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2020年1月

2020年1月23日 (木)

内閣府計量分析室に電話して説明して頂きました(No.385)

2020年1月17日に内閣府から発表された『中長期の経済財政に関する試算』について内閣府計量分析室に電話して質問しました。詳しく丁寧に説明して頂いたので、その内容を以下に書きます。

Q 新聞各紙で基礎的財政収支(PB)が悪化し黒字化が先延ばしになったと言ってますが悪化した原因は何でしょう。
A 国際経済の見通しの不安定さによる税収の減収が一つの原因です。
Q 米中の貿易摩擦ですね。
A そうですね。
Q それは以前から分かっていたこと。それでも消費増税をやりましたね。この時期にやるべきではなかったのでは。
A 消費税増税と同時に対策を行いました。ですから消費増税の効果がPBに反映されるまでには時間が掛かると見られています。対策は一時的なものだが消費増税は恒久的なもので今後のPBに対しても消費増税のお陰でプラスの方向にはたらく。歳入の拡大につながりますから。
Q 消費増税で消費が減退し法人税や所得税は下がる。PBへの影響を考えた場合、それでも消費増税はやるべきだったのか。
A 中長期的には消費増税で歳入が上昇しPBの悪化が弱められる。
Q  反面、法人税・所得税などそれ以外の税収にはマイナスにはたらきます。プラスとマイナスの影響があってもそれでもトータルにはプラスですか。
A それはモデルに戻って計算してみないと正確には言えない。
Q 消費は落ちますね。
A はい。
Q 出された数字ですが2018年度の実質成長率ですが、今回は0.3%でした。半年前には0.7%でした。この数字が実績値だと思っていたのですがそれが0.3%に下がった。これはなぜですか。更に前の1年前は0.9%、更にその前は1.5%、その前は1.8%というようにどんどん下げていったという理由は何でしょう。
A 半年前も実績値なのだけど国民経済計算で改訂されることがある。3年くらいの範囲は過去に遡って改訂されることがあるので絶対確実というものではない。
Q それでこの改訂には特別に理由はあったのか。
A 部署が違うので正確なことは言えない。よく言われるのは法人企業統計とかが更新されたときに例えば投資とかのデータを見直したら変わったなどのようなことがよく言われる。
Q ということで計量分析室としてはよく分からないと。
A はい。即答はできません。
Q 2年前は1.8%と言っていたのが今は0.3%、つまり6分の1にまで下がった。こんなに大きく下がるものなのですか。
A 計量分析室では事実に基づいて計算をしているので過去の事実に基づいて計算したら下がってしまったのでそこを発射台として計算していますと。
Q たまたま今回そうだったということならば、まあ1回くらいはそういうこともあるのかなと思うのですが、これは毎年のことなんですね。大きく下げてしまう。なんかおかしいなと思う。毎年下方修正で上方修正することはない。もともとが上振れした数字が出されているのではないか。
A 一般に試算の作り方と説明すると、2018年度までは国民経済計算の値を使う。2019年度と2020年度は政府経済見通しと言って、内閣府の別の部署が出している見通しを使っている。そこから先の2021年度以降が我々計量分析室の出している試算になります。2019年度と2020年度は政府経済見通を使っていて、それは国の予算を立てるために使われているので、あらゆる情報を使って計算されている。だからそれは信頼できるデータだと考えている。
Q 確かに見通しということで新聞報道がありました。12月14日に2020年度の実質成長率は1.4%であることが閣議決定された。それを計量分析室としては動かせない。
A そうです。
Q しかしその数字が本当に正しいのでしょうか。別な部署が決めたことだからと言います。むしろ統一してくれないと困ってしまう。
A 経済見通しは国の予算を立てるのにも使われているし勝手に変えることはできない。確かに統計から接続して我々の推計から言った方がよいと思うことはあるのですが現状としてはそういうことです。
Q 2020年度の実質成長率ですが1.4%ということになりましたが民間のESPフォーキャストの予測では0.51%になっています。約3分の1です。政府のほうが正しいのだと言われるかもしれませんが、過去の予測だとESPフォーキャストのほうが結構あたっている。
A ESPフォーキャストは民間の40社の平均ですね。
Q 政府経済見通しがかなり上振れしている。それでいいのかなということです。
A 例えば我々の成長実現ケースとベースラインケースがあってベースラインケースのほうが民間予測に近いのではないか。
Q でも政府経済見通しは両方のケースで使っていますね。
A はい、そうです。
Q その出発点がちゃんとしていないと、正しい予測ができません。
A そうですね。今回の小野さんの意見は政府経済見通しがずれているから修正してほしいということですか。
Q 修正してほしいというよりこの試算の目的は何なのかということです。
もし日本経済が順調であれば私がこのように電話することはないのです。ただ順調だとは思わない。例えば名目GDPの国際比較をするとします。名目GDPをドル換算して例えば最近10年なり20年なりで成長率を比べると日本は最下位あたりです。他の国は成長しているのに日本だけが成長していない。日本経済は非常に悪い状況にあると私は認識している。アベノミクスで成長していると思っているのかも知れないが、世界に目を向けて比べてみると、大変ひどい状況だと思う。
A はい。
Q 例えば韓国も大きく成長しているしそろそろ一人当たりのGDPで日本を抜きそうだ。日本はほとんど成長していない。その原因は何だろうと考えた時、政府が出すこの試算ですがPBばかり気にしていて成長を考えていない。そこに問題があると考え、色々調べて他の民間のモデルで計算してみてどこが違うのかということです。政府経済見通しを閣議決定した段階で大間違いをしてて、その後付け足したものがかなりひどいと私は認識している。
私の認識と違うのか付き合わしてみたいと思っている。政府経済見通しが本当に正しいのかということです。
A ただ小野様に一点申し上げたいのは政府が経済見通しをしているのは民間を含めた予測ではなくて税収とか予算とか決算とかを織り込んだ数字を出しております。ですから政府がわざわざ計算している価値としては国の予算とかを最新のデータを織り込んで計算することができる。経済対策とかも含める。それは政府の中でしか使えない情報を政府の中で共有しているのでそういった意味では民間ができないことをやっている。
もちろん民間予測の平均と比べると分が悪いかもしれないのですが、ただ経済の予測だけではなくPBとか財政収支とか国債等残高とかも計算してます。多分民間予測だとPBとか財政収支とか国債等残高とかのデータは使い切れないと思います。
Q そうだと思います。もし見通しが正しいものであれば予算・決算などこれに基づいて組んでいくと正しく良い方向に行くと思いますがスタートポイントが全く間違えていたら予算・決算も間違えたものになって、国を間違えた方向に導いてしまうのではないかと心配しています。ですから経済見通しをもっと正しいものにして、そこからどうやったら成長させることができるかを検討すべきだと思う。過去の経済見通しが本当に正しかったのかを総括して、もし正しくなかったら今後どうやって正しくしていくのかを考えるべきだと思う。2018年度の実質成長率を見ても明らかに正しくなかったからこのように下方修正することになった。ですから今回閣議決定された2020年度実質成長率1.4%が来年になれば正しかったかどうかが分かるわけです。過去10年、20年を見てどうだっただろう、上振れしていなかったか、もし上振れしていたとしたら正しい見通しはどうやればだせるのかと検討すべきだと思うのですが。
ところで2020年度の実質GDPは1.4%になっていますが、その後2021年度は0.8%に下がってしまいますね。なぜ下がるのですか。
A 2020年度に総合経済対策をするので、それは短期的には経済を良好にする。2021年度になると経済対策の効果は剥落するから悪化することが見込まれる。
Q 経済対策を行って一時的に景気はよくなって成長はした。普通の国であれば財政を拡大した後は財政を縮小しなければいけないということでなく、財政を拡大すればそのまま拡大を続けます。歳出は2022年度以降、成長実現ケースでは拡大を続けていますね。
このように拡大し続けるのが普通であって、拡大した後縮小するというようなことは普通はやらないと思います。ずっと拡大し続けるのではダメなのですか。
A ずっと歳出を拡大し続けたら金利もだんだん上がってくる。
Q 金利は抑えることはできます。日銀が国債を買い取ればよいわけです。
A 我々の試算だと長期金利は23年度からだんだん上がってくる。
Q そういう予測も日銀次第であって日銀は長期金利まで含めて制御可能だと主張していてゼロ金利を続けたいならそれもできる。景気がまだ回復してない時なら金利を抑えることはできる。だから財政を拡大した後縮小しなければいけない理由はない。
A 経済は潜在成長率で決まると考える。2020年度では2%位を見込んでいる。21年度にGDPギャップがマイナスになってしまい、実質GDPは下がってしまいます。これはモデルに対する考え方、経済政策に対する考え方で、モデルを回して計算すると下がってしまう。
Q それはどういうモデルを作ったのかということですよね。2020年に比べ2021年度は歳出を下げてますね。景気対策を止めたから。
A 景気対策だけじゃなくて、発射台の問題、消費者物価が2021年度から23年度にかけて消費者物価上昇率の水準が少し下がっている。そういった影響があって歳出が低くなる。
Q 消費者物価は2021年度が1.0%、22年度が1.4%ですね。
A その水準が前回よりさがっている。前回は1.1%、1.5%だった。その延長で歳出を伸ばしていく。
Q 2%がインフレ目標だから歳出を増やしてもよい。
A 2%に行ってからはそうですね。
Q 2%より全然低いからもっと増やしてもよいのではないか。デフレ脱却ならもっと歳出を増やしてもよいのではないか。
A 財政を拡大するかどうかは政府が決めること。我々は試算で計算するだけ。
Q 歳出を増やせばGDPは増えるのではないか。2022年度以降は2~4%程度毎年増やしている。だからGDPも順調に増えている。これを見れば歳出を増やせばGDPは増えるんだなと安倍首相はこれを見て、では歳出を増やしてやろうと思うのではないか。
A 今回の小野様の主張としては、もうちょっと財政をふかせということ。
Q そうです。
2020年から2021年にかけて歳出を減らす必要はなくてもっと財政を拡大していけばもっとスムーズに経済の拡大が続くのではないか。2021年は実質成長率が0.8%に下がり、その後からまたGDPが増えていくというようになっていますが、このように一息つく必要はない。
景気対策は毎年やってもいいし、景気対策の内容を本予算に組み込んでもいい。ここにあるように一旦減らすのがよくない。
A 経済政策を立てるにあたっては色々な制約があると思います。例えば国の目標もありますしあらかじめ決めたことを守るとか、約束の下で試算をしているので、歳出を際限なくふやしていったりすると経済はよくなるかもしれないのですがPBとかの目標とか公債等残高対GDP比が上がったり、金利が上がったり、財政がパンクしてしまうかもしれないので、そういうのを防ぐために一定の規則に基づいて計算しております。
際限なく歳出を増やすとか計算の前提としては合わない。
Q 際限なく増やせと言っているのではない。やはり世界標準を見ましょう。例えばドルベースで考えたGDPの推移を世界何十カ国のグラフを描いてどうなっているかを比較してみればよいと思います。十年前、あるいは二十年前のGDPを起点としてそのあとGDPがそのように増えたか、減ったかをグラフにしてみると日本だけが成長していない。
A 日本経済は少子高齢化があります。
Q 少子高齢化は韓国でもあります。他の国でも同じ問題はあるわけで、そのような問題がありながら諸外国は成長しているわけです。ですから少子高齢化は言い訳になりません。やはり韓国なども消費増税など緊縮政策をやってないし、PB黒字化なども言っていない。年金改悪などを阻止しようとフランスなどデモが続いているし、アメリカのトランプさんは大減税をやり超積極予算でPB黒字化など目標にしてません。
大赤字予算で経済が好調で国民の支持が得られています。日本もPB黒字化など目標にすべきじゃない、PB黒字化はユーロ加盟国なら意味があるかもしれないが自国通貨を持っている国ではPB黒字化を目標にしていない。
A MMT理論ですか。
Q MMT理論は別として自国通貨を持っている国では中央銀行はいくらでも国債を買うことができる。
A 中央銀行だけでなく、海外の投資家も国債を買う。
Q 海外の投資家も買うが、それも円建ての国債です。万一彼らが一斉に売り出したとしても円建てなら日銀がいくらでも買える。だから全く恐れることはない。ドル建てで政府が国債を発行することはない。だから何にも恐れることはない。
A はい。
Q 日銀が随分国債を買っていて、買い尽くしたという感がある。これ以上買えない。日銀は保有残高を80兆円増やすと言っていたが、今は十何兆円程度しか増やせない。買い尽くしたという感があります。国債が国債市場から消えた。だったら少々国債を政府が発行しても問題ない。金利は抑えようと思えば抑えられる。
A 国債は発行したら返さなければいけない。
Q いや繰り延べはできます。
A 繰り延べしたら金利は上がります。
Q 金利が上がりそうならまた日銀が買えば上がらないようにできます。いくらでも金利は抑えられる。借換債を発行すればいくらでも繰り延べできる。これは無利子・無期限の国債と事実上同じです。だから国債のことは心配いらない。
A 今回中長期試算を出しました。これに関して小野様からコメントを頂いているのですが例えばMMT理論に関して計量分析室からコメントすることはありません。
Q MMT理論にコメントする必要は全くないですね。金利は上げようと思えば上げられるが上げる必要はない。上げない選択肢はある。
A そうですが、市場が歪んだりしませんか。
Q 今もの凄く市場は歪んでいると思います。そもそもゼロ金利ということですがゼロ金利を続ける限り経済は成り立たないと思います。本来は日銀が金利を上げ下げすることにより景気を調整できるということで中央銀行の役目があったわけです。今は流動性の罠に引っかかっていて最悪です。金利を上げようにも上げられない。そうなると銀行の経営が成り立たない。つまり市場が非常に歪んでいる。だから積極財政で景気をよくし、金利がある程度上がってくれば歪みが是正される。
A 金利が上がると国債を償還するときに負担が増える。
Q いくら上がっても日銀が国債を買えば貨幣に替わり、貨幣には利子がつかない。少なくとも2%のインフレ目標に達するまで金利は抑え気味にしたほうがよい。ですから政府はもっと国債を発行して景気を良くすればよい。
A 国債を発行して上がるのは名目成長率ですか、実質成長率ですか。
Q 両方です。少なくとも名目成長率は上がります。内閣府の成長実現ケースでは2022年頃から歳出を2~4%づつ増やしています。その結果GDPですが実質が2%、名目が3%以上上がっています。これはその通りだと思います。どうしてこの予測通りにならなかったかというと、景気対策で一時的に歳出を拡大しても、一旦歳出を下げてしまうからです。歳出を毎年2~3%上げていればここにあるようにGDPも上がってきたと思う。歳出を上げなかったからいつまでもGDPが伸びない。ゼロ金利のままだしインフレ率も低いまま。世界に希なる低成長国となっている。
A はい。
Q そうではなくて成長実現ケースで示されたように歳出を増やしていけばこのモデルの通りになると思います。このモデルは良いモデルだが、そこに行くまで政府が腹をくくって歳出を増やし続ける。景気対策ではなく、本予算で増やす。100兆円に達したからということでビクビクするのではなく毎年2~3%づつ増やしていく。
A はい。
Q そうすればここで示された成長率は実現できます。
20年位前から政府は2~3%の成長を目指して試算を出しています。その試算通りにならなかったというのは歳出を増やさなかったからです。
A 歳出を増やすかどうかの意思決定をやっているのは計量分析室ではない。
Q 計量分析室が出した結果と現実とが大きく異なっている。それがどうしてかということを政府に教えたらよいと思います。
A はい。
Q どうして計量分析室で出した結果と実際の経済がこれほど大きく掛け離れたのですか。
A 成長実現ケースとベースラインケースがあるのでベースラインケースのほうがより現実的だということです。政府の目標を達成しようとしているのが成長実現ケースです。政府の立場としては成長実現ケースに近づけようと全力で努力している。
Q そうですが、成長実現ケースとベースラインケースでどこが違うのかと言えば、歳出です。成長実現ケースでは歳出を大きく拡大してますが、ベースラインケースでは歳出の拡大は少ない。
話は簡単で歳出を拡大すれば成長する、歳出を拡大しなければ成長しないし財政も悪化する。ベースラインケースでは債務のGDP比は減少しない、成長実現ケースだと大きく減少している。ここのところを安倍総理に教えたいなと思います。このモデルは素晴らしいです。それをどのようにマスコミに教えるかという事です。マスコミに対していつもPB黒字化だけに注目させそれ以外は注目させない。つまり債務のGDP比を減らすには成長実現ケースのごとく歳出をどんどん増やしていけば良い。それによって財政は健全化する。逆に歳出を増やさないベースラインケースなどだとプライマリーバランスも黒字化しないし債務のGDP比も悪化する。こういうことをマスコミにPRしていただければ、経済政策はどうあるべきかというのをマスコミが理解し、国民が理解し、それを背に受けて安倍総理が決断できる。
A 今回も小野様から貴重なご意見を伺ったのですが、政府に仕えて勤務する職員の立場からは全部の事を話せるわけではない。ですから適切にご返答できないこともありますし、毎回試算を公表するたびに貴重なご意見を頂いておりました感謝しております。
Q 折角国の税金を使って貴重なシミュレーションをしておられるのですから何が重要かということをPRして欲しい。おそらく私が考えるには、先週の17日に新聞発表がありましたが。
A 日経新聞ですか。
Q いろんな新聞に出てます。日経、東京、読売、産経、毎日など全部出てます。PBの事ばかり言っている。こういうデータを渡されてPBだけをマスコミが見るかというとそんなわけないです。マスコミを集めてマスコミにどういうところがポイントかということを話しているのだと思います。
A そうですね。
Q その時に私が言っているようなことは触れずに、ともかくPB偏重ですね。他の国であればそんなことしないと思いますよ。結論は簡単です。歳出を増やせば財政は健全化するし経済は成長する。そうでないと財政は健全化しない。PBはいつまで経っても赤字。成長実現ケースとベースラインケースを比較しながら歳出拡大が重要だと強調して欲しいですね。そうすれば世の中ガラリと変わってきます。
A 試算をする立場としては中立な立場を維持しなければいけない。
Q それが中立ですよ。PBばかり言っているのは中立ではない。
A 歳出をどこまで増やせば大丈夫なのかということを決めて試算というのは考えられているのでただ単に経済を活性化してPBも黒字化するという感じではない。
Q そういう感じだと思いますよ。このデータを見ると。
A 厳密に歳出を何%まで増やせば大丈夫とか。
Q それが成長実現ケースだと思いますよ。実際増やしているじゃないですか。2018年度が99兆円だったのが、2028年度には128兆円になっています。このくらい増やせば大丈夫ということですね。そうでなくてベースラインケースのように114兆円までしか増やさないということなら悲惨な結果になる。財政も悪化する。
A そういう見方もありますね。
Q そういう見方をPRしなければいけない。是非マスコミを集めてそこもPRしてほしい。ですから成長実現ケースのように歳出を128兆円まで増やした。確かに公債残高は増えたのだがGDPはもっと増えているから公債等残高対名目GDP比は157%にまで下がった。めでたしめでたしです。しかもGDPも増えた。600兆円の目標も安倍総理も言っていますからそれを実現するにはやはり成長したほうがよい。PBのことばかり煽るのはやめたほうがいい。
A 計量分析室は煽ってはいません。
Q PBの予測ははっきり言って外れています。20年近く前から「間もなくPBは黒字化する」と言ってきた。2006年頃小泉さんが内閣府計量分析室の試算を見て2011年度PBを黒字化することを目標にした。しかし実際の2011年度のPBはGDP比で8.9%の大赤字で予想ははずれた。仕方なく黒字化目標を2020年度に後ズレさせ目標を再設定した。それでも黒字化は無理だということで、また後ズレさせて2025年度に目標を再々設定した。毎年毎年発表しているが、その度に過去の発表が間違いでしたとして訂正している。今回の発表でも2025年度でも無理だという発表であります。つまり過去に発表したものが全部嘘だったということでいつ黒字化するということをあまり強調しなくてもよいのではないか。どうせ当たらないんだからと思うのですが。そこばかり新聞に書くのはどうかと思いますが。
A 新聞を書くのは新聞記者の方です。
Q 新聞記者の前での発表の仕方によって記者の受け取り方が変わってくるわけです。PBではなくて、成長実現ケースでは歳出をこれだけ拡大するからGDPを増やし債務のGDP比を減らすが、ベースラインケースでは歳出を増やさないからそれができないということを記者の方々に教えたらよいかと思いますが。
A そうですね。1月17日に発表があったのですが、それ以前にも発表があったのでそれに引きずられているということもあるかと思います。報道に対してより注意を払うようにということですね。
Q 成長実現ケースは実は歳出を拡大しているが、ベースラインケースは歳出をそれほど拡大していないのだということを強調して欲しいと思います。
A 分かりました。
Q 長い時間、ご説明有り難うございました。

 

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2020年1月21日 (火)

今回の内閣府試算は財政拡大の必要性を示唆している(No.384)

令和2年1月17日に内閣府から発表された『中長期の経済財政に関する試算』は積極財政の必要性を強く示唆するものである。この試算では成長実現ケースとベースラインケースの2つのシナリオが調べられた。2つのシナリオの決定的な違いは歳出である。

図1

384_1

歳出の増加率は成長実現ケースがベースラインケースのほぼ2倍であり、成長実現ケースが積極財政、ベースラインケースが緊縮財政と表現することができる。歳出以外にも厳密に言えば細かい違いが両者にあるのだが、ここでの議論では重要ではないので無視する。

当然の事ながら積極財政の方が緊縮財政より成長率が高い。

図2

384_2
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政

積極財政を行うと金利が暴騰するのではないかと心配する人がいるが、内閣府はそれを明確に否定した。

図3

384_3  
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政

2026年度に3.2%まで上昇するがこれは金利暴騰ではない。積極財政を行うとハイパーインフレになるのではないかと心配する人もいるがこれも内閣府は明確に否定した。

図4

384_4
 
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政

インフレ率は目標とする2%に達するだけでありハイパーインフレにはならないことを内閣府が証明した。積極財政では国の借金が増えて将来世代へのツケを増やす事になるという説がある。債務のGDP比を内閣府は計算している。

図5

384_5
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政

積極財政だと債務は増えるがGDPの増加率はそれ以上なので債務のGDP比は逆に減少することが内閣府の試算で示された。つまり積極財政なら将来世代へのツケを減らす事ができるのである。それでは基礎的財政収支はどうなるか内閣府の試算を見てみよう。

図6

384_6
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政

積極財政では税収が増え基礎的財政収支は改善するが、緊縮財政ではいつまで経っても改善しない。過去の実績では成長実現ケース(積極財政)の予測した通りの経済発展は見られなかったという反論があるかもしれない。その答えは単純で、政府が成長実現ケースで予測した通りの歳出拡大を怠ったという事だ。景気対策を行った後はそれを止めることで歳出の縮小をし、景気が悪くなるとまた景気対策をするという歳出の拡大と縮小を繰り返してきた。これが失敗の原因であり、成長実現ケースのように一本調子で歳出を拡大し続けていたら、内閣府が示した通りの経済拡大が期待できたのである。

厳密に言えば成長実現ケースとベースラインケースとの違いは歳出だけではないとの指摘もあるだろう。しかしその違いは僅かでありその違いを無くして再計算をしても、ここで行った議論には全く影響を与えない。

 

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2020年1月14日 (火)

ゴーン氏への日産の対応は恩を仇で返したことになるのでは(No.383)

日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は保釈中にも拘わらずレバノンに逃亡した。マスコミは彼を犯罪人として扱うのだが、少なくとも彼は経営危機の日産を救ったし、彼を失って再び日産は経営危機に陥るのではないかと心配になる。彼が最初に捕まった原因は有価証券報告書の虚偽記載である。2011年~2015年の4年間の彼の役員報酬が本当は約80億円だったのに約40億円と記載したというもの。実際は40億円しかもらっておらず残りは退任後に受け取れる可能性があった。しかし実際は100%受け取れるというものでもないから虚偽記載ではないと法律の専門家は述べている。

もともと2兆円の借金にまみれた日産の業績をV字回復させたのはゴーン氏の業績だ。日産の連結営業利益はゴーン氏がCEOだった2011~16年度の平均で6000億円程度だったのが、ゴーン氏がはずれた2019年度は1500億円に落ちている。このことから考えれば4年間で80億円払ってもCEOを続けてもらったほうがよかったし彼を失って会社は大損害を被ったと言えるのではないか。なぜ4年間で80億円もらわずに40億円だけ受け取り、残りは退任後に受け取るようにしたかといえば、CEOの給料が高すぎると他の社員・役員がやる気を失うからということだった。つまり脱税して個人的な目的でお金を使いたかったのではなく、会社のためを思ってのことだったがこれが重罪といえるか。このことを日産内部で容認していれば何事も起きなかったのだが、ゴーン氏に反発する人々が結託してゴーン氏を告発する手段に訴えた。会社の内部抗争はよくある話だが、日産を立て直した恩人を警察に突き出すのは、恩を仇で返すことになるのではないか。

もしゴーン氏が100%日産の株を持っていたオーナー社長であったら、給料は自由に決められたしこのような問題は起こらなかった。経営危機にあった日産を立て直したのであれば、その功績は正当に評価されるべきであり、オーナー社長に準じた扱いをすべきだし日産私物化に関してもある程度寛容であるべきではないだろうか。日産はゴーン氏を警察に突き出した結果、時価総額で1兆円以上失っている。

虚偽記載と言うが、役員は退任後の報酬をカットできたのだし、実際カットされているから有価証券報告書の虚偽記載にはならないのではないか。しかしそれでも100%支払うものだったと主張され彼は犯罪者にされた。彼は日産の恩人だということを考えれば、反乱を起こすにしても、空港で何の前触れもなくいきなり逮捕し司法取引という陰険な手段まで使ったりして彼を犯罪人にするのには違和感がある。彼を失脚させたいだけなら彼に「私たちはあなたを警察に突き出すこともできる、それがいやならCEOを辞任しなさい」と役員会議で要求すべきだったし、CEO解任決議だってできたのではないか。空港で突然逮捕したということは、その時点で彼の有罪は99%以上決まっていた。彼の言い分を全く聞かずに一方的に有罪を決めてしまう日本の司法制度に問題はないのか。

日本で公正な裁判を受ける可能性は皆無だったと思う。起訴されれば99%以上は有罪になるのが日本の裁判制度だ。気が遠くなるほど裁判に時間がかかるから、まるで無期懲役だから海外に逃亡したくなる気持ちは分かる。

このやり方では、たくさんの冤罪を生むのは明かだ。実際痴漢冤罪事件が問題になっている。痴漢事件で起訴されると正しいのは女性、嘘を言っているのは男性であることがほぼ前提となって裁判が進む。しかし、痴漢被害を偽装する女性もいる。検察も人間であり間違うこともある。ゴーン氏のように有名人であり有能な経営者をこのような形で犯罪者にしてしまうのでよいのだろうか。アメリカの自動車メーカーは日産の2倍の給料でゴーン氏を受け入れると言ったそうだ。ゴーン氏をCEOのままにしておいたほうが、日産の経営にはよかったのではないか。こんなゴタゴタのあった会社の車が売れるだろうか。厳しい競争のこの業界で生き残れるのか。このような扱いをされるのであれば、海外の有能な経営者は日本に来なくなるのではないか。

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2020年1月 7日 (火)

通貨発行権を駆使した宅地改革を断行せよ(No.382)

2019年の日本の総世帯数は5306万世帯で、今後は減少が見込まれる。一方住宅数は6365万戸であり、総世帯数より多く、住宅建設は続いているので今後も増え続ける。すでに7件に1件は空き家になっており、2033年には空き家率は30.2%に増加すると野村総合研究所は予想している。日本の民有地の時価総額は約1000兆円だから、単純計算なら約300兆円が無駄になることになる。管理が行き届かずに何年も放置され老朽化した空き家が増えると、破損や倒壊で周囲に被害を及ぼす、ごみの不法投棄や放火などの犯罪を誘発する、有害動物を誘引する、景観を阻害して地域のイメージを悪くするなど、さまざまな面で悪影響を及ぼす恐れがある。空き家だらけの都心部が放置されているが。一方で都営住宅の入居倍率は数倍から数百倍になっており、住む場所に困っている人は多い。

かつて高値の花だった多摩ニュータウンだが今では高齢化が進み、地価は8分の1に下がった所もあるという。バブル絶頂期には都心の地価が急上昇し、それが郊外にも波及していった。そこでサラリーマンは郊外から遠距離通勤した。当時郊外に家を買った人も30年が経過し、遠距離通勤のサラリーマンも引退し、その子世代の相当数は便利な場所を求め地元を離れ、人口は大幅に減り家の跡継ぎもなく地価も下落していく。

そういった現実を忘れ郊外の宅地開発が止まらない。一方で都心は空き家だらけなのを放置して新しい住宅をどんどん建設していく。その反面建設業界は深刻な人手不足になっている。3K職場と見なされ敬遠する人が多い。無計画な宅地開発で2015年までの10年間で大阪府の面積に迫る居住地区が生まれたという。

問題点を具体的な数字で明らかにするために持ち家と借家の数の推移を示す。

                         出所:総務省

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住宅建設が進むと誰もが持ち家を持てるような気がするが、借家も増えておりマイホームが買えない人が減っていないということだろうか。十分な資金を持っている人であればマイホームが買えるはずであり、やはり買えない世帯が多いということは豊かさが国民の間に広がっていないことを意味している。

                     出所:国立社会保障・人口問題研究所

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人口はこれから減少していくのだから世帯数も減る。逆に住宅戸数が増えるのであれば多くの人が持ち家でゆったり暮らせそうな気がするのだが、分配が上手くいかないとそうはならない。

                             出所:総務省

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「新築に対する思い」が強いから古い家は放置され空き家が増える。親が亡くなっても、親が住んでいた家はそのまま空き家にする傾向がある。複数の相続人が争う場合は売却が難しく空き家になることが多い。家の所有者が死亡した後、相続の手続きが行われない場合、空き家になる。老後の資産運用にテレビでは誰もがアパート経営を勧めている。誰もがそうするようになれば、住宅の供給過剰になり失敗する。空き家、空き地を無くして活気のある街をつくる必要がある。

                           出所:総務省

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住宅は増えたが持ち家住宅比率は増えていない。やはり富の分配が上手く行われていないということではないか。

                    出所:国立社会保障・人口問題研究所

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生活苦で生活保護を受けている世帯は160万世帯以上である。生活保護の対象になる人のうち、実際に利用しているのは18%だから本当に生活が苦しいのは数百万世帯もある。この人達は持ち家どころか生活費も足りないのである。

我々が提唱するのは「労働はロボットに、人間は貴族に」を実現する「解放主義社会」である。労働が次々AI/ロボットに代替される中で、住宅建設や土木工事がロボットだけで行われるようになるのは相当先のことだ。そう考えればむやみに居住地区を増やすのでなく、どうすれば住みやすい都市ができるのかを考え、まずしっかりした都市計画を立て宅地の大改革をするとよい。空き家の管理の適正化に向け、平成27年に「空家等対策特別措置法」が施行されている。この法律により、空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告などの行政指導を行うことができるのだが、あまり効果がない。むしろそのような所有者に対しては固定資産税を大幅に値上げし適正利用を促す。誰も相続しない空き家や、所有者が分からない空き家は一定の猶予期間の後国有化する。所有者が分かっている場合でも固定資産税が大幅に値上げされていれば売りたいと思ったり有効利用しようとしたりするだろう。売却を希望する所有者からは国が買って国有地を増やせば良い。国は通貨発行権を有しているからいくらでも買える。やたらに空き家が増えて都市機能が著しく劣化していくのを放置するより、放置されている空き家を国有化し、有効利用しコンパクトシティーを目指したほうがはるかによい。

リチャード・A・ヴェルナーは日銀が刷ったお金で土地を買う事を提案したが、政府が国債を発行して得た財源で土地を買いその国債を日銀が買っても同じ事だ。日銀は土地の管理などできないので政府が買い取ったほうがよい。国が主導して都市の再開発をするのであれば、移住、観光振興、福祉、市街地活性化、産業振興などシステマティックに都市開発が可能となる。市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等であれば不燃化されたビルに統合し、余った土地で公園、広場等の整備をすることで土地の高度利用が可能となる。戦後GHQの助けを借りて行われた農地改革並の大改革が行われた。もはやGHQの助けを借りることはできないが、通貨発行権は強大な政府の権利でありそれを駆使すると思い切った大改革が可能だ。国債の増発が必要となるが、その影響をマクロ経済モデルで慎重に調べながら行えば良い。

かつて田中角栄は日本列島改造論を唱えた。日本列島を高速道路・新幹線・本州四国連絡橋などの高速交通網で結び、地方の工業化を促進するなどして列島改造景気を導いた。平成の時代は失われた30年であったが令和を繁栄の時代にするには通貨発行権を駆使した政策が欠かせない。空き家による環境悪化を阻止し魅力あふれる都市を建設せよ。すべては国民の利益のために。

 

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