公共投資の経済効果を日経NEEDS日本経済モデルを使い調べた(No.392)
消費増税による消費の落ち込みに続いてコロナショックが日本経済を襲っている。景気対策が検討されている。景気対策の定番は公共事業なので、公共事業費を増額したときにどのような影響がでるかを日経NEEDS日本経済モデルを使って計算した。まずGDPを計算してみよう。
図1 日経が2020年2月に発表したデータを使用して計算
図2 日経が2020年4月に発表したデータを使用して計算
グラフに示したように、追加の公共投資の額は10兆円、20兆円、30兆円である。2020年のQ2(4月~6月)にはコロナ禍で名目GDPが約27兆円押し下げられており、これを取り戻そうとすれば20兆円近くの公共投資の増額が必要となる。次にもっと多くの経済指標を計算してみる。
表1 日経が2020年2月に発表したデータを使用して計算
表2 日経が2020年4月に発表したデータを使用して計算
この2つの表を比べると、4月はコロナのお陰で名目GDPが21兆円減少したことが分かる。これを公共投資で取り戻そうとすると、公共投資約20兆円増やすことが必要であると分かる。コロナ禍により輸出は15%、輸入は20%減少した。法人企業経常利益は31%も減少した。これは公共投資を約25兆円増額するとやっと取り戻せる。それでも雇用者報酬は0.6%しか減っていない。不況だと言え、簡単に給料を減らせないという事情がある。
公共投資の増額は比較的少額の政府支出で大きなGDP押し上げ効果がある。しかし問題が無いわけでは無い。まずどの事業をやるべきか、国民あるいはその地区の住民の同意が必要で住民の説得には長い時間を要することもある。また際限なく事業が拡大できるわけでもなく、入札をしても落札する業者がいなくなることもある。そもそも熟練工の必要となる工事を際限なく拡大することはできない。人手不足に外国人の活用も行われているが、それも限度がある。更に公共事業費を増やせば法人企業経常利益は大きく伸びるのだが、一人当たりの雇用者報酬はほとんど伸びない。これは格差拡大、つまり富みのほとんどがごく一部の資本家に集中し、いつまで経っても一般国民は豊かさを感じられないことになるのではないか。
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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