今回の内閣府試算は財政拡大の必要性を示唆している(No.384)
令和2年1月17日に内閣府から発表された『中長期の経済財政に関する試算』は積極財政の必要性を強く示唆するものである。この試算では成長実現ケースとベースラインケースの2つのシナリオが調べられた。2つのシナリオの決定的な違いは歳出である。
図1
歳出の増加率は成長実現ケースがベースラインケースのほぼ2倍であり、成長実現ケースが積極財政、ベースラインケースが緊縮財政と表現することができる。歳出以外にも厳密に言えば細かい違いが両者にあるのだが、ここでの議論では重要ではないので無視する。
当然の事ながら積極財政の方が緊縮財政より成長率が高い。
図2
積極財政を行うと金利が暴騰するのではないかと心配する人がいるが、内閣府はそれを明確に否定した。
図3
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政
2026年度に3.2%まで上昇するがこれは金利暴騰ではない。積極財政を行うとハイパーインフレになるのではないかと心配する人もいるがこれも内閣府は明確に否定した。
図4
インフレ率は目標とする2%に達するだけでありハイパーインフレにはならないことを内閣府が証明した。積極財政では国の借金が増えて将来世代へのツケを増やす事になるという説がある。債務のGDP比を内閣府は計算している。
図5
積極財政だと債務は増えるがGDPの増加率はそれ以上なので債務のGDP比は逆に減少することが内閣府の試算で示された。つまり積極財政なら将来世代へのツケを減らす事ができるのである。それでは基礎的財政収支はどうなるか内閣府の試算を見てみよう。
図6
成長実現ケース=積極財政、ベースラインケース=緊縮財政
積極財政では税収が増え基礎的財政収支は改善するが、緊縮財政ではいつまで経っても改善しない。過去の実績では成長実現ケース(積極財政)の予測した通りの経済発展は見られなかったという反論があるかもしれない。その答えは単純で、政府が成長実現ケースで予測した通りの歳出拡大を怠ったという事だ。景気対策を行った後はそれを止めることで歳出の縮小をし、景気が悪くなるとまた景気対策をするという歳出の拡大と縮小を繰り返してきた。これが失敗の原因であり、成長実現ケースのように一本調子で歳出を拡大し続けていたら、内閣府が示した通りの経済拡大が期待できたのである。
厳密に言えば成長実現ケースとベースラインケースとの違いは歳出だけではないとの指摘もあるだろう。しかしその違いは僅かでありその違いを無くして再計算をしても、ここで行った議論には全く影響を与えない。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- チャットGDPに日本経済の復活について聞いてみました(No.485) (2023.08.16)
- 内閣府計量分析室の試算から問題点を考える(No.483)(2023.07.30)
- ChatGPTは人の労働を代替できるか(No.181)(2023.03.16)
- 内閣府計量分析室に電話して内閣府試算について聞きました(No.480)(2023.02.10)
- 岸田首相は日本経済の現状を理解しておられるのだろうか(No.478)(2022.11.10)
コメント
今日は。higashiyamato1979です。財政拡大こそが全ての解!
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2020年1月26日 (日) 14時46分