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2019年8月 4日 (日)

内閣府が『中長期の経済財政に関する試算』を発表した(No.359)

内閣府は7月31日、『中長期の経済財政に関する試算』を発表した。これは内閣府が年2回発表している試算で、今まではこれが発表されるとマスコミは一斉に財政が悪化したと騒いでいた。今回、マスコミの扱いは以前に比べれば小さく、基礎的財政収支(PB)の黒字化は27年度に後退したと報じた。我々は一貫して内閣府の試算には疑問があることを指摘してきたのでそれが少しは理解されつつあるのかも知れない。PBの黒字化は元々小泉政権の時代2011年度に黒字化するのだという目標を定め緊縮財政を行ったのだけど、結局2011年度のPBは大幅な赤字となり、その後は黒字化目標を次々と後退させていった。この間、政府は目標を達成しようと緊縮財政を続けたために、日本経済は大きく没落することとなった。新聞各紙の記事は下記に載せておくので参照して頂きたい。

ESPフォーキャスターという調査があり、民間約40のフォーキャスター(機関)が出した予測の平均であり、内閣府の予測よりもはるかに正確な予測が出されている。国の税金を使ってこのような精度の悪い予測を出す意義はあるのだろうか。
例えば2018年実質GDP成長率の予測を比較してみよう。
     内閣府   ESP
実際の値 0.7    
半年前  0.9   0.69
1年前  1.5   1.08
1年半前 1.8   1.26
2018年名目GDP成長率の予測を比較してみると
実際   0.5   
半年間  0.9   0.72
1年前  1.7   1.05
1年半前 2.5   1.26
となっている。いずれも民間のほうが内閣府よりはるかに正確に予測している事が分かる。ちなみに今後の実質GDP成長率の予測は
        2019  2020
内閣府     0.9   1.2
ESP      0.53  0.48
となっており、民間のほうが内閣府より信頼できることを考えれば、この時期に消費増税の実施は大失敗だと断言できる。

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上図で示したように例えば2005年の試算では511兆円であった名目GDPは7年後の2012年には645兆円になる、この調子なら今頃は800兆円を超えている。実際は名目GDPは現在までほとんど増えていない。我々はこれを「オオカミ少年」だとか「狂った羅針盤」だとかと言ってきた。しかしよく見ると政府が歳出を大きく増加させた場合の試算を行っていることが分かる。
年度  歳出(兆円) 増加率(%)
2005    82.2 
2006    84.5        2.7981
2007    89.6        6.0355
2008    93.3        4.1295
2009    98.3        5.3591

実際政府は歳出を拡大したのだが、2018年はリーマン・ショックの時だ。中国では57兆円の巨大な景気対策で景気の落ち込みを防いだ。しかし日本政府はそれに相当するような景気対策を行っていない。内閣府試算の意味するところは、上記のような財政拡大を行いしかもリーマン・ショックのようなショックがなければ、今頃はGDP800兆円に達していただろうということだ。逆に財政を拡大しない限り、GDP拡大はないということも示しているのだと思う。

内閣府の試算でGDPが急上昇しているのは、財政を拡大した場合の試算であることは以下の図で分かる。政府はこの試算通りに財政を拡大していたらGDPは急上昇していたのだろうが、実際は下図のように歳出規模をほとんど拡大していない。これではGDPは増えるわけがない。
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もしもこのように財政が拡大されていれば景気が回復し長期金利も上がっていただろう。しかし現実には財政支出は拡大されておらず、金利は低いままに留まっている。その差は驚くほど大きいことを以下で示す。
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なぜ歳出を拡大しないのかといえば、基礎的財政収支を少しでも早く黒字化したいという無謀な試みを行っているからである。それも公債残高のGDP比を減らすのが目的である。しかし下図で分かるように基礎的財政収支は赤字でも黒字でも公債残高のGDP比は減少する。だから基礎的財政収支は黒字化する意味はないことが結論される。このことを踏まえて新聞各紙が不適切な報道をしていることを以下で確認して頂きたい。


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コメント

 今日は。higashiyamato1979です。いい加減プライマリー・バランスなどと云うふざけた目標は捨てるべきです。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2019年8月10日 (土) 15時34分

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