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2020年6月

2020年6月29日 (月)

Proposal for a Press Conference at the Foreign Correspondents’ Club of Japan(No. 418)

We urgently propose that the Japanese Government provide the Basic Income of 200,000 yen to every Japanese person.

In view of various factors including the new coronavirus problem, US-China trade friction, and the consumption tax increase enforced last year, there is a rising concern that the Japanese economy might be rapidly going into a severe recession. Most schools, libraries, theme parks, zoos, etc. have been closed, and most major social, business, academic, cultural, entertainment and other events have been cancelled or postponed. Many of non-fulltime workers have been forced to lose their jobs and are facing financial difficulties.

As an emergency measure, we urgently propose that the Japanese government provide the basic income of 200,000 yen respectively to every Japanese person.

As one recent example, Hong Kong provided equivalent of about 140 thousand yen to every adult resident.

In 2009, Diet Members including Shinzo Abe and Yoshihide Suga voluntarily established “the Diet Member League to Consider the Issuance of Government Notes and Interest-Free Government Bonds”. On February 1, 2009, Mr. Suga presented the idea to give 200,000 yen to every Japanese person by issuing government notes. This idea has never been realized, but we believe the time has come to carry out a similar measure. Issuance of government notes and interest-free government bonds might not be necessary, because issuance of usual long term national bonds of about 26 trillion yen may be sufficient. The financial institutions will be happy to buy them, knowing that the BOJ will buy them in any place and thus interest rates are not likely to rise. Therefore, the effect will be similar to issuance of government notes and interest-free government bonds; this will not become a burden on future generations

We imagine that the idea presented in 2009 was never realized because some people strongly opposed to that idea. The most common opposition may be the fear of hyperinflation, the resulting loss of confidence in the yen and collapse of national bonds. Will it actually happen? We have calculated the economic effects of such measure by using a Nikkei macro-econometric model called NEEDS MACRO79. It turned out that provision of 200,000 yen to every Japanese person will generate very favorable effects on the Japanese economy.

Our simulation showed that the distribution of 200,000 yen will have the following effects:

Nominal GDP: Up 2.2%
Real GDP: Up 2.0%
Real private final consumption: Up 3.8%
Real housing investment: Up 9.8%
Real private capital investment: Up 1.4%
Exports: Down 0.06%
Imports: Up 4.4%
Consumer prices: Up 0.07% PT
Employees Compensation: Up 0.48%
Ordinary profits of corporations: Up 15.4%
Current account balance: Down 20.1%
Long-term interest rates: Up 0.03%PT
Nikkei Stock Average: Up 4.5%
Urban land price index: Up 2.4%
Ratio of job openings to job applicants: Up11.2%

Not only that the people will receive 200,000 yen each (e.g., 1 million yen for a family of 5), their wages will also rise. The stocks and real estates they own will also go up, and the companies will increase their profits. The increase of Japanese imports will please US and other major trading partners. GDP will be pushed up by about 2%, thus the economic growth rate will reach the level which has never been experienced for many years. Mass issuance of government bonds hardly influences the interest rates since the BOJ buys them on a massive scale. The effects on the inflation rates will be very limited. We strongly urge the government to implement such a large-scale fiscal policy to save the sharply deteriorating Japanese economy.

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2020年6月27日 (土)

毎月10万円を全国民に配れば日本経済は復活する(No.417)

4月30日に令和2年度の第1次補正予算が成立し、1人一律10万円の特別定額給付金の支給が決定した。この決定には多くの国民は賛成している。国は国民に使用目的を限定せずにお金を配る。お金が国民に届くのが遅いという不満もあるし、10万円では足りないという意見もあるが、配るべきでは無かったという意見はほとんど聞こえない。では毎月10万円を全国民に配ったらどうなるのだろうか。財源はもちろん国債発行であり、一旦民間の金融機関が買い、その後日銀が買う。これは日銀によって新しく発行された通貨なので、枯渇することはない。

よく言われるのが、財政破綻するとか、激しいインフレになるということだ。財政破綻とは政府が国債を発行しても金融機関が買ってくれず売れ残ることだ。しかしゼロ金利が続いていて金融機関の経営は厳しく、何か安定した収入源を求めている。政府の国債を買えば、その後で日銀がそれ以上の値段で買ってくれるのでこれほど確実な収入源はないので喜んで買う。インフレ率だが、日経のNEEDS日本経済モデルで計算してみるとコロナ禍で2020Q1に102.0であった消費者物価指数が2020Q4には100.4まで下がっている。激しいインフレどころかデフレだ。その後ジワジワ物価指数は回復するが、2022Q1ですらまだ102.2だからやっと2年前の水準まで回復しただけだ。コロナ禍で収入が減った企業、店、人が多くいて今後臨時収入があっても、直ぐ使わず、将来に備えて貯金しておこうと考える人が多く、放置すると消費が伸びずGDPが下がり収入が減るというデフレスパイラルが果てしなく続くこととなる。

名目GDPで言えば何もしないと2020Q1では547兆円だったものが2020Q2には510兆円まで下がり、2022Q1になってもまだ532兆円にまでしか回復していないこととなる。つまりコロナ禍で日本は一気に貧乏になり、2年後になっても全く元の水準には戻らない。一方で毎月10万円を配ると消費が伸び、2022Q1には629兆円にまで拡大する。安倍首相もGDPを600兆円にまで拡大すると言っていたが、それが2021年の後半に実現する。日本経済が発展しなくなっている原因の一つは「倹約の美徳」という日本人独特の考え方だ。倹約はよいことだから、お金は使わない。そうなると何を作っても、何を提案しても買ってくれないから企業は困ってしまうし給料も上がらず経済は発展しない。こういった日本の事情を考えると、国民に定期的に現金を配るのは素晴らしい考えであり、どんどん給付が進むとさすがの日本人でも購入意欲が沸いてくる。

例えば5人世帯だと一人120万円もらうと2年で1200万円の追加の収入があることとなる。それなら増築しようとか、家を建て替えようとか、新築の家を購入する頭金にしようとか考え始める。実際住宅投資は2020Q1を100とすると、現金給付が無い場合は2021Q1で86,2022Q1で96となり低迷するが、毎月10万円を配ると2021Q1で113,2022Q1で208となる。このような爆発的な需要増加に対応するのは至難の業に違いない。現在建築業界では今でも深刻な人手不足である。低賃金で長時間労働で肉体的な負担も大きく危険を伴うこともあるため若い人が入ってこない。そこで外国人を入れて補充しようとしている。しかしコロナ禍のためスムーズにそれが進むかどうか分からない。建材の需要も激増するだろうし、住宅建設には多くの熟練工が必要となり、短期間で養成は無理だから注文してもそれなりに待たされることになるだろう。需要が激増すれば賃金を上げなければ人は確保できないから建設コストは上昇するに違いない。

ただし全ての業種でこのような事態になるとは思えず、全体としては物価上昇はゆるやかであり、むしろ低すぎるくらいだ。日本の失われた20年、あるいは30年は経済にとって最悪の需要不足・デフレを放置したから発生した。こんな危険な実験を一刻も早く中止し、インフレ率が2%程度になるまで現金の給付を続けるべきだ。このように現金給付をすることは、ベーシックインカムの貴重な実験となる。現金10万円の給付が約束されている世界では新しい生き方が出来る可能性もある。いやいやながら無理に低賃金の仕事をやめて、自分のやりたい仕事をやれるようになる可能性もある。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2019/11/post-0ebe02.html


結論から言えば国民全員に毎月10万円を給付するという考えは素晴らしい。デフレから脱却できるし、失われた20年からの脱却も可能だ。

なおここでは書き切れなかった計算結果を表にしてみた。年間40万円と80万円と120万円配布の3種類の計算を行っている・

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国民に現金を給付する政策で更に詳しい計算は以下のサイトを参照して頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-9b9dee.html

この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。

 

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2020年6月22日 (月)

「PCR検査はやみくもに増やすべきで無い」に反論する(No. 416)

筆者の主張はPCR検査は誰でも無料で受けられるようにし、感染者を適切に隔離すれば市中の感染者は限りなく減少し、ほぼ自由な経済活動ができるようになり、日本経済が復活するということである。それをアピールするサイトは以下である。
http://chng.it/S9Y8TNFj

しかし我々の考えに反対し「PCR検査はやみくもに増やすべきで無い」と主張する人達がいる。例えば専門家会議委員の押谷仁教授、鎌江伊三夫東大教授、西村秀一医師(ウイルス専門)などである。ここで彼らの意見に反論することにする。彼らの意見は次の①~⑥である。
①陽性者が多数出て、医療崩壊する。
【反論】軽症者は入院する必要はなく、ホテルや指定された宿舎で隔離すればよく、医療崩壊にならない。むしろ症状があるのに検査を受けさせないこと自体、医療崩壊である。
②徹底した検査よりクラスター対策のほうが効果的。それには検査や診察への抑制的なアクセスが重要。そうしないと院内感染の危険が増す。
【反論】徹底した検査と徹底したクラスター対策を同時並行して行えば良い。だ液によるPCR検査なら院内感染のリスクは零。現在のクラスター対策班の規模を10倍にするべきだ。大学・研究所の協力強化。興信所も使った感染経路の徹底調査をするべきだ。クラスターが発生した事業所には補償金を払い休業要請をする。クラスターを起こしやすい医療機関、養護施設、夜の街関連で働く人々は定期的にPCR検査をする。PCR関連の予算は350億円しかついてないが、これを1兆円に引き上げるとよい。
③感染していないのに、検査で陽性になる人がいる。このような人を隔離するのは人権問題だ。PCR検査は100%正確というわけでなく、精度は70%くらい。感染していない人が陽性になり隔離したら人権問題。
【反論】感染者とはPCR検査で陽性になった人と定義している。本当に感染しているかどうか確かめる方法はない。つまり人権問題になり得ない。その偽陽性の人がもし感染者と同じ病室に入れられ、感染したら困るので、個室で隔離すればよい。精度を上げるには、PCR検査と抗原検査をセットで行えばよい。100%の精度でなくても陽性者を隔離すれば確実に感染者は減っていく。
④検査を担う技師が不足
【反論】全自動検査機を導入すればそれほど高度な技術は要求されない。
⑤全自動検査機の主要メーカーは米国企業
【反論】ロッシェ製コバス 6800/8800 PCR検査装置。国内の現有だけですでに63000件/日検査可能。タカラバイオはPCR検査で、2時間弱で最大5000件超を検査する手法を開発。ロッシェのものに比べ、処理能力は14倍である。抗原検査キットが5月13日に薬事承認された。15~30分で結果が分かる。週20万件分供給される。若干精度が落ちるのでPCR検査で確認。6月19日だ液が使える抗原検査を厚労省が承認した。6月22日の読売新聞には日大や塩野義製薬が秋にも実用化するSATICというだ液を使う検査法が紹介されている。精度も高く、技師・検出器も不要で30分で結果が分かる。
⑥RNA抽出薬などが足りなくなる。
【反論】ニッポンジーン、島津製作所などで生産。栄研化学のLAMP法やSATICを使うなら抽出薬はいらない。

第2波に備えるには、今はできるだけ市中の感染者を減らしておかなければならない。第2波が始まったら、その感染者に接触した可能性がある人を徹底的に検査し、陽性者を見つけ出し隔離するべきである。新しい検査法も次々登場しつつあり、国は従来の検査に後ろ向きな態度を改め、積極的に検査し隔離を進めて、コロナの感染の危険のない街を確保して頂きたい。

 

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2020年6月15日 (月)

緊急事態宣言を解除する前にやるべき事がある(No.415)

6月11日、小池都知事は都独自の警戒を呼びかける東京アラートを解除し12日零時から事業者への段階的な休業要請を「ステップ3」に移行し、カラオケ店や遊園地の営業が認められた。なぜ自粛要請を緩めるのか全く理解できない。東京の新規感染者は一時は200名を越していたが、5月22日は3人、23日は2人と、非常に少なくなっていた。しかし自粛要請が緩められたため最近は20名を超しており、14日には47人にまで増加した。感染爆発の始まりであり、今感染者の多くは東京だが、旅行を国が援助するようになれば、感染は全国に広まってしまう。

諸外国に比べ日本のコロナ対策はうまくいっていると政府は言う。山中伸弥教授は別な要因があって欧米のような感染爆発を防げたのかもしれないと分析する。明確な結論はまだ出ないが、日本のコロナ対策を評価するには、台湾、中国、韓国と比べて評価すべきだ。台湾は最近8週間で新規感染者はゼロだ。自粛はほぼ必要なく、かつての日常が戻って来つつある。これも検査・隔離が徹底した結果街には感染者がほぼいなくなった結果である。国内の経済活動はほぼ自由にできる。

これと対照的なのはスウェーデンであり、ロックダウンとか外出禁止などせず、感染が進めば多くの国民が抗体を持つようになり自然に流行は収まるだろうという戦略。結果として感染者は激増し、死亡率も近隣諸国よりはるかに高いものとなった。結果としてデンマークやフィンランドなどの近隣諸国は国境閉鎖を解除する際スウェーデンを外している。また感染者が多いとレストランなども警戒され利用が減るし、輸出も急減するなど、深刻なスウェーデン経済への打撃が生じていてこの戦略は失敗したのではないか。

一方中国では一時感染爆発が起きたが、その後封じ込めに成功し、最近の新規感染者の多くは海外からの流入だった。コロナでの死者数は米国が11万5千人であるのに対し中国は5千人足らずである。経済活動も回復しつつある。中国も台湾のように感染者の隔離を徹底した成果だと言える。武漢でも5月半ばから990万人住民全員のPCR検査を行った。1日100万件のPCR検査が可能だとされている。中国全土でコロナ検査を拡充し、いつでもどこでも誰でも検査が受けられるよう検査態勢を増強している。

日本が目指すべきコロナ対策はスウェーデン流ではなく、台湾か中国流である。そのためにはいつでもどこでも誰でも唾液を使ったPCR検査ができるようにするのが必須条件だ。これにより経済を元に戻すことができるので、極めて安上がりで莫大な経済効果が見込まれる景気対策である。緊急に東京だけでも検査をすべきだ。1件1万円で全国民に検査したとしても、僅か1.2兆円だ。第一次、第二次補正予算の事業規模は合計で200兆円を超えるのであり、この検査を実行した際の経済効果は数十兆円を超えるのであり、どんな景気対策より経費対効果は大きい。残念ながら「PCR検査は増やさなくてよい」「自粛は感染を抑える効果はない」などと馬鹿なことを言う専門家がおり、彼らは日本にとって極めて危険な考えの持ち主であり、こういった専門家が日本医療を間違えた方向に導こうとしていると上昌広医療ガバナンス研究所理事長が述べている。
https://www.fsight.jp/articles/-/46990

スポーツジム、ライブハウス、飲食店などクラスターの発生した場所がだんだん分かってきたのだから、徹底した検査と隔離をして新規感染者を減らすことが最優先にすべきことであり、それをせず

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2020年6月 8日 (月)

消費減税の効果を日経NEEDS日本経済モデルを使って調べた(No.414)

2019年10月から消費税が10%に上がり、消費が落ち込み景気悪化が著しかった。世界の中でも日本の成長率は際だって低いのだから、消費税を上げるのではなく下げるべきだった。2019年10~12月の実質GDPの改定値は前期比1.8%減、年率換算では7.1%減であった。その後新型コロナウイルスの世界的な流行のため世界経済に深刻な悪影響が出始めた。日本経済を救うためには大規模な経済対策が求められる。我々は政府に対し国民一人当たり20万円を配るよう提案した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-ea124f.html
安倍首相も「20万円を配ればインパクトはある」と認めながら、実行されたのは国民全員に10万円の配布であった。我々としてはこれでは少なすぎると考え、追加で消費減税が行われたらどうなるかを考える。

ここでは消費税減税が経済に及ぼす影響を日経新聞社のNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使って計算してみた。ただしコロナ禍に対応して緊急事態宣言が出された前後で日経の用意した経済データがガラリと変わったので、変わる前(2月)と後(4月)、(5月)でそれぞれ計算した。

図1  2020年2月のデータで消費減税の試算

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消費税は物の値段に税率分だけ上乗せして徴収されるから、上乗せ分だけ売上げがかさ上げされ、名目GDPもかさ上げされる。例えば消費税率を0%にするとそのかさ上げ分が無くなるので名目GDPは下がってしまう。しかし消費減税によって消費は拡大し企業の利益も増え約1年後には消費税を減税しなかった場合の名目GDPを追い越してしまう。

図2  2020年2月のデータで消費減税の試算

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図2は実質GDPである。実質GDPではインフレの効果を除いたものであり、消費税によるかさ上げ分も除かれるので純粋にどれだけ経済成長したかが分かる。結果は一目瞭然であり、消費税率が低いほど消費が拡大し成長率は高くなる。

図3、4はコロナ禍が吹き荒れ始めた4月の経済である。2020年Q2(4月~6月)には得に大きく落ち込むと予想していることが分かる。落ち込みは25兆円程度である。これを取り戻すには消費税率を0%にして2年程度待つ必要がある。もし緊急事態宣言の解除が2か月以内でできないなら経済の落ち込みは更に深刻になる。

図3  2020年4月のデータで消費減税の試算

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実質GDPで判断しても緊急事態宣言が与える経済への影響は極めて深刻であるのは明かだ。その悪影響を少しでも軽減するには、コロナ禍で売上げを落とした企業、バイト収入を晴らした人など損をした人、企業を徹底的に調べ上げ、その損失を補填するべきだ。政府の雇用調整助成金などのシステムは複雑で利用しにくい。複雑で意味不明の膨大な書類をどうやって作れば良いのか専門の社労士でさえ作成が困難であり、しかも社労士にお願いすると助成金のうちの多くを相談料として社労士に払わなければならなくなる。書類をケタ違いに簡単化するか、あるいは社労士を国の費用で雇い、書類作成の補助を無料で行うべきだ。緊急事態宣言で国民に莫大な損害を与えるのだから、その損失を補填するなら、日本経済の落ち込みは若干少なくなるが、今の政府のやり方は、最大限国の助成金を減らしていこうという方針なので、経済の落ち込みは極めて深刻なものとなる。


図4 2020年4月のデータで消費減税の試算

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以下は消費税率を変えたとき、様々な経済データがどのように変わっていくかを表に表したものである。ただしコロナの影響が出る前の2020年2月のデータで計算したものとコロナ禍が起きた後の2020年4月のデータで計算したものを比べた。

ところで日経NEEDSによる5月の予測値は4月のものから大幅に下方修正された。コロナ禍は100年に一回しか起こらない経済における大惨事であり、誰も事前に予測することなど不可能であった。むしろこれは歴史に残る大惨事の大きさを知るのに役立つ。我々はNEEDSを使い計算をやり直し、それをここで紹介する。

図5 2020年5月のデータで消費減税の試算

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図3と比べれば分かるように、コロナ禍によるショックはあまりにも大きくて消費税率を0%にしても2年後になっても名目GDPは元のレベルに戻っていない。つまり消費税率を0%にするだけではまた十分ではないということだ。

図6 2020年5月のデータで消費減税の試算

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実質GDPで見れば税率を5%にしたとき、2年後にやっと元のレベルに戻る。このように日本経済を考えるときは、消費減税だけでは物足りない。


表1 2020年2月のデータで試算

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これは2020年の1月から消費税率を変えた場合の試算である。消費税率0%の場合と5%の場合を計算し、10%の場合と比べた。2020年(年度ではなく暦年である)を考えて見ると名目GDPは消費税率が10%のままだと556兆円、5%に下げた場合は552兆円、0%に下げると547兆円にまで下がる。消費減税をすると消費が伸びて経済が活性化しGDPが伸びると普通の人は考える。しかし消費税というもの、例えば10%の税率だと物の値段が10%上乗せされ見かけの取引額は増える。だから見かけのGDPは増える。安倍首相は経済発展させることに失敗したから、こういう手を使ってGDPをかさ上げして国民を騙そうとしたのではないか。だから本当の経済規模を見るには実質GDPに注目しなければならずそれを見ればGDPはちゃんと拡大しているかどうか確認できる。消費税率0%にしたとき実質GDPの押し上げ効果は初年度で2.84%、2年目は2年間の累積の押し上げ効果は5.16%となる。

税率を0%にしてしまうと、元に戻すときに10%もの税率アップになるので大変だという意見がある。しかし消費税率0%はずっと続けて良い。このまま続けたらハイパーインフレになるという人がるかもしれない。とんでもない誤解である。0%にした後2年後でもまだ物価水準は5.57%PT押し下げられたままである。つまり消費税を廃止したら消費は拡大するが、物価にはほとんど影響がない。国債利回りは2年後にやっと0.2%にまで上昇しマイナス金利からの脱却に成功する。ただし金融機関の経営を立て直す目的にはまだまだ金利は低すぎる。

2年後民間企業経常利益は55%も増加するが一人当たりの雇用者報酬は2.7%増加するだけだ。つまり利益が出ても企業は賃金を上昇させず、内部留保にしておくのである。このため国民を豊かにするためには国が直接国民に現金を配るのが良い。

消費税減税を行うと代替財源は何かと質問される。国債を発行すれば十分だ。後で日銀がお金を刷って買い上げればよいだけであり、刷ったお金を使えば将来世代へのツケにはならない。そんな上手い話があるもんかと疑う人もいる。しかし経済を拡大させるためには通貨を増やす必要があり、それを成長通貨という。今まで政府は成長通貨の供給を怠ったため日本経済が発展しなくなった。今後は適切なレベルの通貨発行を継続的に行うべきである。


表2 2020年4月のデータで試算

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2020年4月に日経の予測では2020年のGDP(暦年)の落ち込みは4%程度となっている。これは消費税率を0%に下げて景気を下支えしてもまだ足りないほどの大きな落ち込みである。更に5月以降も緊急事態宣言は続くのであり、落ち込みは更に深刻になる可能性があるから余程思い切った景気刺激策でないと乗り切れない。特に観光がどの程度復活するのかで状況は変わってくる。輸出入は大きく落ち込んでおり、消費税減税をしても取り戻せない。コロナ禍により法人企業経常利益は30%以上下落する。例えば消費税率を0%に下げたらこの落ち込みは1年余りで取り返すことができる。

1年目で考えると消費税率10%のときは消費税収は24.8兆円で、消費税率を0%にすると税収合計では23.0兆円の減収となる。2年目には10%のとき消費税収は26.6兆円だが、消費税率0%にしたら税収合計は19.7兆円の減収になるだけだ。つまり消費税率を下げると法人税や消費税等が伸びるのである程度挽回できることを示している。

コロナ禍対策で巨額の財政出動が行われるが、それによりハイパーインフレもないし、国債暴落もないし、円の暴落もない。日本よりケタ違いに巨額の財政出動を行っている米国も同様だ。ハーパーインフレや国債暴落があると主張して人々を恐怖に陥れてきた人々は今こそ自らの間違いを認め謝罪をすべきである。

この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。

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