日本の緊縮財政でGDPが伸びず、結果として債務のGDP比が増大する(No.374)
台風19号が日本列島を直撃し多くの河川が氾濫し大きな被害が生じた。一方で首都圏では、地下神殿と呼ばれる首都圏外郭放水路や調整池・彩湖などの整備もあって被害は最小限に食い止められた。もっと全国的に災害対策を行っていれば、被害はずっと少なかっただろうし、たくさんの人命が救われただろう。政府は国の借金が大変だからという理由で国民の命を守ろうとしない。国の借金と言っても自国の通貨での借金であり、必要ならいつでも全額を通貨発行で返済できるのだから本来借金と呼ぶべきではない。また財政赤字は通貨発行により成長通貨を経済に供給するという意味で経済発展には必要不可欠なものである。
次のグラフを見れば分かるように日本は国の借金をあまり増やしていない。
図1 出所:OECD Economic Outlook
日本は国の債務が世界最悪だと主張する人がいる。国の債務のGDP比が237%であり、世界最悪だというのである。しかし日本人は債務のGDP比の意味を理解していない。日本の債務と言っているのは自国通貨での債務であり、これはいつでも日銀がお金を刷って全額返済可能であり、実際日銀は国債を大量に買い取っており、市場から買い尽くした感があり事実上返済完了が近くなっている。
以下のサイトでアルゼンチンの例を述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-cd69bb.html
アルゼンチンのように外貨を借りている場合は自国通貨を刷っても返済できないので財政破綻する。2001年、債務のGDP比が50%にまで上昇したときすでに破綻した。日本のように自国通貨で借金しているときなら、例え外国人から借りていても、お金を刷って返せば良いだけで絶対に破綻しない。債務のGDP比が237%になっても過度のインフレが進まない限り何の問題もない。
図2で分かることは債務のGDP比が大きい国は経済が発展しない国である。GDPが増えないと分母が増えないから債務/GDPが増えてしまうのだ。つまり日本が債務のGDP比を減少させたいのであればGDPを増やせば良いだけだ。GDPを増やすには歳出を増やして経済に成長通貨を供給する必要がある。
図3で分かるように、日本の歳出の伸びは極端に低い。その結果図1で示されたように国の借金の伸びも少なくなっている。そうなると経済成長に必要な成長通貨が供給されていないことになり、経済は停滞する。それを示したのが図4のGDPの推移である。
日本だけがGDPが増えない。しかし借金はジワジワ増えていくから債務のGDP比は増え続け世界最悪の状態になっている。ではどうすれば債務のGDP比を減らす事ができるか。それは他の国をお手本にすればよいだけだ。歳出を諸外国並の割合で増やしていけばよい。そうすれば当然のことながら名目GDPは増え始め、国の借金も増えるのだが、増加率の違いから債務のGDP比は減ってくる。歳出を増やして何をするかは、国土強靱化もあるしハイテク産業など、将来の日本経済の牽引役になってくれる産業の育成などたくさんある。今こそ国民的議論を巻き起こすべきである。
最大の問題は、緊縮財政のお陰で日本が急速に貧乏になっていくことだ。図5は一人当たりの名目GDPの推移を示した。
図5 出所:IMF
GDPが増えないために日本だけ一人当たりのGDPが増えていない。かつて日本は一人当たりのGDPにおいて世界トップレベルの豊かな国だった。諸外国は財政支出を拡大しGDPを伸ばし豊かになっていき日本を追い越していった。今や日本は26位に沈み間もなく韓国にさえ抜かれそうである。このままだと貧乏な日本人が近隣の豊かな韓国、台湾、中国などへ出稼ぎに行かなければならなくなってしまう。日本をそんな貧乏な国にしてしまってよいのだろうか。