株価の変動が及ぼす経済への影響(No.397)
株式投資には様々な目的がある。今は使わないが、現金で持っていても増えないし、インフレが起きれば目減りするから運用して増やしたい。増えたらマイホームを買ったり、老後の生活費のためなどに使ったりすると考える。あるいは会社の社内留保を株の形で保有することもある。株が上がれば、所有者は取り崩して様々な目的に使うことも出来、それが経済を成長させる。それがどの程度かを日経のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。
2020Q1(2020年第一四半期)において日経平均株価が約24000円であったとする。実際はその後コロナ騒動で株価は急落したが、急落前の経済状況をベースラインとして使う。計算は次の4種類とする。各ケースでは計算した期間中は一定の株価引き下げあるいは押し上げ圧力が掛かり続けるとする。
株価24000というのがベースラインである。
株価19000はベースラインに売り圧力がかかり5000円だけ下がった株価が続く場合。
株価29000は買い圧力のためベースラインより5000円だけ高い株価が続く場合。
株価44000は買い圧力のためベースラインより20000円だけ高い株価が続く場合である。
日銀がETFを年間12兆円買うと株価が1000円押し上げられるという識者の予測もあるが、押し上げ効果はどの程度か正確に分かっているわけではない。日経平均は1989年に38915円という最高値を付けた後3万円以上下落した。凄まじい売り圧力があったためだが、株価自身が経済の足を引っ張っていたこともあり、政府が景気対策を行っても簡単には景気は浮揚しなかった。今回の計算結果は株価がどの程度景気の足を引っ張るのか、あるいは景気を浮揚させるのかの目安になると考える。次のグラフは名目GDPの推移である。
株価が成長率に影響を与えるのは明かだが、2年以内にGDPを600兆円以上にしようとするなら株価は40000円を超えなければならない。もちろん、財政出動の方がGDPをはるかに強力に押し上げることができることはすでに述べた。次のグラフはインフレの影響を除いた実質GDPである。
株価というもの、経済環境によって大きく変動していく。かつては土地神話というものがあり、土地は果てしなく値上がりし、それと共に株も果てしなく値上がりすると多くの人が信じ投資が行きすぎたため、土地や株は異常な値上がりをした。1980年代の終わりの頃だ。銀行も低金利で積極的に融資をした。世界中から資金が日本に流れ込み、株価は38,915円の最高値をつけた。その後1989年からバブル潰しが始まり、株安、債券安、円安となり資金は国外へ逃げていった。バブル後最安値は2009年3月10日の7,054円であった。このように株価は大きく動いた。株価を引き上げることは景気回復に貢献するが、日銀の行う年間12兆円程度のETF買い入れでは効果は少ない。株価が経済にどのような影響を与えるのかは次の表で見ることができる。
結論から言えば、株価が経済に与える影響はそれほど大きくはないが無視もできない。投資家・国民がこれから日本は発展しそうだと判断すれば株価は上がるが、そうでなければ下がる。その意味で政府の考えによって株価は強く影響されると言える。経済発展も株価によって影響を受ける。第2次安倍内閣は金融政策によって株価をつり上げれば、消費増税による景気悪化を克服できると見誤ったのだと思う。ちゃんとこのような試算を理解して何が間違いだったのかを理解して頂きたい。
この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。
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コメント
今日は。higashiyamato1979です。GDPの成長即ち経済発展は株価を含め様々なファクターを検証した上で総合的に考えるべきなのですね。「クニノシャッキン」(政府債務)だけを取り上げて針小棒大に騒ぎ立てるのがいかに愚かな事かが良く分かります。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2020年4月 3日 (金) 16時13分