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2019年10月

2019年10月20日 (日)

日本の緊縮財政でGDPが伸びず、結果として債務のGDP比が増大する(No.374)

台風19号が日本列島を直撃し多くの河川が氾濫し大きな被害が生じた。一方で首都圏では、地下神殿と呼ばれる首都圏外郭放水路や調整池・彩湖などの整備もあって被害は最小限に食い止められた。もっと全国的に災害対策を行っていれば、被害はずっと少なかっただろうし、たくさんの人命が救われただろう。政府は国の借金が大変だからという理由で国民の命を守ろうとしない。国の借金と言っても自国の通貨での借金であり、必要ならいつでも全額を通貨発行で返済できるのだから本来借金と呼ぶべきではない。また財政赤字は通貨発行により成長通貨を経済に供給するという意味で経済発展には必要不可欠なものである。

次のグラフを見れば分かるように日本は国の借金をあまり増やしていない。
 図1                   出所:OECD Economic Outlook
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日本は国の債務が世界最悪だと主張する人がいる。国の債務のGDP比が237%であり、世界最悪だというのである。しかし日本人は債務のGDP比の意味を理解していない。日本の債務と言っているのは自国通貨での債務であり、これはいつでも日銀がお金を刷って全額返済可能であり、実際日銀は国債を大量に買い取っており、市場から買い尽くした感があり事実上返済完了が近くなっている。
以下のサイトでアルゼンチンの例を述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-cd69bb.html
アルゼンチンのように外貨を借りている場合は自国通貨を刷っても返済できないので財政破綻する。2001年、債務のGDP比が50%にまで上昇したときすでに破綻した。日本のように自国通貨で借金しているときなら、例え外国人から借りていても、お金を刷って返せば良いだけで絶対に破綻しない。債務のGDP比が237%になっても過度のインフレが進まない限り何の問題もない。

 図2                      出所:Economic Outlook
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図2で分かることは債務のGDP比が大きい国は経済が発展しない国である。GDPが増えないと分母が増えないから債務/GDPが増えてしまうのだ。つまり日本が債務のGDP比を減少させたいのであればGDPを増やせば良いだけだ。GDPを増やすには歳出を増やして経済に成長通貨を供給する必要がある。

 図3               出所:OECD Economic Outlook
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図3で分かるように、日本の歳出の伸びは極端に低い。その結果図1で示されたように国の借金の伸びも少なくなっている。そうなると経済成長に必要な成長通貨が供給されていないことになり、経済は停滞する。それを示したのが図4のGDPの推移である。

 

図4                   出所:OECD Economic Outlook
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日本だけがGDPが増えない。しかし借金はジワジワ増えていくから債務のGDP比は増え続け世界最悪の状態になっている。ではどうすれば債務のGDP比を減らす事ができるか。それは他の国をお手本にすればよいだけだ。歳出を諸外国並の割合で増やしていけばよい。そうすれば当然のことながら名目GDPは増え始め、国の借金も増えるのだが、増加率の違いから債務のGDP比は減ってくる。歳出を増やして何をするかは、国土強靱化もあるしハイテク産業など、将来の日本経済の牽引役になってくれる産業の育成などたくさんある。今こそ国民的議論を巻き起こすべきである。

最大の問題は、緊縮財政のお陰で日本が急速に貧乏になっていくことだ。図5は一人当たりの名目GDPの推移を示した。

図5                         出所:IMF

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GDPが増えないために日本だけ一人当たりのGDPが増えていない。かつて日本は一人当たりのGDPにおいて世界トップレベルの豊かな国だった。諸外国は財政支出を拡大しGDPを伸ばし豊かになっていき日本を追い越していった。今や日本は26位に沈み間もなく韓国にさえ抜かれそうである。このままだと貧乏な日本人が近隣の豊かな韓国、台湾、中国などへ出稼ぎに行かなければならなくなってしまう。日本をそんな貧乏な国にしてしまってよいのだろうか。

 

 

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2019年10月14日 (月)

第155回日本経済復活の会定例会開催のお知らせ(No.373)

講師 安藤裕衆議院議員
  昭和40年 神奈川県生まれ
  昭和62年 慶應義塾大学経済学部 卒業
  昭和62年 相模鉄道株式会社入社
  平成10年 安藤裕税理士事務所開設
  平成24年 衆議院議員初当選
  平成30年 内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官
  令和元年  内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官退任
  「日本の未来を考える勉強会」を主宰しておられ、デフレの今必要なのは「財政出動による財政再建」であると主張しておられます。

小野 盛司 日本経済復活の会会長 
  『日本経済復活への道』
  アベノミクスに対する期待は大きかったが、異次元の金融緩和でもデフレ脱却に到らなかった。財政出動で国の借金を増やすことに対する国民の抵抗が大きいのだが隣の韓国ではそれがない。その結果国の借金は20年前に比べて韓国では9.4倍、日本では2.1倍であり、10年前に比べると韓国は2.3倍、日本は1.4倍となっていて、韓国は積極的な財政出動でGDPが急拡大している。その結果、一人当たりの名目GDPでは間もなく日本を抜き去ろうとしている。一方GDPの拡大のため韓国の国の借金のGDP比は40%であり日本の200%よりはるかに低い水準となっている、

○ 日時 令和元年10月29日(火)午後5:00時~午後8:00時(開場4:30、講演開始5:00)
    参加希望者は1階で通行証を受け取って下さい。

  この後、希望者で二次会(食事会)に行くこともあります。
○ 場所 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第二議員会館第8会議室

  電話番号 (代表)03-3581-5111

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東京メトロ/有楽町線、半蔵門線、南北線【永田町駅】徒歩5分
東京メトロ/南北線【溜池山王駅】徒歩8分
東京メトロ/千代田線・丸ノ内線
【国会議事堂前駅】徒歩5分

○ 当会合に関する一切の問い合わせと、御来会の可否は小野(03-3823-5233)
宛にお願いします。須田(090-2170-3971)、メール(sono@ajer.biz)でも結構です。ご協力お願いします。
定員(42名)に達し次第締め切りますので早めに申し込みをお願いします。

日本経済復活の会のホームページと連絡先    

担当 小野盛司   http://www.ajer.biz/
TEL:03-3823-5233
FAX:03-5685-3317

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2019年10月13日 (日)

債務のGDP比を減らす唯一の方法はGDPを増やすこと(No.372)

   台風19号が日本列島を直撃し多くの河川が氾濫し大きな被害が生じたようである。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。我々日本経済復活の会では2003年に発足して以来、公共投資・国土強靱化の重要性を主張してきた。インフラ整備で国の借金は増えても、将来世代へのツケ(債務のGDP比)は逆に減るのだと説明してきた。

財務省のホームページを見ると「日本の財政を家計に例えると、借金はいくら?」として計算している。それによると月収50万円の世界がひと月80万円使っており、不足分は30万円の借金を毎月増やしている。その結果ローン残高は8400万円になっている。だから増税・歳出削減が必要だと主張するのだが、こういった世帯にゼロ金利でカネを貸す銀行などないからとっくにこの世帯は破綻しローンの踏み倒しが行われている。最近注目を集めているMMT理論では、自国通貨を持つ国ではインフレ率が上がりすぎない限り債務を増やして良いということだ。財政を家計に例えるときは、その家計はいくらでも自分でお金を刷る権利を与えられていることを前提にしなければならない。

そもそもほとんどの人が債務のGDP比の意味を理解していないし、どうやれば減るのかも理解していない。確かに債務のGDP比が増えると危険になる場合がある。例えばアルゼンチンの経済を考える。1980年代は年率5000%という超インフレに見舞われ、それを抑えるため1ペソ=1$という固定相場制にし、通貨の信認を得て外資を入れ経済発展をした。しかし国の債務のGDP比が約50%に達したとき、財政破綻を予感した外資が一斉に逃げ出し、2001年に財政破綻した。ちなみにこのときの基礎的財政収支は黒字だった。
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1ペソ=1$という固定相場は維持できなくなり変動相場制になると一気に3ペソ=1$まで通貨は暴落した。
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通貨の価値が3分の1に下がったということは名目GDPは3分の1に下がったということであり、国の債務のGDP比は3倍の150%になった。

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要するに分子の債務は変わっていないが、分母が3分の1に下がったために債務のGDP比は3倍になったのだ。その後も債務は増加を続けるのだがGDPはもっと増えたために債務のGDP比は2011年には38.9%にまで減少している。
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アルゼンチンの例で、債務のGDP比を大きく変動させているのは、分子の債務の大きさではなく、分母のGDPであることが分かる。日本の政治家は増税や歳出削減を行って債務を減らせば、債務のGDP比も減ると思っているがそれは全くの誤解であり、増税や歳出削減を行えば景気が悪化しGDPは減少し、結果として債務のGDP比は増加するのである。このことは内閣府の試算で確かめられている。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf

そもそも国の借金とは増え続けるものであり、途中で完済するものではない。以下の図で分かるように日本の国の借金はこの130年間増え続け500万倍になっている。

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アルゼンチンは債務のGDP比が50%に上昇したとき財政破綻したが、日本は237%まで上昇しているのにまだ破綻していない。その違いは明かだ。アルゼンチンはドルなどの外貨で借り入れをしているから、返済が求められたとき外貨を十分持っていない場合は破綻するしかない。自国通貨を刷っても誰もそれを外貨に交換しようとしなければ意味が無い。日本の場合、国債はすべて円建てで発行されている。外国人が保有していたとしても、円で返済すればよいだけであり、円はいくらでも発行できるわけだから返済に困ることはあり得ない。

 

債務のGDP比は、日本のように自国通貨で借りているならいつでも通貨発行をして返せるわけで、いくら増えても問題ない。しかし財政を拡大してGDPを増やす事により債務のGDP比は減らすことができる。国土強靱化し未来への投資をしGDPを増やし、それによって債務のGDP比が減少するのだからこんな良いことはない。

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2019年10月10日 (木)

労働者を中小企業から大企業へ移動させることができたら(No.371)


日本の労働者の約70%は中小企業で働いているが、アメリカやイギリスでは中小企業で働く労働者は約50%である。一方、中小企業は大企業に比べ労働生産性は低く、賃金も低い。中小企業庁の調査では大企業の労働生産性は中小企業の1.38倍~2.41倍である。諸外国に比べ日本の労働生産性が低い理由の一つは、日本は中小企業の割合が多いということにある。今後AI/ロボットを利用して生産性を高めようとしたとき、中小企業の多さが障害になる。

「労働はロボットに人間は貴族に」ということで、日本を変えていくには、労働者を中小企業からもっと賃金の高い大企業へ移動させるのがよいことは明かだ。そうすれば平均賃金も上昇し国民は全体としては豊かになる。しかし政治家は「大企業から税金を取って、中小企業を助けたい」とよく言う。そんなことをすれば大企業は労働者を減らさざるを得なくなり、低賃金で廃業直前だったゾンビ企業が息を吹き返し労働者を増やすこととなる。全体としてみれば国民を貧しくすることになるのだが、一見すると貧しい人達を救うように見えるので票の獲得には有利かもしれない。低賃金の外国人労働者を受け入れることもゾンビ企業救済になる。

ではどうすれば労働者を中小企業から大企業へ移動させることができるかを考えて見よう。人手不足が深刻な現在、最低賃金を上げれば、低賃金でしか成り立たないゾンビ企業は労働者を増やせなくなる。しかし全体としては雇用が減る可能性があるから、増やすために強力な財政出動が必要だ。まず減税で消費を伸ばすことにより、企業の経営を助け、雇用の増大を促す。労働生産性を上げるには技術革新が必要となり、政府の積極的な財政支援で日本企業の国際的な競争力も向上させるべきである。以下でいくつかの例を挙げてみる。

①ヤマトとベルによる「空飛ぶトラック」は時速160kmで32kgの荷物を積載して飛行できる。2020年代前半までにオンデマンド物流サービスの提供を目指している。
②ZMP/ローソン、慶応大学がスマホで注文して自動運転で届けてもらうという宅配ロボットの実証実験をした。2020年までに実現したいとのこと。
③船の自動運転をめざし富士通が海上交通マネジメントソリューションについて、シンガポールでの実証実験を実施した。2025年までに自動運転船の実現を目指している。
④ジェット機の自動運転としてボーイングはパイロット不要のジェット旅客機をつくろうとしている。現在飛んでいる飛行機もすでにほぼロボット操縦になっている。全くの無人化でなくとも、自動化を進め、パイロット1人でも長距離運行が可能な操縦室にする試みも行われている。2025年の就航を目指している。

このような生産性を上げる試みは数限りなくあるし、そういった技術開発に国は思い切った財政支援をすべきだ。自動化が進めば人は要らなくなると思う人がいるかもしれない。財・サービスの提供がどんなに拡充されても、それを消費する人がいなければそれらは無駄になる。どのようにAI/ロボットが進歩しても最も重要なのは人間による消費である。労働が完全にAI/ロボットに代替されても、人間は貴族のような生活ができる社会を「解放主義社会」と呼んだ。詳しくは以下のサイトを参照して頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-53b969.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-51995b.html

 

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ごね得を狙う韓国にはベトナムと日本の共同戦線で対決せよ(No.370)

韓国にとって日本は罪深い軽蔑すべき国であり、あらゆる方法で謝罪させようとする。一度謝ったら罪を認めたこととなり際限なく賠償金を払わせる。どんなに謝罪しようとどんなに賠償金を払おうと、決して許すことはない。

自分の事を棚に上げて日本に謝罪と賠償を求める韓国と対決するにはベトナムと共同戦線を張るとよい。韓国は1964年からベトナムに派兵し、ベトナム戦争に参戦した。軍人と共に数多くの労務者や韓国企業の労働者が特需を求めベトナムに殺到した。最盛期には、5万人の韓国軍がベトナムに駐留し、それに伴って韓国人労働者も2万人まで増加した。韓国軍はベトナム戦争中に、サイゴン(現ホーチミン)に「慰安所」を設けていたという「週刊文春」のスクープの余波で、韓国メディアはその実態を調査するよう注文をつけているが韓国政府は無視している。

韓国軍がベトナム戦争において民間人虐殺や婦女子強姦などの悪行を働いてきたことは周知の事実である。そうした報道がなされる度に、報道機関に対しベトナム参戦兵の団体からの妨害や襲撃が繰り返されてきた。強姦や売買春に加え、韓国人の「現地妻」が生んだ子はすべてライダイハンと呼ばれ1500人から3万人と言われている。2019年7月英国の民間団体「ライダイハンのための正義」が、英国人彫刻家のレベッカ・ホーキンスさんによって制作された「ライダイハン像」をロンドンのウエストミンスター地区の公園で一般公開した。

1968年2月12日、ベトナムのフォンニィ・フォンニャット村を韓国軍が襲撃し、米軍がその様子を撮影した。村人は何の武器も持っておらず、何の抵抗もしなかったが103名が虐殺された。ベトナム人は真相調査・公式謝罪を要求したが、韓国は謝罪どころか調査さえしない。自分たちの蛮行については謝罪も調査もしないが、日本に対しては謝罪も賠償も要求してくる。日本に対して韓国が追求していることは74年以上前の事であり、その責任者は生きていない。ベトナムに対して行った韓国の蛮行は約50年前の事だから責任者の一部が生存している可能性が高く、調査はもちろん可能である。要するに自分たちに都合の悪いことは棚に上げ、日本を追求している。

ここは日本とベトナムで共同戦線を張って韓国に対抗すべきだ。韓国が世界中に設置したすべての慰安婦の少女像の隣にライダイハン像を設置すべきだ。もちろん先日の「表現の不自由展」などのようなものが再度開かれれば、当然ライハンダイ像も並べろと要求すべきだ。英国の民間団体「ライダイハンのための正義」とも連携するとよい。また反日姿勢を批判する「反日種族主義」という本が韓国でベストセラーになっているのだから、この本の著者であるソウル大学名誉教授イ・ヨンフン達のグループとも連携すべきだ。

福島第一の汚染水に対しても韓国はイチャモンをつけている。この汚染水が日本近海だけでなく世界の海を汚染しようとしているとIAEA総会で主張。しかし汚染水と言ってもトリチウム以外は除かれており、ごく微量のトリチウムはそれほど危険ではない。そもそも微量なトリチウムは水道水にも、雨水にも、海水にも我々の体の中にも含まれていて危険とは言えない。韓国の月城原子力発電所から過去に日本海に放出されたトリチウムは6000テラベクレル以上であり、現在福島第一に貯留されている現在のトリチウム総量は1000テラベクレルしかなく韓国が放出した量の6分の1にすぎない。ここでも自分の悪事は棚上げして日本を不当に非難する。

攻撃は最大の防御である。韓国に謝罪などせず、ベトナムなど世界と連携し、ごね得を目指す韓国の欺瞞を徹底追求しようではないか。真実を韓国国民に理解させることができれば、真の日韓友好関係を築くことができる。

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五十嵐敬喜「借金とインフレを巡る誤解」はどこが間違いか(No.369)

2019年9月17日の日経新聞「十字路」は「借金とインフレを巡る誤解」という記事だった。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO49872010X10C19A9ENI000/
その内容は中学の公民の教科書に出てくる需要と供給の関係を否定するもので、質問主意書に対する政府の答弁書の内容と似ている。もしかしたらどこかで繋がっているのかもしれない。

五十嵐氏は政府が財政支出を拡大すれば物価上昇はありうるとしながら、それは景気悪化につながるからハイパーインフレにはならないのだそうだ。財政支出拡大でどうやれば景気が悪化するのかの説明はないし景気悪化の定義もされていない。物余りの日本ではハイパーインフレにはならないというのであれば、それは正しいし政府の答弁書にも書いてあった。一方で五十嵐氏は「財政の健全化を巡って、日本はその意思と能力が全くないと市場が見切りをつけ、円を売り浴びせるようになれば、1ドル=100円の相場が200円、300円になり、すべての輸入品の価格が2倍、3倍になりハイパーインフレになる」という。政府の答弁書にも似た表現がある。例えば平成29年2月3日内閣衆質193第30号では「財政運営及び通貨に対する信認が著しく損なわれる結果、金利の急騰や激しいインフレが生じる」としている。また「ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足だけでなく、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものである。激しいインフレが起きるときでも消費が激増するとは考えていない」とも述べている。つまり通貨の信認が失われれば需要が増えなくてもハイパーインフレになるというのだ。ここまで質問したとき、政府はそれ以上質問をしてはならぬと厳しく圧力を議員にかけてきて議員は震え上がって二度と質問をしようとしなかった。政府はよほどこの質問されることが嫌だったに違いない。

どうやら五十嵐と政府は同じ見解のようだ。需要は増えなくてもハイパーインフレになる??だから緊縮財政を続けなければならない??本当に財政健全化を政府が怠ったら1ドル=300円になるのだろうか。もしそうなったとしたら、海外から見れば、日本の株、土地、人件費が一挙に3分の1に下がってしまうのである。少し為替が円安に動いただけで日本株は大きく上昇している。かつてバブルの際には世界中の資金が日本に集まって株・土地が暴騰したが、1ドル=300円となれば、それよりはるかに急激に資金が日本に集まってくる。そうなれば円安が元に戻るのではないか。この為替レートでは日本の賃金が近隣諸国よりはるかに安くなるので、海外に出て行った企業も日本に帰ってくるし、日本人も高い給料の職を求め韓国、台湾、中国などに出稼ぎに行くようになる。政府が財政健全化を怠っただけで、一気にそんな時代になるのだろうか。

1ドル=300円になれば本当にハイパーインフレになるのか。確かに輸入品の価格は3倍になるが、家電や車など国内に代替品があれば、輸入品を買わなくなるだけだ。原油価格は値上がりするが、原油をできるだけ使わない経済へと変わっていく。激安となった日本製品は爆発的に売れるようになり、近隣諸国の経済を窮乏化させる。日本経済が急成長し過熱したら物価は上昇するが、もちろん賃金も上がり国民は豊かになる。財政健全化の努力を怠ると悲惨な結果になると五十嵐氏も政府も主張するのだろうが、現実はその真逆である。実際アベノミクスでかなり円安が進んだが、物価はそれほど上がっていない。五十嵐氏は三菱UFJに属しているからマクロモデルを持っており政府も内閣府のモデルがあるのだから、それぞれ円安が進んだとき日本経済がどうなるか計算できるはずである。財政健全化を怠ると大変なことになると国民を脅すのでなく、しっかりモデルで計算をして結果を国民に示すべきだ。円安は大惨事と主張する人は円高も大惨事だと主張する。日本経済にとって何がよいのかしっかりマクロモデルで計算してから主張すべきだ。

 

 

 

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異次元金融緩和の失敗とアベノミクスの失敗(No.368)

2012年11月民主党政権の時代、政権奪還を目指す自民党の総裁安倍晋三氏は「日銀の輪転機をぐるぐる回して無制限にお金を刷る」と公言した。政府が建設国債を発行しそれを日銀が買い取らせる。この方法で景気は回復できると主張した。ある意味でMMT理論と同じ主張とも言える。この主張により国民は自民党を強く支持し、12月の衆議院選では民主党57議席に対し自民党は294議席を獲得して圧勝した。この政策を実現するためにアベノミクスの3本の矢が示された。つまり
①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略
である。

国民が強く支持したこの政策がそのまま実現されていたら、今頃はデフレ脱却どころか、大変な経済成長が実現し国の借金や年金の不安など全く誰も気にしなくてよくなっていただろう。残念ながら安倍内閣で行われたのは異次元の金融緩和だけであって、財政政策はほとんど行われておらず、第2の矢は逆に消費増税という形で逆向きに放ってしまった。その理由は財務省や黒田日銀総裁の強い抵抗などもあったし、もともと第一次安倍内閣でも安倍氏は「最大限歳出は削減する」と主張していたのであり、主張は急には変えられないということだ。しかしお金を刷るのであれば、歳出削減も増税も必要がないのだから自己矛盾した主張だ。

アベノミクスが唯一頼りにしていた異次元の金融緩和だが、すでに国債は買い尽くした感があり、だんだん購入ペースが落ちて、最近1年は2013年4月に始めたペースを下回った。そこまで買っても目標としていたインフレ率2%、実質成長率2%、名目成長率3%の達成はできそうもない。そうであれば今こそ初心に返り財政政策を使うべきだ。現在日本経済は消費が落ち込み状態はよくない。それに加え米中貿易戦争、日韓経済戦争、ブレグジット、ドイツ銀行の経営危機などがあり、世界各国はそれに対応し金融緩和・財政拡大策を次々出してきている。世界的に金利が低下する時に日本が何もしないでいると、円高が進んで日本経済を圧迫する。しかも来月日本は再度消費増税をするという。全く支離滅裂の経済政策となっている。

日本がここまで緊縮財政になったのは、欧州の財政ルールをお手本にしたところがある。しかしEUも景気下支えに財政規律を緩和すべきか議論が始まっている。9月13日~14日の財務相会合で議論が始まっている。EUはたくさんの国の利害が絡んでいて簡単ではないのだが、日本は通貨発行権を持つ一つの国の経済政策なのだから日本経済を活性化させる政策であれば何でもできる。減税や歳出拡大で国債発行額が増えればマイナス金利から脱し金利が正常化し金融機関の経営不振を救う。金利が上昇すれば国は借金が多いから利払いが大変だと思うかもしれないが、国債の半分は日銀が保有するのだから日銀に金利の多くを払うことになり、それは国庫納付金として国庫に返される。内閣府の試算によれば、経済成長が続く限り国の債務の対GDP比は下がっていく。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/r1chuuchouki7.pdf
だから財政赤字を気にせず経済成長だけを考えていけばよい。

最近韓国政治家による日本を侮辱する発言が相次いている。これもかつては日本は韓国よりはるかに豊かな国であったのだが、その後急速な韓国経済の発展と、日本経済の停滞・貧困化で一人当たりのGDPで韓国がほぼ日本に追いついたという事情が背景にある。このまま韓国に馬鹿にされ続けられるのではたまらない。そろそろ積極財政に転じて経済発展を目指してはどうか。

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