« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »

2019年9月

2019年9月 8日 (日)

狂った羅針盤以上に狂っている厚生労働省の年金財政検証(No.367)

厚生労働省は8月27日に公的年金の財政検証を公表した。これは公的年金の財政が健全かどうかを5年に1度チェックしている。この検証のベースとして使っているのが「狂った羅針盤」と言われている内閣府の経済予測である。驚くべきことに、この財政検証では狂った度合いが更にひどくなっているのである。具体的にはこの財政検証では2029年までは内閣府の経済予測を使い、それ以降は何の根拠もなく一気にそして大幅に成長率を下げている。内閣府の経済予測では実質2%の成長目標が実現する場合として成長実現ケースがあり、実質1%の成長しかしないベースラインケースがある。日本は世界最低の経済成長率を続けている国であり、諸外国ではこの程度の成長率は簡単に達成している。デフレなのに増税・緊縮財政というやってはいけない財政政策を行っているから低成長が続くのであって、諸外国並に財政支出を拡大していけば、諸外国並の成長率は達成できる。これはマクロ計量モデルを使ったシミュレーションで確認済みだ。

財政検証では2029年度から成長率は一気にマイナス0.5%から0.9%に落ちると仮定してある。

3671

これほど不自然な経済予測をする国は日本以外には無いだろう。ちなみに過去の実質成長率のグラフと比べて頂きたい。
3672

余りにも唐突な仮定なので厚生労働省に電話で聞いてみた。これは経済前提専門委員会が出した「予測」なのだそうだ。その委員会のメンバーは植田和男、小黒一正、小野正昭、権丈善一、駒村康平、武田洋子、玉木伸介、野呂順一、山田篤裕、吉川洋、米澤康博である。2029年度から30年間、マイナス0.5%成長するという可能性を検討する国は日本以外に無いだろう。前回5年前の予測が甘すぎるという批判が多く出たのでもっと厳しい予測にしたという。予測が甘すぎるというのであれば2029年度までの成長率を下げるべきなのだが、それをやらないのは内閣府モデルが財務省モデルであり、財務省には逆らえないと思っているのだろう。だからと言って2029年度以降は急に低成長にしてしまうのは一貫性が無いし、全く馬鹿げた財政検証だ。

財政検証では所得代替率が今後悪化していくと述べている。所得代替率とは年金を受け取り始める時点(65 歳)における年金額が、現役世代の. 手取り収入額と比較してどのくらいの割合か、を示している。
3673

生産年齢人口の減少のお陰で、年金が減りますよとでも言いたいのだろうがこの試算はほとんど意味が無い。この年金財政検証では何と100年後の年金積立金の推移まで計算してある。

3674 


今のうちに節約しておけば100年後の年金が安全だとでも言いたいのだろうか。次のグラフは国の借金の推移である。100年前、国の借金は現在の10万分の1だった。

3676

100年前国の借金を減らしてくれていたら、今頃の我々の生活は楽になっていただろうか。そんなわけがない。100年後の日本人に我々がプレゼントできるとしたら、それは財政を拡大し国を豊かにすることだ。

 

歴史学者ハラリ氏は人工知能とバイオテクノロジーの力でごく一握りのエリート層が大半の人類を無用者階級として支配するようになる可能性を論じている。一握りのエリート層(資本家)に富が集中し、どんな仕事にも就くことができない階層が広がるのであり、年金どころの話ではない。これに対して筆者の提案は解放主義社会への移行である。AI/ロボットで完全自動化された会社は国が株式を買い取って国有化し、そのような会社の収益を財源にして希望する国民全員を公務員として雇う。職種としては例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、哲学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師、等がある。詳しくは9月9日に発売された拙書を参考にして頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-53b969.html

増税、歳出削減、外国人受け入れなどの現政権の政策は貧困層を増やし資本家に富を集中させるのだが、やがて資本家は労働者をAI/ロボットに置きかえた方が儲かることに気付くようになる。小さい政府にこだわる結果、政府も貧乏になり、巨大な富を蓄えた資本家に支配されるようになる。それが国民にとって最悪であることに一刻も早く気付いて欲しい。その地獄の世界から抜け出すには通貨発行権の行使しかない。

| | コメント (1)

2019年9月 3日 (火)

人間の行動と進化論 ドーキンスの利己的遺伝子説の限界とその改良(No.366)

著者:小野盛司
定価:1400円
送料:無料

購入ご希望の方はメールで送り先をお知らせ下さい。郵便局の振込用紙を同封しますので、書籍到着後、郵便局で代金を送金して下さい。
メール:sono@ajer.biz

 

3661

 

| | コメント (0)

ロボット ウィズ アス 労働はロボットに、人間は貴族に(No.365)

著者:小野盛司
定価:1500円

送料無料

購入ご希望の方はメールで送り先をお知らせ下さい。郵便局の振込用紙を同封しますので、書籍到着後、郵便局で代金を送って下さい。
メール:sono@ajer.biz

3651

3652

 

 

| | コメント (1)

2019年9月 2日 (月)

「資本主義社会」から「解放主義社会」へ(No.364)

AIの発展で進化するベーシックインカム論

小野盛司著


三省堂書店の本として出版

3611b

3642b

 


著者紹介
小野盛司(おの せいじ)
1974年東大大学院博士課程卒、理学博士。
1974年~1984年カリフォルニア大学、パリ大学、CERN等にて、素粒子論の研究と教育を行う。ウィーン大学教授資格試験審査員。1984年帰国し東大理学部に属しながら東大英数理教室を設立、代表取締役となる、日本経済復活の会会長、1998年と1999年の教育映像祭において優秀作品賞受賞。著書『人間の行動と進化論』(東大英数理教室)、『政府貨幣発行で日本経済が甦る』(ナビ出版)、『これでいける日本経済復活論』(ナビ出版)、『ロボットウイズアス』(ナビ出版)、『日本はここまで貧乏になった』(ナビ出版)、『お金がなければ刷りなさい』(ナビ出版)中村慶一郎との共著


目次
はじめに
第1章 AI/ロボットに雇用が奪われたらどうするか
1-1 ベーシックインカムの問題点
1-2 ナウル共和国はベーシックインカムで破綻した
1-3 レント(不労所得)収入に依存し過ぎる国は衰退する
1-4 ロボット税の問題点
第2章 AI/ロボットの発展過程での課題
2-1 人手不足を解消するためにAI/ロボットを活用するには
2-2 今すぐ生活困窮者を救う方法
第3章 破綻している日本の財政・金融制度
3-1 日本は1982年から財政非常事態だった??
3-2 日本の国の借金は130年間で500万倍になった
3-3 江戸時代の経済を発展させた通貨増発
3-4 国の借金は家計に例えるとローン残高は5379万円??
3-5 見習うべきは中国の財政・金融制度
3-6 政府・日銀もAI化せよ
第4章 解放主義社会に向けて今何をすべきか
4-1 外国人単純労働者を大量に入れるのは間違い
4-2 最低賃金を引き上げよ
4-3 大規模農業が可能になるよう農地を国が買い上げよ。
4-4 薬の調剤を自動化せよ。
4-5 教育のAI化は如何に進めるべきか
4-6 不動産業など情報提供が仕事である場合、インターネットとAI/ロボットで代替する。
4-7 国を挙げて日本語が理解できるAIを開発せよ。
4-8 中古住宅をもっと積極的に活用せよ。
4-9 まずは電子国家エストニアに学べ
第5章 解放主義社会
  5-1 解放主義社会とは
5-2 解放主義社会では家事、育児も職業として認める
5-3 進化論で考える人間の行動の意味
5-4 ディスクリミネーターの解放
5-5 善悪の基準
5-6 ロボットの反乱はあるのか
5-7 ロボットに善悪を教えるには
5-8 ロボットのための法律は、どこが違うか
第6章 未来社会の経済
6-1 一人の資本家が全企業を所有した社会
6-2 未来社会が民主的であるには政府の通貨発行権行使が必須
6-3 無制限供給社会
6-4 準無制限供給社会
6-5「労働はロボットに、人間は貴族に」が実現する経済制度とは
6-5-1 シナリオ1 軽い税率
6-5-2 シナリオ2 重税国家
6-5-3 シナリオ3 無税国家
第7章 解放主義社会では社会保険料もタダ
第8章 幸福とは何か

 

| | コメント (1)

政府は日本をどこまで貧乏にしたいのか(No.363)

世界最低レベルの経済成長率を維持している政府だが、失われた20年どころか、今後も数十年間世界最低水準の経済成長率から抜け出すつもりはないようだ。厚生労働省は8月27日に公的年金制度の財政検証結果を公表した。内容は全くナンセンスだが、これによるとこれから年金は先細りになると結論する。主な理由は人口減少と低すぎる経済成長率だ。この試算では6つのケースを考えている。2029年度以降20~30年の最も高い実質成長率はケース1で0.9%、最も低いのはケース6でなんとマイナス0.5%なのだそうだ。政府は日本にこれ以上の成長は見込めないと考えている。日本以上に少子高齢化が進む韓国は間もなく一人当たりのGDPで日本を抜く。日本と韓国の経済の比較は以下のサイトでも行った。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/07/post-dbeba8.html
日韓の実質経済成長率を比較してみよう。
実質成長率(%)
年    日本    韓国
2014 0.38  3.34
2015 1.22  2.79
2016 0.61  2.93
2017 1.93  3.06
2018 0.81  2.67

韓国のほうが日本よりはるかに高い成長率であることが分かる。その理由は簡単で韓国のほうが日本より歳出の伸びがはるかに大きいのだ。2018年の歳出は10年前に比べどれだけ増えているかと言えば韓国は67%で日本は僅か12%だ。政府が歳出を増やす額を見れば、政府が刷ったお金を国民にどれだけ渡しているかが分かる。渡したお金が成長通貨となり経済の成長を促す。日本が韓国よりはるかに低い経済成長率なのは、日本人が韓国人より能力的に劣るということではなく、単に歳出を増加させてないということだけだ。韓国の今年の予算案は前年度比で9.2%増である。
https://jp.reuters.com/article/south-korea-budjet-idJPKCN1VD07V
一方日本は緊縮財政であり、消費増税までやるし韓国のようにどんどん歳出を増やす事はしない。

日本はなぜ歳出を伸ばさないのかと言えば、緊縮派は歳出を伸ばすとハイパーインフレになるし国債や円が暴落し、金利が暴騰するというのだ。でも韓国は歳出を増やしてもそのようなことにはなっていない。そう言うと緊縮派は韓国は1997年と2008年に財政破綻していると反論するだろう。国民を貧乏にし続ける日本政府と違い、韓国政府は国民にお金をいっぱい渡し、お金が足りなくなって財政破綻した。しかしそれは会社が破綻して経営者が自殺に追い込まれたのと全然違い、破綻した後、外国からどっとお金が入ってきて国民は豊かになった。緊縮財政で国民を貧しくした日本政府と国民を豊かにした韓国政府とどちらがよいだろうか。日本の場合、円は国際通貨であり、政府にお金がなくなっても円を刷れば国際的に通用するので、韓国のように財政破綻しない。外貨準備もたっぷりあって破綻しそうもない。だから安心して財政拡大ができる。

今こそ全日本国民に問いたい。このまま日本を貧乏にし、隣の韓国が豊な国になるのを指をくわえて見ているだけでよいのだろうか。日本を豊かにする方法は簡単だ。消費税増税なんか止めて、むしろ消費税率をゼロにするべきだ。歳出を拡大し、人工知能など日本経済の牽引役になるところに集中的に投資し世界をリードすればよい。儲からない分野でどんなに汗を流して働いても豊かにはならない。例えばハイテクの一分野で世界の覇権を一旦握ると莫大なお金が黙ってても入ってくる。それには投資が必要だし、投資をすれば日本が豊かになれる。韓国などに負けない財政政策を政府に期待したい。

| | コメント (1)

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »