全国民に一定額を給付したときの影響をNEEDS日本経済モデルを使って調べた(No.401)
「貯金に回るだけで効果がない。特別に買いたいものがないからお金は使われない」という説をNEEDS日本経済モデルが完全に否定する。
我々の提言は国民全員に20万円を給付せよということだ。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-ea124f.html
カネに困っていない人にまで配る必要はないとの主張もある。しかし誰がカネに困っていないかを調べる作業は大変であり、時間が掛かる。現在、緊急事態宣言で経済的に困っている人は多いのだから、緊急に現金を配布し、どうしても金持ちからの分は取り返したいのであれば、所得税や固定資産税を上げて取り返せば良い。むしろ問題は20万円を1回給付するだけで足りるのかということだ。
IMFは2020年は世界経済はマイナス3%成長で世界大恐慌以来の経済の悪化を予測している。日本は5.2%のマイナス成長が予想されている。ちなみにリーマン・ショック時には日本は4.2%のマイナス成長だったので、リーマン・ショック以上の打撃が考えられる。世界の指導者はこれに対して巨額の財政出動で対応するが、リーマン・ショックの時も、日本だけは巨額の財政出動はせず、結局経済の落ち込みは世界最悪レベルだった。麻生財務大臣も財政健全化目標は放棄しないと発言していることから、強力な財政出動は望めず、今回も世界最悪の大不況が日本にやってくると思わざるを得ない。それでも制限なしで10万円を国民に給付する案を安倍首相は考えているようであり、これがコロナ対策の第一歩になってくれることを期待する。
とは言え、10万円ではとても足りない。そこでNEEDS日本経済モデルを使って20万円給付と40万円給付と80万円給付の場合も調べてみた。
この試算から分かることは、現在はGDPギャップはマイナスであり需要不足の状況にある。給付額を増やしていけばプラスに変わる。しかし物価が急上昇することはない。給付なしでは消費者物価指数は2020年の102.4から2021年には103.1に上昇するだけだが、80万円給付なら102.4から103.4に上昇する。物価はそれほど上がらないということだ。長期金利も0.13までしか上がらない。長い間デフレに苦しめられた日本だから余程巨額の財政出動をしなければインフレ率2%すら達成できない。この試算により、現金給付により問題は発生しないことが確認された。
経済効果があるのは明かだ。民間消費も住宅投資も民間節義投資も伸びる。株価も地価も上昇し、企業も利益も伸び、賃金も上昇する。国民にとってみれば給付金がもらえるだけでなく賃金も上がるのだから二重の喜びだ。輸入が拡大するから貿易相手国の米国なども喜ぶのは間違いない。
この表で分かるように家計も企業も資産残高を増やしており、例えば80万円給付の場合2年目には合計248兆円も増やしている。給付した総額は約200兆円だから、資産残高の伸びはこれより大きい。これらのことからも現金給付は貯蓄に回るだけで経済への効果は無いという主張が否定された。
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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