。内需が弱く輸入が得に大きく減少したため、実質GDPはプラスにはなったが、全体で見れば縮小経済そのものだ。米中貿易戦争で景気が落ち込んだら、金利を下げたり、財政出動をしたりで世界各国は対策を行うだろうが、日本は消費増税で景気が大きく落ち込んだら、果たして何ができるだろうか。金利は下げられないし、財政を拡大しようものなら、消費増税が失敗だった事を認めることになるから嫌うだろう。そうなれば日本経済は恐ろしい底なし沼へと沈没してしまう。
そんな日本への助け船はMMT理論(現代貨幣理論)だ。自国通貨を持つ国は、債務返済に充てる貨幣を無限に発行できるため、物価の急上昇がない限り、財政赤字が大きくなっても問題ないという趣旨である。多くのマスコミ・政治家・エコノミストがこれまで言ってきたこととは正反対の主張だから反論したい傾向にあるように思える。5月31日の日経新聞はキャサリン・マンとウィレム・ブイターの反論を載せたが翌日には宮尾龍蔵東大教授のコメントがありこちらはそれほど一方的な批判ではない。
MMTを解説する際にいつも出てくるのがノーベル経済学賞受賞者のクルーグマンによるMMT批判だ。しかし本当にクルーグマンはMMTに批判的なのだろうか。2008年の朝日新聞の記事で、債務の増大を恐れず財政を拡大せよと主張している。
【金融政策が影響力を失い、財政政策しか残っていないというのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では、貯蓄を高めることが悪いことで、健全な財政も悪いこと。逆に完全に無駄な政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。ここには長くいたくない。「奇妙な経済学」を永遠に続けたくない。】
次は2019年2月25日の発言の要旨である。
【MMTに関して言えば、基本的には賛成するし、財政赤字でガタガタ言う人達ほど破壊的な悪影響を与えるものではない。しかし彼らが私のような通常のケインジアンに対して標準的なマクロ経済学がすべて間違えていると主張するのであれば、反論しなければならない。】
長期のデフレ経済は国を貧乏にするのでどこの国も絶対に避けようとするのだが、日本の愚かな政治家は日本をデフレ地獄中に沈めてしまっている。表向きはデフレ脱却を目指しているのだが、実際はインフレ対策=デフレ悪化政策を続けている。デフレはクルーグマンのいうように「あべこべの世界」である。通常のインフレ経済なら当然の政策が悪い政策になる。デフレの際の悪い政策を次に並べてみる。
小さい政府、国の借金を減らす試み、財政規律を守ること、増税
企業の生産性を上げれば生産力が増大し供給過剰となりデフレは悪化する。だから生産性を下げればよいかと言うとそれは違う。一刻も早く大規模財政拡大をしてデフレから脱却してから生産性を上げていけばよい。その意味でもこの時期での増税は絶対に行うべきでない。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。積極財政や消費税廃止に賛成するマトモな議員がふえつつあり、日本でもようやく新自由主義・構造改革に陰りが見え始めました。ここが踏ん張り所です。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2019年6月 3日 (月) 15時21分