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2019年12月

2019年12月30日 (月)

管義偉氏、安倍晋三氏などが全国民に20万円ずつ配ることを提案(No. 381)

2009年管義偉、安倍晋三など20名超の有志議員が「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」を発足させた。管義偉氏が2009年2月1日フジテレビの報道2001で政府紙幣を発行し国民一人当たり20万円を配る案を紹介した。実際にはこの案は実施されることはなかったのだが、もし実施されていたら経済にどのような影響があったかを、日経NEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。ただし1回のみであれば影響はかなり小さいので、20万円の配布を5年間続けると仮定して計算した。

国民にお金を配るとこのお金の一部が使われて消費が伸びGDPが増加する。それにより企業の売上げが伸び賃上げが行われる。その影響を表で示す。

           1年目   2年目   3年目   4年目   5年目
名目GDP(兆円)  13.1  26.6  30.2  32.9  35.7
実質GDP(兆円)  12.6  25.4  27.1  26.5  25.9
インフレ率(%PT)  0.08  0.32  0.32  0.64  0.64
雇用者報酬(万円)  1.65  5.55  10.0  14.7  20.1

この表の意味はお金の配布により例えば1年目、名目GDPは13.1兆円押し上げられるし、インフレ率は0.08%PTだけ押し上げられる。これで分かることは、素晴らしい影響が日本経済に与えられるということだ。少しだがインフレ率が押し上げられデフレ脱却へと進む。低迷が続く経済成長率が押し上げられ、賃金も上昇する。国民にとっては賃金が上がるのに加え、政府から配られたお金も受け取るから二重の喜びだ。それ以上に没落を続ける日本経済を救う可能性があるのは大きな意味を持つ。安倍・菅両氏はなぜ実行しなかったのだろうか。今からでも遅くないからこの政策は実行すべきだ。

こんなことをすればハイパーインフレになると言う人もいるかもしれない。しかし上記シミュレーションはインフレ率に及ぼす影響は僅かということを示している。お金を配ればハイパーインフレになるのは極度の物不足の時代だ。食糧難で人が次々餓死しているような状況でお金を配ったとしよう。お金を受け取った人は一目散にお店に行って少ない食糧を手に入れようとして奪い合いとなる。店側ではいくら値上げしても、飢えに苦しむ人々は買うしかないことを知っているので大幅な値上げする。だからハイパーインフレになる。国民を餓死から救えるだけの食糧がないときは、むやみにお金を配るのでなく、国民に空腹に耐えるように説得するしかない。

現在の状況はそれとは正反対で物が過剰に作られているのに、国民にはそれに見合うだけのお金が配られていない。実質賃金は20年以上下がり続けている。この時期にお金を国民に配れば、国民は豊かになり消費を増やし、それに対応するように企業も生産を増やし、設備投資も行い、国際競争力も回復してくる。

この政策により円が信用を失なうと主張する人がいる。しかし円を信用しなくなった人がいたら、その人は物が買えなくなるだけだ。だから餓死するしかなくなる。そんな馬鹿な人は一人もいない。要するに日本人は円を信用する以外に生きる方法はないのである。

安倍首相、20万円全国民配布を再度検討して下さい!!

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2019年12月20日 (金)

ベーシックインカムが日本経済を復活させる(No.380)

  上記のタイトルで、12月15日に立命館大学で開かれた日本ベーシックインカム学会でお話をさせて頂いた。これは大変好評で衝撃的だというコメントもあった。通常ベーシックインカムというときは、どこからか財源を確保し、その範囲内で国民全員に同額のお金を配る。国民全員に同額支給ということだから莫大な費用が掛かる。それを税金で賄おうとすると大増税をやるしかない。それでもうまくやればメリットはあるのではないかと多くの学者が研究を進めていた。

筆者のアプローチは全く違っていて、財源は国債発行で行った場合日本経済はどうなるのかを調べた。これはほとんどの研究者にとっていわば「禁じ手」でありこれが行われるとハイパーインフレになると考えられている。それが本当かどうかを調べるために筆者は日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。次の図は2000年からベーシックインカム(BI)として毎年一定額を国民に配り続けた場合、名目GDPがどのように影響を受けるかを示したものである。0兆円とあるのは、何もしなかった場合、30兆円とあるのは毎年30兆円を国民に配った場合であり、配る額は30兆円から80兆円まで変えて計算してある。配らない場合はデフレで名目GDPは減少していくし、配ると上昇に転じることが分かる。これは配ったお金で消費が伸びて経済が拡大したことによる結果である。
  3801

次の図は実質GDPであり、物価の影響を除いたものである。

3802

次のグラフは消費者物価指数の推移である。お金を大規模に配ればハイパーインフレになるという主張は正しくないことが証明された。
  3803

次は一人当たりの雇用者報酬の推移である。配られたお金で消費が拡大し、企業も利益を増やし、賃上げをするという経済の好循環が生まれる。国民にとってみれば景気拡大で賃金が上がるだけでなく、国からBIとして受け取るお金が加わるわけで、二重の喜びとなる。

3804


日本国民は失われた20年、あるいは失われた30年を経験しどん底の状態だ、以下のグラフは長期的に実質賃金が下がり続けていることを示している。

                     出所:厚生労働省
3805

 


次のグラフは年収の推移の国際比較である。
                     出所:OECD
3806

日本とイタリア以外は年収が大きく伸びている。イタリアの場合はドイツなどと比べれば企業の競争力は劣るのだから、本来は通貨の切り下げを行って競争力を回復すべきなのだが、ユーロを使っていて独自通貨を持たないから切り下げができず、緊縮財政を強いられているため年収が伸びないのは当然である。それに対して日本は独自通貨をもっているのだから、国債発行(=通貨発行)を行って可処分所得を増加させ経済を拡大すべきだ。だからこそ国債発行で財源を確保しベーシックインカムを行うのが日本経済復活のための特効薬になる。

日本人は社会保障制度に極度の不安を持っている。その不安解消のためを考えるなら、ベーシックインカムで配る額を1.5倍に増やし、0.5倍の部分を除いた部分だけを国民に配り、0.5倍の部分は社会保険料として預かっておき、将来年金を支給するとき加算するようにすればよい。それにより国民は将来不安から解放される。またベーシックインカムを実行することによってインフレ率が高すぎるようになったら、社会保険料を上げてインフレを抑えれば良く、それを将来年金を支給するときに加算されるようにすればよい。

筆者の提案に対し、国債発行残高が増えすぎるのをどうするかと心配する人がいるかもしれない。これは日銀に買い取ってもらえばよいだけだ。国債の増発で行きすぎたインフレになったとすれば、社会保険料を値上げすればインフレは止まるし、それを将来の年金に加算するようにすればよい。

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2019年12月 9日 (月)

事業規模26兆円の経済対策は、まず第一歩(No.379)

11月7日、筆者は世耕弘成氏に「日本の経済成長率は世界の中で極端に低い。せめて普通の国並に、財政規模を増やしたらどうでしょう」と提案した。我が意を得たりとばかり世耕氏は話し始めた。「財政拡大の余地はまだあると思っています。MMT理論を支持するというわけではありません。やりたいことはたくさんある。」といった内容だった。11月24日に、世耕氏と自民党の二階俊博幹事長が10兆円規模の2019年度補正予算案を打ち上げ、12月5日には、財政支出13兆2千億円、事業規模26兆円程度の経済対策が閣議決定した。

筆者はこの程度の経済対策は景気回復のための第一歩になるという意味で歓迎するが、まだ少なすぎると考えている。しかし新聞各紙を見ると、規模が大きすぎるとかバラマキだとか、国内景気は安定しているのに、大規模な対策が必要なのか、財政健全化が遠のくなど批判的な論調が目立つ。これによる実質GDP押し上げ効果は1.4%と試算されており、国の借金が1100兆円であり、それが13.2兆円増加すると仮定すると借金の増加率は1.2%である。つまりGDPの増加率のほうが借金の増加率を上回るのだから、借金のGDP比は減少し財政健全化に貢献するということだ。

今回、建設国債は発行するが赤字国債は発行しないという。また財政投融資が3.8兆円使われるという。政府はこれまで新規国債発行額を9年連続前年比で減額させ、財政再建を図ったきたつもりだったが、税収減でこれが難しくなるのだそうだ。しかし新規国債発行額を減らそうとしたこと自体が、デフレ脱却を不可能にした。国の借金を減らすことは、国民が持っているお金を取り上げることだ。これは貧血でフラフラしている人から血を抜くようなものだ。実際、厚生労働省の発表する実質賃金は下がり続けている。2015年を100とした場合、1996年には115.8であったから14%も下がったことになる。例えばOECDが発表したドルベースでの平均年収が2018年は1990年の何倍になっているかを比較してみる。日本:1.05倍、スイス1.26倍、アメリカ1.38倍、カナダ1.39倍、イギリス1.42倍、フランス1.34倍、韓国1.78倍、スウェーデン1.55倍となっていて日本の低迷ぶりが際立っている。

このまま低賃金の日本が、諸外国からどんどん引き離されてしまい、世界の中で日本だけが貧乏になっていくようだと、日本の会社も土地もすべて海外の企業に安値で買い取られてしまい、日本人はそこで安い賃金で、やりたくない仕事をやらされる。なぜそんなことになるのかと言えば、日本の政府は増税で日本人からお金を奪い取って国民を貧乏にする一方、外国では自国民に十分なお金を渡しているからだ。

日本は国の借金が多いから仕方がないと言う人がいる。正確には国の借金のGDP比(=国の借金÷GDP)が増えすぎたことを気にしている。しかしそれは問題にしなくてよく、実際は借金が増えすぎたのでなくGDPを諸外国並に増やしていないだけだ。2018年の国の借金が10年前に比べ何倍になっているかを比べてみよう。
日本:1.36倍、アメリカ:1.98倍、韓国:2.31倍、イギリス:1.85倍
このように日本の国の借金は諸外国ほど増えていない。今こそ日本も諸外国のように財政を拡大し経済を活性化し、日本を豊かにして我々の次の世代に引き渡したいものである。

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