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2019年12月 9日 (月)

事業規模26兆円の経済対策は、まず第一歩(No.379)

11月7日、筆者は世耕弘成氏に「日本の経済成長率は世界の中で極端に低い。せめて普通の国並に、財政規模を増やしたらどうでしょう」と提案した。我が意を得たりとばかり世耕氏は話し始めた。「財政拡大の余地はまだあると思っています。MMT理論を支持するというわけではありません。やりたいことはたくさんある。」といった内容だった。11月24日に、世耕氏と自民党の二階俊博幹事長が10兆円規模の2019年度補正予算案を打ち上げ、12月5日には、財政支出13兆2千億円、事業規模26兆円程度の経済対策が閣議決定した。

筆者はこの程度の経済対策は景気回復のための第一歩になるという意味で歓迎するが、まだ少なすぎると考えている。しかし新聞各紙を見ると、規模が大きすぎるとかバラマキだとか、国内景気は安定しているのに、大規模な対策が必要なのか、財政健全化が遠のくなど批判的な論調が目立つ。これによる実質GDP押し上げ効果は1.4%と試算されており、国の借金が1100兆円であり、それが13.2兆円増加すると仮定すると借金の増加率は1.2%である。つまりGDPの増加率のほうが借金の増加率を上回るのだから、借金のGDP比は減少し財政健全化に貢献するということだ。

今回、建設国債は発行するが赤字国債は発行しないという。また財政投融資が3.8兆円使われるという。政府はこれまで新規国債発行額を9年連続前年比で減額させ、財政再建を図ったきたつもりだったが、税収減でこれが難しくなるのだそうだ。しかし新規国債発行額を減らそうとしたこと自体が、デフレ脱却を不可能にした。国の借金を減らすことは、国民が持っているお金を取り上げることだ。これは貧血でフラフラしている人から血を抜くようなものだ。実際、厚生労働省の発表する実質賃金は下がり続けている。2015年を100とした場合、1996年には115.8であったから14%も下がったことになる。例えばOECDが発表したドルベースでの平均年収が2018年は1990年の何倍になっているかを比較してみる。日本:1.05倍、スイス1.26倍、アメリカ1.38倍、カナダ1.39倍、イギリス1.42倍、フランス1.34倍、韓国1.78倍、スウェーデン1.55倍となっていて日本の低迷ぶりが際立っている。

このまま低賃金の日本が、諸外国からどんどん引き離されてしまい、世界の中で日本だけが貧乏になっていくようだと、日本の会社も土地もすべて海外の企業に安値で買い取られてしまい、日本人はそこで安い賃金で、やりたくない仕事をやらされる。なぜそんなことになるのかと言えば、日本の政府は増税で日本人からお金を奪い取って国民を貧乏にする一方、外国では自国民に十分なお金を渡しているからだ。

日本は国の借金が多いから仕方がないと言う人がいる。正確には国の借金のGDP比(=国の借金÷GDP)が増えすぎたことを気にしている。しかしそれは問題にしなくてよく、実際は借金が増えすぎたのでなくGDPを諸外国並に増やしていないだけだ。2018年の国の借金が10年前に比べ何倍になっているかを比べてみよう。
日本:1.36倍、アメリカ:1.98倍、韓国:2.31倍、イギリス:1.85倍
このように日本の国の借金は諸外国ほど増えていない。今こそ日本も諸外国のように財政を拡大し経済を活性化し、日本を豊かにして我々の次の世代に引き渡したいものである。

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コメント

 小野先生、いつも御疲れ様です。早速拙ツイッターにて紹介させて頂きます。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2019年12月14日 (土) 15時44分

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