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2020年5月14日 (木)

政府がお金を刷って国民に配った時の経済を日経のモデルで調べた(No.411)

コロナ禍による日本経済の深刻な落ち込みに対する政府の対策が極めて重要になる。4月30日に令和2年度の第1次補正予算が成立し、1人一律10万円の特別定額給付金の支給が決定した。この決定には多くの国民は賛成している。国は国民に使用目的を限定せずにお金を配る。少数ではあるがこの政策に不満・不安を持つ人はいる。その理由を列挙してみよう。
①コロナ禍で収入が減った人を中心にもっと額を増やして欲しかった。
②このお金は国債発行が財源になっており、国の借金だから将来国に返さなければならない。
③激しいインフレになるのではないか。
④国債が暴落し、金利が急騰するのではないか。
⑤円が信認を失い暴落するのではないか。
⑥どうせ給付金は貯金に回るだけで意味がない。

この政策はベーシックインカムが将来本格的に実行されるときのための貴重なデータを提供する。『文春オンライン』では、緊急アンケートとして「新型コロナ緊急対策『1人10万円給付』に賛成? 反対?」を実施。5日間で総数905票、20代~80代から回答が得られた。結果は賛成が731票(80.8%)、反対が174票(19.2%)と圧倒的に賛成が多かった。つまり②~⑤についてはあまり議論になっていない。それなら、もっと支給金額を増やしたらどうなるのか気になる。そんなことをしたら大変なことになるのではないかと心配する人がいて、その理由は②~⑤だ。しかしよく考えて欲しい。本当にこれらの事が起きるのか、起きるとしたらどのタイミングか。あたかも「禁断の実」であるかのように捉え、食べたら死んでしまうと思っているのかもしれない。しかしこれは誰も確かめたことはない。もっと多くの現金を支給したとき、日本国民にとって大変な富をもたらし、コロナ禍で大打撃を受けた経済をV字回復させることができるという可能性はないのだろうか。

国の債務残高が増えると金利が急騰し国債が暴落するとの主張は1982年にも見られた。当時国債残高は今の10分の1しかなかったのだが、財政非常事態宣言が出された。しかし国債残高は増加し続けたが金利は逆に下がり続けた。このことから国の債務残高が増えれば金利が急騰するという説は現在の日本には当てはまらない。また激しいインフレになるという説も、これだけ債務残高が増えても激しいインフレになっておらずやはり当てはまらない。

一般に言われている説が本当に正しいのかを検証するために我々は日経NEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。政府がもっと大規模に現金を給付する場合を考える。給付金額を年間40万円、80万円、120万円とし、全く給付しない場合と比べる。ただし、全く給付しないと言ってもすでに給付が始まっている10万円は給付が完了したものとする。給付金額は年4回に分け、Q1(1月~3月)、Q2(4月~6月)、Q3(7月~9月)、Q4(10月~12月)の4回配り、その合計額が上記の金額(40万円、80万円、120万円)になるようにし2022Q1まで支給は続けるものとして計算した。まず名目GDPを示す。計算の基礎となっているのが、日経新聞社が2020年6月に出したデータであり、これには第1次と第2次の補正予算の効果はすでに反映されている。

 

 

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ここですぐ気付くのは2020Q2で落ち込んでいることだ。これはコロナ禍で自粛させられたために経済活動が停滞したことが原因となっている。ただし、この見積もりは5月26日に日経が発表したデータを使った。0円の場合はコロナ禍による落ち込みからなかなか脱却できないでいる。このままだと安部氏の任期である来年の9月になっても目9位木GDPは520兆円余りであり、アベノミクスではGDPは増えなかったことになる。支給金額を増やしていくとV字回復が鮮明になってくる。支給額が増えれば増えるほどGDPは拡大していく。120万円を配る案では、2年後にはGDPは600兆円を超し、夢の世界の実現である。国民に現金を支給するとなぜGDPが増大するのかと言えば、それは消費が伸びるからでありどの程度伸びるかを次に示す。
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このように、国民は支給されたお金を使うので消費が伸びることが分かる。ここで気になるのはインフレが起きるのではないかということだ。もしそうならお金をもらっても何にもならない。以下に消費者物価指数をグラフで示す。
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このグラフで分かることは物価の値上がりは非常に少ないということだ。120万円のケースでさえ物価指数はやっと2年後に2020Q1の水準にもどすだけである。このことはコロナ禍によるダメージを取り戻すためには全国民に120万円を2回給付しなければならないことを意味する。まとまったお金を受け取れる国民にとっては嬉しい。消費は伸びるが物価は上がらないということは、需要の伸びに対し供給は対応できるということだ。ただし供給を大幅に増やす事は容易ではないと思われる分野もある。例えば住宅投資だ。例えば5人世帯の場合支給されるので年間600万円であり、2年間で1200万円だ。それだけ収入が増えれば改築、増築、新築の需要は一気に増えることが考えられる。住宅投資のグラフは以下に示す。
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120万円の場合、2022Q1では投資額はほぼ倍増している。このような爆発的な需要増加に対応するのは至難の業に違いない。現在建築業界では深刻な人手不足である。低賃金で長時間労働で肉体的な負担も大きく危険を伴うこともあるため若い人が入ってこない。そこで外国人を入れて補充しようとしている。しかしコロナ禍のためスムーズにそれが進むかどうか分からない。建材の需要も急増するだろうし、住宅建設には多くの熟練工が必要となり、短期間で養成は無理だから注文してもそれなりに待たされることになるだろう。需要が急増すれば賃金を上げなければ人は確保できないから建設コストは上昇するに違いない。

ただし全ての業種でこのような事態になるとは思えない。日本は慢性的な需要不足が続いている。次にGDPギャップを示す。このグラフが示しているのは、もし支給金額がゼロならGDPギャップがずっとマイナスであり需要不足が続くということだ。かなりの額を支給し続けてもインフレにならないということは、供給に余裕があるとうことだし、需要が増えれば製造ラインを増やしたり輸入を増やしたりして対応できるということだ。

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次に長期金利(10年物国債利回り)を示す。金利は非常に低いレベルに留まっていることが分かる。2018年度の内部留保は463兆円にも達しておりコロナ禍であっても資金不足にはならないかもしれない。日銀は市場に大量に資金を提供しており、ここで計算した範囲内では国債の暴落(金利の暴騰)はあり得ない事が分かった。

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消費や投資が拡大することから経済は活性化し企業の利益は大きく拡大する。
 

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これで分かるように現金給付は個人に大きな利益があるだけでなく企業にも大きな利益をもたらす。例えば2022Q1で120万円の場合を見ると経常利益は0円の場合の約2.5倍にもなる。そのような巨額の利益が発生するのなら設備投資も巨額になると考えるのが自然である。
 

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しかしこのグラフで分かるように設備投資は2022Q1で120万円の場合0円の場合に比べて約20%増えただけだ。国内需要が大きく伸びているのだからもっと設備投資が伸びてもよいかと思うのだがそうなっていないようだ。企業業績が好調なのだから当然株価は上昇する。

企業の利益が拡大すると雇用者報酬も上昇するはずだから、グラフにしてみよう。グラフからわかるように雇用者報酬の上昇率は経常利益の上昇率よりはるかに小さい。
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2022Q1においては企業の経常利益は0円に比べて120万円の場合22兆円多くなっている。設備投資においてはその差は5兆円であり、雇用者報酬ではその差は4兆円である。つまり企業に大きな利益が出ても雇用者の手に渡るのは僅かだと分かる。この傾向は例えば公共投資や減税で景気刺激を行っても労働者の所得の増加額は僅かであることはすでに示した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-ebaa09.html

しかし、例えば120万円を国民全体に給付する場合、給付自体ですでに150兆円の現金が国民に渡っているのであり、それに加え4兆円が雇用者報酬の増加という形で国民に渡る。その意味で国民を豊かにするという観点からは、現金給付という方法が最良の方法である。

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企業の業績が向上すると株価は大きく上昇する。しかし1989年につけた最高値38,915円には届かない。それでも2022Q1頃には120万円給付の場合株式時価総額は1000兆円に近づく。株価上昇で家計も企業も資産残高を大きく増やす。

ここで見たようにコロナ禍による経済の落ち込みは極めて深刻であり、戦後経験したことがないほどの規模である。これに対する対策は想像を絶するほどの大規模なものでなければならないことをここで示した。毎月全国民に10万円を2年間給付するのが適切な規模であることをこの試算は示唆している。もちろん特に困っている人々に重点的に給付するということも重要だが、大規模で行わなければならないことを忘れないで頂きたい。

 

 

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
この試算は2022年までの2年間の試算ですが、それ以降も、例えば一人当たり年120万円を毎年、恒久的に配った場合はどのようになるのでしょうか?
2年間限定の場合は、上に書かれているように、「需要の伸びに対し供給は対応できている」という状況だと思いますが、恒久的に、毎年、一人あたり年間120万円(日本全体で約150兆円)を配った場合でも、需要に供給は対応できるでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年6月13日 (土) 11時40分

私が使ったNEEDS日本経済モデルは四半期モデル(1年を4分割して計算します)であり、2022年までしか計算できません。長期予想をするには年次モデルです。どこかのシンクタンクで年次モデルで長期予想ができるものがあるかどうか、そして使わせてもらえるのか分かりません。いずれにせよ数百万円の使用料が掛かり、これが我々の出せる限度です。あのまま恒久的に毎年現金給付を続けたらどうなるかは分かりません。1年程度政府にやっていただいて、経済がどうなるかを見て、どこまで続けられるかを試してもらいたいものです。もちろんどなかたお金を出してもいいという人が現れればやれるでしょう。

投稿: 小野盛司 | 2020年6月13日 (土) 14時47分

こんにちは。
この記事での試算は、コロナ後の2年間の試算であり、「GDPギャップ」の値も算出されていました。
ところで、昨年の12月の下記の記事は、コロナ前の2000年から2004年までの4年間の試算がされているのですが、このケースでの「GDPギャップ」の記載はありませんでした。このケースでの「GDPギャップ」は、どのような値になっているのでしょうか?

◆ベーシックインカムが日本経済を復活させる(No.380)
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/12/post-17a43e.html

税等の再分配型ベーシックインカムではなく、通貨発行型のベーシックインカムの場合、よく「インフレ率」が議論になると思うのですが、より根元的には、「GDPギャップ(産出量ギャップ)」、つまり「潜在生産力(潜在GDP)と実際のGDPとの差」の方が、より重要ではないかと思っています。

それは、例えばGDPギャップがマイナス(いわゆるデフレギャップがある状態)の時は、需要に対して生産力に余力があるということであり、この場合はその余力のギャップ分を通貨発行BIで配ることができるけれど、反対にGDPギャップがプラス(インフレギャップがある状態)の時は、需要に対して生産力に余力がなく、反対に生産力不足の状態にあるので、仮にその状態で通貨発行BIを配っても、その分のお金で買う生産品・サービスがないのでその分のお金は無価値になるか、またはどうしても消費に使おうとした場合はインフレがどんどん進んでいくように思えるからです。

投稿: kyunkyun | 2020年6月15日 (月) 11時27分

コメントを有り難うございました。当時GDPギャップは計算しませんでした。やろうと思えばすぐできたのですが、今となっては再計算はできません。モデルを使用させて頂いたのは、1年間だけです。しかし当時は物価指数はマイナスでしたし、毎年40兆円配ってもまだマイナスだったことを考えれば、デフレギャップはかなりマイナスだったのだと思います。

投稿: 小野盛司 | 2020年6月15日 (月) 14時16分

こんにちは。
「インフレ率」 が、社会経済にどのような影響を及ぼすのか? ということが、具体的な数字でイメージ出来なかったので、ネットで調べていたところ、次のような記事を見つけました。

http://naotaka0801.jugem.jp/?eid=60 

この記事はインフレリスクを疑問視するような内容ではあるのですが、この中に、

「インフレ率が年2パーセントの社会では、100万円のタンス預金は、10年後には約82万円の価値になる。」
「インフレ率が年10パーセント場合は、100万円のタンス預金は、10年後には約38万円の価値になる。」

という試算があります。
この計算は正しいのでしょうか。 またこのような計算をする時の計算式は、どのようになるのでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年7月10日 (金) 16時35分

インフレ率が年2パーセントの社会では、100万円のタンス預金はということですが、物価が1.02倍になるので100万円の価値は100万円÷1.02となります。10年後は1.02で10回割れば良く82.034・・・(万円)となります。
インフレ率が年10%の場合は100万円を1.1で10回割りますから38.55・・・万円となります。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月10日 (金) 21時19分

ありがとうございます。
とても分かりやすく理解することが出来ました。

投稿: kyunkyun | 2020年7月11日 (土) 10時42分

 こんにちは。
 税制を通じたベーシックインカムではなく、通貨発行をする形でのベーシックインカムの場合は、おそらく多くの人が、直観的に、「需要と供給力との関でのインフレ高進」 の心配をしていると思います。
でも、日経NEEDSの日本経済モデルによる試算では、一人月10万円 (年間120万円)、日本全体で年間約150兆円の通貨発行型ベーシックインカムの場合でも、2年後のインフレ率は (上記のグラフでは) 約2.2パーセントと、それ程高くなっていません。これはコロナ以前の別記事の試算 (https://bit.ly/3gLiKio) でも、それほど高いインフレにはなっていませんでした。

 でも、普通に考えれば、例えば年間150兆円の通貨発行ベーシックインカムを毎年行うということは、毎年、生産面での経済成長も150兆円分増えていかなければ、必然的に供給に対して個人の所得が余る状態になるように思えます。その余った所得を個人が無理に使おうとすればインフレが進む可能性がありますし、そもそもその余った所得で買うモノやサービスがない状態なので、インフレになっても、インフレにならなくても、その余った所得には何の価値もなくなるようにも思えます。

 いずれにしても、直観的には、通貨発行型のベーシックインカムは高インフレを発生させるように思えるのに、日経NEEDSの日本経済モデルの試算ではそのような結果になっていないのは何故なのか?
 また、日経NEEDSの日本経済モデルの試算では、GDPギャップはプラスでかなり高いインフレギャップ(一人年120万円給付の場合で約12%のインフレギャップ)が生じているのに、それでもインフレがそれほど進んでいないのは何故なのか? とても不思議でした。

 それで、ネットで少しずつ調べていたところ、次のような資料を見つけました。
 下記のリンクのPDFは、日経NEEDS日本経済モデルの40周年記念冊子で、その中の 『4章 NEEDSモデルにおける予測』 の中に、次のような説明がありました。

◆日経NEEDS 日本経済モデル40周年記念冊子の、第4章 NEEDSモデルにおける予測
* NEEDS日本経済モデルの概要 より~
http://www.nikkei.co.jp/needs/model/pdf/NEEDS_Model_40th_anniversary.pdf

>> モデルの基本構造は、多くの計量経済モデルと同じく、消費、投資、政府支出、外需などを合わせたものが総生産を決める、という需要サイド主導の 「ケインズ型」 だ。 ただし、労働力や企業設備といった供給サイドから推計した生産能力も 「潜在GDP」 としてモデルに組み入れてあり、供給能力に需要水準が接近してくると、金利が上昇し、需要の増加に歯止めがかかる仕組みになっている。<<

 この説明には、「供給能力に需要水準が接近してくると、金利が上昇し、需要の増加に歯止めがかかる仕組みになっている。」 とあります。
つまり、この日経NEEDSの日本経済モデルは、最初からインフレが高進しにくいモデルになっているのではないでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年7月12日 (日) 16時22分

 こんにちは。
 昨日は、日経NEEDS日本経済モデルの概要にある、「 (この) モデルの基本構造は… 供給能力に需要水準が接近してくると、金利が上昇し、需要の増加に歯止めがかかる仕組みになっている。」 という説明文を紹介しました。

 これは、言い換えると、日経NEEDSの日本経済モデルを用いて、通貨発行ベーシックインカムを行った場合に導き出されるインフレ率とは、

「通貨発行ベーシックインカムの支給により、生じてくるインフレ上昇を、金利を上げる政策で需要を抑えた結果」 としてのインフレ率… ということに、なるのではないでしょうか?

 もっと端的には、これは、
「インフレ抑制政策を行った結果のインフレ率」 ではないでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年7月13日 (月) 13時10分

 連投で、すみません。
 日経NEEDSの日本経済モデル (MACROQ60) について、2015年に、故 丹羽春樹さんが、次のような指摘をされていました。

◆ 日経NEEDSモデル (MACROQ60) の問題点
http://www.niwa-haruki.com/p007.html

「したがって、この 『日経モデル』 では、生産能力の余裕という意味のデフレ・ギャップ (GDPギャップ) の存在、あるいは不存在、ないし、その大小ということが、物価動向にまったく影響を与えないというモデル構造になってしまっているのであり、きわめて奇妙かつ非現実的である。 このことも、また、この 『日経モデル』 の、きわめて重大な欠陥であろう。」

投稿: kyunkyun | 2020年7月13日 (月) 15時50分

すみません。
上記の 「丹羽春喜」 さんの記事は2015年ではなく、平成15年のものでした。名前と年を訂正します。

投稿: kyunkyun | 2020年7月13日 (月) 15時55分

御質問の件、詳しく調べてからお答えします。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月13日 (月) 17時22分

>例えば年間150兆円の通貨発行ベーシックインカムを毎年行うということは、毎年、生産面での経済成長も150兆円分増えていかなければ、必然的に供給に対して個人の所得が余る状態になるように思えます。その余った所得を個人が無理に使おうとすればインフレが進む可能性がありますし、そもそもその余った所得で買うモノやサービスがない状態なので、インフレになっても、インフレにならなくても、その余った所得には何の価値もなくなるようにも思えます。

2020Q2でのデフレギャップが約マイナス10%であり、これを克服するには100兆円程度必要になるのではないでしょうか。その後はインフレギャップが生じるわけです。ただ、過去の日本人の消費行動を見るとバブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災などがあり、さらに今回のコロナ禍を経験し、また老後には2000万円の蓄えが必要だとか、国の借金が大変だから年金がもたないとか、様々な情報が飛び交い、多くの人が少々のお金が入っても将来のために蓄えが欲しいと考え、全部は使わないでしょう。そのあたりは、過去40年間の日本人の経済活動のデータを集積し方程式をつくり、その方程式に基づいて計算がされているわけです。だから財政赤字=高インフレ率という単純な結論とは違います。ではその余った所得は何の価値もないのかというと違うと思います。本当に経済苦の人は間違いなく救われます。生活苦で自殺しかけていた人も思いとどまらせるでしょう。このままでは老後は悲惨なことになると心配していた人も貯金が増え心が安まるでしょう。病気などで本当は働けないのに無理して働いていた人、劣悪な労働環境下の人も救われるでしょう。お金が無いから結婚できない、子どもを産めないと思っている人の考えを変えさせるでしょう。だから現金給付の価値はあると思います。

ここでは金利上昇で需要を抑えるということはほとんどありません。金利は低い水準のままであり、日銀も金利は低いままにしておくと言っております。

丹羽春樹氏は日経モデルを信用していませんでしたが、国民に多額の現金を給付しても生産力の余裕があるのでインフレにならないと主張しておられました。これは日経のモデルの結果と整合的です。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月16日 (木) 11時27分

こんにちは。
回答、ありがとうございます。
金利とインフレについては、少し早とちりをしていました。
このページの記事内の金利のグラフでも、金利の上昇は僅かでしたね。

ただ、そうなると、日経モデルの説明、「供給能力に需要水準が接近してくると、金利が上昇し、需要の増加に歯止めがかかる仕組みになっている。」 とは矛盾してくるように思えます。 このページのGDPギャップのグラフでも、年120万円のBIの場合で約11~12%のインフレギャップがあり、それは供給力の限界を11~12%超えていることを意味していると思うからです。

このような矛盾が起きるのは、おそらく丹羽春喜さんの指摘された日経モデルの欠陥 (というか、日経モデルのプログラムの構造?) によるものではないでしょうか。
特にGDPギャップの計算には、潜在GDPの推計が必要になってくると思うのですが、丹羽さんはおそらく 『最大概念の潜在GDP』 で考えられているのに対し、日経モデルでは過去の 『平均概念の潜在GDP』 が採用されているのではないでしょうか。
平均概念の潜在GDPは本当の意味での 『潜在=最大の能力』 ではないため、しばしば問題提起されているようです。

ところで、これは調べている中で知ったことなのですが、実はこれまではGDPギャップとインフレ (物価) の関係を 「1:1」 のように単純なイメージで考えていたのですが、実はそうではなく、GDPギャップに対する物価の変化は、その時々の経済・社会状況によって変わっている… ということを知りました。
下記の記事等によると、GDPギャップが1%変化する時の、物価の変化、「感応度」 は、下は0,1%位から、上は0.4%位で、平均すると大体0.2%前後のようです。 また、GDPギャップがマイナスでよりデフレギャップが多い時には 「感応度」 も低くなり、GDPギャップがプラスでよりインフレギャップが多い時には 「感応度」 が高くなる… という傾向もあるそうです。

そこでぜひ、お聞きしたいのですが、日経NEEDSの日本経済モデルでは、ベーシックインカムを配った場合の、GDPギャップに対する物価の 『感応度』 は、どのような数値になっていたのでしょうか?

◆GDPギャップに対する物価の 「感応度」 に関する記述のある記事
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_1404e.pdf
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je11/h01_02.html
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je11/pdf/p01021_1.pdf
https://www.dir.co.jp/report/column/061120.html

投稿: kyunkyun | 2020年7月17日 (金) 18時29分

20年くらい前から色々日経の人と話していますが、日本ではクラウディングアウトは起こっていないから、これからも起こらないというモデルになっていると担当者は言っていました。 これは日本経済モデル40周年記念冊子に書いてあることと矛盾していますね。関連のデータと感応度も計算してみました。以下のサイトをご覧下さい。更に必要な計算があればお知らせ下さい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-ad2ee1.html

投稿: 小野盛司 | 2020年7月19日 (日) 20時47分

ありがとうございます。
コロナの影響でしょうか、「感応度」 の推移は大きく上下動していて、マイナスになっている期間もあるのですね。

ところで、これもまた初歩的な質問になるかもしれないのですが、日経NEEDSの日本経済モデルで、一人年間20万円、40万円、80万円、120万円の給付金を配るという試算をされた時に、これらの給付金はどのような項目に入力されたのでしょうか?
それは 「政府支出」 になるのでしょうか。

もしそうだとすると、ネット等で調べると、GDPはよく次のような式で説明されています。

 GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 + 貿易収支

そのため、これまでは、例えば一人年間120万円、日本全体で約150兆円の給付金を、国債 (通貨発行) で行うと、政府支出が150兆円増えて、国民所得も150兆円増えて、名目GDPも150兆円増える… と単純に考えていました。
ところがこのページの日経NEEDSのモデル試算では、コロナ発生前のGDPの水準から見ると、年間150兆円の給付金 (政府支出) に対して、1年あたりのGDPの増加は約40兆円位になっていて、コロナの影響後のGDP水準では、年間150兆円の給付金 (政府支出) に対して、1年あたりのGDPの増加は約50~70兆円位になっています。
仮に平均で見ると、年間150兆円の給付金 (政府支出) に対して、一年あたりのGDPはその3分の1位しか増えていません。
これはどのように理解したら良いでしょうか?
それは例えば、国民は年間150兆円の現金給付を受け取り、その中の約3分の1を消費または投資に使い、残りの約3分の2を貯蓄した… ということなのでしょうか。

投稿: kyunkyun | 2020年7月21日 (火) 13時28分

GDPとは国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計ですね。現金給付は政府が家計に対し支払う社会給付を増額させる形で入れました。日経の方がここに入れるのが最適だと言っておられました。給付金を受け取った人が全部貯金してしまえばGDPには貢献しませんが、消費に使えばGDPがアップします。正確には「家計の現物社会移転以外の社会給付(受け取り)」に入っています。景気浮揚に即効性はありませんが、公共投資の場合は、いきなり事業を発注するわけで即効性があります。グラフを比べれば一目瞭然です。給付金を出したとき家計の貯蓄がどれだけ増えるかも計算できますが、それほど増えませんね。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月21日 (火) 14時20分

こんにちは。
こちらで色々と質問をさせて頂いていますが、それは、「税による再分配ではなく、通貨を発行する形でのベーシックインカム (現金給付) で、高インフレにならないのは何故なのか?」 ということについて、論理的に明確な理由を知りたい (見つけたい) という思いからです。
それで、こちらで色々と提供して頂いている日経NEEDSの試算資料を見ていて、少し興味深い数値を発見しました。

実はこれまでは、例えば一人年間120万円 (月10万円)、日本の人口全体で年間約150兆円の通貨発行型のベーシックインカム (現金給付) を行うと、マネーストックが年間150兆円増える… と考えていました。
でも、下記の日経NEEDS日本経済モデルによる、2020年から2021年までの2年間の試算では、マネーストックの増加は現金給付の額よりも、かなり少ない増加になっています。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-23a573.html

これまでは、例えば一人年間120万円、日本全体で150兆円の通貨発行BI(現金給付) であれば、年間150兆円のマネーストックの増加 (2年間で300兆円の増加) … となるはずだと思っていたのですが、日経NEEDSの試算では、2020年度の一年間では給付金を配らかった場合と比べてマネーストックは約4兆円しか増えていなくて、2021年度の一年間には約52兆円のマネーストックの増加になっていました。
これは他の給付金額の場合も同様で、マネーストックの増加は現金給付された金額よりもかなり少ない増加になっていました。

これは、kyunkyun (キュンキュン:自分のこと) の元々の考え方、「通貨発行BI (現金給付) の分、マネーストックが増える」 が間違っていたのでしょうか?
もしそうでないのなら、もしかしたらこのあたりに、「通貨発行BI (現金給付) を行っても高インフレにならない理由」 があるのかもしれないと、思っています。

投稿: kyunkyun | 2020年7月23日 (木) 13時18分

私もその点をゆっくり調べたいと思っています。例えば政府から100万円をもらってそれを貯金したらM2は100万円増えますね。だけど、100万円を住宅ローンの返済に充てたら100万円は消えてしまいますか。あるいは自粛要請で店を休業にしてて100万円の損害が出ていて、それを貯金で補っていたとしたら、100万円をもらってプラスマイナスゼロになりますか。緊急事態宣言で20~30兆円は少なくとも損害が出たのではないでしょうか。現金給付がそれを打ち消しますね。

それからマネーストックの増加は必ずしもインフレ率を高めません。マネーストックは毎年3%増加しているのに、物価はせいぜい1%しか上がらないと言ってますね。急いで買わなければなければならないものはそんなにない。物価が上がるときは多くの人がこれから物価が上がるぞと信じて、急いでモノを買おうとするとき、マネーの流通速度が上がってきます。それだけで景気はよくなってきます。でも近い将来日本人はそのような考えを持つようになるでしょうか。バブル崩壊やリーマンショックや東日本大震災などで大損した人は多いでしょう。今回のコロナ禍は人の心に深い傷を残したのではないでしょうか。このような危機に備えてしっかりお金を貯めておかねばならないと考えた人は多いと思います。そうしたら通貨の流通速度は下がりデフレが続きます。そこから脱却するには思い切って国は財政を拡大すべきなのだと思います。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月23日 (木) 15時14分

こんにちは。
上のお返事にも頂いているように、確かに借金を返済するとマネーストックは減少するので、その観点から、日経NEEDSモデルのシミュレーションでは、「家計負債残高 (家計債務残高) 」 の金額は、どのようになっているでしょぅか?

投稿: kyunkyun | 2020年7月27日 (月) 14時01分

家計負債残高 (家計債務残高)を捜しましたが、見つかりませんでした。

投稿: 小野盛司 | 2020年7月29日 (水) 11時04分

こんにちは。
調べて下さって、ありがとうございます。
家計負債残高の項目はなかったのことですが、もう少し根本的な、「国債発行残高」の方は、どのようになっているでしょうか?
現金給付の財源が国債だとすると、例えば一人年間120万円の現金給付の場合でhは年間約150兆円の国債を発行することになるので、単純に考えれば、現金給付をしなかった場合と比べて、国債発行残高が年間150兆円増えるように思えるのですが、そのあたりのことを知りたいと思っています。

投稿: kyunkyun | 2020年8月 1日 (土) 10時30分

投稿: 小野盛司 | 2020年8月 1日 (土) 14時36分

ありがとうございます。
これは、一人年間120万円を配った場合のグラフになるのでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年8月 2日 (日) 15時28分

はい。そうです。

投稿: 小野盛司 | 2020年8月 2日 (日) 15時41分

ありがとうございます。
一人年間年間120万円の現金給付の場合だと、日本人口全体で年間約150兆円の国債発行になるので、それ位の増加になるのかな… と思っていたのですが、このグラフでは、2年間で約500兆円、1年あたりでは約250兆円の増加になっていました。
そうなると、1年あたりで見た場合、250兆円と150兆円の差額が100兆円あるのですが、この100兆円は、何に使われた国債 (債務) なのだろう? と思いました。

投稿: kyunkyun | 2020年8月 2日 (日) 15時59分

すみません。
グラフの見方を間違えていました。。
これは2年間ではなく、3年間のグラフだったのですね。
3年間だったら、1年間の国債発行が150兆円 × 3年で450兆円なので、グラフと大体合っているように思いました。

投稿: kyunkyun | 2020年8月 3日 (月) 10時29分

こんにちは。
日経NEEDS・日本経済モデルを使って試算された時に、小野さんの方で 「任意に入力された項目」 は、現金給付の項目(家計の現物社会移転以外の社会給付)のみ、なのでしょうか?
他に何か、入力された項目はありますでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2020年8月 8日 (土) 11時45分

現金給付だけですね。為替レートは内生にしました。

投稿: 小野盛司 | 2020年8月 9日 (日) 10時41分

こんにちは。
日経NEEDSの日本経済モデルを使って、例えば、同じ期間の2020年から現金給付をした場合で、 「仮に新型コロナの感染が起きていなかった場合」 のシミュレーションをすることは出来るでしぃうか?

新型コロナ感染が起きていた場合と、感染が起きていなかった場合とを比べて、もしインフレ率等の数値に違いが出て来るとしたら、 「現金給付をしても高インフレにならないのは新型コロナによる経済不況(多大な需要不足)が影響しているため…」 とも考えられると思いますので。

投稿: kyunkyun | 2020年8月10日 (月) 14時42分

計算してみました。以下のサイトをご覧下さい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-ad2ee1.html

投稿: 小野盛司 | 2020年8月13日 (木) 14時06分

こんにちは。
「通貨発行によるベーシックインカムを実施しても、日経NEEDSの予測試算では、インフレが高進しない結果になっているのは何故なのか?」 について、ある程度考えがまとまりましたので、下記に記してみようと思います。

まず、一人月額10万円 (年間120万円)、 日本の全人口で年間約150兆円の通貨発行BIを配ると、国民の所得は年間150兆円増加します。
この増加した150兆円の所得を、もし国民が全部消費に使ったとしたら、おそらくインフレがかなり高進していくように思います。
でも、日経NEEDSの予測では、国民は増加した150兆円の所得の中から消費に使ったのは、約60兆円だけでした。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-23a573.html
*図表の一番右の、年間120万円給付の場合、2020年から2021年までの1年間で、民間最終消費と住宅投資の合計が、約60兆円。

では、国民は残りの約90兆円を何に使ったのか?
上記図表の 「家計の資産残高・預金」 の項目が、同2020年から2021年までの1年間で40兆円増えています。
これはつまり、この期間に国民が現金預金と、株式等の購入に充てた金額が40兆円、とういことなのだと思います。

そうなると、150兆円の増加した所得 - 消費に使った60兆円 - 貯蓄した40兆円 で、あと残りが50兆円あります。
この50兆円を国民は何に使ったのか?
ここからは個人的な推測になるのですが、この残りの50兆円は、日経NEEDSの日本経済モデルの項目になかった、 『家計が負債返済に使ったお金』 になるのではないでしょうか。

そう考えると、

* 通貨発行BIで増加した家計所得150兆円の使途の内訳は、「消費60兆円 貯蓄40兆円 家計負債の返済50兆円」 となり、消費には60兆円しか使われなかったため、高インフレには繋がらなかった。

という説明が出来るように思いました。

投稿: kyunkyun | 2020年8月14日 (金) 14時01分

大変貴重な分析をありがとうございました。
ただし、この分析を私はまだよく理解できていませんので質問します。
150兆円が何に使われたかですが、
①民間最終消費
給付がなかった場合  280.95兆円
給付があった場合   304.49兆円
その差は23.53兆円です。
②住宅投資
給付がなかった場合   16.45兆円
給付があった場合    14.48兆円
その差は         2兆円

ですから合計は25.53兆円です。
御指摘の60兆円には達しませんでした。ただし、支給は年4回に分けて行われるのであり、最初の頃は警戒してそれほどは使わず、後半にだんだん使うようになるかも知れません。
家計の資産残高・預金(時価)ですが
2020年    1040兆円  給付がないとき  1032兆円
2021年    1060兆円  給付がないとき  1044兆円
2022年    1080兆円  給付が無い時   1056兆円
2023年    1090兆円  給付がないとき  1058兆円

となっています。たいした増加ではないです。
家計の土地・家計(時価)だと  
2020年     744兆円  給付がないとき   740兆円
2021年     785兆円  給付がないとき   740兆円
2022年     841兆円  給付が無い時    740兆円
2023年     912兆円  給付がないとき   740兆円
家計の株式・家計(時価)だと
2020年     180兆円  給付がないとき   168兆円
2021年     281兆円  給付がないとき   203兆円
2022年     328兆円  給付が無い時    206兆円
2023年     384兆円  給付がないとき   212兆円
一人当たり個人貯蓄残高
2020年    1991万円  給付がないとき  1987万円
2021年    2179万円  給付がないとき  2055万円
2022年    2477万円  給付が無い時   2075万円
2023年    2807万円  給付がないとき  2125万円

投稿: 小野盛司 | 2020年8月15日 (土) 11時07分

こんにちは。
下記のページの試算によると、
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-23a573.html

年間120万円給付の場合、 「民間最終消費」 は、2020年が299兆円で、2021年が352兆円、となっています。
なので、2020年から2021年までの1年間に増えた民間最終消費は、352兆円 - 299兆円 = 53兆円と計算しました。
同様に 「住宅投資」 も、2020年が15.9兆円で、2021年は23.8兆円となっているので、2020年から2021年までの1年間に増えた住宅投資は、23.8兆円 - 15.9兆円 = 7.9兆円と計算しました。

このことから、2020年から2021年までの1年間に増えた民間最終消費と住宅投資の合計額は、53兆円 + 7.9兆円で60.9兆円と計算しました。
この60.9兆円の増加額は、年間120万円給付の場合の、2020年から2021年までの1年間のGDPの増加額とほぼ一致しているようにも思います。

120万円給付の場合の、
名目GDP  2020年:532兆円  2021年:588兆円  増加額:56兆円
実質GDP  2020年:512兆円  2021年:570兆円  増加額:58兆円

投稿: kyunkyun | 2020年8月15日 (土) 17時41分

色々計算方法はあると思います。
1年間に増えた民間最終消費ですが現金給付が原因になって増えた額ですね。
現金給付が無かった場合でも5兆円だけ増加しています。ですから現金給付に
よって増えたのは 53-5=48兆円です。
住宅投資だと 7.9+0.4=8.3兆円です。
上記に示した 一人当たり個人貯蓄残高 の変化についてどのようにお感じですか。

投稿: 小野盛司 | 2020年8月15日 (土) 21時31分

現金給付があった場合と、なかった場合との比較… という視点ではなくて、現金給付されたお金を国民は何に使ったのか…? という視点で見ています。
それは、国民は現金給付で増えた所得の中から、どれ位を消費に使うのか? ということが、インフレ率にも影響して来るのではないかと思ったからです。

このような見方は、下記のエレン・ブラウンさんという方の記事の見解を参考にしたものです。
(* この方も通貨発行によるBIを提案されています。)
(* 英文は機械翻訳で読んでいます。)

  Why a UBI Need Not Be Inflationary

In a 2018 book called The Road to Debt Bondage: How Banks Create Unpayable Debt, political economist Derryl Hermanutz proposes a central-bank-issued UBI of one thousand dollars per month, credited directly to people’s bank accounts. Assuming this payment went to all US residents over 18, or about 241 million people, the outlay would be close to $3 trillion annually. For people with overdue debt, Hermanutz proposes that it automatically go to pay down those debts. Since money is created as loans and extinguished when they are repaid, that portion of a UBI disbursement would be extinguished along with the debt.

People who were current on their debts could choose whether or not to pay them down, but many would also no doubt go for that option. Hermanutz estimates that roughly half of a UBI payout could be extinguished in this way through mandatory and voluntary loan repayments. That money would not increase the money supply or demand. It would just allow debtors to spend on necessities with debt-free money rather than hocking their futures with unrepayable debt.

He estimates that another third of a UBI disbursement would go to “savers” who did not need the money for expenditures. This money, too, would not be likely to drive up consumer prices, since it would go into investment and savings vehicles rather than circulating in the consumer economy.

このような観点から、下記のページの試算にある、 『家計の資産残高・預金』 の項目を見てみると、現金給付が120万の場合、2020年の家計の資産残高・預金は1030兆円で、2021年の家計の資産残高・預金は1070兆円に増加しているため、 『家計の資産残高・預金』 は年間40兆円増加している… という計算をしました。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-23a573.html

<< * この 『家計の資産残高・預金』 の意味は、家計の現金の預金と、家計が保有している株式等の金融資産を合計したもの… と理解しているのですが、そうではなく、これが現金預金のみを意味する場合、家計の預金年間40兆円の増加から、他の貯蓄 (上記試算ページの最後の項目の家計の貯蓄) の減少分、約6兆円) を引いた、約34兆円が、年間の貯蓄全体の増加分になると思います。 >>

そして、これらのことから、現金給付が年間120万円、日本全体で年間150兆円の現金給付の場合、消費に使われたのが約60兆円、家計の貯蓄の増加分が40兆円 (または34兆円) ということになり、残りの約50兆円 (または約56兆円) が、家計の負債返済に使われたのではないか…? という推測になります。

投稿: kyunkyun | 2020年8月16日 (日) 10時31分

150万円をもらった個人がそれを何に使ったかということですが、非常に難しい問題で、今回の特別給付金の10万円が何に使われたかもはっきりしませんね。収入は他にもあるわけで、今日買い物で使ったお金がどこから得た収入かなど言えないでしょう。お金に色は付いてませんから。

日本人の多くが多額の住宅ローンを抱えていてローンの繰り上げ返済に使う可能性はあります。しかし逆に想定外の収入があったから、ローンを組んで住宅を建てたり、増築したり、新築したりの可能性もあります。この場合は債務は増えますが、建築関連の需要が増えて値段が上がる可能性はあります。

それから株価がどんどん上昇していますから、株式ブームになるかもしれません。株を買うためにカネを使う人もいると思います。奇妙なのは一人当たりの個人貯蓄残高が682万円も増えていることです。3年間で450万円しかもらっていないのに、682万円も貯金が増えることをどのようにお考えですか。

投稿: 小野盛司 | 2020年8月17日 (月) 14時24分

こんにちは。
「一人当たりの個人貯蓄残高」 についてですが、これは、「日本全体の家計の貯蓄を、日本の全人口で割ったもの」 という意味でしょうか?
もしそうだとすると、この 「一人当たりの個人貯蓄残高」 の数値は、少し不自然な数値のように思えます。

上記で紹介された 「一人当たりの個人貯蓄残高」 は、年間120万円給付の場合、2020年が1991万円で、2021年が2179万円となっているので、この1年間の一人当たりの貯蓄の増加額は188万円になります。
これを日本の全人口の1.265億人に掛けると、約238兆円になります。
1年間に日本の家計貯蓄が約238兆円も増えるというようなことは、考えにくいのではないでしょうか?
同様の計算を2021年から2022年までの1年間で計算すると、1年間に約377兆円の家計貯蓄の増加になります。 2022年から2023年までの1年間では約417兆円の家計貯蓄の増加になります。

投稿: kyunkyun | 2020年8月18日 (火) 14時34分

追記になります。
下記のページの試算では、一人当たりではなく、日本の家計全体の 「家計資産残高・預金」 は、2020年の1030兆円から2021年には1070兆円に増えているので、この間の1年間の 「家計資産残高・預金」 の増加額は40兆円… ということになるように思います。
ただ、一番下の項目、 「家計の貯蓄」 は、どの給付額の場合も1年間に約6兆円減少しています。
この 「家計の貯蓄」 と、 「家計資産残高・預金」 の関係がよく分かりませんでした。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-23a573.html

投稿: kyunkyun | 2020年8月18日 (火) 14時58分

以下のサイトで説明しました。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-ad2ee1.html

投稿: 小野盛司 | 2020年8月18日 (火) 22時12分

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