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2019年10月10日 (木)

異次元金融緩和の失敗とアベノミクスの失敗(No.368)

2012年11月民主党政権の時代、政権奪還を目指す自民党の総裁安倍晋三氏は「日銀の輪転機をぐるぐる回して無制限にお金を刷る」と公言した。政府が建設国債を発行しそれを日銀が買い取らせる。この方法で景気は回復できると主張した。ある意味でMMT理論と同じ主張とも言える。この主張により国民は自民党を強く支持し、12月の衆議院選では民主党57議席に対し自民党は294議席を獲得して圧勝した。この政策を実現するためにアベノミクスの3本の矢が示された。つまり
①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略
である。

国民が強く支持したこの政策がそのまま実現されていたら、今頃はデフレ脱却どころか、大変な経済成長が実現し国の借金や年金の不安など全く誰も気にしなくてよくなっていただろう。残念ながら安倍内閣で行われたのは異次元の金融緩和だけであって、財政政策はほとんど行われておらず、第2の矢は逆に消費増税という形で逆向きに放ってしまった。その理由は財務省や黒田日銀総裁の強い抵抗などもあったし、もともと第一次安倍内閣でも安倍氏は「最大限歳出は削減する」と主張していたのであり、主張は急には変えられないということだ。しかしお金を刷るのであれば、歳出削減も増税も必要がないのだから自己矛盾した主張だ。

アベノミクスが唯一頼りにしていた異次元の金融緩和だが、すでに国債は買い尽くした感があり、だんだん購入ペースが落ちて、最近1年は2013年4月に始めたペースを下回った。そこまで買っても目標としていたインフレ率2%、実質成長率2%、名目成長率3%の達成はできそうもない。そうであれば今こそ初心に返り財政政策を使うべきだ。現在日本経済は消費が落ち込み状態はよくない。それに加え米中貿易戦争、日韓経済戦争、ブレグジット、ドイツ銀行の経営危機などがあり、世界各国はそれに対応し金融緩和・財政拡大策を次々出してきている。世界的に金利が低下する時に日本が何もしないでいると、円高が進んで日本経済を圧迫する。しかも来月日本は再度消費増税をするという。全く支離滅裂の経済政策となっている。

日本がここまで緊縮財政になったのは、欧州の財政ルールをお手本にしたところがある。しかしEUも景気下支えに財政規律を緩和すべきか議論が始まっている。9月13日~14日の財務相会合で議論が始まっている。EUはたくさんの国の利害が絡んでいて簡単ではないのだが、日本は通貨発行権を持つ一つの国の経済政策なのだから日本経済を活性化させる政策であれば何でもできる。減税や歳出拡大で国債発行額が増えればマイナス金利から脱し金利が正常化し金融機関の経営不振を救う。金利が上昇すれば国は借金が多いから利払いが大変だと思うかもしれないが、国債の半分は日銀が保有するのだから日銀に金利の多くを払うことになり、それは国庫納付金として国庫に返される。内閣府の試算によれば、経済成長が続く限り国の債務の対GDP比は下がっていく。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/r1chuuchouki7.pdf
だから財政赤字を気にせず経済成長だけを考えていけばよい。

最近韓国政治家による日本を侮辱する発言が相次いている。これもかつては日本は韓国よりはるかに豊かな国であったのだが、その後急速な韓国経済の発展と、日本経済の停滞・貧困化で一人当たりのGDPで韓国がほぼ日本に追いついたという事情が背景にある。このまま韓国に馬鹿にされ続けられるのではたまらない。そろそろ積極財政に転じて経済発展を目指してはどうか。

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コメント

 今晩は。higashiyamato1979です。全く異議なし! 高い経済成長は全てを解決する!
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2019年10月10日 (木) 16時49分

 今晩は。higashiyamato1979です。全く異議なし! 高い経済成長は全てを解決する!
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに! 人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2019年10月10日 (木) 16時51分

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