現金給付を行った場合(No.421)
以下の資料は次のサイトの追加データである。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-9b9dee.html
配布された現金がすべて貯金に回ったとしても、こんなに増えない。そもそも貯金残高は以下の式で計算されている。
130.24567+1.04196*【資産残高・預金・家計((時価)
+資産残高・株式・家計(時価)】/就業者数*10
これは1990年~2017年の間であればこの貯蓄残高は非常に良く近似されるという。
しかしながらここで考えている状況は過去のものとは類似しているかどうか分からない。株は上がるが成長への期待から上がるだろう。過去は株をたくさん持っていれば預金も多く持っていただろう。今考えているモデルにどれだけこれがあてはまるか、検討の余地がある。
コロナ禍が無かったとし、現金給付を行ったらどうなっていたかを計算してみた。
コロナ禍が無かったとして、年間120万円を給付する場合は名目GDPは約120兆円増大する。
これは年間約60兆円の増加である。上記サイト(No.411)では、コロナ禍によって影響を受けた場合、年間120万円の給付を行った場合、増加するGDPは約80兆円であり、年間の増加率は約40兆円となる。
コロナ禍が無かった場合年間120万円の給付を行っていたら、2年間で約2.5ポイント物価は上昇していた。これは年間約1.2ポイントの増加である。コロナ禍があった場合、上述で示されたように2年間の物価上昇はゼロである。つまりコロナ禍で一旦デフレになり120万円の給付で2年後にやっと物価が元の水準に戻る。
下記の図は
①一般政府債務(SNAバース)
②国債及び借入金現在高(IMFベース)
の2種類をグラフにした。
潜在GDP
物価
感応度
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コメント
こんにちは。
また、少し気になる数値がありました。
上記の試算では、新型コロナ渦がなかった場合のGDPの増加額は、1年間で60兆円… ということでした。
これは、一人年間120万円、日本全体で年間150兆円の政府支出の現金給付に対し、GDPが年間60兆円増えた… ということなので、その乗数効果は 「 0.4 」 ということになり、かなり低いように思いました。
そして、なぜこのように乗数効果が低いのだろう? と、思いました。
そこで考えられるのは、
・コロナ渦がなかった場合でも、元々の日本の経済状況はデフレ不況が長期に渡って続いているため、また日本人の気質? のため、家計は給付金をもらっても将来への不安や備えのために 『貯蓄』 をする。
・以前に書いたように、家計負債の返済に使う。
・残りを消費に使う。
といったことが考えられるように思いました。
ただ、これらのことは短期的な現象で、現金給付がベーシックインカムとして長期的・恒久的に実施されるようになると、また状況が変わってくるのかもしれません。
日経NEEDSモデルは短期(2~3年前後)シミュレーションなので、長期的には消費意欲増加でインフレ率なども変わってくるのかどうか、日経モデルを開発された方に、ぜひお聞きしてみたいです。
投稿: kyunkyun | 2020年9月15日 (火) 13時09分
私も同じようなことを考えておりました。公共投資を増やした方がずっと乗数効果は大きいです。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-2ef90f.html
でも公共投資を年間150兆円増やすなどということはできません。現金給付の場合は将来に備えて貯蓄する人が多いことは間違いないでしょう。つまり貨幣の流通速度は減っていく。永遠に減り続けるということはないですから、どこかで修正されるでしょう。お金が十分貯まったら車を買ったり、マイホームを買ったりすると思います。そのとき供給が追いつくかは分かりません。これはマクロ経済でなくミクロで考えなければならないでしょう。
投稿: 小野盛司 | 2020年9月17日 (木) 11時26分