原油価格の変動が及ぼす経済への影響とアベノミクスの失敗(No.399)
アベノミクスは安倍首相の自慢の経済政策であり、GDPが伸びたことをいつも自慢する。しかし経済を理解していれば、彼の主張が欺瞞的だということが分かる。第一のポイントは原油輸入価格との関連である。日本は原油を輸入に頼っている。原油輸入価格はアベノミクスが始まってから1バレルが110ドルから40ドル台にまで下がっている。
出所:Global note
GDPは輸出が増えれば増加し、輸入が増えれば減少するようになっている。輸入価格が下がれば輸入量は変わらなくても輸入額が減り、減った分だけGDPが増える。輸入価格は安倍さんが努力して下げたのではないから「運が良かった」のである。ではどれだけGDPを押し上げたのだろう。日経NEEDS日本経済モデルを使って計算した結果を下図に示す。これより約20兆円程度、つまり4%程度GDPは「努力しなくても」押し上げられた事が分かる。
次の表で原油価格の下落でどの程度様々な経済指標が影響を受けるかを示した。
原油価格が下落するとGDPを押し上げるだけでなく輸出が増え輸入が減り、経常収支が改善し企業の利益が増大失業率が低下し物価は下がり株は上がる。日本にとっては有り難いがアメリカ、ロシア、サウジアラビアなどの産油国は困る。
アベノミクスで本当に日本経済は発展したのだろうか。原油価格の下落で日本経済にとっては追い風が吹いていた。上記で示したようにこの追い風でGDPは約20兆円押し上げられた。更に消費増税でGDPは少なくとも10兆円のゲタをはいたが逆に国民にとっては迷惑なゲタである。2014年度から2018年度の名目GDPは43兆円拡大したがそのうち30兆円は原油価格の下落による押し上げと消費増税によるゲタでありこれを差し引くと13兆円しか残らない。2019年度と2020年度は実質成長率がマイナスになりそうであり、名目成長率が僅かにプラスになったとしても、それは消費増税でゲタをはかされただけのことであり、国民には大変迷惑なことである。
日本の経済成長率は先進国の中では最低であるのだが、詳しく見るとここで述べたように内容は更に悪い。これは他民族に比べ日本人が劣るというわけではなく、アベノミクスの経済政策が悪いということだけである。我々が提唱する具体的な積極財政の中身については次のサイトを参照して頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-ff9381.html
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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コメント
今回の経済危機はどれぐらいの規模となるのでしょうか?
仮に20%、30%と落ち込むような規模になれば、税収も特別会計込みで
40兆、60兆と減収することになるのでしょうね。
最低でもアメリカを見習って対策してほしいところ。
投稿: ARQD | 2020年4月 7日 (火) 19時56分