現金配布、消費減税、公共投資の経済への影響を比較(No.393)
消費増税ショック、コロナショックで今大規模な経済対策が求められている。日経NEEDS日本経済モデルを使い様々な景気対策が様々な分野にどれだけの影響を与えるのかを計算し比較してみた。ここで比べたのは以下の3種類である。
①全国民に一人当たり20万円を配布する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-ea124f.html
②消費税率を0%にする。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-055de9.html
③公共投資を10兆円増額する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-2ef90f.html
一見するとこれらの景気対策は大変大規模に思えるのだが、実際はバブル崩壊で土地や株の資産価値は千数百兆円が失われており、それを取り返すには全く足りない。もっと大規模な景気対策のシミュレーションは20年近く前に行われた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/12/post-17a43e.html
以下は①~③の景気対策の効果を比較したものである。各対策によって様々な指標が何倍に押し上げられるかを示した。
例えば実質GDPを比べれば分かるが、公共投資は現金配布の半分の出費で現金配布と同程度のGDP押し上げ効果が出ている。しかし公共投資の場合、企業経常利益は13.4%増えているのに対し、雇用者報酬は0.37%しか増えていない。つまり企業は儲かるが、労働者はその36分の1しか収入が増えない。これは労働分配率の低下を意味する。つまり国は発展しても大部分の富は経営者に行く。これは世界的な傾向だ。これを放置すると国の富の大部分は一握りの資本家が所有することとなり、労働者はいくら働いても収入は増えないことになる。経営者にしてみれば労働者に多くの賃金を払うよりAI/ロボット化で人件費を節約したほうがよい。この状況を放置すれば、労働者は職を失うかあるいは安い賃金で望まない仕事を生活のために続けざるを得なくなる。この状況は拙書『「資本主義社会」から「解放主義社会」へ』で詳しく説明した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-53b969.html
このように労働者に厳しい社会になってしまうのを防ぐには、通貨発行権を駆使し国民に現金を給付すればよいのである。20万円程度の配布であれば物価への影響はほとんどないことがNEEDSの試算で示されており、繰り返し配布を続けることができる。通貨発行権は次世代でも次々世代でも何回でも繰り返し使うことができる。
現金配布するくらいなら、国土強靱化やAI開発など、他にやるべきことはたくさんあると意見が出るのは当然だ。しかし日経NEEDSの試算に従えば、それらを全部やって、それに加えて20万円現金給付をやってもまだ大丈夫だという状況であることを理解して頂きたい。そもそも第一次産業や第二次産業はAI/ロボットで今後次第に従事する人口は減っていき、次第に人は第三次産業に移る。第三次産業を発展させるためには、消費を増やす必要があり、そのためには国民にしっかりお金を渡し使ってもらうしかないのである。
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。消費税ゼロに公共事業も積極的に起こし、更には20万円現金給付もやれば火が消えていた日本経済は一挙に立ち直るでしょう。20万円と云わずもっと高額の現金を配る必要があると思います。それも毎年。長年続いた「改革」路線のお陰で我が国の庶民の懐はカツカツ、それゆえ需要が極端に抑制された状態。この状態で20万円程度の現金を配った所でデフレ脱却すら覚束ないでしょうから。
投稿: higashiyamato1979 | 2020年3月18日 (水) 14時59分